相対性理論とは… アルベルト・アインシュタインの創始した理論で、互いに、等速運動する座標系の間では物理学の法則が不変な形を保つという原理(相対性原理)と、光速度不変の原理を仮定したときの物体の運動を記述する。 相対性理論には大きく2つ存在する。 特殊相対性理論 一般相対性理論 GSPの時間の補正やタイムマシンなどの話をする際に必要不可欠な知識。
相対論の教材として扱われるジャンル 教材として扱う上で、大きく4つのジャンルに分けられる。 ローレンツ収縮 時間の遅れ 重力による空間のゆがみ SFとしての相対性理論 ①・②は特殊相対性理論、③は一般相対性理論の範疇である(④はどちらかというと一般相対性理論)。
特殊相対論を教えるには… 特殊相対論を学ぶには… 光時計を使おう!!
光時計とは… 光時計とは、光の反射で時間をはかる時計のことである。 時間の遅れの思考実験に使われる仮想的な時計である。 また、光の速度は誰から見ても同じである。
時間の遅れ 静止している光時計と、速度𝑣 で動いている光時計では、光が1往復するまでに移動する距離が異なる(右図)。 光速が不変であるということを考えれば、「移動する距離が長くなる=時間が長くなる」ということになる。
時間の遅れ 光時計が静止していようと、動いていようと光が上下に震動するという動きには変わりがない。 静止している光時計(下)が片道移動するのにかかる時間を𝑡 、動いている光時計(上)が片道移動するのにかかる時間を 𝑡 ′ とする。
時間の遅れ 光速𝑐 とそれぞれの光時計での片道の時間を𝑡 、 𝑡 ′ とする。 光速𝑐 とそれぞれの光時計での片道の時間を𝑡 、 𝑡 ′ とする。 三平方の定理を使うことで動いている光時計での片道の時間 𝑡 ′ を計算することができる。
ローレンツ収縮 ローレンツ収縮も、光時計を使うことで、比較的単純に計算することができる。 光時計を横にして動かす。 先ほどの時間の遅れの式を用いることで、物体の収縮についても説明ができる。
𝐿 ローレンツ収縮 𝑡 静止している光時計の間を光が往復するまでにかかる時間は、 である。 𝐿 ′ 𝑡 ′
𝐿 ローレンツ収縮 𝑡 一方で、動いている光時計を光が往復するのにかかる時間は以下のとおりである。 𝐿 ′ 𝑡 ′
𝐿 ローレンツ収縮 𝑡 𝐿 ′ 𝑡 ′ これらの式を使って、𝑡 と 𝑡 ′ を消去する。
特殊相対論を学んだ後に… 「A Slower Speed of Light」 MIT開発の「特殊相対性理論3Dゲーム」 ドップラー効果 長さの収縮 サーチライト効果 ランタイム効果 特殊相対論を理解した上でやると面白い!!…………のかな??笑 ©2014 MIT Game Lab
特殊相対論を学んだ後に… どっちが正しいの?? 「双子のパラドックス」 双子の兄弟として、弟は地球に残り、兄は光速に近い速度のロケットに乗って、宇宙の遠くまで旅行した後に地球に戻ってきたとする。 弟の視点:兄はかなりの速度で動いているので、兄の時間が遅くなる⇒兄のほうが年をとらない。 兄の視点:弟がかなりの速度で動いているので、弟の時間が遅くなる⇒弟のほうが年をとらない。 どっちが正しいの??
重力による空間のゆがみ 古典力学の話から ニュートン重力 質量をもつもの同士にはたらく 必ず引き合う力(引力)⇔電磁気力 𝑀 [kg] 古典力学の話から ニュートン重力 質量をもつもの同士にはたらく 必ず引き合う力(引力)⇔電磁気力 重力の強さは質量と距離によって決まる。 質量:𝑚 [kg] 距離:R [kg]
重力による空間のゆがみ アインシュタイン重力 物質・エネルギーの存在によって時空(時間+空間)が曲がる。 空間が曲がっているので、月はまっすぐ進んでいるつもりでも、地球のまわりをまわる。 こんなもの教えられません!!
重力による空間のゆがみ 一般相対論の範囲で式を扱うのは高校生には無理(まあ大学生でも無理)。 3次元で可視化するのがベスト。 「織物を使って重力がどのように働くのかを示す重力可視化実験」 一般相対論の範囲は視覚的にはわかりやすいが、結局「こういうものなんだ」と教えこんじゃうところがつらい…。
重力による空間のゆがみ ニュートン重力とアインシュタイン重力とでは大きく2つの違いがある。 ①アインシュタイン重力では質量がないものも空間によって曲げられる。 例えば、光も曲げられる。 光はまっすぐ進む性質があるんじゃないの??⇒光自身はまっすぐ進んでいるつもりだから問題なし!! 重力レンズ効果:恒星や銀河などが発する光が、途中にある天体などの重力によって曲げられたり、その結果として複数の経路を通過する光が集まるために明るく見えたりする現象
重力レンズ効果 ワイングラスを用いた簡単な重力レンズ効果検証実験 手順は簡単。ワイングラスの底から3cm程度のところをガスバーナーで加熱し、溶け始めたら引っ張り、切断面を丸くする。 あとは、重力レンズの効果を確かめられるような画像を用意しておいて、その上にワイングラスの足の部分を乗せるだけ。 一瞬丸く見える!!!
