流行性脳炎 (Enzootic encephalitis)

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流行性脳炎 (Enzootic encephalitis) 家畜伝染病: 牛、水牛、しか、馬、めん羊、山羊、豚、いのしし。  法第二条に掲げる流行性脳炎とは、日本脳炎、西部馬脳炎、ベネズエラ馬脳炎等脳炎を起こすアルボウイルスによる感染症をいう。  現在、我が国で発生をみているのは日本脳炎のみである。日本脳炎の主な被害は、馬における発症時の死亡及び予後不良並びに繁殖豚における死流産、無精子症等の発現にあることから、馬及び繁殖豚を中心とした発生予察措置の徹底に重点を置いて防疫対策を講ずる必要がある。 家畜防疫対策要綱 病原体:  さまざまなウイルスが原因となる。 フラビウイルス科フラビウイルス属 ・ 日本脳炎ウイルス ・ ウエストナイルウイルス ・ クンジンウイルス ・ マレー渓谷脳炎ウイルス ・ セントルイス脳炎ウイルス ・・・・・・・・・ トガウイルス科アルファウイルス属 ・ 東部馬脳炎ウイルス ・ 西部馬脳炎ウイルス ・ ベネズエラ馬脳炎ウイルス ・・・・・・・・・ 海外病: 海外で発生がみられる家畜の伝染性疾病

アルボウィルスには、これらの脳炎の外に、 フラビウイルス属ウイルスの世界的分布 (CDC) <ダニ媒介性脳炎> ロシア春夏脳炎 中央ヨーロッパ脳炎 跳躍病 ポワッサン脳炎 Japanese encephalitis West Nile and Japanese encephalitis Japanese and Murray Valley encephalitis Murray Valley and Kunjin encephalitis California serogroup virus disease(ブニヤウィルス) Eastern equine encephalitis(トガウイルス) Western equine encephalitis アルボウィルスには、これらの脳炎の外に、 出血熱を主徴とする重要疾病が多数ある。 St. Louis encephalitis Rocio and St. Louis(Brazil) West Nile encephalitis フラビウイルス属ウイルスの世界的分布 (CDC)

フラビウイルス属 豚腎培養細胞で増殖した 日本脳炎ウイルス粒子 デング(DEN) ウエストナイル(WN) クンジン(KUN) マレー渓谷(MVE) 日本脳炎(JE) セントルイス脳炎(SLE) 黄熱(YF) ダニ媒介性脳炎(TBE)   キャサヌル森林病   オムスク出血熱 豚腎培養細胞で増殖した 日本脳炎ウイルス粒子 東京都神経科学総合研究所

ウイルスの感染環: 矢印は小型アカイエカの吸血による伝播 日本脳炎 ウイルスの感染環: 矢印は小型アカイエカの吸血による伝播 ブタ ヒト 渡り鳥? 1960年代に激減にした理由 増幅動物 1.予防接種法に基づくワクチン接種が浸透した。 2.農地整理が行われ、コガタアカイエカが発生する水田地帯が様変わりした。 3.有畜農業から養豚業が専業化、大規模化し、水田地帯を離れ、山間部に移動した。 6000 5000 4000 3000 2000 1000 1950 55 60 70 75 80 65 年間患者数 養豚農家数と一戸当り飼養頭数の推移 300 600 900 千戸 頭/戸  日本脳炎患者数の推移

10万人当りの罹患率はピーク時には 6.2 に達しており、致命率は 34.6~91.2%であった。 1947 1950 1955 1960 1965 1969  10万人当りの罹患率はピーク時には 6.2 に達しており、致命率は 34.6~91.2%であった。

