物理システム工学科3年次 物性工学概論 火曜1限0035教室 第4回半導体の色 物理システム工学科3年次 物性工学概論 火曜1限0035教室 第4回半導体の色 佐藤勝昭
第3回で学んだこと 自由電子のプラズマ運動 誘電率と屈折率・消光係数 負の誘電率の意味するところ
前回の問題1 Naは原子1個につき1個のs電子を結晶に供給する。Naの結晶構造は体心立方(bcc)で、格子定数はa=0.43nmである。Naの電子密度を求めよ。 [ヒント] 1つの単位胞(unit cell)に原子はいくつあるか。8つのコーナーに1/8個ずつ、体心に1個。計2個。これを単位胞の体積で割れば、電子密度が得られる。
前回の問題2 金属は、箔(はく)状に延ばすことができるが、シリコンなどの半導体単結晶に衝撃を加えると、劈開(へきかい)して破壊される。この違いを、原子結合の違いから説明せよ。
前回の問題3 問3:金が金色である理由を述べよ。
QUIZ1さまざまな色が3原色によって表される理由を述べよ。 ヒトの網膜には色を感じる錐体という細胞があるが、錐体には赤、緑、青の波長にピーク感度をもつ3種類の細胞がある。ヒトはこれらの3つの細胞の刺激の程度によってすべての色を感じる。(従って、カラーテレビのカメラでは、光を赤、緑、青の3色に分解し、それぞれの光の強さを電気信号として伝送して、ブラウン管など表示装置の赤、緑、青の光源の強度を変化させてもとの色を再現している。)
QUIZ金が金色である原因と、半導体であるゲルマニウムや黄鉄鉱(FeS2)が金色を示す原因は異なっている。何が違うのかを関与する電子状態を考えて説明せよ。 金が金色であるのは、赤から緑にかけての反射率が高いことによるが、この高い反射率は自由電子の集団運動によるDrude則による負の誘電率が原因である。これに対して、黄鉄鉱では、バンド間遷移によって、強い吸収が赤~赤外領域に存在するために反射率も高くなっていることが原因である。
第3回の補足 金属の色:金、銀、銅、鉄、白金 3原色:加法混色と減法混色/CIE色度図 ヒトが色を認識する仕組み スペクトルとは 光学定数の意味 マクスウェルの方程式
金属の色:金、銀、銅、鉄、白金 銀 銅 しろがね あかがね 金 こがね 白金 くろがね 鉄
三原色 光の3原色(加法混色 ) 各色の強さを変えて混ぜ合わせると,いろいろな色の光になる。赤い光,緑の光,青い光を同じ強さで混ぜ合わせると, 白い光になる。 色の3原色 (減法混色) 各色を混ぜ合わせると,いろいろな色ができる。マゼンタ・シアン・イエローを同じ割合で混ぜると 黒になる。 赤(red) 緑(green) 青(blue) マゼンタ(red) シアン(blue) イエロー(yellow) http://www.shokabo.co.jp/sp_opt/spectrum/color3/color3.htm
CIE色度図 色を表す(表色)ためには, 一般に3つの数値が必要であるが,明るさの情報を犠牲にして2つの数値で色を表し,2次元の図に表現したものを, 色度図という. ある温度で光っている(熱放射・黒体輻射している)物体の色を測定して,温度と色の関係を色度図上に描くことができます.この曲線は黒体輻射の色軌跡と呼びます.なお,一般の光源は黒体輻射をしているわけではないので,色軌跡の上のある色で光っている光源の温度が,その点に対応する温度になっているとは限りません.そのため,色から決まる温度を色温度といいます 実際には感覚的な3原色RGBだけでは表せない色もあるので、機械による測色、表色、目の波長感度特性を詳しく調べて数値化した “表色上の3原色”である3刺激値XYZを使う。その3刺激値XYZにもとづいて,上記のような考え方にしたがい,2つの数値 (x , y ) を使ってxy 座標空間で色を表したものを, xy 色度図と呼ぶ。 http://www.shokabo.co.jp/sp_opt/spectrum/color3/color3.htm
