物理システム工学科3年次 「物性工学概論」 第8回光エレクトロニクス(1) 光電変換:太陽電池、CCDカメラ 物理システム工学科量子機能工学分野 佐藤勝昭
第6回の復習 さまざまな発光 半導体pn接合 発光ダイオード 励起方法による分類 フォトルミネセンス(PL)、カソードルミネセンス(CL) エレクトロルミネセンス(EL)、注入型エレクトロルミネセンス(LED) 半導体pn接合 発光ダイオード
LEDの原理 再結合 - + p型 n型 pn接合を順バイアス 電子は、p層に注入 ホールはn層に注入 界面付近で再結合 空間電荷層
第7回(ミニテスト)採点結果 と解答のポイント 平均点:73.4点(最低20点、最高103点) 問題1:Drudeの式の導出:28.4/40 負の誘電率:電磁波の電界が加わったとき、電界と逆方向の電束密度が生じることを意味し、電磁界を遮蔽し、媒体の中に入れないように働く。
問題2:5問中2問選択 金属の展性:叩いて塑性変形しても非局在電子の海に正の原子核が浮かんでいる状態を保つことができる一方、半導体結晶では、価電子は共有結合を作って原子間の結合分子軌道に局在しているので、変形すると結合が保てず破壊が起きる 導電率:=ne。移動度は、温度上昇とともに格子振動による散乱を受けてゆるやかに低下する。一方、キャリア密度nは、金属では温度変化しないのに対し、半導体では温度とともに指数関数的に増加する。
問題2:5問中2問選択つづき 熱伝導は格子熱伝導と電子熱伝導から成り立っている。ダイヤモンドは、格子熱伝導が主に寄与している。 半導体では、フェルミ準位が価電子帯と伝導帯の間のバンドギャップ内に来る 。一方、金属では、伝導帯の内部にフェルミ準位が来る 。 金における赤から緑にかけての高い反射率は自由電子の集団運動によるDrude則による負の誘電率が原因である。一方、黄鉄鉱の金色は、バンド間遷移による強い吸収が赤~赤外領域に存在するためである。
問題3:3問中1問選択 ヒトの網膜には赤、緑、青の波長にピーク感度をもつ3種類の錐体があり、3つの細胞の刺激の程度によってすべての色を感じる。 遷移金属とは周期表のIIIaからVIIIおよびIbにあり、不完全d電子殻をもつ元素である。電子の海に供給する電子数が多いことが結合の強さをもたらし、高い融点と硬さをもたらしている 食品においては、誘電率の虚数部の存在により、マイクロ波が吸収され食品が加熱される。一方、セラミクスにおいては、誘電率の虚数部のピークは赤外線の周波数にあるため、マイクロ波の吸収は少なく、加熱されない。
問題4:半導体の色 E[eV] =h[J・s]c[m/s]/(e[C][nm]×10-9) =1240/[nm] ([nm]と[m]の換算) Si (1.1eV):可視不透明、吸収端の波長は1127nm(赤外)であり、これより短い波長は全部吸収する。従って、可視光では不透明である GaP (2.2eV):橙色、吸収端の波長は563nm(黄緑)で、これより長い波長(赤、橙、黄)を透過、橙色に見える CdS (0Kで2.6eV):黄色、室温における吸収端の波長は477nm(青)で、緑、黄、赤が透過、黄色に見える ZnSe (2.67eV):黄色、吸収端の波長は464nm(青) 、青緑、緑、黄緑、黄、橙、赤が透過、無色に近い薄い黄色 GaN (3.39eV)無色透明、吸収端の波長は365nm(紫外) 、可視光(780-380nm)は全部透過、無色である。
半導体のバンドギャップと透過光の色 ZnS Eg=3.5eV 透過域 白 ZnSe Eg=2.67eV 黄 CdS Eg=2.4eV(RT) GaP Eg=2.2eV 橙 Si Eg=1.1eV 黒 300nm 800nm 4eV 3.5eV 3eV 2.5eV 2eV 1.5eV
問題5:半導体の発光 フォトルミネセンス:励起=光、用途=蛍光灯、プラズマディスプレイ(PDP) カソードルミネセンス:励起=電子線、用途=ブラウン管(CRT)、電界放出形ディスプレイ(FED) 真性エレクトロルミネセンス:励起=電界、用途=無機ELディスプレイ、有機ELディスプレイ、 注入形エレクトロルミネセンス:励起=電子・ホールの注入、用途=発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、大型壁面ディスプレイ、交通信号機 標準解答は佐藤研Web「物性工学概論」にアップしてあります。
第8回で学ぶこと 光電変換:光を電気に変える 光伝導(photoconductivity) 光電子放出(photoelectron emission) 光起電力効果(photovoltaic effect) フォトダイオード、フォトトランジスタ 太陽電池
