コロナ加熱・太陽風駆動の 数値的研究 松本 琢磨 (JAXA/ISAS) 太陽研連シンポジウム@名古屋 on 17-Feb-2015
Contents コロナ加熱・太陽風駆動の数値実験 (Matsumoto & Suzuki 12,14)の結果と関連する 過去の研究をレビューする. 主に Open field 上空 波動・乱流駆動型の理論(定常・非定常) 本日の内容ですが、SOCの方からの依頼で、コロナ加熱・太陽風駆動の数値実験を取り扱った松本・鈴木2012,2014の結果と、それに関連する過去の研究を レビューすることになりましたので、主に、open field上空における、波動・乱流駆動型の理論を紹介したいと思います。 40 sec
太陽からの質量放出 Optical movie (SOHO/LASCO satellite) ~10 % Ejection コロナ加熱や太陽風の駆動を調べる一つの大きなモチベーションは、太陽からの質量放出率を決定することだと思います。 太陽からの質量放出率はおよそ10^-14 solar mass per yearで、SOHOの動画からわかるように、 太陽風のような定常的な流れとCMEのような突発的ないじぇくしょんとから構成されています。 Webb & HowardらがCMEが持つ、太陽からの質量損失率への寄与を調べたところ、活動期においても約15%程度の 割合しか占めておらず、質量損失率を決めるためにはまず、定常風から調べる必要があります。 Sun Steady Wind > 85 % Contribution to the total mass loss Optical movie (SOHO/LASCO satellite) Webb & Howard 1994
エネルギー供給 コロナ加熱に必要なエネルギー流量 (Withbroe & Noyes 1977) 対流運動によるエネルギー供給 静穏領域 : 3 x 105 [ erg / cm2 / s ] 活動領域 : 1 x 107 [ erg / cm2 / s ] コロナホール: 8 x 105 [ erg / cm2 / s ] 対流運動によるエネルギー供給 遅い運動:DC加熱(Braiding) 速い運動:AC加熱(波動) ポインティングフラックス どのレビューでも最初はコロナ加熱に必要なエネルギー供給量について議論してますので、ここでもそれにならって、withbroe noyesが算出した コロナ加熱に必要なエネルギー供給量をおさらいしてみます。 まず静穏領域では熱伝導と輻射冷却にバランスするためにはcgs単位で3x10^5のエネルギーフラックスが必要とされています。 活動領域ではその約30倍、コロナホールでは2-3倍必要とされています。 コロナホールでの値は、コロナ加熱とは別に太陽風の運動エネルギーの分が含まれており、 コロナ加熱と太陽風駆動の比は1対7と太陽風駆動の割合が大半を占めています。 これらのエネルギーフラックスは対流運動によって供給されていて、対流運動の時間スケールが系の典型的な時間スケールに比べて遅いか速いかで DC加熱とAC加熱の二つの加熱機構が実現されると考えられています。 ポインティングフラックスは鉛直磁場と、水平方向の速度場、磁場の内積を掛け合わせたもので、光球磁気要素の拡散係数Dとループ長Lや ループのシア角Θなどを用いてこのようにあらわされたりする場合もあります。 86 sec Θ L 𝑊~ 𝑉 ⊥ 𝐵 ⊥ 𝐵 4𝜋 ~ 𝐵 2 4𝜋 𝐷 𝐿 ~ 𝐵 2 𝑉 ⊥ 4𝜋 𝜃
Loop models Braiding 型 (臨界角度は10-20°, Parker 1983) W~ 𝐵 2 𝑉 ⊥ 4𝜋 𝜃 Braiding 型 (臨界角度は10-20°, Parker 1983) 境界駆動 (Van Ballegooijen 86, Galsgaard & Nordlund 96) 自発維持 (Dahlburg+2003, Pontin+2011) 突発的加熱とループの動的進化 (Klimchuk+2003) 彩層蒸発期 :高温ループの蒸発流を示唆 熱伝導優勢期 :hot under dense loop 輻射冷却優勢期:warm over dense loop この発表は主にOpen Fieldの話をすると言いましたが、ループの加熱についても一ページだけ使ってざっとおさらいしておきたいと思います。 波動加熱は後程話すのでここでは特にBraidingモデルに関して取り扱います。 シア角Θを使ったポインティングフラックスの表式からわかるように、シア角には各領域で必要とされるエネルギーフラックスごとに最適な角度が 存在していて、静穏領域では10°、活動領域では20°程度と見積もられています。 