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軟エックス線領域での非線形光学効果としてのHe+の2光子電離 2002年3月24日 日本物理学会第57回年次大会 理研レーザー物理工学研究室 石川顕一、緑川克美 ishiken@postman.riken.go.jp Phys. Rev. A65, 043405(2002)

非線形光学効果 理論 1931年 Göppert-Mayer ラジオ波 1959年 Winter 可視光 1961年 光電場に対する物質の応答が、場の強さに非線形に依存する。 理論 1931年 Göppert-Mayer ラジオ波 1959年 Winter 可視光 1961年 Franken et al. (2次高調波) Kaiser and Garrett(2光子励起) VUV 1998年 Kobayashi et al. XUV 2001年 Descamps et al. 高次高調波発生 軟X線 ? ?

高次高調波発生 He2+ He+ 動機:この高輝度パルスを用いて、軟エックス線領域での非線形光学効果を実験的に観測するための系を提案したい。 アルゴンガスからのチタンサファイアレーザーの高次高調波 高橋英治、鍋川康夫、大塚竜也、小原實、緑川克美、応物2001年秋 11a-ZL-1 27次高調波(30nm, 41.85eV) → 〜300nJ, < 30fs 軟エックス線ミラーで10mm2に集光 5×1013W/cm2 40.8 eV 1s 2p He+ 27次高調波 (30nm, 41.85eV) He2+ 電離 動機:この高輝度パルスを用いて、軟エックス線領域での非線形光学効果を実験的に観測するための系を提案したい。 He+の2光子電離

He+の2光子電離確率が満たすべき3つの条件 高確率 軟エックス線の強度の2乗に比例 パルス幅に比例 これらは高強度・超短パルスでは自明でない。 数値計算によってチェック

数値計算モデル 時間依存シュレーディンガー方程式 数値解法 軟エックス線パルスの電場 数値解法 Alternating direction implicit (Peaceman-Rachford) method He2+の収量 r 方向の外側境界に設けたマスク関数によって吸収された電子数として評価

2光子電離確率 ( He2+の収量 ) ACシュタルク効果による飽和が見られる。 27高調波を用いた場合の2光子電離確率は十分高い。 パルス幅(半値全幅)30フェムト秒のガウシアンパルスによる2光子電離確率 ACシュタルク効果による飽和が見られる。     ↓それでも… 27次高調波 に対しては収量は強度の2乗にほぼ比例。 27高調波を用いた場合の2光子電離確率は十分高い。 5.6×10-5 at I = 2×1013W/cm2 3.3×10-4 at I = 5×1013W/cm2

He2+の収量 vs. ピーク強度 1013 W/cm2以上で飽和が見られる。 He+ のポピュレーションが減少するからではない。 gaussian 30fs-27th harmonic pulse “analytical” means, s = 2.9×10-52 cm4s 1013 W/cm2以上で飽和が見られる。 He+ のポピュレーションが減少するからではない。 ACシュタルクシフトによる効果 (Haberland 1987) 27次高調波を用いた場合の2光子電離確率は十分高い。 収量は強度の2乗にほぼ比例。

He2+の収量 vs. パルス幅 of a gaussian 27th harmonic pulse with a peak intensity of 5×1013 W/cm2. パルス幅が5フェムト秒以上の場合、収量はパルス幅に比例 → 自己相関によるパルス幅測定に用いることができる。 もっと短いパルスの場合、比例関係は成り立たない。 デチューニング (41.85-40.8=1.05 eV) に対応する時間の不確定性は2フェムト秒 エネルギーの不確定性による2p 準位の励起

ダブルパルスによる2光子電離 27次高調波→収量はシングルパルスの場合の2倍でない。 強度5×1013 W/cm2、パルス幅1フェムト秒のダブルパルスによるHe2+収量の時間変化 量子力学的効果 2つのパルスの時間間隔 2つのパルスの位相関係 に依存 27次高調波→収量はシングルパルスの場合の2倍でない。 23次高調波(デチューニング大) →収量はシングルパルスの場合の2倍。

ダブルパルスの相対位相に対する依存性 シングルパルス ダブルパルス 位相に依存しない 相対位相 f1 - f2に従って振動 Electric field of double pulse Pulse width = 1 fs, Interval = 4.14824 fs シングルパルス 位相に依存しない ダブルパルス 相対位相 f1 - f2に従って振動    Single pulse: F2(t)=0

パルス間隔に対する依存性 ダブルパルスの電場 !包絡線のみならず電場自体が Dt だけシフト. Dipole moment after single pulse (He+: superposition of 1s and 2p) Pulse width = 1 fs 収量は、第1のパルスが誘起する双極子モーメントと第2のパルスの電場の位相差に依存して振動する。 双極子モーメントの周期は、1sと2p準位のエネルギー差に対応している。

結論 チタンサファイアレーザーの27次高調波によるHe+の2光子電離は、軟エックス線領域での非線形光学効果を実験的に実現するための系として、魅力的な候補である。 断面積大 収量=強度の2乗に比例 収量=パルス幅に比例(5フェムト秒より長い場合) パルス幅が5フェムト秒より短い場合、収量はパルス幅に比例せず、ダブルパルスによるHe2+の収量は、パルス間隔に依存して振動する。 量子力学のテストして利用できる。 当研究室において、実験準備中… Phys. Rev. A65 in press