星間物理学 講義3資料: 星間ガスの熱的安定性 星間ガスの力学的・熱的な不安定性についてまとめる。星形成や銀河形成を考える上での基礎。

Slides:



Advertisements
Similar presentations
1 宇宙は何からできてくるか ? 理学部 物理 森川雅博 宇宙を満たす未知のエネルギー:暗黒エネル ギー 局在する見えない未知の物質:暗黒物質 銀河・星・ガス 何からできているか … 2006/7/25.
Advertisements

星間物理学 講義4資料: 星間ダストによる散乱・吸収と放射 1 星間ダストによる減光 ( 散乱・吸収 ) 過程、放射過程 のまとめ、およびダストに関わるいろいろ。 2011/11/09.
口径合成によるメーザー源の 時間変動の観測 SKA に向けて 岐阜大学 高羽 浩. 東アジア VLBI 網の 22GHz 日本 野辺山 45m 、鹿島 34m 、 高萩、日立、つくば、山口 32m 、 VERA20m× 4 北大、岐阜大 11m 、水沢 10m 韓国 KVN20m× 3+測地 20m.
宇宙ジェット形成シミュレー ションの 可視化 宇宙物理学研究室 木村佳史 03S2015Z. 発表の流れ 1. 本研究の概要・目的・動機 2. モデルの仮定・設定と基礎方程式 3. シンクロトロン放射 1. 放射係数 2. 吸収係数 4. 輻射輸送方程式 5. 結果 6. まとめと今後の発展.
銀河物理学特論 I: 講義1:近傍宇宙の銀河の 統計的性質 遠方宇宙の銀河の理解のベースライン。 SDSS のデータベースによって近傍宇宙の 可視波長域での統計的性質の理解は飛躍的 に高精度になった。 2009/04/13.
プラズマからのX線放射 X-ray Radiation from Plasmas 高杉 恵一 量子科学フロンティア 2002年10月17日.
第5回 分子雲から星・惑星系へ 平成24年度新潟大学理学部物理学科  集中講義 松原英雄(JAXA宇宙研)
ブラックボックスとしてモデルをみると、本質を見逃す。
宇宙年齢10億年以前におけるSMBHの存在 遠方宇宙の観測で宇宙10億歳(z~6)未満で10億M⦿程度以上の活動銀河核中のSMBHの存在を確認 赤方偏移 z SMBH質量 [M⦿] URAS J ~2×109 M⦿ 宇宙7.5億歳(z~7)
半田利弘 鹿児島大学 大学院理工学研究科 物理・宇宙専攻
第5回 黒体放射とその応用 東京大学教養学部前期課程 2013年冬学期 宇宙科学II 松原英雄(JAXA宇宙研)
第9回 星間物質その2(星間塵) 東京大学教養学部前期課程 2012年冬学期 宇宙科学II 松原英雄(JAXA宇宙研)
X線による超新星残骸の観測の現状 平賀純子(ISAS) SN1006 CasA Tycho RXJ1713 子Vela Vela SNR.
第5回 黒体放射とその応用 東京大学教養学部前期課程 2012年冬学期 宇宙科学II 松原英雄(JAXA宇宙研)
星形成銀河の星間物質の電離状態 (Nakajima & Ouchi 2014, MNRAS accepted, arXiv: )
第6回 制動放射 東京大学教養学部前期課程 2012年冬学期 宇宙科学II 松原英雄(JAXA宇宙研)
DECIGO ワークショップ (2007年4月18日) 始原星の質量、形成率、連星度 大向一行  (国立天文台 理論研究部)
原始惑星系円盤の形成と進化の理論 1. 導入:円盤の形成と進化とは? 2. 自己重力円盤の進化 3. 円盤内での固体物質の輸送
H2O+遠赤外線吸収 ラジオ波散乱 微細構造遷位 ラジオ波 赤外線 X-線 H3+ 赤外線吸収 γ-線 塵遠赤外発光 再結合線
宇宙大規模プラズマと太陽コロナの比較研究
神戸大大学院集中講義 銀河天文学:講義1 銀河を構成する星、星間物質(ガス、ダスト) 1. 太陽系から銀河系へ空間スケール 2
In situ cosmogenic seminar
○山口 弘悦、小山 勝二、中嶋 大(京大)、 馬場 彩、平賀 純子(理研)、 他 すざくSWGチーム
地球惑星物性学1 ( ~) 参考文献: 大谷・掛川著 地球・生命 共立出版
電離領域の遠赤外輻射 (物理的取り扱い)      Hiroyuki Hirashita    (Nagoya University, Japan)
Damped Lya Clouds ダスト・水素分子
銀河物理学特論 I: 講義1-1:近傍宇宙の銀河の 統計的性質 Kauffmann et al
すざく衛星による、2005年9月の太陽活動に起因する太陽風と地球大気の荷電交換反応の観測
銀河物理学特論 I: 講義1-2:銀河の輝線診断 Tremonti et al. 2004, ApJ, 613, 898