対流運動でループ磁場にストレスを加えた時に、すぐにリコネクションが起きてストレスが解放されてしまうと、 この臨界角度に到達できずエネルギー不足になるし、その逆の場合はエネルギー過剰になってしまいます。 ちょうどよい最適な角度を決める要因が何かを調べるのがBraidingモデルの動機になると思うのですが、 その原因を境界の運動に押し付けるのがVBやGNの研究で、磁場構造の内在的な性質、たとえば電流の不安定性に押し付けるのがDやPの研究です。 加熱の要因を探求するこれらの研究とは別に、Braidingの結果である突発的な加熱の性質を抜き出して、観測的な特徴を再現しようとしているのが Klimchukらの研究で、突発的な加熱によってループが動的に進化することが予言されています。 加熱が続いている間には彩層蒸発によって高温ループの蒸発流が示唆されており、それにつづく熱伝導優勢期と輻射冷却優勢期では 高温で平衡密度より希薄なループや低温で濃いループが予言されていて、観測的にもループはRTV的な熱平衡ループではなくこのような動的なループが 多いことが分かっているようです。 116
Open Fieldの特徴 片方の磁力線は光球にアンカーされない 太陽風の存在 Braidingは期待できなさそう 浮上磁場とのリコネクションはあり得る 太陽風の存在 Enthalpy fluxもエネルギー平衡に重要 太陽風駆動とコロナ生成を同時に解く必要あり Open Fieldの特徴として、ループと違う点はおおざっぱに次の二点があると思います。 一つ目は当たり前ですが、磁力線の片方の足が光球にアンカーされていないという点です。 ぱっと考えるとこの状況ではBraidingによる加熱というのは期待できなさそうですが、浮上磁場と既存のopen fieldとの間の リコネクションによってポインティングフラックスを供給するシナリオというのはあり得ると思います。 二つ目はもちろん太陽風が存在しているという点です。 ループ中は、熱伝導と輻射冷却が加熱と釣り合って熱的な平衡を保ちますが、 Open fieldの場合、エネルギーバランスを考える上で太陽風によるエンタルピーフラックスも重要になってきますので、 太陽風とコロナを同時に解かないと整合的な解は得られません。 52 sec
競合モデル Reconnection / Loop Opening 型 波動 乱流駆動 型 活動領域縁からのアウトフロー (Sakao+2007, Harra+2008, Nishizuka & Hara 2011 ...) 極域ジェット (Cirtain+2007, Shimojo+2007, Culhane+2007) 波動 乱流駆動 型 波動観測 (De Pontieu+2007, Okamoto & De Pontieu 2011, McIntosh+2011) 星間空間での乱流その場観測 (Tu & Marsch 1995) 以上の特徴を踏まえて、Cranmer 2009のレビューでは、open fieldの加熱機構を次の二つに大別しています。 一つ目はリコネクションを介して浮上磁場を開くことでポインティングフラックスを輸送するモデルです。 活動領域の縁からのアウトフローや極域ジェットの観測からも、このような輸送現象は起こっていても不思議ではなさそうです。 二つ目は波動乱流駆動型で、近年次々と明らかになっている波動の観測や、In situの乱流観測からも支持されています。 35 sec
Reconnection/Loop open型 加熱・加速シナリオ 磁束管浮上 既存磁場とリコネクション 質量・運動量・ エネルギー注入 現象論的モデル (Fisk+1999, Ryutova+2001) 理論の整備が課題 (Longcope 1996, Priest+ 2002) Reconnection /Loop open型の加熱シナリオはFisk1999によって現象論的なモデルが作られていて、 超粒状斑中に浮上磁場が出現し、ネットワーク磁場とリコネクションを起こすことで質量や運動量、エネルギーを Open fieldに注入するというアイデアです。現象論的なアイデアはFiskやRyutovaらによって提案されていますが、 このアイデア自体が非常にダイナミックレンジの広いグローバルな構造を対象にしているため理論的な整備があまり進んでいないようです。 Longcopeの点源磁場のモデルとかPriestらのテクトニクスのアイデアなど、磁気ループで用いられているような 理論をopen fieldでも借用するなどの必要がありそうです。 60 sec arXiv:1502.01311 The effect of reconnection on the structure of the Sun's open-closed-flux boundary D. I. Pontin, P. F. Wyper Fisk+1999
