OPMアルゴリズムによる 天体座標リストの同定とその応用

Slides:



Advertisements
Similar presentations
セファイド周期光度関係を求 める 教材のためのデータ取得 富田晃彦 ( Tomita Akihiko 和歌山大学教育学部) FITS 画像教育利用ワークショップ.
Advertisements

画像処理・実習 第十四回:パターン認識 東海大学 情報理工学部 情報メディア学科 濱本和彦. 今回の内容 5. パターン認識 5.1 マッチングの原理 5.2 テンプレートマッチング 実習 相互相関とテンプレートマッチング.
果物識別 補足資料 1. やりたい事  入力された画像内に映っている果物が何かを自動判 別するプログラムを組むこと 識別器 りんご です.
銀河物理学特論 I: 講義1:近傍宇宙の銀河の 統計的性質 遠方宇宙の銀河の理解のベースライン。 SDSS のデータベースによって近傍宇宙の 可視波長域での統計的性質の理解は飛躍的 に高精度になった。 2009/04/13.
フレネル望遠鏡 研究ゼミ B4 山本 真周.
初年次セミナー 第13回 2次元グラフィックス(1).
HOG特徴に基づく 単眼画像からの人体3次元姿勢推定
パノラマ動画像モデルによる 仮想空間表現システムの研究
超広視野カメラKWFCを用いた 銀河面変光天体探査の計画
Pose Tracking from Natural Features on Mobile Phones
フレームディアスの使い方 動作解析ソフトウエア
Webアプリケーション開発の 基本的なポイント
XHTML構文検証手法における スクリプト要素の静的解析アルゴリズム
高速分光器観測マニュアル ○内容 1:各種マスクスリットの(CCD上での)位置 p.2
LZ圧縮回路の設計とハード・ソフト 最適分割の検討 電子情報デザイン学科 高性能計算研究室 4回生 中山 和也 2009/2/27.
VO講習会2013春 VOツール使用法(1) TOPCAT 国立天文台 天文データセンター 小宮 悠.
HETE-2のバースト観測ネットワーク マウイ 副地上局 パラオ 副地上局 シンガポール 主・副地上局 赤道
望遠鏡制御関係現状報告 ナノオプトニクス・エナジー ナノオプトニクス研究所 下農 淳司.
星の明るさと等級 PAOFITS WG 開発教材 <解説教材> 製作: PaofitsWG <使い方> ①「実習の方法」についての説明に使う
三浦 昭、山本 幸生、吉川 真 宇宙航空研究開発機構
ORB: an efficient alternative to SIFT or SURF
プロポーザル準備/観測準備 ダストをたくさん持つ銀河 の赤外線分光観測の例 国立天文台 今西昌俊.
AOによる 重力レンズクェーサー吸収線系の観測 濱野 哲史(東京大学) 共同研究者 小林尚人(東大)、近藤荘平(京産大)、他
小惑星を探れ! 村仲 渉 (木曽高校)  杉本 寛 (上宮高校)  佐藤 駿 (オイスカ高校)  鈴木 寿弥 (磐田南高校) 池内 苑子 (大宮高校)  吉川 優衣 (広島国泰寺高校)  斎藤 杏奈 (洗足学園高校)  §1.はじめに ②太陽から小惑星までの距離 小惑星の軌道は円と仮定する。小惑星の軌道半径をaA、周期をTA、地球の軌道半径をaE、周期をTEとすると、時間tでの小惑星の移動距離dA、地球の移動距離dEは、
画像情報を用いた交通流計測 情報工学科 藤吉研究室 EP02076 都築勇司
ティコ第2星表を用いた限界等級の測定 目的 内容 宇宙粒子研究室 竹川涼太
トランジット法による低温度星まわりの地球型惑星探索と大気調査
シミュレーション演習 G. 総合演習 (Mathematica演習) システム創成情報工学科
果物識別 マハラノビス距離を求める.
みさと8m電波望遠鏡の 性能評価 富田ゼミ 宮﨑 恵.
Astro-E2衛星搭載 XISの データ処理方法の最適化
大阪工業大学 情報科学部 情報科学科 学生番号 A03-017 犬束 高士
基礎プログラミング演習 第10回.
京大極限補償光学 点回折干渉を用いた 波面センサの開発
すばる望遠鏡を用いた 太陽系外惑星系の観測的研究
東工大明野50㎝望遠鏡におけるKISS超新星候補天体のフォローアップ観測
k 個のミスマッチを許した点集合マッチング・アルゴリズム
近赤外線サーベイによるマゼラニックブリッジの 前主系列星探査
視点移動カメラにおけるカメラキャリブレーション
定兼邦彦 今井浩 東京大学理学系研究科 情報科学専攻
AIRTfinder関連の開発メモ 沖田博文 2012年5月1日
太陽系外惑星の トランジット観測 和歌山大学  教育学部  自然環境教育課程   地球環境プログラム  天文学ゼミ   玉置 順大.
坂本強(日本スペースガード協会)松永典之(東大)、 長谷川隆(ぐんま天文台)、 三戸洋之(東大木曽観測所)、 中田好一(東大木曽観測所)
アーカイブデータを用いた超新星の再調査 ―精測位置と天体の真偽― 九州大学大学院 理学府物理学専攻宇宙物理理論
ANIRによるM型星まわりの トランジット地球型惑星の観測 国立天文台 成田憲保.
COSMOS天域における ライマンブレーク銀河の形態
ガンマ線バースト観測用 面分光装置の紹介 岡山天体物理観測所 尾崎忍夫 共同研究者 吉田、岩田、神戸、沖田(岡山天体物理観測所)、
実習その2 銀河までの距離を求める 東京大学大学院理学系研究科天文学専攻 修士課程2年 藤原英明.
実習その2 銀河までの距離を求める 信州大学工学部情報工学科2年 村仲 渉.
小型JASMINE計画の状況       矢野太平(国立天文台)       丹羽佳人(京大).
CCDカメラST-9Eの      測光精密評価  和歌山大学 教育学部           自然環境教育課程 地球環境プログラム 天文学専攻 07543031   山口卓也  
小さな銀河の外縁部の観測 (ハロー) 07553032 真鍋 未来.
miniTAO望遠鏡による Be型星の Paschen α観測
Welcome to the FINAL stage for SDF data handling!
クエーサーの内部構造はどうなっているのか? マグナム望遠鏡の威力
CCDを用いた星像中心決定実験の結果 ○矢野太平(理研)、郷田直輝、小林行泰、辻本拓司(国立天文台)
SIFTとGraph Cutsを用いた 物体認識及びセグメンテーション
全天X線監視装置 MAXI 地上データ処理システムの開発 Ⅲ ー 突発天体発見システムの開発 ー
第16章 動的計画法 アルゴリズムイントロダクション.
極軸のあわせ方 (15cm temma2用) 北極星
MOAデータベースを使った セファイド変光星の周期光度関係と 距離測定
10/19 GMCゼミ.
トランジット惑星系におけるRossiter効果 I. HD209458での観測結果
エイリアス関係を考慮した Javaプログラム用静的スライシングツール
Molecular Devices Japan
奥村真一郎(日本スペースガード協会)、 高橋英則、田中培生(東京大学)
望遠鏡技術検討会 (2013/2/9) 京大3.8m望遠鏡用 面分光装置開発 松林 和也 (京都大学)
市松模様を使用した カメラキャリブレーション
Clusteringを用いたEMCal解析
(FMOS戦略枠観測で余ったファイバーによる) M型星まわりのトランジット地球型惑星探し
Presentation transcript:

OPMアルゴリズムによる 天体座標リストの同定とその応用 松永典之 (東大・木曽観測所) http://www.ioa.s.u-tokyo.ac.jp/~nmatsuna/software/

概要 OPMとは何か OPMソフトの紹介 応用例の紹介 視野調節(高精度ポインティング)

目的 カタログ1 検出天体リスト1 座標系の変換 天体の同定 (例)FITS画像にWCSを入れる カタログ2 検出天体リスト2 天体の天球座標と様々な情報 座標系の変換 天体の同定 (例)FITS画像にWCSを入れる 検出天体リスト2 カタログ2 天体の天球座標と様々な情報

座標変換 一次変換を考える。 ξ = ax + by + c η = a′x + b′y + c′ (ξ, η) 座標1, (x, y) 座標2 赤道座標同士でも、画像上の座標同士でも、その組み合わせの比較でもよい。 目視すること無しに、なるべく高速に安定して変換式の決定と天体の同定を行いたい。

OPMアルゴリズム Optimistic Pattern Matching Tabur, V., 2007, PASA, 24, 189 “Fast Algorithms for Matching CCD Images to a Stellar Catalogue” 今まで使われていたアルゴリズムよりも高速に座標変換式を求める。 画素サイズなどは既知である。 明るい星同士を比べれば共通する天体が含まれている。 という「楽観的」な観測のもとで高速。

座標変換式を求める方法 相似の三角形をなす3つの星のペアを探す。 三角形のペアが同定できれば、一次変換の式が求められる。 xt=内積 (θではなく、内積を使うのが特徴) yt=最長辺と最短辺の比 三角形のペアが同定できれば、一次変換の式が求められる。

三角形のペアを探す 2つのリストから明るい星を約50個ずつ選ぶ。 組み合わせて出来る三角形の(xt, yt)を計算。 選んだペアから求めた変換式で同定が成功すればそれを採用する。 同定を高速に行うためツリー構造(4分木)を利用。

