松下 恭子 (東京理科大学) 粟木 久光 (愛媛大学) 根来 均 (日本大学 ) 観測提案準備の手引き 松下 恭子 (東京理科大学) 粟木 久光 (愛媛大学) 根来 均 (日本大学 )
目次 よいプロポーザルとは Proposal, 特にCover page の書き方 Feasibility Study XRSを活用するとは どのような物理的パラメーターが測定できるか Simulation されたスペクトルの例
よいプロポーザルとは 科学的目標の重要性、独創性 どのような結果がでれば、何がわかるかが明確 適当な観測時間(普通は≦100ks)で実現可能 解析が終わればすぐにでも論文がかけそうか 適当な観測時間(普通は≦100ks)で実現可能 Feasibility study がきちんと行われていること かなり明るくないと厳しい XRSの視野、観測時期の制限に注意 Astro-E2を活用する観測 特に今回は、XRSでなければできないこと
Cover Page の書き方 検出器のモード 観測対象の座標も間違えないように XIS ~10 cts/XIS以下の場合 defaultでよい それより明るい場合は、 pile up や telemetry saturation を考えてmode/optionを選択 XRS ~20 cts/XRS以下の場合 default でよい それより明るい場合は、適切なfilterを選択 観測対象の座標も間違えないように
Feasibility Study PIMMS and WebPIMMS count rate の計算 XSPEC and WebSPEC spectrumのsimulation xrssim spectrum, imageなども含んだ full simulation Viewing 観測可能期間を調べることができる (衛星の太陽電池パネルと太陽の角度に制限) 同時観測など観測日等に制限がかかるものは注意 MAKI 画像上で検出器の視野を決められる 観測可能な衛星のロール角を調べることができる
WebPIMMS http://heasarc.gsfc.nasa.gov/Tools/w3pimms.html Flux, model, 衛星名を入力 ⇒ 各検出器の予想count rateを計算
WebPIMMS http://heasarc.gsfc.nasa.gov/Tools/w3pimms.html Flux, model, 衛星名を入力 ⇒ 各検出器の予想count rateを計算
WebSPEC http://heasarc.gsfc.nasa.gov/webspec/webspec.html 検出器、flux, modelを選択⇒model parameter の設定 ⇒spectrumをsimulate Simulateしたスペクトル、レスポンスなどをダウンロード可能
WebSPEC http://heasarc.gsfc.nasa.gov/webspec/webspec.html 検出器、flux, modelを選択⇒model parameter の設定 ⇒spectrumをsimulate Simulateしたスペクトル、レスポンスなどをダウンロード可能
XSPEC http://heasarc.gsfc.nasa.gov/docs/xanadu/xspec/index.html スペクトルのシミュレーションができる WebSPECでシミュレートしたスペクトル、レスポンスなどをダウンロードしてXSPECで解析することも可能
xrssim http://heasarc.gsfc.nasa.gov/docs/astroe/prop_tools/xrssim/xrssim_usage.html Spectrum, imageなどを含んだfull simulation 検出する各X線光子について、 検出した位置、検出したエネルギーなどをシミュレートしてリスト化 現実のデータと全く同じように解析できる 広がった天体の場合は、xrssimを使用するのが望ましいことが多い
広がった天体の場合 XRSの視野より大きな範囲であまりスペクトルや強度変化がない場合 XRSの視野に入るfluxからWebSPEC, XSPECなどでsimulate すればよい。 XRSの視野より小さい範囲でスペクトル、強度が大きく変化する場合 特にその変化の様子を詳しく調べたい場合は、xrssimを用いてきちんとsimulation すべき
xrssim の使い方 XSPECを用いてスペクトルのモデルを作成 作成したスペクトルモデル、広がった天体ならば、chandraの画像なども入力して、mkphlist を走らせ、photon listを作成 作成したphoton listを用いてxrssimを走らせるとsimulateしたevent file ができる。 このevent fileは実データと同じように、xselect, xspec などを用いて解析できる。
Viewing http://heasarc.gsfc.nasa.gov/Tools/Viewing.html 他の望遠鏡との同時観測など観測日が限られる場合に注意
MAKI 宇宙研Astro-E2 web pageより link 予定 既存の画像(Chandra など)にXRS/XISの視野 を重ねて描ける ロール角を決めるのに 便利 Chandra image XRSの視野 ロール角をここで指定