波動乱流駆動型 加熱・加速シナリオ 現象論的・数値的研究 (Matthaeus+1999,Dmitruk+2002) 対流が磁束管を押す 波動(Alfven波)生成 大気中で反射波生成 波動相互作用で乱流化 現象論的・数値的研究 (Matthaeus+1999,Dmitruk+2002) 太陽風モデルへの応用 (Hollweg 1986, Cranmer+2007) 反射波 波動乱流駆動型の加熱・加速シナリオはMatthaeusらによって提案されていて、対流と磁束管の押し合いで生成されたAlfven波が 上空に伝播し、その過程で反射波を生成し、入射波と反射波の波動相互作用によって乱流化するというモデルです。 現象論的にも数値的にも波動乱流の理論は詳しく調べられていて、太陽風のモデルへの応用もなされています。 30 sec
定常太陽風モデル 太陽風の初期理論 (Parker 1958) Stellar mass loss への応用 (Hammer 1982) 乱流加熱 (Hollweg 1986) 衝撃波加熱 (Suzuki 2002/2004) 衝撃波+乱流加熱 (Cranmer+ 2007) 𝑀 ∝ 𝜌 𝑐 exp(−𝐴 𝑇 𝑐 ) このスライド以降では波動による加熱や加速に焦点を当てて構築された太陽風モデルについてレビューしていきます。 太陽風の初期の理論としてはもちろんパーカーの理論があります。 恒星からの質量損失率への応用がHammerによってなされたあと、それまで人為的に与えられていた加熱機構に 乱流加熱の現象論を取り入れたのがHollwegの研究です。 その後鈴木さんによって衝撃波加熱が取り入れられたりしました。 57 sec
コロナ中のMHD乱流 Reduced MHD 近似 (Zank & Matthaeus 1992) Reduced MHDによる数値実験 長波長・長周期・低マッハ数の時、 MHDは非圧縮MHDに逓減される Reduced MHDによる数値実験 磁力線に垂直方向にカスケード 乱流加熱の現象論的モデル 波の振幅 Z± Driving eddy size L 乱流の効率 Eturb さきほどの定常モデルでは加熱過程にMHD乱流による加熱を現象論的に加えたものがありましたけど、数値計算によっても その適用範囲と妥当性がチェックされています。 Reduced MHD 近似と呼ばれる近似を使うと、通常のMHDは非圧縮MHDに逓減されて解析的に非常に扱いやすくなります。 通常の非圧縮近似ではhigh betaの仮定を置きますが、Reduced MHDでは長波長、長周期、低マッハ数であれば、 Beta が1程度やlow betaの時にも成り立つとされています。 Reduced MHDではGoldreich Shridarh のように、磁力線に垂直方向にスペクトル密度がカスケードすることが知られています。 また、数値実験により現象論的な加熱率が求められていて、波の振幅zやdriving eddy のサイズであるL、乱流の効率E によってこのように書き下されます。乱流の効率Eはカスケードの時間スケールと反射の時間スケールの比の関数になっています。
Cranmer+2007 ZEPHYR codeとは ZEPHYR codeの応用 定常モデル 衝撃波加熱・乱流加熱をモデル化 Gray 輻射冷却・熱伝導入り ZEPHYR codeの応用 彩層:衝撃波加熱、コロナ:乱流加熱 低速風・高速風の分岐 Wave pressureによるFIP効果 (Laming 2004) 低質量星への応用 (Cranmer & Saar 2011) この加熱率と、衝撃波による加熱を組み合わせて、定常太陽風構造を数値的に再現したのがCranmerらの仕事です。 彼らが使っているZEPHYR コードは、光球の速度擾乱スペクトルと、磁束管形状から、1Dのコロナ・太陽風の構造を求めることができます。 定常モデルではありますが、衝撃波加熱や乱流加熱をモデル化して組み込んで、輻射冷却や熱伝導なども取り入れています。 ZEPHYR codeで得られた結果としては、彩層では衝撃波加熱・コロナでは乱流加熱になることが一つです。 また、低速風・高速風の分岐やFIP効果も説明可能とされています。 このコードを流用して、低質量星からのMass Loss rate を求めるのにも応用されたりしています。 なんだか全部うまくいってそうですが、じつはそうでもない部分もあります。
