~呼吸療法機器およびME機器使用(管理) におけるヒヤリ・ハット~ 東北大学医学部附属病院 集中治療部 開米 秀樹

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~呼吸療法機器およびME機器使用(管理) におけるヒヤリ・ハット~ 東北大学医学部附属病院 集中治療部 開米 秀樹 【第18回宮城県臨床工学技士会勉強会】 ~呼吸療法機器およびME機器使用(管理)             におけるヒヤリ・ハット~ 東北大学医学部附属病院 集中治療部 開米  秀樹

東北大学 医学部附属病院 [施設概要] 診療科数 42科※1 病床数 1296床※1 入院患者数 (1日平均) 1102名※1 外来患者数 MRI装置棟 西病棟 新西病棟2F MEセンター RI病棟 新西病棟 診療科数 42科※1 病床数 1296床※1 入院患者数 (1日平均) 1102名※1 外来患者数 1958名※1 職員数 1218名※2 新南病棟 中央診療棟(西) 南病棟 RI検査棟 中央診療棟(南) はじめに、当院の施設概略を説明します。 当院は東北地区の広いエリアをその診療圏とし、内科系10科を含めた42診療科、一般病棟、精神病棟、感染病棟の合計1,296床を有する総合病院であります。 平成13年度の一日入院患者数、及び外来患者数、また平成14年度の職員数はここに示してあるとおりです。 また、新西病棟2階にはMEセンターが設置されております。 外来診療棟(B) 医学部3号館 管理棟(B) ※1:平成13年度 ※2:平成14年4月1日現在 医学部2号館 外来診療棟(A)

当院MEの業務内容 配置先 人員 業務内容 手術部 4名 各種ME機器の保守管理 人工心肺・各種補助循環装置の操作 ○ 集中治療部 3名 ローテーション 手術部 4名 各種ME機器の保守管理 人工心肺・各種補助循環装置の操作 ○ 集中治療部 3名 人工呼吸器及び輸液・シリンジポンプの保守・管理 各種補助循環装置の操作 高気圧酸素治療装置の操作・保守管理 MEセンター 1名 人工呼吸器及び輸液・シリンジポンプなどの中央管理 血液浄化部 透析業務 × 当院MEの配置および業務内容としましては 手術部に4名、各種ME機器の保守管理と人工心肺などの操作 集中治療部に3名、人工呼吸器や重症病棟内の輸液・シリンジポンプの保守管理、および高圧酸素治療装置の操作保守管理 MEセンターに1名、人工呼吸器および輸液・シリンジポンプの中央管理 血液浄化部に3名、透析業務 となっております。 なお、各部署のスタッフのローテーションは現在、血液浄化部を除いて行っております。

【事例】 人工呼吸器が突然停止し、 患者が無呼吸・チアノーゼ状態 になるまで放置された。  【事例】 人工呼吸器が突然停止し、       患者が無呼吸・チアノーゼ状態      になるまで放置された。 発生日時 2002年11月24日(日)14:30頃 発生場所 南病棟2階 結核・感染病棟 隔離個室 当事者 病棟看護師 呼吸器 使用患者 60歳代男性 [疾患]慢性呼吸不全、肺結核 では、当院で先日起きました 「人工呼吸器が突然停止し、患者が無呼吸・チアノーゼ状態になるまで放置された。」 という事例について報告させていただきます。 発生日時は 2002年11月24日(日)14:30頃 発生場所は 南病棟2階 結核・感染病棟 隔離個室 当事者は 病棟看護師 呼吸器使用患者 60歳代男性で、疾患は慢性呼吸不全、肺結核 であります。

人工呼吸器停止時の状況・経過 呼吸器停止時の状況・経過としましては、 病棟看護師が患者様の巡回を行った後、 時間 ナースステーション (南病棟1階) 病室(南病棟2階個室) MEセンター Pt 人工呼吸器 14:20~14:29 14:30 テレメータにてSpO240%台HR48を確認。 直ぐに訪室。(Ns) ベル番MEに連絡。状況説明。来院依頼。 (Ns) また、この時MEは代替器手配の指示を出した。 日勤Nsの巡回。Pt・呼吸器とも特に異常なし。 代替器の搬送。 (Ns) チアノーゼ・無呼吸。 アンビューバックにて人工呼吸開始。 (Ns ・Dr) 容態安定。 呼吸器停止。 「!!!内部バッテリ放電」メッセージ表示確認。 (Ns) 電源を投入し直すが、作動しなかった。再度投入し直したが変わらず。(Ns) MEセンターから代替器を手配。 (Ns) 代替器の電源プラグを故障器のそれと差し替え電源投入するも、同様の状態となる。(Ns) 呼吸器停止時の状況・経過としましては、 病棟看護師が患者様の巡回を行った後、 1階ナースステーションに戻りテレメーターを確認すると、SpO240%台HR=48に低下してました。 直ちに訪室してみると人工呼吸器が停止しており、患者はチアノーゼ・無呼吸状態を呈していました。 直ぐにアンビューバックによる手動換気を行うと共に人工呼吸器のスイッチを数回入れ直しましたが起動しなかったので、ベル番MEに点検依頼をしました。その後代替器を、故障した人工呼吸器と入れ替えてみましたが、やはり起動しませんでした。

