TES型X線マイクロカロリメータの 性能向上を目指した性能評価と ノイズ抑制の研究

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TES型X線マイクロカロリメータの 性能向上を目指した性能評価と ノイズ抑制の研究 宇宙物理実験研究室 赤松 弘規 修士論文内容 性能の良い素子の特性評価 γ線カロリメータの特性評価 ノイズ抑制を目指した素子の特性評価 TES型X線マイクロカロリメータの性能向上を目指した性能評価とノイズ抑制の研究という題目で発表します。 宇宙物理実験研究室の赤松です。 よろしくお願いします。 2009/1/22 2008年度修士論文発表会

目次 研究背景 TESカロリメータの動作原理 実験装置と測定方法 複素インピーダンス 評価結果 まとめと今後の課題 本日の発表内容ですが、はじめに研究背景と目的を紹介し、 次に研究対象であるTESカロリメータの原理について、その後測定方法についてのべ 実際に測定した結果をもとに考察を行います。 最後に、まとめと今後の課題についてお話します。 2009/1/22 2008年度修士論文発表会

1.研究背景 X線マイクロカロリメータが有力候補 TES型X線マイクロカロリメータ 0.1~10 keVのX線領域 : 様々な元素の輝線が存在  将来のX線分光装置への要求 微細構造線の分離 ⇒ 数 eVのエネルギー分解能 広がった天体の観測 ⇒ 広視野撮像能力 X線マイクロカロリメータが有力候補 次世代X線天文衛星 (DIOS : Diffuse Intergalactic Oxygen Surveyor)  中高温銀河間物質(Missing baryon)の大規模構造を探る 搭載X線分光装置への要求 (Tawara+,SPIE,2008)  エネルギー分解能 2 eV 広視野撮像能力 ⇒ 256素子のアレイ化 DIOS衛星 (PI:大橋) 2015年打ち上げを提案中 天文学において、0.1 – 10keVの軟X線領域には様々な元素の輝線が存在します。 宇宙の高エネルギー現象を知る上で、X線分光観測はとても有力な手段であるといえます。 今後、X線分光装置には、輝線の微細構造分離のために数eVのエネルギー分解能、 広がった天体を観測するための広視野撮像能力が求められます。 そのような要求を満たす検出器として、X線マイクロカロリメータが有力な候補となっています。 X線マイクロカロリメータを搭載予定の衛星として、DIOS衛星があります。 DIOS衛星は、2015年打ち上げ予定で銀河間物質の分布を明らかにすることで大規模構造を探ることを目指す衛星です。 DIOS衛星に搭載するX線分光装置には、以下のような要求があります。 このような要求を満たすX線検出器として、我々はTES型X線マイクロカロリメータの開発を行っています。 1.5 m 5.9 m TES型X線マイクロカロリメータ 2008年度修士論文発表会 2009/1/22

2.TESカロリメータの動作原理 エネルギー分解能 X線マイクロカロリメータ TES(Transition Edge Sensor) 2009/1/22 2008年度修士論文発表会 X線マイクロカロリメータ   X線光子のエネルギーを   素子の温度上昇として感知  エネルギー分解能 Ts TES(Transition Edge Sensor) 超伝導遷移端の急激な抵抗   変化を利用した温度計 TESの感度を表すパラメータ では、TES型X線マイクロカロリメータについて説明します。 X線マイクロカロリメータとは、X線光子のエネルギーを素子の温度上昇として感知するX線検出器です。 X線マイクロカロリメータのエネルギー分解能は、こちらの式で表すことができ、 素子の温度T、熱容量C、温度計の感度αに依存しています。 こちらの図が、X線カロリメータの模式図で温度計の上にX線吸収体があり、適度に悪い熱伝導度で低温の熱浴とつながっています。 Xカロリメータのエネルギー分解能は温度計の感度に依存していますので、感度の良い温度計をもちいることで分解能も良くなります。 その為我々は常伝導状態から超伝導状態へと遷移する最中の急激な抵抗変化を用いるTransition Edge Sensorを 温度系として用いています。 こちらの図で示すように、常伝導状態から超伝導状態へと遷移する最中に動作点を取ることで、非常に高い感度が得られます。 TESの感度をあらわすパラメータとして、温度感度α、電流感度β、実効的な温度感度αえfが存在します。 これらのパラメータはTESカロリメータのエネルギー分解能を知る上で必須の情報になりますが、 X線パルスからではTESカロリメータのパラメータであるα、β、Cの分離が困難です。 理論的分解能を知る上で必須だが、 X線パルスからではパラメータ α、β、C の分離が困難