太陽風モデルの課題 コロナホール上空プラズマの無衝突性 イオンサイクロトロン加熱が有力だが、 Ti >> Tp > Te T⊥ > Tll イオンサイクロトロン加熱が有力だが、 Ωrequired = 102-4 Hz >> Ω対流 = 0.01 Hz よくあるMHD乱流理論(k⊥にカスケード) ではΩを小さくできない 表面でのリコネクションによる生成された 波はMinorイオンによって吸収される (Cranmer 2000) (Kohl+ 1997) その一つが、コロナホール上空プラズマの無衝突性をどのように説明するかということです。 UVCSやSUMERの観測によってイオンが高温でかつ、磁場に垂直な方向に特に加熱されているという温度異方性を示していることが 分かってきた後で、イオンとイオンサイクロトロン波動との共鳴による加熱が有力な候補として挙げられています。 しかしながら、対流による波動生成では0.01Hz程度の振動数の波しか生成できないのに対して、イオンサイクロトロン共鳴に必要な 振動数は10^2-10^4 Hzと4-6桁以上もの高振動数が必要です。KperpにカスケードするMHD乱流では高振動数を生成すること ができず、表面でのリコネクションによる波動生成はMinorイオンによる吸収が障害になります。この問題をどのように解決するのか がこれからの課題になっているようです。 64 sec
非定常モデル 定常モデルの問題点 Alfven波の散逸過程は未解明 太陽大気のダイナミクスの無視 あらかじめ与えられた加熱機構の使用 非線形モード変換 (Kudoh & Shibata 1999) 位相混合 (Heyvaerts & Priest 1983) 彩層でも乱流? (Verdini+2012) これまで紹介してきたモデルは定常を仮定したモデルだったのですが、太陽大気のダイナミクス、特に彩層や 遷移層での動きを無視できるのかは自明ではないし、定常モデルではあらかじめ与えられた加熱機構しか用いることができません。 Alfven波の散逸過程が未解明であることを考えると、第一原理的にMHD方程式を解いた非定常モデルを構築することも重要になります。 非線形なモード変換や位相混合、乱流などの競合関係が各場所でどのようになっているのか、他に新たな加熱機構はないのかという 問題もあるわけです。
Suzuki & Inutsuka 05/06 質量損失率を光球表面から決定した 非線形モード変換を伴う衝撃波散逸 Alfven 波 磁気音波 (with δV/VA ~ 0.4) 高速・低速風の分岐 : expansion factor (f) に依存 f 大 δV/VA 大 音速点の内側で散逸 Mass flux 大 低速風 Faint Young Sun問題への応用など (Suzuki+2014) 非定常計算の例として鈴木犬塚2006のモデルがあり、光球表面からAlfven波を注入することで高温のコロナと太陽風を再現できる 1次元のMHDシミュレーションが行われました。 このモデルは質量損失率を光球の表面の情報から決定できる最初のモデルになっています。 加熱機構は、非線形モード変換を伴う衝撃波散逸とされています。 高速風・低速風の分岐は定常計算と同様に磁場の開き具合であるexpansion factor, f , の大小によって説明可能であるとされています。 Fが大きい場合、アルフベン速度が小さくなるため波動の非線形性が増し、音速点の内側での加熱が効率よくなります。 太陽風の理論によって、音速点より内側での加熱はMass fluxが増大させることが知られているので、結果として低速風になると説明されます。 しかしながら、このモデルには乱流などの非圧縮的な加熱は含まれないなどの問題があります。 60 sec
Matsumoto & Suzuki 12/14 非定常モデルを2次元化 2.5D MHD 光球からAlfven波注入 乱流などの非圧縮的加熱の重要性は? 2.5D MHD 熱伝導 輻射冷却 光球からAlfven波注入 コロナ・太陽風生成 そこで、Matsumoto & Suzuki 2014では非圧縮的な加熱を導入するために、過去の数値実験を2次元に拡張しました。 このモデルでは2.5DのMHD方程式を熱伝導と輻射冷却入りで解いています。 モデルの扱う領域は太陽光球から20太陽半径離れた太陽風加速領域までを含んでいます。 光球からAlfven波を注入していくと、数値解はコロナ・太陽風を含む準定常解に落ち着きます。