よいプロポーザルとは 科学的目標の重要性、独創性 どのような結果がでれば、何がわかるかが明確 適当な観測時間(普通は≦100ks)で実現可能 解析が終わればすぐにでも論文がかけそうか 適当な観測時間(普通は≦100ks)で実現可能 Feasibility study がきちんと行われていること かなり明るくないと厳しい XRSの視野、観測時期の制限に注意 Astro-E2を活用する観測 特に今回は、XRSでなければできないこと
XRSを活用するとは どのような物理的パラメーターが測定できるか シミュレーションしたスペクトル プラズマ診断 速度場測定 シミュレーションしたスペクトル プラズマ診断 輝線(H-like, He-like ionなどから)の強度比 プラズマ温度、密度、電離状態、光電離度、共鳴散乱、重元素の組成比 (参考書「X-ray Spectroscopy in Astrophysics」, ed. Paradijs and Bleeker, Springer) 広がったプラズマのスペクトルの例 速度場測定 銀河団の場合と、超新星残骸の場合 点源(活動銀河核やX線星など)の場合の例
XRSの特徴 利点 欠点 高エネルギーでのエネルギー分解能と大きな有効面積 広がった天体の分光 Mg, Si, S, Fe などの輝線の診断に威力 広がった天体の分光 欠点 位置分解能は、Chandra, XMMにはるかに劣る 点源、またはコンパクトな天体のエネルギーが低い領域はRGSに劣る
エネルギー分解能(eV)の比較 Energy (keV)
有効面積の比較
高温プラズマからのX線放射 連続成分 輝線(高電離したイオンから) 観測データ(CCD) 制動放射 自由ー束縛放射 束縛ー束縛放射 モデル 制動放射 自由ー束縛放射 輝線(高電離したイオンから) 束縛ー束縛放射 モデル 自由な電子 自由ー束縛放射 エネルギー準位1 銀河団からのX線スペクトル エネルギー準位2 束縛ー束縛放射 エネルギー(keV) ⇒温度、密度、重元素の組成
プラズマ診断 輝線の強度は、温度、(密度)、電離度、共鳴散乱、重元素の組成比などに依存 電離平衡な薄いプラズマの酸素の輝線強度の温度依存性 輝線の強度は、温度、(密度)、電離度、共鳴散乱、重元素の組成比などに依存 輝線の強度比などから、温度分布などの物理的パラメーターに制限 エネルギー準位 n=2→1 エネルギー準位 n=3→1
プラズマ診断 Centaurus Cluster He-like Fe-K XRSのシミュレーション 図提供:古庄多恵(JAXA)
He like ionの輝線からの診断 w (E1) y x Z(M1) He like ion の エネルギー準位 resonance forbidden intercombination y x (E1)(M2) Z(M1) Li like Fe Porquet and Dubau 2000, A&AS, 143, 495 図提供:古庄多恵(JAXA)
プラズマ診断(温度) w yx Z G ratio=(z+(x+y))/w 電離平衡なプラズマでの輝線強度比の温度依存性 図提供:古庄多恵(JAXA) G ratio=(z+(x+y))/w Lyα/R=H-like Lyα/ He like Ly α X-ray spectroscopy in Astrophysics, Paradijs, Bleeker, Springer
プラズマ診断(電離状態) XRSで観測すると 衝撃波などでプラズマが過熱された場合、電離平衡に達するには時間がかかる。 τ = ne×t logτ=10.0-電離非平衡 logτ=13.0 ほぼ電離平衡 XRSで観測すると
プラズマ診断(密度) w yx R ratio= z/(x+y) Z Electron density に依存 Resonance Intercombination Forbidden yx Z 図提供:古庄多恵(JAXA) X-ray spectroscopy in Astrophysics, Paradijs, Bleeker, Springer
プラズマ診断(光電離度) w yx Z 光電離 G ratio=(z+(x+y))/w G ratio=(z+(x+y))/w 図提供:古庄多恵(JAXA) G ratio=(z+(x+y))/w Porquet and Debau, 2000, A&AS, 143, 495
プラズマ診断(共鳴散乱) resonance lines ─ 共鳴散乱を受ける 共鳴散乱とは 輝線と同じエネルギーの光子を吸収、再放出 =散乱 プラズマ内の速度分布に依存 ⇒乱流状態がわかる resonance line/forbidden lineの比、resonance line同士でも共鳴散乱を受けやすい輝線と受けにくい輝線の比(例えばKβ/Kα)
Perseus clusterの共鳴散乱 乱流がなければ、銀河団中心で共鳴散乱が起きるはず。 XMMのCCDでは、共鳴散乱の効果は観測されなかった(Churazov et al. 2004) ⇒ 激しい乱流が起きている? He-like Fe Kα H-like Kα Churazov et al. (2004), MNRAS, 347,29 乱流なし 激しい乱流 Ni Kα+Fe Kβ +Kβから求めたZFe/Kαから求めたZFe Ni Kαの寄与は間違いないか?