これまでの結果 Ti/Au TESカロリメータをIn-house 製作(首都大&宇宙研)   エネルギー分解能 4.8 eV @ 5.9 keV (Yoshino+,JLTP, 2008) 分解能を制限している原因は? ⇒従来の理論モデルでは  説明できない超過ノイズの存在 TMU146-4dのエネルギー分解能内訳 ΔEベースライン 4.1 eV ΔETES 3.5 eV ΔEreadout 2.1 eV 超過ノイズ Johnson noise   TESの抵抗による熱雑音 Phonon noise   TES-熱浴間の熱的ノイズ 読み出しノイズ 観測ノイズ 我々の研究グループでは、DIOS衛星搭載へ向けTESカロリメータの開発を行っています。 これまでに、首都大と宇宙研でin-house製作を行うことが可能になり、 エネルギー分解能においても5.9keVの入射X線に対し4.8eVの性能を達成しました。 TESカロリメータは原理的には1eVのエネルギー分解能を達成することが可能ですが、 エネルギー分解能を制限しているのは素子由来のノイズでは説明できない超過ノイズの存在があります。 こちらの図が現在最も良い性能を示しているTMU146-4d素子のノイズスペクトルと そのノイズスペクトルの内訳になっています。 TESカロリメータのノイズ成分には、TESと熱浴間での熱揺らぎによる熱的ノイズと TESの抵抗による熱雑音に加えて読み出しノイズが存在します。 この様に、理論的なノイズでは再現できていないのがわかります。 ノイズの打ち明けとしては、読み出しノイズが2eV、その他TESカロリメータ由来のノイズが3.5eVとなります。 Phonon noise 読み出しノイズ Johnson noise 2009/1/22 2008年度修士論文発表会

本研究の目的 TESカロリメータの特性評価方法の確立 性能を制限している原因の追及 超過ノイズの振る舞いの評価 他機関での超過ノイズの原因候補 (Irwin & Hilton 2006 ) クーパー対の揺らぎ 渦糸数密度の揺らぎ 超伝導・常伝導の状態揺らぎ 超伝導体を用いるTES特有 原因解明と振る舞いの理解が急務 このような超過ノイズの原因と考えられるのが、TES内部のクーパー対の揺らぎや、 渦糸の数密度の揺らぎ、そして超伝導、常伝導の状態揺らぎがあると考えられます。 これらは、温度系に超伝導体を用いるTES特有の現象で、 その原因解明と振る舞いの理解が急務になります。 そこで、本研究では、ノイズを抑制することで、TES本来のエネルギー分解能達成を目指します。 その為に、TESカロリメータの特性評価方法の確立、 性能制限している原因の追及、超過ノイズの振る舞いの評価を行います。 我々の素子でも同様な性質の超過ノイズが存在するか検証 2009/1/22 2008年度修士論文発表会

3.実験装置と測定方法 希釈冷凍機 (OXFORD社製) TMU146-4d Tc=102 mK 二段転移気味 Yoshino +,JLTP, 2008 Ti(35nm)/Au(100 nm)TES 200 μm□ 120 μm□1.5μm 厚 Au 吸収体 TMU146-4d 抵抗値 [m Ω] 124 cm ここから、TESカロリメータの複素インピーダンスを測定するのに用いた実験装置と測定方法についてお話します。 私は、希釈冷凍機を用いてTESカロリメータを100mK以下の極低温まで冷却しました。 また測定した素子ですが、TMU146-4dとな図蹴られています。こちらに拡大写真を示します。 中心に移っているのが、金のX線吸収体でその周りにチタンと金の二層薄膜で構成されるTESカロリメータがあります。 TMU146-4dは5.9keVの入射X線に対し、4.8eVのエネルギー分解能を達成しています。 今回は、このTMU146-4dのインピーダンス測定についてお話します。 熱浴温度 [m K] Tc=102 mK 二段転移気味 2009/1/22 2008年度修士論文発表会