重力レンズ効果 アインシュタインリング 地球と観測される天体との間に強い重力源(レンズ天体)が存在すると、観測される天体は重力レンズ効果の影響を受けるが、この3つがちょうど一直線上に存在すると、観測される天体の像がリングに見える。
重力による空間のゆがみ ニュートン重力とアインシュタイン重力とでは大きく2つの違いがある。 ②アインシュタイン重力では時間もゆがめられる。 強い重力場の近くにいると、時間の進みが遅くなる。 このような時間の遅れは、日本のお伽噺である『浦島太郎』において、主人公の浦島太郎が竜宮城に行って過ごした数日間に、地上では何百年という時間が過ぎていたという話にそっくりであるため、日本のSF作品などではウラシマ効果とも呼ばれる。 ダリ(1931年)『記憶の固執』
ウラシマ効果 いずれにしても、浦島太郎はよく生きて帰ってこられた!!笑 実際にウラシマ効果が起こる要因を考えてみるのもおもしろい!! 「浦島太郎が亀に乗って竜宮城に行って戻ってきたらまわりのみんなは年をとっていて、自分だけ若かった。どうしてでしょう??」 考えられる要因としては、 ①亀がものすごい速さで移動したから。 ②竜宮城がものすごい速さで移動していたから。 ③竜宮城がすごい重力だったから(ブラックホール) いずれにしても、浦島太郎はよく生きて帰ってこられた!!笑
ウラシマ効果はタイムマシン!? タイムマシンに乗って未来に行ったのと同じ!! 過去なんて振り返らず前だけ見て進もう!!笑 浦島太郎が亀に乗って竜宮城に行って戻ってきたらまわりのみんなは年をとっていた⇒みんなが年をとっている世界に移動した。 タイムマシンに乗って未来に行ったのと同じ!! ただし、未来に行くことができても過去に帰ることはできない…。 まさに片道切符の島流し状態なのです……(涙) 過去なんて振り返らず前だけ見て進もう!!笑
GPSと相対論 GPSは、GPS衛星に搭載された原子時計に基づき生成される航法信号に依存している。 GPS衛星は軌道上を秒速4kmを超える速度で移動している⇒衛星の時計の進みが遅くなる(特殊相対論) また、衛星は地表と比べると重力の影響が小さい⇒衛星の時計の進みが早くなる(一般相対論) 両方を考慮すると、GPS衛星に搭載された原子時計は、地上の時計に比べて1日当たり28.6マイクロ秒だけ早く進むことになる。
SF(サイエンスフィクション)と相対論 たいていのSFは現実世界とは即していない(変な宇宙人がいたりとかして)が、中には理論的には現実可能なSF(いわゆるハードSF)も数多く存在する。 中でも宇宙に関するハードSFは人気があり、科学性の極めて高い作品が多い。例えば、moon light mile、ロケットガール、プラネテス、ガンダム等 ハードSF研究所なるSFファンクラブも存在する(なんか怪しい)。 http://www.sasabe.com/SF/hsf.html ここからは余談だと思ってお付き合いいただければと思います。
活用例として… X線自由電子レーザー施設「SACLA」が製作したSFアニメ「未来光子 播磨サクラ」(http://xfel.riken.jp/pr/sacla/?cat=3)
活用例として… 赤外線天文衛星「あかり」を題材にしたマンガ『あかりちゃん』
相対論を扱うアニメ Steins;Gate(シュタインズ・ゲート) タイムトラベルを主軸にしたアニメ。 アニメの中では欧州原子核研究機構(CERN)の名前をもじった「SERN」という組織が登場する。 SERNがブラックホールを使ったタイムトラベルの実験をしている。 同じころ、大学生の岡部が電子レンジを使ったタイムリープ(時空移動)の実験に成功し、SERNに目を付けられることになる…。
ブラックホールを使ったタイムトラベル ブラックホールには一般相対論が破綻するような時間や空間の基準が適用できなくなる、時空の特異点と呼ばれるものが存在する。 ブラックホール自身が回転していると、特異点は点ではなく、リング状になる。
ブラックホールを使ったタイムトラベル 理論的には(数学の解としては)、ブラックホールの正反対の「なんでも吐き出す物体」というのも存在する⇒ホワイトホール ホワイトホールは現代の宇宙において未だ発見はされていない。 ホワイトホールの構造はブラックホールと基本的には一緒(イメージとしては空間がへこむのではなく、盛り上がる)。
ブラックホールを使ったタイムトラベル どこでもないドア ブラックホールとホワイトホールの特異点をくっつけたら、ブラックホールに吸い込まれた物質が、ホワイトホールから吐き出されていきそう!! 短時間で別の空間に移動することができる。 しかし、一度移動したら元の場所には戻れない、どこに行くかはわからない。 どこでもないドア
まとめ 光時計を使えば、特殊相対論の基本的な公式は比較的単純に理解できる。 一般相対論(空間のゆがみ)は可視化実験を通して、イメージを膨らませるのがよい。 特殊相対論と一般相対論の時間の遅れを2つとも理解していれば、ウラシマ効果やGPSの時間補正といった話に適用できる。 アニメを通した専門分野の構造化は、高校生にアウトリーチする際の手助けと十分なりうる。