秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然として知られていないもの(不2Ⅳ) 3.6 営業秘密 秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然として知られていないもの(不2Ⅳ)
3.6.1 ノウハウ…営業秘密の代表的存在 米国を中心にして頻繁に使われており、契約文書にも使用されるが、ノウハウという言葉には、国際的にも確定した定義はない。 ノウハウの概念に、秘密性は絶対的・本質的・不可欠のものではない。 外国ではノウハウという言葉より、営業秘密(Trade Secret)の方が一般的である。 BILPIの模範法の定義「技術的ノウハウとは、製造工程ならびに工業技術の使用及び応用に関する知識を意味する」
3.6.2 技術上の営業秘密 独占権ではなく、事実上の財産。 特許を取るより他人に技術を知られることの不利を避ける。 特許の取れる技術ではないが、情報を秘密にしておく方が競争上有利である。 特許取引の際、その製造方法や操作方法に対する技術的秘密情報の移転を加えることがある。 技術的秘密情報だけを買ったり、ライセンスを受けたりすることもある。
3.6.3 技術上の営業秘密の保護 ノウハウが漏れて、他企業に技術を真似られても実施を止めるよう文句はいえない(昭和41年9月東京高裁) GATTウルグアイ・ラウンドの交渉で、不正競争防止法に営業秘密の保護が補完された。 技術的営業秘密を盗む行為は民法上の不法行為が成立(工場への無断進入(住居侵入罪)、図面や複写紙の盗み(窃盗罪、業務上横領罪)、職務への違反(背任罪))するとされているとが、無形の技術情報を盗むこと自体は、現行法上、罪にはならない。
3.6.4 不正競争防止法による営業秘密の保護 情報にアクセスする者に秘密であることを示し、アクセスできる者を制限している管理された秘密で、かつ技術的ノウハウなどの生産方法の情報、秘密の顧客名簿、仕入先名簿、販売マニュアルなどの販売方法その他の事業活動に有用な技術上または営業上の情報で、一般に情報が入手できない公然と知られていない情報(2Ⅳ)。
3.6.5 営業秘密に関する不正競争類型 (1) 不正取得行為 (2) 不正開示行為 (3) 秘密の転得行為 (4) 事後的悪意者 (5) 従業員、下請けなどが、元来は正当に得た秘密の信義則違反 (6) 不正開示者からの転得 (7) 不正開示行為に係る事後的悪意
不正競争類型の意味(1) (1) 不正取得行為 窃盗、詐欺、脅迫その他の不正の手段により営業秘密を取得する行為 (2) 不正開示行為 不正取得行為により取得した営業秘密の使用・開示行為(開示を受ける者に秘密を漏らさないことを条件として、それが守れていても開示になる)
不正競争類型の意味(2) (3) 秘密の転得行為 不正取得行為の介在を知りながら(もしくは、重大な過失により知らないで)営業秘密を取得・使用・開示する行為 (4) 事後的悪意者 取得した後、その営業秘密について不正取得行為が介在したことを知りながら(もしくは……)営業秘密を使用・開示する行為
不正競争類型の意味(3) (5)従業員、下請けなどが、元来は正当に得 た秘密の信義則違反 営業秘密を保有する事業者から、営業秘密を示された場合、不正競争その他の不正の利用目的、または、保存者に損害を加える目的で営業秘密を使用・開示する行為。
不正競争類型の意味(4) (6) 不正開示者からの転得 営業秘密の不正開示行為であること、もしくは不正開示の介在を知って(もしくは……)営業秘密を取得・使用・開示する行為 (7) 不正開示行為に係る事後的悪意 取得後に秘密不正開示行為の存在、もしくは秘密の不正開示の介在を知って(もしくは……)取得した秘密を使用・開示する行為
3.6.6 営業秘密侵害の救済 営業秘密侵害によって営業上の利益を侵害され、または侵害されるおそれがある者 営業秘密侵害の停止、あるいは秘密設計図の実施の停止など、危険予防等を請求することができる。 差止請求の際、秘密を入力したテープなど侵害行為組成物、秘密ノウハウを用いて製造した製品など侵害行為による生成物の破棄、秘密ノウハウを実施するための製造ラインなど侵害行為に供した設備の除却など侵害の停止・予防に必要な行為を請求することができる。
営業秘密侵害があった場合 利益侵害者には損害賠償責任が生ずる。 裁判所は請求により、損害賠償を行う・行わないに関わらず、謝罪広告など被害者の信用回復に必要な処置を命ずることができる。
営業秘密侵害の時効 営業秘密の侵害の停止または予防請求権は、侵害法益の保有者が侵害事実及び行為者を知ったときから3年で時効消滅。 行為開始から除斥期間10年を経過したときも同時に消滅する。 侵害行為が、権利消滅後も継続している場合、その営業秘密について除斥期間を超えて損害賠償請求はできない。
善意・無重過失の第三者保護 ノウハウ譲渡・ライセンス取引などによって営業秘密を取得したものが、取得時に営業秘密について不正開示行為・不正取得行為の存在、不正開示行為の介在などがあることを知らなかった場合、かつその知らないことについて重大な過失がない場合に限る。 その取引によって取得した約定の使用期間・目的の範囲内で、その営業秘密を使用し、または開示する行為については不正競争防止法は適用されない。