4.TESカロリメータの複素インピーダンス f インピーダンスからパラメータを決定可能 温度計 T 、熱容量C 熱伝導度 G 低温熱浴 Ts Lindeman + 2004 温度計 T 、熱容量C 熱伝導度 G 低温熱浴 Ts 吸収体 周波数が0の インピーダンス 実効的な 時定数 周波数が∞の インピーダンス フィードバックの ループゲイン 素子の熱的な応答分だけ フィードバックが遅れていく フィードバックが追い付かず ただの抵抗と見なせる ここでは、TESカロリメータの特性を評価する方法として複素インピーダンスを用いた評価方法について説明します。 Lindemanによって、TESカロリメータの複素インピーダンスにモデルから求めた複素インピーダンスをフィットすることで 特性パラメータが制度良く決定できることが報告されました。 こちらが用いたTESの熱モデルでこのモデルと電気回路から求めた複素インピーダンスがこちらの式になります。 ここで、Z0は周波数が0の時のインピーダンス、Z8が周波数無限大の極限のインピーダンス、τが実効的な素子の自定数になります。 この複素インピーダンスをプロットするとこの様な図になります。一番左が、複素平面上で、左から右へ周波数が大きくなっています。 また真中が、周波数と虚部のプロットでTESカロリメータにかかっているフィードバックの位相遅れをしめしています。 左が、実部と周波数のプロットではじめは、フィードバックが十分にきいていて負の値を示していますが、 だんだんとフィードバックが利かなくなり、高周波数ではただの抵抗としてみなすことができます。 虚部 虚部 実部 f フィードバックにより、 負の抵抗として見える 実部 周波数 (Hz) 周波数 (Hz) 2009/1/22 2008年度修士論文発表会

測定回路 Z(f)=V(f)/ I(f) ローパスフィルタ(< 34 kHz) 希釈冷凍機 フィルタ BOX TES SQUID ホワイトノイズ I R Rb=15 kΩ Rs= 4.4mΩ ホワイトノイズ 発生器 Vb Cb=2400 pF Ls SQUID ホワイトノイズ発生器 フィルタBOX Z(f)=V(f)/ I(f) ホワイトノイズ 発生器 こちらの回路図がTESカロリメータのインピーダンス測定時の電気回路になります。 複素インピーダンスは、周波数空間においての入力と出力の比で定義されています。 先ほどお見せしたように、TESカロリメータの複素インピーダンスは周波数依存性を持っているので、 幅広い周波数帯域で測定を行うことで、より正確に複素インピーダンスの情報が得られるので、 どの周波数でも出力が一定のホワイトノイズを入力として用いています。 下の図が実際の実験セットアップとブロック図になります。 ホワイトノイズ発生機で作ったホワイトノイズはフィルターボックスを経てTESへと入力されます。 TESの出力は、SQUIDを関して読み出されADCボードで時空間上でデータ取得されます。 V (t),I (t):実数を フーリエ変換後の V (f), I (f) は複素数 入力V (t) フィルタ BOX 入力V (t) 出力 I (t) デジタル オシロ TES 希釈冷凍機 SQUID オシロスコープ 2009/1/22 2008年度修士論文発表会

Sample Number (サンプル時間) 時系列データの取得方法 ADCボードで時空間のデータを取得しフーリエ変換して評価 Sample Rate Sample Number (サンプル時間) Records = 平均数 Band Width 入力ノイズ 200 kHz 10k (50 ms) 340 50 kHz 2 Vpp 入力コイルカットオフ Rs/Ls = 5.7 kHz SQUID出力 (=50k V/A×TES電流) フィルタ BOX(34 kHz) オシロのBand Width ではここで、ADCボード上で取得する時のデータ取得の設定についてお話します。 先ほど述べたようにTESの出力と入力ホワイトノイズはADCボード上で時空間のデータを取得し、そのデータをフーリエ変換し パワースペクトルの形に変換してから評価を行っています。 この表のような設定で入力、出力のデータを取得しています。 図に実際に取得した入力と出力のパワースペクトルを示します。 青が、入力ホワイトノイズ、赤がSQUIDで読み出したTESの出力になります。 入力ホワイトノイズは、エイリアシングの影響を考慮し十分早い周波数で減衰するようにしました。 また、TES出力の方が早い周波数で落ちているのは、SQUIDへの入力コイルによるカットオフが見えているからです。 これらの比を取ることで、TESカロリメータの複素インピーダンスが得られます。 入力ノイズ Sample Rate より高い周波数成分を十分に落とすため TESが超伝導のときの 入力/出力のパワースペクトル これらの効果を補正して、 TES インピーダンスを計算。 周波数 (Hz) 2009/1/22 2008年度修士論文発表会

