横浜市総合リハビリテーションセンター 渡邉愼一 福祉用具の安全性の確保 横浜市総合リハビリテーションセンター 渡邉愼一
福祉用具について Ⅰ 現状と課題 【制度の概要】 ○ 福祉用具は、「要介護者等の日常生活の便宜を図るための用具及び要介護者等の機能訓練の Ⅰ 現状と課題 【制度の概要】 ○ 福祉用具は、「要介護者等の日常生活の便宜を図るための用具及び要介護者等の機能訓練の ための用具であって、日常生活の自立を助けるもの」としており、以下のものを対象種目として厚 生労働大臣告示で定めている。 福祉用具貸与 特定福祉用具販売 対象種目 ・車いす(付属品含む) ・特殊寝台(付属品含む) ・床ずれ防止用具 ・体位変換器 ・手すり ・スロープ ・歩行器 ・歩行補助つえ ・認知症老人徘徊感知機器 ・移動用リフト(つり具の部分を除く) ・ 腰掛便座 ・ 特殊尿器 ・ 入浴補助用具(入浴用いす、 浴槽用手すり、浴槽内い す、入浴台、浴室内すのこ、浴槽内すのこ) ・ 簡易浴槽 ・ 移動用リフトのつり具の部分 【給付制度の概要】 ① 貸与の原則 利用者の身体状況や要介護度の変化、福祉用具の機能の向上に応じて、適時・適切な福祉用具を利用者に 提供できるよう、貸与を原則としている。 ② 販売種目(原則年間10万円を限度) 貸与になじまない性質のもの(他人が使用したものを再利用することに心理的抵抗感が伴うもの、使用によっ て形態・品質が変化し、再利用できないもの)は、福祉用具の購入費を保険給付の対象としている。 ③ 現に要した費用 福祉用具の貸与及び購入は、市場の価格競争を通じて適切な価格による給付が行われるよう、保険給付にお ける公定価格を定めず、現に要した費用の額により保険給付する仕組みとしている。 2
○ 福祉用具貸与費用額は、平成18年度以降減少している。 ○ 請求事業所数は、平成18年以降減少を続けている。 【福祉用具貸与の状況①】 ○ 福祉用具貸与費用額は、平成18年度以降減少している。 ○ 請求事業所数は、平成18年以降減少を続けている。 ○ 一事業所当たり費用額は、平成19年に減少したが、平成20年に増加しており、この要因として は、事業所数の減少により相対的に平均費用額が増加したためと考えられる。 (出典)厚生労働省「介護給付費実態調査」 3
平成20年3月サービス分
特定福祉用具販売の給付費(平成20年1月支出決定分) 【特定福祉用具販売の状況】 ○ 福祉用具販売費は、平成18年度に減少に転じた。 ○ この要因としては、平成18年度の改正により、事業者指定制の導入によることが考えられる。 特定福祉用具販売の給付費(介護予防を含む) 99.9 82.9 100.0 109.0 111.6 112.5 20 40 60 80 100 120 平成13年度 平成14年度 平成15年度 平成16年度 平成17年度 平成18年度 (単位:億円) 特定福祉用具販売の給付費(平成20年1月支出決定分) (※)給付費=自己負担分を除く。 (出典)厚生労働省「介護保険事業状況報告」 (※)給付費=自己負担分を除く。 5
介護保険における居宅福祉用具購入費の 対象用具の考え方 1 福祉用具の給付は、対象者の身体の状況、介護の必要度の変化等に応じて用具の交換ができること等の考え方から原則貸与 2 購入費の対象用具は例外的なものであるが、次のような点を判断要素として対象用具を選定する ①他人が使用したものを再利用することに心理的 抵抗感が伴うもの (入浴・排せつ関連用具) ②使用により、もとの形態・品質が変化し、再度利 用できないもの (つり上げ式リフトのつり具)
福祉用具貸与及び購入 1.福祉用具貸与 都道府県知事が福祉用具貸与事業者を指定 支給限度額 : 要介護度別の支給限度基準額の範囲内 都道府県知事が福祉用具貸与事業者を指定 支給限度額 : 要介護度別の支給限度基準額の範囲内 (1割負担) 貸与価格 : 自由価格 2.福祉用具購入 支給限度額 : 10万円(償還払い、1割負担) /同一年度 購入価格 : 自由価格 ◆福祉用具貸与・購入種目は厚生労働大臣告示により規定 告示の改正にあたっては、学識経験者や実務者等で構成す る介護保険福祉用具・住宅改修評価検討会において改正の 妥当性等について検討される。