Matsumoto & Suzuki 14 自己完結的な2次元数値太陽風モデル 遷移層を境に加熱機構が変化 3次元計算の見込み 境界条件から大気構造・加熱機構が決まる 遷移層を境に加熱機構が変化 遷移層下:衝撃波 遷移層上:非圧縮加熱(たぶん乱流的:後述) 3次元計算の見込み Torsional or Transversal? 乱流散逸の効率化 (Van ballegooijen+2011) リコネクション (Dmitruk+2004) このモデルは一応、自己完結的な非定常の2次元太陽風モデルとしては最初のものになっています。 また、Suzuki & Inutsuka 2005/2006と同じく、境界条件によって、大気構造や加熱機構が自然に決まります。 その結果、遷移層を境に加熱機構が変化していることが判明しました。 この図は加熱率を太陽表面からの距離の関数としてプロットしたもので、赤が非圧縮加熱、黒が圧縮加熱に対応しています。 青い網掛けで示されている遷移層より下側の彩層、光球では、衝撃波による加熱が卓越し、 遷移層より上側、コロナ底部では非圧縮的な加熱が支配的になっていました。 この研究を3次元にした時に予想される効果としては三つ程度あって、まず一つ目は、 Torsional/shear/Transversalなどの波動モードの違いが、波の非線形発展に与える影響です。 もう一つは、3次元での乱流は、2次元とは違う非線形項が重要になることが知られていて、乱流散逸はより効率的になるかもしれません。 最後に、リコネクションによって2次的な波動が生成されたりする可能性もあります。 76 sec 非圧縮加熱と圧縮加熱の比較
彩層・遷移層のダイナミクス 自己完結的な2 3次元化するのもいいんですが、次はまず、2次元計算で起こっている加熱をもっと正確に把握したいと思って、 より高解像度のシミュレーションを行って、前回の天文学会で発表しました。 この計算は計算コストの削減のために、open fieldではなくてループを扱ったものですが、彩層・遷移層のダイナミクス自体は それほど変わらないだろうと思っています。 横軸は鉛直方向で縦軸は水平方向、色は密度を表していて、線は磁力線です。 計算が進むにつれて磁力線に平行な方向に細い構造がたくさんできているのが見えます。 インプットしている波は水平方向に一様なので、これらの構造は彩層中で自発的に生じているものです。 恐らくこれは、衝撃波を伴う乱流カスケードによるものだと思っていて、加熱の要因になっています。
2D非定常加熱シナリオ Alfven波注入 遷移層 波動衝突による乱流化 衝撃波から 回転不連続面に 変換 乱流を追うにはまだグリッド数が足りないので、これはまだスペキュレーションですが、 今はこんな感じの加熱シナリオを考えています。 初期に注入されたAlfven波は一様であっても、遷移層での反射波との相互作用によって乱流化、 さらに磁場構造によっては衝撃波に成長します。ということで彩層中では衝撃波による加熱が卓越するのですが、 この衝撃波がいったん遷移層と衝突することで、衝撃波は回転不連続面を伴ういくつかの不連続面に分裂して コロナ中での加熱は圧縮的なものから非圧縮的なものに変遷するというシナリオです。 Alfven波注入 遷移層 波動衝突による乱流化
これから 今後加熱素過程を検証 B 遷移層での反射と乱流化 遷移層・衝撃波衝突の力学 Vy 初期状態 終状態 Z Y X, Alfven波 2014年の論文では加熱の空間・時間分布などを解析したのですが、低解像度の計算であったために、 計算機中での加熱現象を十分にに解明するには至りませんでした。 そこで今後はグローバルな計算で得られたヒントをもとに、物理過程を抽出したモデルを使って加熱の素過程を解明に取り組んでいきたいと思っています。 今目をつけているのは遷移層での反射に伴い彩層中でも乱流が駆動されている可能性です。 この図は図の横方向に磁場が刺さっている2次元の空間マップで、色は紙面に垂直な速度場を表していています。 左側の図は初期状態で、波数の方向が少しちがう3つの低波数Alfven波を入れて手を放すとどうなるかという数値実験です。 右側の図は終状態で、2次元計算でも磁力線に垂直方向のカスケードが起こっていることが示されています。 68 sec Alfven波 初期状態 終状態
まとめ Open Fieldの加熱・加速機構 加熱機構の区別にはさらなる観測が必要 Reconnection/Loop open 型 大空間スケールの現象なので数値実験・理論化困難 波動乱流駆動型 数値実験や半解析理論の整備が進んでいる イオンの温度異方性をどう説明するか? 加熱機構の競合関係は? 加熱機構の区別にはさらなる観測が必要 Alfven波直接観測 (Okamoto+2015 in prep) 彩層ネットワーク上のブルーシフト (He+2007,Brooks+2015) 極域ジェット、polar plume (Tian+2010) In situ でのリコネクション (Gosling+2005) 乱流とflux cancellation の時間スケール (Hollweg 2006) このスライドでおしまいです。 以上、コロナホール上空の加熱・加速機構に関して話してきたわけですが、 まとめると、本発表ではコロナホール上空での加熱・加速機構を二種類に大別してお話ししました。 