 ヒトが感染しても日本脳炎を発病するのは100~1000人に一人程度であり、大多数は無症状に終わる。ヒトの血中に検出されるウイルスは、一過性であり量的にも極めて少なく、自然界では終末宿主である。潜伏期は6~16日間。死亡率は20~40%だが、幼少児や老人での危険は大きい。精神神経学的後遺症は生存者の45~70%に残り、小児では特に重度の障害を残すことが多い。  数日間の高い発熱(38~40℃以上)、頭痛、悪心、嘔吐、眩暈などで発病する。引き続き、項部硬直、光線過敏、種々の段階の意識障害とともに、神経系障害を示唆する症状、すなわち筋強直、脳神経症状、不随意運動、振戦、麻痺、病的反射などが現れる。感覚障害は稀である。

コガタアカイエカ(Culex tritaeniorhynchus)は、約250個の卵からなる舟型の卵塊を産卵する。卵から11~14日間で成虫となるが、4月から出現し、7~8月が発生のピークである。コガタアカイエカの移動距離は一般に10キロ程度とされている。 ボウフラ  コガタアカイエカは、通常水田、灌漑溝、湿地、河川敷、池沼などを産卵場所に選ぶ。アカイエカは雨水マス、側溝などの水が停滞している場所、ヒトスジシマカは、植木鉢の水受け皿や古タイヤなど小さなたまり水で発生する。 サナギ (オニボウフラ) 脱皮殻

増幅動物  ブタは、特にコガタアカイエカの吸血源として好まれること、肥育期間が短いために毎年感受性のある個体が多数供給されること、血液中のウイルス量が多いこと等から、一番の増幅動物となっている。 感受性動物 哺乳類: ヒト、ウシ、ウマ、ヤギ、イヌ、イノシシ、キツネ、マウスなど 近年の報告: 野生イノシシの8割強、特定外来生物のアライグマも7割近くが日本脳炎ウイルスに対する抗体を保有している。 鳥類: サギ、シチメンチョウ、ツル、ガンなど その他: トカゲなどのは虫類 ウイルスの越冬 1. 蚊の越冬 2. 渡り鳥の持込み 3. 冬眠動物(コウモリ、ヘビ・・・)  日本脳炎ウイルスがコガタアカイエカとトーゴーヤブカの卵を介して子孫の蚊に伝達される実験結果が示されているが、その様な蚊におけるウイルスの介卵伝達が野外においても実際に起っているかはどうかはまだ実証されていない。ブタ等の持続性感染は知られておらず、翌年の流行の端緒となるのは? 動薬研究 №33 1983

福島 茨城 群馬 千葉 神奈川 石川 長野 愛知 奈良 京都 兵庫 島根 広島 徳島 愛媛 福岡 長崎 大分 鹿児島 宮城 栃木 埼玉 東京 富山 福井 静岡 岐阜 滋賀 大阪 鳥取 岡山 山口 香川 高知 佐賀 熊本 宮崎 7/1 8/1 9/1 10/1  患者発生は蚊が活動する時期に限られる。食肉センターの肥育豚から採血して中和抗体を調べ、陽性率が50%に達した日を「50%陽転日」とすると、患者発生の直前に当ることから、流行の注意報を出している。また、蚊の発生時期が緯度によって異なるため、南から北に流行が進む(北進現象)。 丸:50%陽転日、線:患者発生期間(1968年)

感染症情報センター:日本脳炎 Q & A

近年の発生状況 3 4 9 2008 2009 2010 2011 中四国・九州以外 全国 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 5 7 8 1 10 1 2 アジア地域で毎年5万人が罹患しており、その大半が10歳未満の子供で、1万人が死亡し、1万5000人が重大な精神神経学的後遺症に苦しんでいる。近年は、過去に流行がなかった地域でも発生しており、アジアにおけるウイルス性脳炎の最も重要な病型となっている。感染者の250~500人に一人しか発症しないが、治療法がなく、ワクチンによる予防が唯一の手段である。ワクチンの普及によって、中国では10万人当りの罹患率が1990年の2.5から2004年の0.5へと減少した。 WHO