厚生労働大臣が定める福祉用具貸与に係わる 福祉用具の種目(1) 厚生労働大臣が定める福祉用具貸与に係わる 福祉用具の種目(1) 1 車いす 自走用標準型車いす、普通型電動車いす又は介助用標準型車いすに限る。 2 車いす付属品 クッション、電動補助装置等であって、車いすと一体的に使用されるものに限る。 3 特殊寝台 サイドレールが取り付けてあるもの又は取り付けることが可能なものであって、次に掲げる 機能のいずれかを有するもの 1 背部又は脚部の傾斜角度が調整できる機能 2 床板の高さが無段階に調節できる機能 4 特殊寝台付属品 マットレス、サイドレール等であって、特殊寝台と一体的に使用されるものに限る。 5 床ずれ防止用具 次のいずれかに該当するものに限る。 1 送風装置又は空気圧調整装置を備えた空気マット 2 水等によって減圧による体圧分散効果をもつ全身用のマット 6 体位変換器 空気パッド等を体の下に挿入することにより、居宅要介護者等の体位を容易に変換できる機能 を有するものに限り、体位の保持のみを目的とするものを除く。
厚生労働大臣が定める福祉用具貸与に係わる 福祉用具の種目(2) 厚生労働大臣が定める福祉用具貸与に係わる 福祉用具の種目(2) 7 手すり 取り付けに際し工事を伴わないものに限る。 8 スロープ 段差解消のためのものであって、取付けに際し工事を伴わないものに限る。 9 歩行器 歩行が困難な者の歩行機能を補う機能を有し、移動時に体重を支える構造を有するものであって、 次のいずれかに該当するものに限る。 1 車輪を有するものにあっては、体の前及び左右を囲む把手等を有するもの 2 四脚を有するものにあっては、上肢で保持して移動させることが可能なもの 10 歩行補助つえ 松葉づえ、カナディアン・クラッチ、ロフストランド・クラッチ及び多点杖に限る。 11 認知症高齢者徘徊感知機器 認知症高齢者が屋外へ出ようとした時等、センサーにより感知し、家族、隣人等へ通報するもの 12 移動リフト(つり具の部分を除く) 床走行式、固定式又は据置式であり、かつ、身体をつり上げ又は体重を支える構造を有するものであって、 その構造により、自力での移動が困難な者の移動を補助する機能を有するもの(取付けに住宅の改修を伴う ものを除く。)
厚生労働大臣が定める居宅介護福祉用具購入費等の支給に係る 特定福祉用具の種目 1 腰掛便座 次のいずれかに該当するものに限る。 1 和式便器の上に置いて腰掛式に変換するもの 2 洋式便器の上に置いて高さを補うもの 3 電動式又はスプリング式で便座から立ち上がる際に補助できる機能を有しているもの 4 便座、バケツ等からなり、移動可能である便器(居室において利用可能であるものに限る。) 2 特殊尿器 尿又は便が自動的に吸引されるもので居宅要介護者等又はその介護を行う者が容易に使用できるもの 3 入浴補助用具 座位の保持、浴槽への出入り等の入浴に際しての補助を目的とする用具であって次のいずれかに該当するものに限る。 1 入浴用いす 2 浴槽用手すり 3 浴槽内いす 4 入浴台(浴槽の縁にかけて利用する台であって、浴槽への出入りのためのもの) 5 浴室内すのこ 6 浴槽内すのこ 7 入浴用介助ベルト 4 簡易浴槽 空気式又は折りたたみ式等で容易に移動できるものであって、取水または排水のために工事を伴わないもの 5 移動用リフトのつり具の部分
福祉用具専門相談員 ● 福祉用具貸与・販売事業所 2名以上必置 ●介護福祉士、義肢装具士、保健師、看護師、准看護師、 ● 福祉用具貸与・販売事業所 2名以上必置 ●介護福祉士、義肢装具士、保健師、看護師、准看護師、 理学療法士、作業療法士、社会福祉士又は厚生労働大 臣が指定した講習会(40時間)の課程を修了した者 若しくは都道府県知事がこれと同程度以上の講習を受け たと認める者
公的給付における福祉用具評価システムに関する調査研究報告書 福祉用具の安全性の確保に必要な視点 1.安全を支える標準、規格 2.製造側での安全設計 3.用具の特性、適応範囲、限界などについての情報 4.個々のユーザの場合についての用具の選択 5.身体、生活などとの整合 6.正しい使用・保守などの知識の供給 7.使用状況のフォローアップ 8.再使用の配慮 公的給付における福祉用具評価システムに関する調査研究報告書 (財)テクノエイド協会平成16年度