5.評価結果 複素インピーダンス R 小 (超伝導) R 大 25箇所の異なる抵抗値でインピーダンスを測定 5.評価結果 複素インピーダンス 25箇所の異なる抵抗値でインピーダンスを測定 R = 8~120 mΩ 測定された ZTES (複素平面上) R 小 (超伝導) 高周波側 40 kHz 低周波側 20 Hz 虚部 モデルインピーダンスをフィットすることで α、β、Cが得られる では、実際に測定したTMU146-4d素子の複素インピーダンスを見ていただきます。 こちらの図が測定された複素インピーダンスです。抵抗値の異なる34か所の動作点でインピーダンスを測定しました。 たくさんの半円がありますが、半径が大きい半円が抵抗値の大きな動作点を示し、半径が小さい半円ほど抵抗値が小さいことを示しています。 こちらの端が低周波側を示し、こちら側が高周波側を示しています。 このインピーダンスは先ほどお見せしたモデルから見知いびいたインピーダンスで説明することができます。 よって、この測定インピーダンスにモデルインピーダンスをフィットすることで、TESのパラメータである Α、β、Cが得られます。 R 大 実部 2009/1/22 2008年度修士論文発表会

5.評価結果 複素インピーダンス R 小 (超伝導) R 大 25箇所の異なる抵抗値でインピーダンスを測定 5.評価結果 複素インピーダンス 25箇所の異なる抵抗値でインピーダンスを測定 R = 8~120 mΩ 測定された ZTES (複素平面上) R 小 (超伝導) 高周波側 40 kHz 低周波側 20 Hz 虚部 モデルインピーダンスをフィットすることで α、β、Cが得られる では、実際に測定したTMU146-4d素子の複素インピーダンスを見ていただきます。 こちらの図が測定された複素インピーダンスです。抵抗値の異なる34か所の動作点でインピーダンスを測定しました。 たくさんの半円がありますが、半径が大きい半円が抵抗値の大きな動作点を示し、半径が小さい半円ほど抵抗値が小さいことを示しています。 こちらの端が低周波側を示し、こちら側が高周波側を示しています。 このインピーダンスは先ほどお見せしたモデルから見知いびいたインピーダンスで説明することができます。 よって、この測定インピーダンスにモデルインピーダンスをフィットすることで、TESのパラメータである Α、β、Cが得られます。 R 大 実部 2009/1/22 2008年度修士論文発表会

パラメータの抵抗値依存性 温度感度 α 電流感度 β C R/Rn 120 100 80 60 動作点でのパラメータを用いてノイズ解析 40  パラメータの抵抗値依存性  120 温度感度 100 80 60 α 動作点でのパラメータを用いてノイズ解析 40 20 1.2 1.0 電流感度 0.8 0.6 β 0.4 0.2 熱容量Cは遷移中で 常伝導状態に近い値 こちらが、実際に得られたTESのパラメータの抵抗値依存性になります。上から温度感度α、電流感度β、素子の熱容量Cになります。 横軸は、常伝導抵抗で規格化した抵抗値になっています。 熱容量で二本の実線がありますが、ピンクがTESが完全に常伝導状態だと仮定した時の熱容量、青が超伝導状態を仮定した時の値です。 TMU1464dでは、ほぼ常伝導状態で遷移が進み、最後に超伝導状態へと急速に遷移するのがみてとれます。 TESカロリメータの特性パラメータが得られたので、動作点のパラメータを用いてノイズ解析を行いました。 0.4 0.3 TESが超伝導を仮定 C [pJ/K] 0.2 TESが常伝導を仮定 0.1 0.0 0.0 0.5 1.0 2009/1/22 2008年度修士論文発表会 R/Rn 常伝導状態の抵抗値で規格化

