禁煙治療
TDSにより、ニコチン依存症は容易に診断できます
禁煙治療は、12週間に5回の診療を行います 禁煙治療のスケジュール 禁煙開始 12週間後 再診④ 0週 初回診療 2週間後 再診① 4週間後 再診② 8週間後 再診③ 対象者のスクリーニング 禁煙治療の開始 禁煙継続のためのフォローアップ
禁煙補助薬には、チャンピックス、ニコチンパッチ、ニコチンガムの3種類があります 飲む 貼る かむ チャンピックス ニコチンパッチ ニコチンガム ・健康保険等が使える ・ニコチンを含まない飲み薬 ・禁煙時の離脱症状だけでなく、 喫煙による満足感も抑制する ・禁煙を開始する1週間前から 飲み始め、12週間服用する ・医師に処方してもらうタイプ と薬局・薬店で購入するタイ プがある ・ニコチンを皮膚から吸収させ る貼り薬 ・毎日1枚皮膚に貼り、離脱症 状を抑制する ・禁煙開始日から使用し、8週 間の使用期間を目安に貼り薬 のサイズを大きいものから小 さいものに切り替えて使用す る ・薬局・薬店で購入する ・口の中の粘膜からニコチンを 吸収させるガム製剤 ・タバコを吸いたくなったとき に1回1個をゆっくり間をおき ながらかみ、離脱症状を抑制 する ・禁煙開始日から使用し、12 週間の使用期間を目安に使用 個数を減らしていく
チャンピックスは、拮抗作用と 作動薬作用で禁煙効果を高めます チャンピックスの使用機序 ニコチンの作用 ドパミン 放出 チャンピックスの 2つの作用 結 合 少量の ニコチンをブロック 拮抗作用 チャンピックスがα4β2受容体に結合することによりニコチンの結合を妨げ、喫煙から得られる満足感を抑えます。 作動薬作用 チャンピックスがα4β2受容体に結合すと、少量のドパミンが放出され、禁煙に伴う離脱症状やタバコを吸いたい気持ちを軽減します。
嘔気を起こさないために、必ず食後にコップ1杯の水かぬるま湯で服用するようにご指導ください 服用ください コップ1杯程度の水かぬるま湯で服用ください ※嘔気が治まらない場合は、必要に応じて標準的な制吐剤を 処方、または0.5mg1日2回への減量を検討します。
ニコチンパッチは経皮的にニコチンを吸収することで禁煙による離脱症状を軽減します ニコチンパッチの特徴 ○長時間作用型ニコチン製剤 ○経皮的にニコチンを吸収し離脱症状を軽減 ○1日1回の貼付で安定したニコチンの供給が 得られる 医師による処方 薬局・薬店で購入
ニコチンパッチは使用期間に伴い用量を変更します ニコチンパッチの使用方法 朝起きたときに 貼ります 入浴は貼った まま行います 朝起きたときに 張り替えます 起床 入浴 就寝 起床 24時間使用 ※ニコチンパッチを貼る場所は、腕、おなか、背中のいずれかです。 かぶれを防ぐために毎日貼る場所を変えます。 ※薬局・薬店で販売されているニコチンパッチの使用は朝から寝る前までです。 1~4週目 ニコチンパッチ (ニコチン含有量52.5mg) 5~6週目 ニコチンパッチ (ニコチン含有量35mg) 7~8週目 ニコチンパッチ (ニコチン含有量17.5mg) 吸いたい気持ちが続くとき ニコチンパッチ (ニコチン含有量17.5mg) (2週間追加)
ニコチンパッチを使用する際には、かゆみやかぶれを防ぐために毎日貼る場所を変えるようご指導ください ニコチンパッチの副作用と対処法 ○かゆみ、かぶれ:毎日貼る場所を変えます。かぶれが出た場合には very strongクラスのステロイド軟膏を短期間使用します。 ○不眠:ニコチンの覚醒作用によって発生することがあります。 不眠がみられたら、24時間貼付を中止し、寝る3時間程度前に はがすように指導します。 ○嘔気・嘔吐:ニコチン過剰摂取によって起こることがあります。 嘔気・嘔吐が発生した場合、すぐにニコチンパッチをはがすように 指導します。次回の使用は小さいサイズに変更します。