1967年~1976年 小児及び高齢者を含む成人に積極的にワクチン接種 1976年 臨時の予防接種に指定 1994年 定期予防接種に指定  これはマウスの脳内接種によって増幅して得たウイルスを用いた初期ワクチンの成績である。ワクチンによって「100%安全」とはならないが、発病率が4分の1まで減っている。現在のワクチンは、副作用の脳炎を防ぐために培養細胞で増やしたウイルスを使っており、予防効果も98%に達しているのだが・・・・・。 1954年 不活化ワクチンの勧奨接種が開始 1965年 高度精製ワクチンが使用されている。 1967年~1976年 小児及び高齢者を含む成人に積極的にワクチン接種 1976年 臨時の予防接種に指定 1994年 定期予防接種に指定 2005年 日本脳炎ワクチン接種の積極的勧奨の差し控えの通知 WHO

1期3回 + 2期

2005年5月30日の、厚生労働省による日本脳炎ワクチン積極的勧奨の差し控え以降、3~4歳での日本脳炎ワクチンの接種率が激減した。接種が不完全

その結果、ヒトの日本脳炎に対する抗体保有状況は、0~4歳群でこれまでにない低い割合になっている。防御に必要な抗体価40倍以上(青色)が低い。

抗体保有率が、年毎に低くなってきた 乾燥細胞培養日本脳炎ワクチン開発に伴い、2010年から積極的勧奨を再開している。

ブタの飼育施設等における防蚊対策について 厚生労働省健康局結核感染症課 平成19年8月20日 1 ブタが蚊にさされない環境作りについて  豚舎において、媒介蚊(コガタアカイエカ)との接触を避けるために戸内の豚舎での飼育に努めること。 2 豚舎内の蚊の駆除について  豚舎内の蚊を駆除するために、豚舎内の壁面や防鳥ネット等への定期的な薬剤(ピレスロイド系)の散布等に努めること。 ・ コガタアカイエカは、小さな水たまりではなく、水田や沼地に生息します。 ・ 蚊は、吸血すると、その後壁面に留まり休息する性質があるため、豚舎内の壁面や防鳥ネット等への薬剤の散布が効果的です。 ・ 有機リン系の殺虫剤では、コガタアカイエカに耐性が生じることが認められているため、ピレスロイド系の薬剤を使用する必要があります。 オバタリアンは野外放牧を好む! オバタリアンを説得してワクチン接種率を高めるのが本務だろうが! 農水省の領分にまでイチャモン付けるな!?

ブタの日本脳炎発生状況 感染と発病は別 ヒト感染発症指数 < 0.2%  2000、2004~2006、2008年に北海道で陽性となった = 温暖化?  1992、1993年に北海道家保が陽性報告をしており温暖化とは関係ないかも知れないが、豚の発症例が増加傾向を示唆しており、監視が必要。 年 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 戸数 2 1 4 3 6 7 頭数 6 5 4 1 3 11 26 2003年にはウマ1頭の届出があった 感染症流行予測調査 感染と発病は別 ヒト感染発症指数 < 0.2%

経産豚は免疫を獲得しているので異常産はほとんど発生しない。春から夏にかけて種付けを予定している初産豚を対象にワクチンを接種する。 母豚は感染しても妊娠中は無症状なので、多くの場合、異常産の発生により初めて本症の発生に気付く。異常産は胎子ごとに感染時期が異なるため、ミイラ・黒子・白子などの死産胎子を娩出するほか、娩出直後から震え、痙攣、旋回などの神経症状を示して死亡する子豚が混在する。妊娠早期に感染すると、初期胚や感染胎子は吸収されるため、産子数の減少や不妊の原因となる。 経産豚は免疫を獲得しているので異常産はほとんど発生しない。春から夏にかけて種付けを予定している初産豚を対象にワクチンを接種する。 雄豚は精巣が腫大し、交尾欲減退、精子数の減少などにより不妊症となることがある。 ミイラ胎子・黒子・白子の娩出 子宮内でミイラ化した黒子