X線照射時の動作点におけるノイズ解析 ノイズ総和 得たパラメータ(α、β、C)を用いて理論式でノイズスペクトルを評価 超過ノイズ 理論モデルと読み出しノイズのみでは 観測したノイズスペクトルを説明できない 超過ノイズ Phonon Noiseと 同じ周波数依存性 Johnson Noise TESの抵抗の熱雑音 Phonon Noise TESと熱浴間の熱的ノイズ ノイズ総和 再現できていない 超過ノイズ Johnson Noiseと 同じ周波数依存性 超過ノイズ Johnson Noiseと 同じ周波数依存性 先ほどの値をもちいて理論式で、ノイズスペクトルを評価しました。 青がTESの抵抗による熱雑音で、マゼンタがTESと熱浴間の熱的なノイズになります。 緑が観測ノイズですが、小さい方が読み出しノイズをしめしています。 黒が、読み出しノイズを含めないノイズの総和になります。 全体的にノイズが再現できていないのがわかります。 そこで、Johnsonノイズと同じ周波数依存性を持つ超過ノイズ成分を導入しました。 それが、こちらになります。高周波がわは会うようになりましたが、低周波側が再現できていません。 今度はPhononノイズと同じ周波数依存性を持つ超過ノイズ成分を導入して評価しました。 その結果がこちらになります。では次に各ノイズのエネルギー分解能への寄与をお見せします。 Johnson Noise TESの抵抗の熱雑音 Johnson Noise TESの抵抗の熱雑音 Phonon Noise TESと熱浴間の熱的ノイズ Phonon Noise TESと熱浴間の熱的ノイズ 2009/1/22 2008年度修士論文発表会

TMU146-4dのエネルギー分解能内訳 二種類の超過ノイズ成分の存在を確認 Excess Johnson 1.44 eV Excess Phonon 2.77 eV ΔEベースライン 4.1 eV ΔETES 3.5 eV ΔEreadout 2.1 eV 超過ノイズ 3.12 eV Johnson noise 1.08 eV Phonon noise 1.16 eV 読み出しノイズ Conventional noise 1.61 eV TMU146-4d素子では、ノイズから計算されるベースライン分解能が4.1eVあります。その中の2.1 eVが読み出しノイズで 残りの3.5 eVがTESから発生しているノイズになります。 その中の大部分が超過ノイズ成分によるものであるということが今回確認できました。 超過ノイズにも二種類の成分が存在することを今回初めて明らかにしました。 特に、Johnsonノイズと同じ周波数依存性を持つノイズ成分が大きな影響を与えていることがわかりました。 次に、分解能を制限しているJohnsonノイズと同じ周波数依存性をもつ超過ノイズの振る舞いについて 得た結果についてお話します。 今回の評価より、超過ノイズが全くない場合のTESノイズの分解能への寄与は1.68eVになります。 二種類の超過ノイズ成分の存在を確認 2009/1/22 2008年度修士論文発表会

Phonon noise 的な超過ノイズ コリメータを用いてTESのみにX線照射 冷凍機の温度安定度を改善 エネルギー分解能に最も大きな寄与(2.77 eV) 原因 ⇒ 素子の温度揺らぎ X線あるいは外部輻射がTES以外の部分に照射 or 熱浴温度の揺らぎ 実験セットアップで対応可能 コリメータを用いてTESのみにX線照射 冷凍機の温度安定度を改善 2009/1/22 2008年度修士論文発表会

超過ノイズ [A/√Hz] = M × Johnson Noise [A/√Hz] 他機関ではこちらだけ観測され大きな寄与 原因未解明⇐振る舞いの理解が重要 超過ノイズ [A/√Hz] = M × Johnson Noise [A/√Hz] ( Ullom + APL 2004 ) M Johnsonノイズと同じ周波数依存性を持つ超過ノイズ成分をこの様に、JohnsonノイズのM倍という形で定義し、 各動作点で評価を行いました。 こちらがえられた結果で、M因子はTESの抵抗値ではなく、温度感度と相関があることが明らかになりました。 図中の赤線は上が――下が異なる金属をTESとして用いているアメリカNISTでの結果になります。 我々の結果もNISTの結果と良く一致するといえます。 では、これらの結果を踏まえて考察を行います。 ノイズスペクトルの再現性が誤差の主要なもの ばらつき程度の誤差が存在する NIST(アメリカ)の素子のM因子の振る舞いと似た傾向 温度感度 α 2009/1/22 2008年度修士論文発表会

