ゲルマニウム半導体テレスコープによる多核種同時ガンマ線イメージング

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ゲルマニウム半導体テレスコープによる多核種同時ガンマ線イメージング « 画像再構成の問題 » 本村信治 ・ GREI開発チーム 理化学研究所 加速器利用展開グループ 検出器ワークショップ 平成17年5月11日(水)

目的:マルチトレーサーの非破壊画像化を可能にする マルチトレーサー法 利点: 多種の元素の挙動を1回の実験で追跡できる。 (量的利点) 多種の元素の同一条件下でのデータが得られる。(質的利点) など... RIKEN Ring Cyclotron 135 MeV / nucleon 12C, 14N, 16O 金属標的 Ag, Au 照射 解剖 投与 Mn γ Co V 化学処理 医学・薬学・生物学・ 環境科学・化学などの さまざまな研究に応用 1991年以降、211報  (2004.04現在) Zn マルチトレーサー溶液 Sr Se Eu Cs Ge Fe 核破砕反応生成核種 Rb γ線計測 500 100 Counts Energy [keV] 101 102 103 104 105 106 1000 1500 2000 Au 由来マルチトレーサーのγ線スペクトル 従来の装置では撮像できないため、マルチトレーサーの非破壊的な画像化は行われてこなかった 多核種を同時に非破壊的に画像化できる装置を開発 マルチトレーサーの利点をさらに活用し、 応用範囲を拡大したい

Zn(亜鉛)による脳腫瘍の画像化 亜鉛の脳腫瘍に対する集積性  PETで使われるFDGよりも高コントラスト 非破壊的に画像化 脳腫瘍をより正確にかつ早期に発見することが可能になる A. Takeda et al., CANCER RESEARCH 61, 5065 (2001).

多核種同時γ線イメージング(GREI)装置 両面ストリップ電極型 Ge 検出器 前段でコンプトン散乱、後段で全吸収の事象を利用 Eg = E1 + E2  核種を識別 E1, E2 および相互作用点の位置  コンプトン散乱の運動学を 満たす円錐が定まる 多数の事象による円錐の情報  線源の分布を推定 Ge 検出器寸法 Front: 39mm x 39mm x 10mm Rear: 39mm x 39mm x 20mm 電極ストリップピッチ: 3 mm (13 strips on each side) Ge 検出器間距離: 60 mm

画像再構成のモデル 2段階のデータ処理 点線源 (1116 keV) のSBP画像 Step 1 Step 2 測定データ 単純逆投影(SBP)画像 γ線源分布画像 点線源 (1116 keV) のSBP画像 10 events 105 events SBP画像は、真の線源分布画像に「ボケ」を重畳して得られると考える。 SBP画像 線源分布画像 「ボケ」(PSF)

解析的な画像再構成 ⇒ ⇒ と仮定すると、フーリエ重畳積分定理が使え、 が成り立つ。ここで、 は空間周波数、 および はそれぞれ             と仮定すると、フーリエ重畳積分定理が使え、 が成り立つ。ここで、 は空間周波数、    および     はそれぞれ         および のフーリエ変換。 ⇒ ⇒ 離散化すると、   が対角化されたことになり、 実際には、統計ノイズを抑えるため、重み   をかけ、 SBP画像 線源分布画像 「ボケ」(PSF)

点線源のSBP画像のフーリエパワースペクトル Counts: Counts:

植物試料の多核種同時γ線イメージング 137Cs, 59Fe および 65Zn を投与したダイズの測定例 投与(水耕) 137Cs 59Fe GREI 装置で測定した γ線スペクトル 137Cs: 630 kBq 59Fe: 140 kBq 65Zn: 50 kBq GREI 装置で測定した RI 分布画像

ダイズに投与したトレーサーの解析的 3D 逆重畳画像 GREI 装置で一方位から測定するだけで 3D の画像を得ることができる Top view 137Cs, 59Fe および 65Zn を投与したダイズ Front view Side view 3D 線源分布画像 (137Cs)

動物試料の多核種同時γ線イメージング 65Zn, 59Fe および 88Yを投与した担癌マウスの測定例 C57BL mouse 65Zn Control 65Zn 59Fe 88Y + 6核種 投与 Tumor GREI 装置で測定した γ線スペクトル マルチトレーサー 65Zn: 60 kBq 59Fe: 30 kBq 88Y: 10 kBq C57BL mouse GREI 装置で測定した RI 分布画像

マウスに投与したトレーサーの解析的 3D 逆重畳画像 Control Tumor C57BL mouse PSF 解析的逆重畳画像  位置不変PSF(z = 15 mm) による逆重畳画像 PSF SBP画像(59Fe, マウス) 解析的逆重畳画像  位置不変PSF(z = 30 mm) による逆重畳画像

位置依存PSFの組込み 反復計算法: 現在、CT における SIRT と類似の方法を試行中 t, t’ に依存する  フーリエ重畳積分定理はつかえない 位置依存 PSF による反復計算的逆重畳法の実装 短所:計算に時間がかかる 反復計算法: 現在、CT における SIRT と類似の方法を試行中 適当な初期画像    を与え、次式にしたがって n 番目の計算画像から、 n+1 番目の計算画像を得る: ここで、  は SBP 画像、   は位置依存 PSF 位置依存 PSF を組み込み可能な計算コードは実装済み 並進不変 PSF によるテスト計算を行った

反復計算による 2D 画像再構成の実例 Fig. 1. Reconstructed images of 59Fe administered to a soybean sample. (a),(b): Using the analytical algorithm. (c),(d): Using the iterative algorithm.

反復計算による 3D 画像再構成の実例 Tumor Liver 担癌マウスに投与した 65Zn の分布画像

まとめ GREI における画像再構成問題の現状とこれからの課題 現状 これから SBP画像と真の線源分布画像の関係をモデル化 PSFの並進不変性を仮定して解析的再構成法を実装  z方向に広がった分布画像の3D再構成に問題がある PSFの位置依存性を組込み可能な反復計算的アルゴリズムを実装  並進不変PSFでも画質の改善がみられた  z方向に広がった分布画像の3D再構成に成功 これから 位置依存PSFの実装 他の反復計算式 散乱補正・減弱補正 SBP画像を介さない画像再構成法? 他の座標系で解析的再構成が可能か?