しかし、この時電源を常用電源から取っている事に気付き、代替器を非常用電源に接続したところ正常に作動し始めました。 時間 ナースステーション (南病棟1階) 病室(南病棟2階個室) MEセンター Pt 人工呼吸器 15:00 (アンビューバックにて人工呼吸継続) 代替呼吸器にて人工呼吸開始。 (UPS設置作業中もアンビューバックにて人工呼吸) コンセントが一般電源である事に気付き、同室内にある非常用コンセントに差し替える。(Ns) 電源投入で代替呼吸器が正常に作動。 テスト肺にて動作確認。(Dr・Ns) (手術部ベル番ME到着) 状況確認。代替呼吸器の動作確認。(ME) (ICUベル番ME到着) 無停電電源装置(UPS)の手配・設置。 (ME) UPSの搬送。(ME) しかし、この時電源を常用電源から取っている事に気付き、代替器を非常用電源に接続したところ正常に作動し始めました。 病室に到着したMEもこの事を確認し、動作確認を行ったのち患者様に装着し、さらにUPSも追加設置しました。

当時の使用機器及び電源設備 室内の電源の種類 {参照}院内にある他の電源 ※他にエアコンなどの動力電源もある 常用 電源 停電すると 廊下 室内の電源の種類 ※他にエアコンなどの動力電源もある {参照}院内にある他の電源 前室 常用 電源 停電すると 電源供給停止 非常用 停電後1分間で復帰 テレメーター 病室 (個室) トイレ ×2 ×2 冷蔵庫 ×2 ×2 当時の病室内の人工呼吸器以外の使用機器としましては、 テレメータ、冷蔵庫、電子レンジ、空気清浄機およびエアコンが備えてありました。 呼吸器は常用電源系の電源タップから、患者ベッド足元の非常用電源につなぎ変えて作動し始めたとの事でした。 なお、病室内の電源の種類および仕様としましては 常用電源     停電すると電源の供給は停止 非常用電源   停電後1分間で復帰 の2種類が室内に設置されていました。 また、この個室には設置されていませんでしたが 院内にはCVCFもあり、これは蓄電池と発電機による無停電電源となっております。 電子レンジ ×2 ×2 空気 清浄機 CVCF (定電圧定周波電源) 蓄電池+発電機 の無停電電源 電源タップ 人工呼吸器

常用電源系統に何らかの電源供給障害(電圧低下など)が発生した可能性。 人工呼吸器停止の原因調査   事故当時、当院設備課においては、院内全体及び局所的な停電などは確認していない。   また、病室の常用系および非常用系電源のブレーカーも落ちていなかった。 要因(推測) 調査方法 常用電源系統に何らかの電源供給障害(電圧低下など)が発生した可能性。 ME・施設課で病室の電源設備調査実施。 電源高周波(ノイズ)が発生した可能性。 人工呼吸器自体の故障の可能性。 メーカーに点検依頼。 私たちは事故発生後、なぜ人工呼吸器が停止したかについて調査を行いました。 当時停電などは確認されておらず、病室の常用系および非常用系電源のブレーカーも落ちていませんでした。 そこで事故発生の要因として 常用電源系統に発生した電圧低下などの電源供給障害 電源高周波の発生 および 人工呼吸器自体の故障 を想定し、調査・点検を行いました。