ニコチンガムは口腔粘膜からニコチンを吸収することで禁煙による離脱症状を軽減します ニコチンガムの特徴 ○短時間作用型のガムタイプのニコチン製剤 ○口腔粘膜からニコチンを吸収し離脱症状を軽減 ○即効性があり、急な喫煙欲求に対応できる ○入れ歯の方や接客業の方には使いにくい場合がある 薬局・薬店で購入
ニコチンガムのかみ方には特徴があります ニコチンガムの使用方法 ①ピリッとした味を感じる ②頬と歯茎の間にしば までゆっくりと15回程 までゆっくりと15回程 かむ ②頬と歯茎の間にしば らく置く(約1分) ③30~60分繰り返す ④紙などに包んで捨てる
ニコチンガムは、できるだけ唾液を飲み込まずにかむようにご指導ください ニコチンガムの使用上の注意 ○唾液を飲み込むとニコチンが胃に入り、胃が荒れる原因となりま す。 できるだけ唾液は吐き出すように指導します。 ○口腔内が酸性になるとニコチンが吸収できません。 炭酸飲料やコーヒーなどを飲んだあとは、必ず口をゆすいでから かむように指導します。 ○心筋梗塞直後や不安定狭心症の方、妊産婦などは使用できません。
禁煙補助薬の使用によって禁煙効果は高まります チャンピックスおよびニコチン代替療法の禁煙効果 3.1 オッズ比 1.9 1.5 1.0
“軽いタバコ”だからといって、 喫煙による害は変わりません タバコの空気穴(“軽いタバコ”ほど空気穴が多い) 吸うときには、 指や唇で ふさがってしまう 吸い口側 空気穴 タール1mg ニコチン0.1mg タール3mg ニコチン0.3mg タール6mg ニコチン0.5mg タール8mg ニコチン0.7mg タール 10mg ニコチン0.8mg
禁煙治療には健康保険等が適用できます。 P 禁煙治療を行っている旨を保険医療機関内の見やすい場所に掲示していること。 厚生労働省保険局医療課長通知 特掲診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて 保医発0305第2号(平成26年3月5日) [L20140327159] 禁煙治療を行っている旨を保険医療機関内の見やすい場所に掲示していること。 禁煙治療の経験を有する医師が1名以上勤務していること。 なお、当該医師の診療科は問わないものであること。 禁煙治療に係る専任の看護師又は准看護師を 1名以上配置していること。 禁煙治療を行うための呼気一酸化炭素濃度測定器を備えていること。 保険医療機関の敷地内が禁煙であること。なお、保険医療機関が建造物の一部分を用いて開設されている場合は、当該保険医療機関の保有又は借用している部分が禁煙であること。 ニコチン依存症管理料を算定した患者のうち、喫煙を止めたものの割合等を、別添2の様式8の2を用いて、地方厚生(支)局長に報告していること。 P 禁煙治療に保険が適用できるようになりました。 こちらに挙げた施設基準を満たした上で地方厚生(支)局長あてに届出をすれば、保険診療下で(ニコチン依存症管理料を算定して)禁煙治療を行うことができます。 施設基準を満たすことは非常に難しいと思われている先生も多いようですが、2つめの 『禁煙治療の経験を有する医師』 とは、禁煙補助薬などを使用した禁煙治療の経験があればよく、特定の資格は不要で診療科も問いません。3つめの 『専任の看護師または准看護師』 とは「専従」ではなく「専任」であり、他の業務を兼ねることができます。 (参考資料)田中善紹:治療 88(10):2465, 2006 また、保険診療で禁煙治療を始めるには、呼気一酸化炭素濃度測定器を備える必要があります。測定器の価格は約9~16万円前後です。9万円の測定器を購入した場合、禁煙補助薬と処方料を考慮しなくても、診察料とニコチン依存症管理料だけで、6人の禁煙治療を完了することで採算がとれることになります。 17,240円×6人=103,440円 17,240円×9人=155,160円 ●ニコチン依存症管理料算定のための施設基準