光伝導 半導体において光照射により導電率が上がる(電気抵抗が下がる)効果 光によって生成されたキャリアが伝導に寄与 街灯の自動点灯用センサとして使用される。 光電流は必ずしも光強度に比例しない。真性半導体では光強度の2乗に比例
光伝導 光によってキャリア生成 電界によって移動する 再結合するまで伝導に寄与 トラップ準位があると、キャリアはいったん捕捉され、熱的に解放されて再度伝導に寄与
街灯の自動点灯 夕方になると街灯がひとりでに点灯しますが、光導電素子を使って固体リレーを働かせ、電灯をオンオフしています CdS光導電セル モリリカのHPより 街灯自動点滅器(EEスイッチ) 松下電工のHPより
我が家は 太陽光 発電所
太陽電池について 太陽電池は光を電気に変える半導体の素子である。太陽光のエネルギーの10%程度を電気に変える。 太陽電池は乾電池や蓄電池と違って電気を貯める性質はない。光がないと全く発電しない。太陽光発電器というべきである。 太陽電池の出力は直流である。そのままでは、家庭用の電源(交流)として使えない。そのためインバータという仕掛けを使って交流に変換している。
太陽電池の仕組み - 太陽光 反射防止 コーティング 上部電極 + n型シリコン ここで 電子と ホールを生成 p型シリコン 下部電極
太陽電池の仕組み
光起電力の原理 pn接合に光照射 バンドギャップを超える光によって電子とホールが生成される - + p型 n型 pn接合に光照射 バンドギャップを超える光によって電子とホールが生成される 空間電荷領域の拡散電位差によって、電子はn層に拡散、ホールはp層に拡散 空間電荷層
太陽電池の等価回路と特性 開放電圧 短絡電流 佐藤勝昭編著「応用物性」p.153
太陽光スペクトルと理論効率 AM(Air mass) 1.0または1.5の太陽光のエネルギー密度スペクトル
太陽電池の材料 シリコン系 化合物系 単結晶シリコン: 材料高コスト, 比較的高効率 多結晶シリコン: 材料低コスト, 中効率 薄膜アモルファスシリコン: 省資源, 劣化が問題 薄膜多結晶シリコン: 省資源, 中効率 化合物系 単結晶GaAs: 超高効率, 高コスト, As含有→宇宙 薄膜多結晶CdTe: 高効率, 低コスト, Cd含有 薄膜多結晶CuInSe2系: 高効率, 低コスト
同じシリコンでも 分類 不純物濃度 用途 金属級シリコン 10-2 (原料) 太陽電池級シリコン 10-6 * 多結晶太陽電池 分類 不純物濃度 用途 金属級シリコン 10-2 (原料) 太陽電池級シリコン 10-6 * 多結晶太陽電池 半導体級シリコン <10-9 LSI, 単結晶太陽電池 *Ti, Vについては10-9以下にする必要あり 金属級シリコンに含まれる主な不純物 Al 1500-4000ppm, B 40-80ppm, P 20-50ppm Ti 160-250ppm, V 80-200ppm Cr 50-200ppm, Ni 30-90ppm, Fe 2000-3000ppm
太陽光発電システム 独立系 系統連携 ■太陽電池入門のホームページより http://homepage2.nifty.com/domi/nyumon.html#m
太陽電池パネル設置作業
インバータ 電力計
フォトダイオード 佐藤勝昭編著「応用物性」p.152
フォトダイオードの動作 フォトダイオードは、通常、pn接合に逆バイアスを印加した状態で使用される。空乏層でキャリア生成、拡散電位差 により分離。 pinフォトダイオード 高速動作 アバランシェ・ダイ オード:電子雪崩 現象で増倍。 浜松ホトニクスのHPよりhttp://www.hpk.co.jp/Jpn/products/ssd/Si_PD/Si_PD.htm
フォトダイオードの用途 光ファイバー通信:受信用光検出器 光ストレージ:光ピックアップ用光検出器 各種光センサー:自動ドア、リモコン、自動水栓等 計測用光検出器:赤外線計測
フォトダイオード材料 IV族 III-V族材料:例) GaInSbAs:光通信用 II-VI族材料:例) CdHgTe:赤外線計測用 Ge(近赤外線) III-V族材料:例) GaInSbAs:光通信用 II-VI族材料:例) CdHgTe:赤外線計測用
撮像デバイス 静止画像 動画像 CCD (charge coupled device) の動作 CMOS センサー ニコンのサイトより 静止画像 動画像 CCD (charge coupled device) の動作 (大日本印刷のHPに動画があります) CMOS センサー