OPMソフト by Matsunaga C言語で作成。 opm: 2つの入力ファイルから座標の変換式を 求めて、共通する天体の同定を行う。 空白行も含めて、5000行程度。 どのような環境でも動く(はず)。 PGPLOTをCのプログラムから呼んで描画も可能。 opm: 2つの入力ファイルから座標の変換式を 求めて、共通する天体の同定を行う。 opm_match: 座標の変換はせず、同定だけ行う。 Tabur自身によるソフトも公開されている。 http://members.tip.net.au/~vello/opm/opm.htm

OPMの入力・出力 in1.xym in2.xym out 座標変換式と同定した天体のリスト 画素サイズなど 同定に必要な情報 40.827 361.522 -13.187 699.998 789.890 -12.525 735.464 618.256 -12.386 57.362 -10.204 6.193 503.546 100.861 6.516 331.661 386.354 7.291 in1.xym in2.xym # xref = -4.55570e-01 xobj + 4.37565e-03 yobj + 2.50086e+02 # yref = 4.87554e-03 xobj + 4.52429e-01 yobj + -2.24435e+02 1 40.83 361.52 233.07 -60.67 -13.187 2 233.06 -60.77 6.516 0 78 426.50 988.21 60.11 224.74 -10.945 3 60.97 224.59 7.291 0 2 700.00 789.89 -65.36 136.35 -12.525 6 -65.42 136.19 7.462 0 out 画素サイズなど 同定に必要な情報 座標変換式と同定した天体のリスト

同定した天体の座標残差 1 pix (x,y)の残差 x残差のヒストグラム y残差のヒストグラム

OPMソフトの現在 http://www.ioa.s.u-tokyo.ac.jp/ ~nmatsuna/software/OPM.html で公開中。 同URLで公開中の他の解析ソフトでも利用。 ポスターPS26 参照 IRSF/SIRIUSの解析パイプライン(中島康氏)に組み込まれている。 IRSFの視野調節(高精度ポインティング)の システムを作成中。

IRAF/xyxymatchとの比較 xyxymatchはよほど気をつけて使わないと失敗する。 成功したとしても、OPMの方がずっと速い。 input1 (14262天体)  FITSで検出した天体のリスト input2 (2432天体)  2MASS記載の天体リスト OPM 約0.4秒で2169天体を同定。 xyxymatch 同定に失敗する。両方のカタログから明るい50天体だけ選ぶと成功するが、約5秒要す。 xyxymatchはよほど気をつけて使わないと失敗する。 成功したとしても、OPMの方がずっと速い。

wcstoolsとの比較 あらかじめ、2MASSのカタログと画像の検出天体リストを準備してimwcsを実行して比較。 同定するときの速度はそれほど変わらない。 wcstoolsは同定を行う星の数が200天体以下。 精度があまり出ない場合があるようだ。 そもそもリストの同定をするためには不十分。

OPMが成功しにくい場合 明るい天体30~100天体ずつのうちに共通する星が3天体以上無いといけない。 比較する天体リストの波長が異なっている場合。 画像で明るい星の多くが飽和している場合。(飽和する等級がわかっていれば問題ない) そもそも2つの天体があまり一致していない場合 正しい変換式の時には(3~)5割程度の天体が同定できるのでなければ、成功しても判断がつかない。

応用例:IRSFのための視野調節 指向精度は3秒程度 1ピクセル(0.45秒)以下の高精度で視野を調節 架台の経年変化でもう少し悪くなることもある。 1ピクセル(0.45秒)以下の高精度で視野を調節 モニタリングで毎回正確に同じ視野にする。(フラットの誤差を無視できる) 分光器の設置が計画されている(PI: 永山貴宏氏) 南アフリカ天文台 IRSF望遠鏡

OPMを利用したソフトでテスト画像の座標系と目標座標を比較 ソフトの設計 目標座標を入力 (方位角も設定可能) 目標座標へ オフセット 目標座標へ指向 目標座標の周囲の2MASS天体を抽出 テスト画像を取得 点源を検出 OPMを利用したソフトでテスト画像の座標系と目標座標を比較

2MASS→視野の天体リスト 2MASSカタログの必要な部分を抽出 どの領域でも1秒以下でリストを抽出する。 約3億4千万天体、16GB 星の混んだ領域では暗い星を含めない。 どの領域でも1秒以下でリストを抽出する。 抽出した視野を記憶してストックしたリストを利用。

検証実験 今週、永山さん(名大)が実験 来週、松永が現地で実験 だいたいうまく動いている。 銀河中心でも、1~2秒でテスト画像をとって WCS & 必要なオフセットを求められる。 望遠鏡の指向精度でリミット? 来週、松永が現地で実験

Please visit my web page!! http://www.ioa.s.u-tokyo.ac.jp/ ~nmatsuna/software/