6.測定結果のまとめ インピーダンスを用いてTESのパラメータを評価 する方法を確立 TMU146-4dのα、β、Cを評価 Phonon 的とJohnson 的の二種類の超過ノイズがあることを明らかにした Johnson noise 的な超過ノイズの振る舞いを評価(M ~ 0.2α 0.5) 最後にまとめを行います。 今回私は、インピーダンスを用いてTESカロリメータのパラメータ評価方法を確立しました。 インピーダンス測定を通して得られたパラメータを用いて、超過ノイズの振る舞いを明らかにしました。 今後の課題ですが、超過ノイズを抑制することがエネルギー分解能向上を目指します。 まず、X線による熱揺らぎですが、これはシリコンを用いて製作したコリメータを用いた再実験を二月上旬に予定しています。 さらに、超伝導遷移の非一様性による超過ノイズの抑制ですが、これは現在開発を進めていますが、 素子の上に常伝導金属を付けることで電流の流れる経路を制限することを行っています。 以上です。 2009/1/22 2008年度修士論文発表会

TMU146-4dにおいて、conventional noiseの寄与 1.61 eV 6.今後の課題  TMU146-4dにおいて、conventional noiseの寄与 1.61 eV 超過ノイズの抑制がカギ Phonon noise 的な超過ノイズ成分 ⇒熱的な揺らぎが原因   コリメータを用いてTESのみにX線を照射(2月上旬予定) 冷凍機の温度安定度を改善 Johnson noise 的な超過ノイズ成分 ⇒温度感度αと相関(         )   超伝導遷移が急に進むことで、TES内で遷移の   非一様性が大きくなり、ノイズ源になることを示唆 電流の流れる経路を制限することで非一様性を抑制 読み出しノイズ(2.1 eV 相当)の改善  ここでは、どうしたら分解能向上を行うことができるかを考察します。 TMU146-4dにおいて本来TESのみのノイズのエネルギー分解能への寄与は1.68 eVです。 よって超過ノイズの抑制が分解能工場へ向けてのカギになります。 TMU146-4dの超過ノイズには二種類の成分が存在することがわかりました。 まず、Phononノイズと同じ周波数依存性を持つ超過ノイズ成分ですが、このノイズは 何らかの熱揺らぎが原因で発生していると考えられます。 その候補として、TES以外の部分(たとえば、メンブレンやシリコンフレーム)にX線が入射して発生するというものがあります。 これは、TESに近いぶぶんで、入射X線をコリメーとすることで解決します。 次に、Johnsonノイズと同じ周波数依存性を持つノイズですが、今回超過ノイズの寄与をあらわすM因子と温度感度αとの相関が明らかになりました。 これは、超伝導遷移が急速に進むことで、TES内部の遷移の進み具合に非一様性が発生し、ノイズ源になることを示唆しています。 よって、電流の流れる経路を制限することで超伝導遷移の非一様性を抑制し、超過ノイズによる寄与を減少させます。 2009/1/22 2008年度修士論文発表会

熱揺らぎ対策を行ったTMU146-4d再評価 熱揺らぎ対策 シリコンコリメータ(TMU168用を流用。TESに対して60%の穴) 輻射対策 他の温度領域が見えないようにアルミテープ 2009/1/22 2008年度修士論文発表会

ノイズ抑制を目指した素子開発 電流の流れる経路を制限することで、超伝導遷移の非一様性を解消 電流の 流れる方向 TMU169-01 常伝導金属 2009/1/22 2008年度修士論文発表会

測定した TES型γ線マイクロカロリメータ SII155+Sn スズ ( Z= 50 ) 吸収体貼り付け Stycast2850 630 µm ΔEFWHM=38.4±0.9 eV @ 59 keV (首都大 山川修論 2006、  Oshima et al 2008 ) 670 µm t0.3 mm Am 世界最高レベルの分解能 (世界記録 24 eV @ NIST) Np-L Sn escape Am 0 10 20 30 40 50 60 Energy ( keV ) 2009/1/22 2008年度修士論文発表会