製造から消費までの流れ 製造業者 貸与業者 消費者 流通事業者 ケアマネジャー 保険者(市町村) 介 護 保 険 制 度 保険 適用 保険 適用 ケアカンファレンス等 ケアプラン 消費者 ケアマネジャー
福祉用具導入プロセス 実 施 者 課 題 再評価 保管・保守 必要性判断(種目の選定) 品目の選定 搬入・取付け・調整 適合性判断 課 題 保管・保守 貸与事業所 解決すべき課題の抽出 福祉用具の種目情報 福祉用具の機能情報 必要性判断(種目の選定) 介護支援専門員 介護支援専門員 福祉用具専門相談員 品目の選定 再評価 搬入・取付け・調整 福祉用具専門相談員等 福祉用具の適合技術 適合性判断 福祉用具専門相談員 生活動作指導・訓練 使い方指導 福祉用具専門相談員 福祉用具専門相談員 介護支援専門員 モニタリング 他機関・他職種との連携 搬出 福祉用具専門相談員等 点検・修理・消毒 貸与事業所 14
福祉用具・住宅改修を活用するために 適 合 使い方説明・指導 生活活動指導・訓練 物的環境 身体機能 介護力 福祉用具 適 合 使い方説明・指導 生活活動指導・訓練 物的環境 身体機能 介護力 福祉用具 自立支援・介護負担の軽減 【生活の継続性】 15
事故予防対策 1.福祉用具の選定・適合 製品を直接見たり触ったりする カタログなどに表示されている仕様情報 マークやその他の第三者評価結果 製品を直接見たり触ったりする カタログなどに表示されている仕様情報 マークやその他の第三者評価結果 ①情報の入手と選択 → 展示会、カタログ、福祉用具情報システム(TAIS) ②製品の安全に関する基準 → ISO、JIS、SG ③適合と安全 → 専門家の関与とチームアプローチ
安全とは 「受容できないリスクのないこと」 事故予防対策 2.使用環境の整備 → 日本家屋、生活環境と使用目的 3.福祉用具の使用 リスク要因の低減 ヒューマンエラー対策 4.福祉用具の保守 安全とは 「受容できないリスクのないこと」 ( freedom from unacceptable risk )」(ISO/IECガイド51)
福祉用具に関わる専門職 ・医師 ・作業療法士 ・理学療法士 ・看護師・保健師 ・福祉用具専門相談員 ・福祉用具プランナー ((財)テクノエイド協会) ・福祉用具供給事業従事者研修 ((社)シルバーサービス振興会)
福祉用具貸与 要介護状態となった場合においても、その利用者が可能な限りその居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、利用者の心身の状況、希望及びその置かれている環境を踏まえた適切な福祉用具の選定の援助、取付け、調整等を行い、福祉用具を貸与することにより、利用者の日常生活上の便宜を図り、その機能訓練に資するとともに、利用者を介護する者の負担の軽減を図るものでなければならない。 (介護保険法指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準)
指定福祉用具貸与の基本取扱方針 □指定福祉用具は、利用者の要介護状態の軽減又は悪化の防止並びに利用者を介護する者の負担の軽減に資するよう、適切に行わなければならない。 □指定福祉用具貸与事業者は、常に、清潔かつ安全で正常な機能を有する福祉用具を貸与しなければならない。 □指定福祉用具貸与事業者は、自ら提供する指定福祉用具貸与の質の評価を行い、常にその改善を図らなければならない。 (介護保険法指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準)
福祉用具のよりよい供給には? 必要性の判断・種目の選定 OT ・ PT 保管・保守 搬入 点検・修理・消毒 搬出 OT・PT 利用者宅 ケアマネ 必要性の判断・種目の選定 OT ・ PT 貸与事業所 福祉用具専門相談員 保管・保守 搬入 点検・修理・消毒 搬出 OT・PT 福祉用具専門相談員 利用者宅 組立て・取付け 調整・使用方法説明 生活動作指導 OT ・ PT 訪問・通所リハビリテーション機能