潜伏期間は2~3週間。発熱・高熱繋留(39.5-40.5℃) ウマの日本脳炎 良性型 軽麻痺型 軽興奮型 麻痺型 興奮型 麻痺斃死型 興奮斃死型 潜伏期間は2~3週間。発熱・高熱繋留(39.5-40.5℃) 1~2日間 3~4日間 5日以上 沈鬱 興奮 麻痺 痙攣 重度麻痺 興奮 沈鬱 起立不能 麻痺 食欲不振 解熱 沈鬱 麻痺 起立不能 大発汗 沈鬱 高熱再発 食欲回復 削痩 狂騒 軽快 後遺症残る 回復 斃死

下唇麻痺 左側顔面神経の麻痺により 左側の咀嚼ができない 脳炎発症率はせいぜい0.3%程度で、多くは発熱程度で回復するが、いったん脳炎を発症した馬の致死率は40%程度と高率。発症例では、食欲不振または廃絶、沈うつ、興奮、麻痺、眼瞼反射を欠くなどの視覚障害、突進・旋回運動などの運動障害も観察される。重症例では起立不能になり遊泳運動を示して死亡する。

脳炎を発病し、起立できず、四肢を激しく動かしている(遊泳運動) 馬房内でもがき 苦しんでいる

① 脳,脊髄における充出血、神経膠細胞のび慢性あるいは結節性、増殖囲管性細胞浸潤。 病理組織学的検査 ① 脳,脊髄における充出血、神経膠細胞のび慢性あるいは結節性、増殖囲管性細胞浸潤。 ② 非化膿性脳脊髄病変は灰白質に主座。神経細胞の変性、壊死。 脳の血管周囲にみられる 囲管性細胞浸潤 剖 検 ① 脳、脊髄の軟膜、脈絡叢の浮腫、血管の拡張、充血、髄液の増量 ② 脳軟膜下の微細出血 ③ 脳実質の充出血、水腫 脳軟膜の充うっ血

日本脳炎ワクチン 主成分 : 子牛腎細胞培養弱毒日本脳炎ウイルスS ̄株 対象動物 : 豚 主成分 : 子牛腎細胞培養弱毒日本脳炎ウイルスS ̄株 対象動物 : 豚 効能効果: 豚の日本脳炎の予防及び日本脳炎ウイルスによる死産の予防 剤型区分: (動生剤)凍結乾燥 生 用法用量: 溶解用液を加えて溶解し、その1mLを皮下注射。1カ月間隔で2回注射すると更に良好な免疫が得られる。 名称 :  アジュバント加不活化ワクチン 主成分: 鶏胚細胞培養日本脳炎ウイルス中山株薬検系 対象動物: 馬、豚 効能効果: 馬の日本脳炎の予防、豚の日本脳炎ウイルス感染による死産の予防 剤型区分: (動生剤)液状不活化 用法用量: A.繁殖豚に使用する場合 (1)日本脳炎生ワクチンとの併用注射法 第1回(生ワクチン、 1ドース、皮下注射) 第2回(不活化ワクチン、 2mL 、皮下注射)  第1回と第2回の注射間隔は約1か月とする。 (2)前年度にワクチンを注射した豚では2mLを皮下注射する。 B.馬に使用する場合 (1)2回注射法: 各1mLを1週間間隔で皮下注射 (2)1回注射法  3mL 皮下注射 主成分 : ハムスター腎細胞培養弱毒日本脳炎弱毒ウイルス 対象動物 : 豚 効能効果: 豚の日本脳炎の予防及び日本脳炎ウイルスによる死産の予防 剤型区分: (動生剤)凍結乾燥 生 用法用量: 溶解用液を加えて溶解し、その1mLを豚の皮下に注射する。4か月未満の子豚には1か月間隔で2回皮下注射することが望ましい。

2005 2006 2007 2008 日本 中国 韓国   2006 1-6 2007 7-12     アジア各国で発生しているはずだが「情報なし」ということは、インフルエンザで手が回らないこと、および、獣医療の整備が遅れていることを物語っている。 2006 712 2008 1-6 情報なし これまで報告なし この期間に報告なし 臨床例あり 数箇所で発生