ヒトはどのように色を認識するか 色を感じる 光を感じる なぜ3原色で表せるか。それは人間の色を感じる細胞が3種類あるからである。これらの細胞は錐体(すいたい)と呼ばれ,三種の錐体の送り出す信号の強さの違いによりさまざまな色を感じることができる。
RGB感度曲線とXYZ等色曲線 RGB感度曲線 一方,XYZ表色系はRGBでは再現できない色をも表現するシステムなので, XYZ表色系などにおける3色の“感度”曲線は,たとえば赤が2山のピークをもつなど少し変わった形になっています. http://www.shokabo.co.jp/sp_opt/spectrum/color3/color3.htm
XYZ等色曲線と金属の色 http://www.hk.airnet.ne.jp/shung/periodic_table_s.htm 3刺激値 金銀銅の分光反射率 http://www.hk.airnet.ne.jp/shung/periodic_table_s.htm
金銀銅の反射スペクトル 波長表示 エネルギー表示 佐藤勝昭:金色の石に魅せられて
スペクトルとは 白色光の連続 スペクトル 気体原子の線スペクトル 吸収線 発光線 国立天文台 http://centaurs.mtk.nao.ac.jp/~avell/study/SPECTR/node9.html
媒体中における光の電界の伝搬 光:電磁波(電界Eと磁界Hが直交して振動) E=2E0cos{(t-x/c’)}=E0[exp {-i(t-x/c’)}+cc.] 媒体中の光速 c’=c/n:ここにnは屈折率 E=E0exp{-i(t-nx/c)} で代表させる。 媒体中での光の電界の減衰 E=E0exp(-x/c) 媒体中で電界が1/eになる距離 x=c/
光学定数(屈折率nと消光係数) E=E0exp(-x/c) exp{-i(t-nx/c)} =E0 exp{-i(t-(n+i)x/c)}=E0 exp{-i(t-Nx/c)} N= n+i (複素屈折率) 屈折率n:媒体中での光速を表す因子。 光速は真空中の光速の1/nになっている。 消光係数:媒質中で電磁波の振幅が減衰する様子を表している。
波動の振動の様子 Eexp(-/c) λ= 500 n= 2.5 k= 0.2
マクスウェルの方程式 rotH=D/t =r0E/t rotE=-B/t =-0 H/t rot rotE= -r0 0E2/t2 左辺=( ・E)E- 2E=- 2E 右辺 =-r/c2 E2/t2 E2/x2+ E2/y2 + E2/z2 = r/c2 E2/t2 E=E0 exp{-i(t-Nz/c)}を代入 - N2 2/c2E=-r 2/c2E→(N2- r)E=0 N2= r
誘電率と屈折率・消光係数 N2=εr (n+i)2=εr’+iεr” (n2- 2)+i2n= εr’+iεr” 誘電率が物質定数、屈折率はその媒質での光の固有値 (n+i)2=εr’+iεr” (n2- 2)+i2n= εr’+iεr” εr’= n2- 2 εr”=2n 誘電率の虚部:エネルギーの損失を表す項 電子レンジで食品が加熱される原因:誘電率の虚部
半導体の光学現象 半導体とは何か 半導体にはどんな物質があるか バンド構造とバンドギャップ 半導体の透過色、反射色 吸収スペクトル:バンド間遷移 シリコン結晶の金属光沢の原因は?