プラズマ診断(重元素の組成比) プラズマの温度 (プラズマ密度) プラズマの電離状態 共鳴散乱 ⇒ 重元素の組成比
広がった天体のポイント 6 eVのスペクトル分解能 高エネルギーでの大きな有効面積 大きく広がった天体は、回折格子では無理 半径1‘以内 100ksのXRSのシミュレーション
XRSのスペクトルの例(A2199) 2.9×10-11 erg/cm2/s, 3.7 keV, Z~0.6 solar, 100ks 図提供:田村隆幸(JAXA)
銀河群中心の楕円銀河のスペクトル(Mg) H-like Kα NGC 4636 200ks CCD He-like Kα
Cold Front (A3667) On going merger? Shock ではなく cold front 1400km/sで移動? (Vikhlinin et al. 2001,ApJ,551,160) 輝度 温度
銀河団ガスの速度場診断 A3667 Cold front 1400km/sの速度? XRSの視野 Fe-Kのスペクトル 図提供:古庄多恵(JAXA) Fe-Kのスペクトル 2つの領域の速度差が700km/sとする XRSの視野
銀河団ガスの速度場診断 A2256 1st peak 4.7×10-13 erg/s/arcmin-2 6.2keV 18000km/s 50ks 2ndpeak 3.4×10-13 4.8keV 16000km/s 100ks Fe-Kのスペクトル 図提供:山崎典子(JAXA))
点源の観測のポイント Fe (もしくは他の重元素) のK殻の輝線や吸収線で初めて分かるサイエンス Chandra, XMM-Newton と比べ、XRS は、 エネルギー分解能が 2-3 keV 以上で優れている 有効面積が大きい(短時間変動が追える)
PV観測の提案からのヒント (% は Star+Binary+AGN の約 60 の観測提案に占める割合) He-like Fe Triplet Line (Te, Ti, r, …) (Star, WD, …, ~15 %) Plasma Diagnostic (-> Z, T, x, …) (Sy2, Pulsar.., ~ 8 %) Fe Line (v, T, g, .. ; origin/location of emitter/reflector, wind..) Disk Line (BHC, AGN, ~27 %) Kepler motion of gas, orbital motion of a star, gas motion.. (All, ~32%) Thermal Broadening (All) Compton Shoulder (Binary, AGN) Fe Absorption (-> NH, v, T, x, …; outflow.. ) P-Cygni Profile (Binary, AGN) (single) Absorption Line (Binary, AGN, ~ 10 %) Warm absorber, UTA (Unresolved Transition Array) (AGN, Binary) Time Variable (~ 5 %)
よいプロポーザルとは 科学的目標の重要性、独創性 どのような結果がでれば、何がわかるかが明確 適当な観測時間(普通は≦100ks)で実現可能 解析が終わればすぐにでも論文がかけそうか 適当な観測時間(普通は≦100ks)で実現可能 Feasibility study がきちんと行われていること かなり明るくないと厳しい XRSの視野、観測時期の制限に注意 Astro-E2を活用する観測 特に今回は、XRSでなければできないこと