信川 正順、小山 勝二、劉 周強、 鶴 剛、松本 浩典 (京大理)
104K以下のガスを考慮したTree+GRAPE SPH法による 銀河形成シミュレーション ~Globular Cluster Formation in the Hierarchical Clustering Universe~ 斎藤貴之(北大) 幸田仁(NAOJ) 岡本崇(ダーラム大) 和田桂一(NAOJ)
Dissociative Recombination of HeH+ at Large Center-of-Mass Energies
太陽・恒星フレアにおける輻射流体シミュレーション
明るいハードステートに対応する 光学的に薄い降着円盤モデル
星間物理学 講義3資料: 星間ガスの力学的安定性 星間ガスの力学的な安定性・不安定性についてまとめる。星形成や銀河形成を考える上での基礎。
Fermi Bubble と銀河中心の巨大構造
土野恭輔 08s1-024 明星大学理工学部物理学科天文学研究室
神戸大大学院集中講義 銀河天文学:講義5 銀河の形成と進化 1. 銀河の金属量の進化 2. 銀河の構造の進化 3. 環境と銀河の進化
銀河物理学特論 I: 講義3-4:銀河の化学進化 Erb et al. 2006, ApJ, 644, 813
銀河物理学特論 I: 講義1-3:銀河性質と環境依存性 Park et al. 2007, ApJ, 658, 898
信川 正順、福岡 亮輔、 劉 周強、小山 勝二(京大理)
COSMOSプロジェクト: z ~ 1.2 における星生成の環境依存性 急激な変化が起こっていると考えられる z ~1 に着目し、
村岡和幸 (大阪府立大学) & ASTE 近傍銀河 プロジェクトチーム
銀河・銀河系天文学 星間物理学 鹿児島大学宇宙コース 祖父江義明 .
22章以降 化学反応の速度 本章 ◎ 反応速度の定義とその測定方法の概観 ◎ 測定結果 ⇒ 反応速度は速度式という微分方程式で表現
棒渦巻銀河の分子ガス観測 45m+干渉計の成果から 久野成夫(NRO).
星間物理学 講義1: 銀河系の星間空間の世界 太陽系近傍から銀河系全体への概観 星間空間の構成要素
21世紀COE外国旅費補助・ 成果報告会 C0704 宇宙物理 PDF 松田 有一.
松原英雄、中川貴雄(ISAS/JAXA)、山田 亨、今西昌俊、児玉忠恭、中西康一郎(国立天文台) 他SPICAサイエンスワーキンググループ
鉄輝線で解明したSgr A* の活動性: 京都大学 小山勝二 ブラックホールSgrA*の時空構造を鉄輝線で解明する
星間物理学 講義2: 星間空間の物理状態 星間空間のガスの典型的パラメータ どうしてそうなっているのか
星間物理学 講義4資料: 星間ダストによる散乱・吸収と放射 2 銀河スケールのダスト、ダストの温度、PAH ほか
銀河物理学特論 I: 講義2-1:銀河中心の巨大ブラックホールと活動銀河中心核
塵に埋もれたAGN/銀河との相互作用 今西昌俊(国立天文台) Subaru AKARI Spitzer SPICA.
Diffuse Soft X-ray Skyの初期の観測
銀河物理学特論 I: 講義3-5:銀河の力学構造の進化 Vogt et al
宇宙の初期構造の起源と 銀河間物質の再イオン化
ーラインX線天文学の歴史と展望をまじえてー
星間物理学 講義1の図など資料: 空間スケールを把握する。 太陽系近傍から 銀河系全体への概観、 観測事実に基づいて太陽系の周りの様子、銀河系全体の様子を概観する。それぞれの観測事実についての理解はこれ以降の講義で深める。 2010/10/05.
「すざく」でみた天の川銀河系の中心 多数の輝線を過去最高のエネルギー精度 、統計、S/Nで検出、発見した。 Energy 6 7 8
応用課題: 磁気リコネクション—Craig解2 (担当:柴田・田沼)
星間物理学 講義6資料: 衝撃波1 超新星残骸などに見られる衝撃波の物理過程について
今後の予定 8日目 11月13日 口頭報告答あわせ,講義(5章) 9日目 11月27日 3・4章についての小テスト,講義(5章続き)
星間物理学 講義 3: 輝線放射過程 I 水素の光電離と再結合
惑星と太陽風 の相互作用 惑星物理学研究室 4年 深田 佳成 The Interaction of The Solar
ブラックボックスとしてモデルをみると、本質を見逃す。
星間物理学 講義7資料: 物質の輪廻と銀河の進化 銀河の化学進化についての定式化
国際会議成果報告 Structure Formation in the Universe
楕円銀河の銀河風モデル Arimoto & Yoshii (1986) A&A 164, 260
ローブからのX線 ~ジェットのエネルギーを測る~
Presentation transcript:

星間物理学 講義3資料: 星間ガスの熱的安定性 星間ガスの力学的・熱的な不安定性についてまとめる。星形成や銀河形成を考える上での基礎。 星間物理学 講義3資料: 星間ガスの熱的安定性 星間ガスの力学的・熱的な不安定性についてまとめる。星形成や銀河形成を考える上での基礎。 2011/11/02

熱的安定性 : 星間ガスの冷却曲線 F(x) = exp(-1/x) F(x) = exp(-1/x) / sqrt(x)

熱的安定性 : 高温プラズマの冷却 高温プラズマの冷却過程と冷却曲線。 Cox & Tucker, 1969, ApJ, 157, 1157

熱的安定性 : 高温プラズマの冷却 2 Sutherland & Dopita, 1993, ApJS, 88, 253 熱的安定性 : 高温プラズマの冷却 2 Sutherland & Dopita, 1993, ApJS, 88, 253 高温プラズマの冷却過程と冷却曲線、NEQ:非平衡。

熱的安定性 : 高温プラズマの冷却、金属量への依存性 熱的安定性 : 高温プラズマの冷却、金属量への依存性 Bohringer and Hensler 1989, A&A, 215, 147 高温プラズマの冷却過程と冷却曲線の金属量依存性。

熱的安定性 : 星間ガスの冷却曲線 <10,000K Dalgarno&McCray 1972 (ARAA, 10, 375)

熱的安定性 : 星間ガスの冷却曲線 C+, Si+, Fe+ の電子による衝突励起 C+, Si+, Fe+ の中性水素による衝突励起 熱的安定性 : 星間ガスの冷却曲線 C+, Si+, Fe+ の電子による衝突励起 C+, Si+, Fe+ の中性水素による衝突励起 Dalgarno&McCray 1972 (ARAA, 10, 375)

熱的安定性 : 宇宙初期で金属量が低い時には水素分子が冷却に効く。 熱的安定性 : 宇宙初期で金属量が低い時には水素分子が冷却に効く。 Free-Free H2 He H Fuller&Couchman 2000 (ApJ, 544, 6)

熱的安定性 : 分子ガスの冷却曲線 Goldsmith & Langer, 1978, ApJ, 222, 881

熱的安定性 : 冷却率と加熱率のつりあう点=平衡状態として存在できる 熱的安定性 : 冷却率と加熱率のつりあう点=平衡状態として存在できる 加熱率を10倍した場合、低温のモードでは周りの圧力より大きくなる。 銀河系ディスク面での典型的圧力 銀河系ディスク面での典型的磁気圧 低温の 中性水素ガス 温度が <100K になると CII の冷却が効かなくなりそれ以上冷却できない。 高温の 中性水素ガス 圧力平衡にある場合この領域では不安定:密度が少し高くなってカーブの上に出た場合、冷却率が加熱率を上回り、温度が下がり密度がさらに高くなる。 密度が薄いところではCII, OI の輝線の冷却は効かず Lya の冷却が効き始める 10^4 K まで加熱される。 Cox et al. 2005, ARAA, 43, 337

熱的安定性 : 加熱率と冷却率の比較(太陽系近傍の中性水素ガス成分のモデル) 熱的安定性 : 加熱率と冷却率の比較(太陽系近傍の中性水素ガス成分のモデル) Heating curves (dashed-lines): PE: Photoelectric heating from small grains and PAHs XR: EUV and X-ray heating CR: Cosmic-ray heating CI: Photoionization of C Cooling curves (solid-lines): CII: [CII]158um line OI: [OI] 63um line Rec: Recombination onto small grains and PAHs Lya: Lya plus metastable transitions CI*: [CI] 609um line CI**: [CI] 370um line 下図はそこから得られる温度と電離度を密度の関数として書かれたもの。 Wolfire et al. 2003 (ApJ, 587, 278)

熱的安定性 : どのような状態が安定かは加熱源の強度で変化する。 熱的安定性 : どのような状態が安定かは加熱源の強度で変化する。 Wolfire et al. 2003 (ApJ, 587, 278)