調査・点検結果 1.電源調査結果 電源調査は 電源高周波 常用系電圧推移 非常系電圧推移 室内負荷増減時電圧推移 測定内容 負荷 測定 箇所 時間 測定結果 呼吸器, モニター 冷蔵庫 空気 清浄機 エアコン 電子 レンジ 電源 高周波 非常用 コンセント 常用コンセント 動力電源 非常用電源 分電盤 約40H ノイズは認められない 常用系 電圧推移 最低電圧 約95V 常用 コンセント(①) 左記① 約24H 約96V 非常系 非常用コンセント+UPS(②) 左記② 約101V前後で推移 室内負荷 増減時 約7M 最低電圧約92V (電子レンジ稼動時) 電源調査は 電源高周波 常用系電圧推移 非常系電圧推移 室内負荷増減時電圧推移 についておこない、測定条件・測定個所・測定時間は表に示すとおりです。 結果としましては、高周波ノイズは確認されず、また最低電圧は電子レンジを使用した場合の約92Vでした。

①安定した電源環境下で現象(突然の停止)は再現し なかった。 2.人工呼吸器(代替器) メーカー点検結果   ①安定した電源環境下で現象(突然の停止)は再現し  なかった。   ②動作保障電源電圧は90V以上であり、また10ms以  内の瞬停は許容する。ただし、ノイズの混入により  動作の継続に障害があると自己判断した場合、リ   セットによる自己復帰を行う。   ③今回の電源調査からは確認できないが、冷蔵庫は  長期間の使用において一過的な電源電圧低下の   要因になりうる。   ④部品劣化によりノイズ源となりうる液晶のバックライ  トを再発防止として交換した。 人工呼吸器の点検結果としましては、 ①安定した電源環境下で現象(突然の停止)は再現しなかった。 ②動作保障電源電圧は90V以上であり、また10ms以内の瞬停は許容する。  ただし、ノイズの混入により動作の継続に障害があると自己判断した場合、 リセットによる自己復帰を行う。 ③今回の電源調査からは確認できないが、冷蔵庫は長期間の使用において 一過的な電源電圧低下の要因になりうる。 ④部品劣化によりノイズ源となりうる液晶のバックライトを再発防止として交換した。 との事でした。

各調査・点検結果からの結論    人工呼吸器に常用電源を使用していた事は運用上問題であるが、事故当時の電源異常の有無は確認できず、その後の調査でも異常を特定できなかった。    また、人工呼吸器にも異常はみられず、突然停止した原因は不明であった。 各調査・点検結果からの結論としましては、 人工呼吸器に常用電源を使用していた事は運用上問題であるが、事故当時の電源異常の有無は確認できず、その後の調査でも異常を特定できませんでした。 また、人工呼吸器にも異常はみられず、突然停止した原因は不明でした。

再発防止策 本事例の再発防止策として、病棟側にはMEも在籍する医療安全推進室から、以下の事が通知された。   ①生命維持管理装置は非常用電源に単独で接続する。   ②電気容量など設備的に不明点がある場合は、MEなどの機器・  施設管理者に確認する。   ③非常用電源の仕様をふまえて、UPSを併用する。   ④各勤務帯での看護チェック項目に電源の確認も付け加える。   ⑤病室とナースステーションが離れているので、巡回やテレメー  タの監視を怠らないようにする。   ⑥非常用電源コンセントを患者ベッド頭側の壁面に設置する。 本事例の再発防止策として、病棟側にはMEも在籍する医療安全推進室から、以下の事が通知されました。 すなわち ①生命維持管理装置は非常用電源に単独で接続する。 ②電気容量など設備的に不明点がある場合は、MEなどの機器・施設管理者に確認する。 ③非常用電源の仕様をふまえて、UPSを併用する。 ④各勤務帯での看護チェック項目に電源の確認も付け加える。 ⑤病室とナースステーションが離れているので、巡回やテレメータの監視を怠らないようにする。 ⑥非常用電源コンセントを患者ベッド頭側の壁面に設置する。

まとめ    人工呼吸器が突然停止した原因を解明する為に、電源電圧調査や高周波調査、ならびに人工呼吸器のメーカー点検を行ったが、原因を特定する事は出来なかった。    しかし、病棟における運用について問題点があった事は事実であり、今後は適正な運用を行うよう指導した。また、ME側としても貸出時や定期的に行う点検等が必要と思われた。    ME機器の使用においては、故障した場合を常に想定し、対応システムを構築する事が重要であると改めて認識した。 以上、まとめとしましては 人工呼吸器が突然停止した原因を解明する為に、電源電圧調査や高周波調査、ならびに人工呼吸器のメーカー点検を行ったが、原因を特定する事は出来なかった。 しかし、病棟における運用について問題点があった事は事実であり、今後は適正な運用を行うよう指導した。 また、ME側としても貸出時や定期的に行う点検等が必要と思われた。 ME機器の使用においては、故障した場合を常に想定し、対応システムを構築する事が重要であると改めて認識した。