下記の要件を満たす患者さんは、 ニコチン依存症管理料を算定できます。 P ニコチン依存症管理料は、入院中の患者以外の患者に対し、「禁煙治療のための標準手順書」(日本循環器学会、日本肺癌学会、日本癌学会及び日本呼吸器学会の承認を得たものに限る。)に沿って、初回の当該管理料を算定した日から起算して12週間にわたり計5回の禁煙治療を行った場合に算定する。 ニコチン依存症管理料の算定対象となる患者は、次の全てに該当するものであって、医師がニコチン依存症の管理が必要であると認めたものであること。 ア 「禁煙治療のための標準手順書」に記載されているニコチン依存症に係るスクリーニングテスト(TDS)で、ニコチン依存症と診断されたものであること。 イ 1日の喫煙本数に喫煙年数を乗じて得た数が200以上であるものであること。 ウ 直ちに禁煙することを希望している患者であって、「禁煙治療のための標準手順書」に則った禁煙治療について説明を受け、当該治療を受けることを文書により同意しているものであること。 ニコチン依存症管理料は、初回算定日より起算して1年を超えた日からでなければ、再度算定することはできない。 治療管理の要点を診療録に記載する。 P P P 保険診療の対象となる患者様は以下の要件をすべて満たす必要があります。 禁煙治療を保険で受けることができる患者様の要件をご説明します。 1つ目の要件「ニコチン依存症と診断された者であること」ですが、TDSという質問票で合計5点以上ならばニコチン依存症と診断します。 このほか、1日の喫煙本数と喫煙年数を乗じたブリンクマン指数が200以上で、直ちに禁煙を希望し禁煙治療プログラムへの参加について文書により同意していれば、ニコチン依存症管理料の算定対象となり、患者様は保険で禁煙治療を受けることができます。 ●ニコチン依存症管理料の算定要件1) ※入院中の患者さんは、ニコチン依存症管理料を算定できません。 ただし、薬剤料のみ算定できる場合がありますのでご注意ください。2)
TDSにより、ニコチン依存症は 容易に診断できます。 はい (1点) いいえ (0点) 1.自分が吸うつもりよりも、ずっと多くタバコを吸ってしまうことがありましたか。 2.禁煙や本数を減らそうと試みて、できなかったことがありましたか。 3.禁煙したり本数を減らそうとしたときに、タバコがほしくてほしくてたまらなくなることが ありましたか。 4.禁煙したり本数を減らしたときに、次のどれかがありましたか。 (イライラ、神経質、落ちつかない、集中しにくい、ゆううつ、頭痛、眠気、胃のむかつき、脈が遅い、手のふるえ、食欲または体重増加) 5.問4でうかがった症状を消すために、またタバコを吸い始めることがありましたか。 6.重い病気にかかったときに、タバコはよくないとわかっているのに吸うことがありましたか。 7.タバコのために自分に健康問題が起きているとわかっていても、吸うことがありましたか。 8.タバコのために自分に精神的問題(注)が起きているとわかっていても、吸うことがありましたか。 9.自分はタバコに依存していると感じることがありましたか。 10.タバコが吸えないような仕事やつきあいを避けることが何度かありましたか。 TDSにより、ニコチン依存症は容易に診断できます。 こちらがニコチン依存症の診断に使用されるTDSという質問票です。こちらの質問に「はい」または「いいえ」でお答えいただき、合計点数が5点以上ならばニコチン依存症と診断します。 (注)禁煙や本数を減らしたときに出現する離脱症状(いわゆる禁断症状)ではなく、喫煙することによって神経質になったり、不安や抑うつなどの症状が出現している状態。 「はい」(1点)、「いいえ」(0点)で回答を求める。 「該当しない」場合、(問4で、禁煙したり本数を減らそうとしたことがない等)には0点を与える。 判定方法:合計点が5点以上の場合、ICD-10診断によるタバコ依存症である可能性が高い(約80%) スクリーニング精度等:感度=ICD-10タバコ依存症の95%が5点以上を示す。特異度=ICD-10タバコ依存症でない喫煙者の 81%が4点以下を示す。得点が高い者ほど禁煙成功の確率が低い傾向にある。 Kawakami, N. et al.:Addict Behav 24(2):155, 1999 [L20070921041]より作図
禁煙治療は、12週間に 5回の診療を行います。 2 4 8 12 禁煙開始日 初回診察 再診① 再診② 再診③ 再診④ ●禁煙治療のスケジュール 週 2 週後 4 週後 8 週後 12 週後 初回診察 再診① 再診② 再診③ 再診④ 禁煙治療は、12週間に5回の診療を行います。 保険による標準的な禁煙治療プログラムは、12週間に渡り計5回の診療を行います。 初回診察で患者と話し合って禁煙開始日を決定します。 初回診察から2週間後、4 週間後、8週間後、12週間後の計4 回、禁煙の実行・継続のための治療を行います。 対象者のスクリーニング 禁煙治療の開始 禁煙継続のための フォローアップ 日本循環器学会、日本肺癌学会、日本癌学会、日本呼吸器学会:禁煙治療のための標準手順書 第6版 : 2014 [L20140807011]より作図
禁煙日記を使用した 禁煙外来の紹介 医療法人 成心会 ふじわら医院 森行 真奈美 禁煙日記 日本禁煙科学会 禁煙日記を使用した 禁煙外来の紹介 禁煙日記 日本禁煙科学会 http://www.jascs.jp/ 医療法人 成心会 ふじわら医院 森行 真奈美
当院での禁煙外来の流れ ・12週間で5~8回の受診
チャンピックス ニコチネル
初回の診察ですること 問診表の記入 医師の診察 検査(肺機能検査、胸部レントゲン、<胸部CT>) 禁煙薬剤の選択 禁煙指導、問診
保険適応になるかどうか ブリクマン指数が200点以上 TDS(ニコチン依存症テスト)が5点以上 1ヵ月以内に禁煙を始めたいと思っていること 禁煙治療を受けることに文章で同意していること
保険適応になるかどうか ブリクマン指数が200点以上 TDS(ニコチン依存症テスト)が5点以上 1ヵ月以内に禁煙を始めたいと思っていること 禁煙治療を受けることに文章で同意していること
診察券と同じ 大きさです
毎日の禁煙日記の記入 ・1ページに4週間分の記入欄 ・薬の服薬の有無 ・本数、 感想など体調の変化を記入
禁煙スタート
初回指導の主な内容 ニコチン管理・離脱症状の説明 呼気CO濃度の説明 禁煙のメリットと必要性 禁煙開始日の設定 保険診療の流れ 問診 吸いたい気持ちの対処法 禁煙日記の記入
2回目以降の診察ですること 禁煙達成の確認 呼気CO濃度の測定 禁煙日記記入の確認 医師の診察
2回目以降の指導内容 □成功者への賞賛 □失敗者への声掛け ・薬剤使用状況の確認 ・副作用、離脱症状の確認 ・禁煙開始後の問題点の抽出と解決策の話し合い
禁煙1ヵ月目
禁煙2ヶ月目
禁煙3ヵ月目
その他 禁煙の効果 体重管理 禁煙に失敗したときの対処法 保険診療の終了日を明確に伝える
最終日の診察ですること 禁煙達成の確認 治療完了証授与 自信の評価 禁煙治療完了に対する賞賛
修了証
まとめ 問診から禁煙導入まで、禁煙日記1冊でスムーズに行う ことができる 患者様が禁煙時期に適した情報を得ることができる 記入してもらうことによって、来院までの禁煙の様子が 分かる