吸収体 – TES間の熱伝導度を考慮した熱モデル SII155+Snのインピーダンス測定結果 測定された ZTES (複素平面上) 吸収体 – TES間の熱伝導度を考慮した熱モデル 吸収体 Ca 熱伝導度 Ga 虚部 [ mΩ ] 温度計 T 、熱容量C 熱伝導度 G 低温熱浴 Ts 実部 [ mΩ ] 虚部 フィットパラメータ 黒:熱伝導度が良い場合 赤:熱伝導度が悪い場合 C Ca Ga 2009/1/22 実部 2008年度修士論文発表会

この動作点 ( R / Rn = 0.33 )のパラメータを用いて SII155+Snのインピーダンス測定結果 すべてのパラメータをfit 温度感度 200 100 1.0 10 5 50 0.0 2.0 α 吸収体の熱容量は一定なはず 物性値で固定 電流感度 β この動作点 ( R / Rn = 0.33 )のパラメータを用いて ノイズ解析 吸収体の熱容量 Ca C、Ca [pJ/K] TESの熱容量 C Ga [μW/K] 吸収体とTES 間の熱伝導度 Ga 0.5 1.0 2009/1/22 2008年度修士論文発表会 R/Rn

Rを5%ふった場合 温度感度 電流感度 2009/1/22 2008年度修士論文発表会

Gを5%ふった場合 2009/1/22 2008年度修士論文発表会

Iを5%ふった場合 2009/1/22 2008年度修士論文発表会

エネルギー分解能へのノイズの寄与 カロリメータのエネルギー分解能(Moseley et al., 1984) パルススペクトル×√f はエネルギー分解能への寄与を 周波数の関数で表している パルススペクトル×√f パルススペクトル 1 kHz以下の周波数が分解能に大きく寄与 2009/1/22 2008年度修士論文発表会

超伝導遷移に関する仮定 遷移の進み方 抵抗が大きい 熱容量の振る舞い 抵抗が小さい C BCS ほぼ超伝導状態 with phase slips Normal R ほぼ常伝導状態 滑らかに遷移が進行 超伝導状態の塊 2009/1/22 2008年度修士論文発表会

エネルギー分解能 (TMU-146) の内訳 熱浴の温度揺らぎ ∝ E ΔEばらつき 2.5 eV 波高値のX線入射位置依存性 ΔEFWHM Unknown noise Johnson noise Phonon noise ・TES - 熱浴間 ΔEベースライン 4.1 eV ΔETES 3.5 eV ΔEreadout 2.1 eV SQUID noise 外乱 noise 2009/1/22 2008年度修士論文発表会

質問 なぜ2eVが必要なのか(住吉先生) ⇒酸素基線を観測したいが、銀河からの酸素の分離を行うため ⇒SQUIDを変えることで可能?? 二段転移はどうにかならんのか(佐藤先生) ⇒薄膜を用いているので、難しい Phononノイズって何、なぜそのような周波数依存性??(青木先生) ⇒答えられなかった。今後報告に行く Phononノイズは物性では別の意味を示す(佐藤先生) 前半と後半で話のつながりが分からない(宮原先生) ⇒特性パラメータを評価するのにインピーダンスが必要 なんで、変な動作点で評価したの??(佐藤先生) ⇒X線照射したのが、この動作点だから(本当はほかだとサチってしまうちうことを言った方が良かった) 2009/1/22 2008年度修士論文発表会

林質問 打ち上げの影響は??良くなれば影響が効いてくるのでは?(宮原先生) アライメントプレートの精度は十分なのか? 去年に比べて位置決め誤差が増えたようににえるが(マサイ先生) すべて入れるとどのようになりますか(住吉先生) 内外でどのような傾向がありますか?(住吉先生) CCDカメラで見た時の形状はなぜできる(青木先生) 他の望遠鏡はないの?(住吉先生) 2009/1/22 2008年度修士論文発表会

白田質問 凹面鏡ではやっていないのですか?(宮原先生) 端がだれているのは、どうにかできないのか?(宮原先生) コメント意味不明(佐藤先生) 弱点は?(東先生) 2009/1/22 2008年度修士論文発表会