一つ目のReconnection/Loop open型についてはあまりお話しませんでしたが、浮上磁場とネットワーク磁場のリコネクションによって ポインティングフラックスを生成するタイプの機構です。 このタイプの理論は空間スケールのダイナミックレンジが多きすぎるため数値実験などを用いた理論の整備は今のところ困難です。 二つ目は波動乱流駆動型の機構で、Alfven波を波動相互作用による乱流化や衝撃波生成などを通して散逸させるモデルです。 このタイプにおいては数値実験や半解析的な理論の整備が進んでいますが、イオンの温度異方性や、加熱機構の間の競合関係など についてはまだまだ議論の余地があります。 両モデルとも、高速風・低速風の分岐などの観測的特徴を説明可能なので、これらの理論を区別するには まだ観測・理論ともに整備する必要があります。 たとえば岡本さんがやっておられるように、Alfven波の直接観測による散逸機構の特定や、 彩層ネットワーク上のブルーシフトと太陽風の吹き出し口の関係、 極域ジェットやPolar Plumeによる太陽風のFeedingなどの観測を詰めていく必要があると思います。 また、In situのリコネクションや、乱流とflux cancellationの時間スケールの一致なども決め手になるかもしれません。 といったところで本発表を終わりたいと思います。 ありがとうございました。 95 sec
FIP effect Formalism from Laming 2004 Cranmer+ 2007
NeIII Blue shift @ network このblue shift領域はopen fieldにつながっていない SUMER,MDI,EIT NeIII Blue shift @ network このblue shift領域はopen fieldにつながっていない 高速風の根本ではなさそう
HINODE/EIS Log(T/K) > 5.8 コロナホールで上昇流
In situ リコネクション Gosling+2005, GeoRL ACEの観測 Petschek 型
乱流とFlux Cancellation Hollweg+1982,87,1 Hollweg 1990, 2006 Heliosのデータ Faraday Rotationを観測(<0.05AU) 磁場シグナルに数時間周期の時間変動 Hollweg 1990, 2006 Flux Cancellationの時間スケールと同程度 超粒状斑だと長すぎる
Loop models Braiding 型 (臨界角度は10-20°, Parker 1983) 境界駆動 (Van Ballegooijen 86, Galsgaard & Nordlund 96) 自発維持 (Dahlburg+2003, Pontin+2011) 突発的加熱とループの動的進化 (Klimchuk+2003) 彩層蒸発期 :高温ループの蒸発流を示唆 熱伝導優勢期 :hot under dense loop 輻射冷却優勢期:warm over dense loop 観測 ループのシア角 (Schrijver+1999,Cirtain+2013) フレアベキ則 (Hudson 1991, Shimizu 1995) Filling factor (Katsukawa & Tsuneta 2005, Kano+ 2014) この発表は主にOpen Fieldの話をすると言いましたが、ループの加熱についても一ページだけ使ってざっとおさらいしておきたいと思います。 波動加熱は後程話すのでここでは特にBraidingモデルに関して取り扱います。 シア角Θを使ったポインティングフラックスの表式からわかるように、シア角には各領域で必要とされるエネルギーフラックスごとに最適な角度が 存在していて、静穏領域では10°、活動領域では20°程度と見積もられています。 対流運動でループ磁場にストレスを加えた時に、すぐにリコネクションが起きてストレスが解放されてしまうと、 この臨界角度に到達できずエネルギー不足になるし、その逆の場合はエネルギー過剰になってしまいます。 ちょうどよい最適な角度を決める要因が何かを調べるのがBraidingモデルの動機になると思うのですが、
MHD乱流 Reduced MHD 近似 長波長・長周期・低マッハ数の時、 MHDは非圧縮MHDに逓減される
95+68+76 +60+40+64+57+30+60+35+42+116+86+40
参考文献 以下のレビューを参考に Cranmer 2009, LRSP, 6, 3 Parnell & De Moortel, 2012, RSPTA, 370, 3217 Klimchuk, 2006, SoPh, 234, 41