所得保障の経済学 2016-07-07 労働保険 失業したら、仕事をしていて怪我をしたら
労働保険 労働保険とは労働者災害補償保険(一般に「労災保険」という)と雇用保険とを総称した言葉。 保険給付は両保険制度で別個に行われているが、保険料の納付等については一体のものとして取り扱われている。 労働者(パートタイマー、アルバイト含む)を一人でも雇用していれば、業種・規模の如何を問わず労働保険の適用事業となり、事業主は成立(加入)手続を行い、労働保険料を納付しなければならない(農林水産の一部の事業は除く)。
労働保険 この労働保険制度は、昭和50年に全面適用となってから既に30年余りを経過し、その間に適用事業数は着実に増加し、平成20年度末現在で約296万事業に達しているが、現在においてもなお相当数の未手続事業が存在しているとみられ、このことは、労働保険制度の健全な運営、費用の公平負担、労働者の福祉の向上等の観点から極めて重要な課題となっており、早急な未手続事業の解消が求められている。 このため、厚生労働省では、平成17度から「未手続事業一掃対策」に取り組み、各種事業主団体、個別事業主への訪問指導の強化や、自主的に保険関係の成立(加入)手続を取らない事業主に対しては、積極的な職権での成立手続の実施等を行っている。 ※ 自主的に成立手続が行われない場合は、遡って労働保険料を徴収するほか、併せて追徴金を徴収することになる。 ※ 労災保険未手続事業場に対する罰則が強化された。
労働者を守る保険
労働保険の適用 労災保険 一般の事業所は労働者を使用すれば適用になる (法人・個人、事業所規模にかかわらない) ●適用事業とは 労働保険の適用 労災保険 ●適用事業とは 原則 : 労働者を使用する事業 (事業を開始したときに保険関係が成立する) 適用除外: ・国の直営事業(四現業、印刷、造幣、郵政etc.) ・官公署(非現業の国・地方自治体の事務職) ・船員保険の被保険者 ●暫定任意適用事業とは 個人経営の農林水産業で使用労働者が常時5人未満の事業 (危険作業を伴う一部事業は適用事業) *事業とは 場所的、組織的な独立性、継続性を有する経営組織。 一般の事業所は労働者を使用すれば適用になる (法人・個人、事業所規模にかかわらない)
労働保険の適用 ●労働者とは 『事業に使用される者で、賃金を支払われる者』 ・雇用形態(常用・臨時・パート・アルバイト・日雇)を問わない 労働保険の適用 ●労働者とは 『事業に使用される者で、賃金を支払われる者』 ・雇用形態(常用・臨時・パート・アルバイト・日雇)を問わない ・国籍を問わない(不法就労者も労働者) ●労災保険の労働者とならない者は ・業務執行権のある法人の取締役、中小事業主 ・左官・大工などの一人親方 ・自営業主とその家族従事者 (他の従業員と労働条件が同じで、事業主の指揮のもとで仕事 をしていれば、労働者として認められる) 特別加入の制度で労災保険の適用が受けられる(法人の取締役除く)
労働保険の適用 雇用保険 一般の事業所は労働者を使用すれば適用になる (法人・個人、事業所規模にかかわらない) ●適用事業とは 労働保険の適用 雇用保険 ●適用事業とは 労働者を使用する事業 (事業を開始したときに保険関係 が成立する) ●暫定任意適用事業とは 個人経営の農林水産業で使用労働者が常時5人未満の事業 一般の事業所は労働者を使用すれば適用になる (法人・個人、事業所規模にかかわらない)
労働保険の適用 パートタイマーも一定の条件を満たせば被保険者となる ●被保険者とは 適用事業所に雇用される労働者 ●被保険者とならない者 労働保険の適用 ●被保険者とは 適用事業所に雇用される労働者 ●被保険者とならない者 ・65歳を超えて新たに雇用される者 ・季節的に雇用される者 ・1年未満の期間雇用される者で、週所定労働時間が30時間未満の者 ・週所定労働時間が20時間未満の者 ・日雇労働者(認定を受けると日雇労働被保険者) ・4ヶ月以内の季節的事業に雇用されるもの ・国・都道府県・市町村の事業に使用される者の一部 ・船員保険法の被保険者 パートタイマーも一定の条件を満たせば被保険者となる
労働保険の適用 雇用保険の被保険者の範囲
労働保険の適用 ●被保険者の種類 1.一般被保険者(一般の従業員) 2~6に該当しない被保険者 労働保険の適用 ●被保険者の種類 1.一般被保険者(一般の従業員) 2~6に該当しない被保険者 2.短時間労働被保険者(パート・アルバイトなど) ・週所定労働時間が20時間以上30時間未満 ・1年以上継続して雇用されることが見込まれる ・年収が90万円以上見込まれる ・労働条件が明確に定められている(就業規則、雇入通知書など) 3.高年齢継続被保険者 65歳到達前から引き続き同一事業所に雇用される者 4.高年齢短時間労働者 短時間労働被保険者で3の条件のもの 5.短期雇用特例被保険者 季節的に雇用される者、1年未満の短期雇用が常態の者 *1年以上雇用されたときは一般被保険者となる 6.日雇労働被保険者 日々雇い入れられる者、30日以内の期間で雇用される者 *2ヶ月の各月18日以上雇用された場合は一般被保険者