半導体とは何か 半導体の抵抗率の範囲とバンドギャップ (佐藤・越田:応用電子物性工学 図4.2)
半導体の電気抵抗の温度変化 金属と半導体の電気抵抗の温度変化の比較
導電率、キャリア密度、移動度 導電率、キャリア密度n、移動度の間には = ne の関係式が成り立つ。 抵抗率と導電率の関係は =1/ である。 移動度とは、単位電界E[V/cm]によって得られる平均速度v[cm/s]を表し、v=E である。 例:1mのシリコン膜の表裏の間に1Vの電圧を印加したとき、E=104V/cm、シリコンの=1000cm2/Vsとしてv= E =107cm/sとなる。 このときの導電率はキャリア数1016cm-3として = ne =10161.6 10-19 103=1.6S/cm: =0.625cm
周期表と半導体 IIB IIIB IV V VI B C N O Al Si P S Zn Ga Ge As Se Cd In Sn Sb Te Hg Tl Pb Bi Po IV族(Si, Ge) III-V族(GaAs, GaN, InP, InSb) II-VI族(CdS, CdTe, ZnS, ZnSe) I-VII族(CuCl, CuI) I-III-VI2族(CuAlS2,CuInSe2) II-IV-V2族(CdGeAs2, ZnSiP2))
半導体の構造 ダイヤモンド構造 閃亜鉛鉱(ジンクブレンド)構造 黄銅鉱(カルコパイライト)構造 非晶質(アモルファス)
バンド構造による金属・半導体の区別
エネルギー帯の考え方 自由電子からの近似 孤立原子に束縛された電子からの近似 Hartree-Fockの近似 電子を波数kの平面波として扱う E=(k)2/2m 放物線バンド 孤立原子に束縛された電子からの近似 Heitler-Londonの近似 原子の電子波動関数(s, p, dなど)の1次結合 電子間相互作用を考慮しやすい
シリコンのバンドとバンドギャップ
半導体の光吸収スペクトル 直接吸収端 InSb, InP, GaAs 間接吸収端 Ge, Si, GaP
バンドギャップと半導体の吸収端 Eg h>Eg h フォトン・エネルギーE=hがエネルギー・ギャップEgより小さいとき、価電子帯の電子がE=hを得ても、伝導帯に遷移できないので、光は吸収されず透過する。 フォトン・エネルギーがエネルギー・ギャップよりも大きいと、価電子帯の電子が伝導帯に遷移することができるので、光吸収が起きる。吸収が始まる端っこということで、エネルギー・ギャップを吸収端のエネルギー、それに相当する波長を吸収端の波長という。吸収端の波長より長い波長の光は透過する。 伝導帯 Eg h>Eg h 価電子帯
半導体のバンドギャップと透過光の色 1.5eV CdS GaP HgS GaAs 3eV 2.5eV 2eV ZnS Eg=2eV 800nm 300nm ZnS Eg=2eV Eg=2.2eV Eg=2.6eV Eg=3.5eV Eg=1.5eV 白 黄 橙 赤 黒 3.5eV 4eV 透過域
半導体の色 透過光の色 反射光の色 バンドギャップより低いエネルギーの光を全部通す Eg>3.3eV:無色透明 Eg=2.6eV:黄色 diamond http://www.sei.co.jp/ Ge http://www.ii-vi.com/ ZnSe, ZnS http://www.ii-vi.com/ Si http://www.anstro.gov.au/ HgS www.lotzorox.com/cinn3b.JPG GaAs http://www.ii-vi.com/
半導体のバンドギャップと絵の具の色 Mixed crystals of yellow cadmium sulfide CdS and black cadmium selenide CdSe, showing the intermediate-band-gap colors http://webexhibits.org/causesofcolor/10.html
第4回の問題 左に示す半導体を透過した光は、それぞれ何色に見えるか、またそう見える理由を述べよ。 さまざまな半導体のバンドギャップ(室温) 半導体 Eg[eV] g[nm] Ge 0.67 1851 Si 1.11 1117 GaAs 1.42 873 CdSe 1.74 712 GaP 2.26 549 CdS 2.42 512 ZnSe 2.67 463 GaN 3.39 366 ZnS 3.68 337 左に示す半導体を透過した光は、それぞれ何色に見えるか、またそう見える理由を述べよ。