労働保険の適用 適用事業の単位 原則は一元適用 →一元的に適用できない事業は例外的に二元処理 ●一元適用事業と二元適用事業 労働保険の適用 適用事業の単位 ●一元適用事業と二元適用事業 一元適用事業:労災保険と雇用保険を併せてひとつの労働保険として扱う (一般の工場、商店、事務所など) 二元適用事業:2保険を別個に適用し、保険料の算定・納付を別に処理する ① 都道府県、市町村の行う事業 ② ①に準ずる事業(学校法人) ③ 港湾で港湾運送を行う事業(港湾労働法) ④ 農林水産、養蚕の事業 ⑤ 建設の事業 原則は一元適用 →一元的に適用できない事業は例外的に二元処理
労働保険の適用 ●継続事業と有期事業 継続事業:事業の期間が予定されていない事業 (一般の工場、商店、事務所など) 労働保険の適用 ●継続事業と有期事業 継続事業:事業の期間が予定されていない事業 (一般の工場、商店、事務所など) 有期事業:一定の予定期間に事業目的を達成して終了する事業 (建設の事業、立木の伐採などの林業) ●有期事業の一括 一定の条件を満たすと、年間を通じ事業をまとめて一つの保険関係として 処理する。(条件を満たすと自動的に一括され一つの事業となる) 《一括の要件》 ・事業主が同一人 ・それぞれの事業が建設の事業または立木の伐採の事業 ・概算保険料が160万円未満 かつ 建設事業 :請負金額が1億9,000万円未満 立木の伐採:素材の見込み生産量が1,000㎡未満 ・事業の種類が同一(労災保険率表) ・それぞれの事業が同一管轄内で行われる
労働保険の保険給付 労災保険 ●保険給付が行われる場合 ①業務災害 要件┏業務起因性 ⇒ 傷病と業務の間に相当因果関係がある 労働保険の保険給付 労災保険 ●保険給付が行われる場合 ①業務災害 要件┏業務起因性 ⇒ 傷病と業務の間に相当因果関係がある ┗業務遂行性 ⇒ 労働者が業務に就いている (使用者の指揮下にある) ┏業務上の負傷 ┗業務上の疾病 ━┳災害性疾病(業務上の負傷に起因するもの) ┗職業性疾病(物理的因子、化学物質など) ②通勤災害 通勤とは「就業に関し、住居と就業の場所との間を合理的な経路 および方法により往復すること」 *通勤災害は災害性疾病に限り保険給付がおこなわれる
労働保険の保険給付 ●保険給付の種類 傷 病 補 償 年 金 休 業 補 償 給 付 負 傷 ・ 疾 病 業 務 災 害 労働保険の保険給付 ●保険給付の種類 本人給付 遺族給付 傷 病 補 償 年 金 休 業 補 償 給 付 負 傷 ・ 疾 病 治ゆ 業 務 災 害 ・傷病等級により 支給 ・給付基礎日額の 60%を支給 障 害 補 償 給 付 ・障害等級により 支給 療 養 補 償 給 付 治ゆ ・療養の給付 ・療養の費用の支給 介 護 補 償 給 付 ・常時、随時の介護に 対し支給 死亡 遺 族 補 償 給 付 葬 祭 料 死亡 ・労働者の死亡
労働保険の保険給付 雇用保険 ●保険給付の種類 ①求職者給付(失業労働者の生活の安定) 基 本 手 当 技 能 修 得 手 当 労働保険の保険給付 雇用保険 ●保険給付の種類 ①求職者給付(失業労働者の生活の安定) 基 本 手 当 技 能 修 得 手 当 受 講 手 当 等 特定職種受講手当 通 所 手 当 一 般 被 保 険 者 寄 宿 手 当 求職者給付 傷 病 手 当 高年齢継続被保険者 高年齢求職者給付 短期雇用特例被保険者 特 例 一 時 金 日雇労働被保険者 日雇労働求職者 給 付 金
労働保険の保険給付 ②就職促進給付(失業労働者の再就職の促進) ③雇用継続給付(高齢者・女性等の就業援助) 雇 用 継 続 給 付 労働保険の保険給付 ②就職促進給付(失業労働者の再就職の促進) 再 就 職 手 当 常 用 就 職 支 度 金 就 職 促 進 給 付 移 転 費 広 域 求 職 活 動 費 ③雇用継続給付(高齢者・女性等の就業援助) 高年齢雇用継続給付 雇 用 継 続 給 付 育 児 休 業 給 付 介 護 休 業 給 付
労働保険の給付手続き 労災保険 ●療養補償給付 業務上傷病が治ゆするまで 無料で療養を受けられる。 療養の 給付請求書 請求書に証明 支払 労働保険の給付手続き 労災保険 ●療養補償給付 労働基準局 支払 療養の 給付請求書 第1病院 被災労働者 労働局 受診 請求書 請求書 労災病院 指定病院 請求書に証明 労働基準監督署 業務上傷病が治ゆするまで 無料で療養を受けられる。 事業主 労働基準監督署
失業したら 雇用保険制度の概要 雇用保険は政府が管掌する強制保険制度(労働者を雇用する事業は、原則として強制的に適用)。 雇用保険は、 労働者が失業してその所得の源泉を喪失した場合、労働者について雇用の継続が困難となる事由が生じた場合及び労働者が自ら職業に関する教育訓練を受けた場合に、生活及び雇用の安定と就職の促進のために失業等給付を支給 失業の予防、雇用状態の是正及び雇用機会の増大、労働者の能力の開発及び向上その他労働者の福祉の増進を図るためのニ事業を実施 する、雇用に関する総合的機能を有する制度。
厚生労働省「労働経済の分析 平成27年版」 p.17
先進諸国における失業保険制度の成立 失業に対する保険を行うための制度の先駆は、19 世紀半ばにヨーロッパの労働組合が共済活動の一環として、その所属組合員に失業給付を支給する制度。これは労働者やその家族にとって失業時の経済的困難を軽減する上で非常に助けとなったが、労働者だけで全費用を負担していたために、この制度に加入することができる者の範囲を著しく狭くした。 また当時の労働組合はほとんどが熟練労働者から成り立っており、膨大な低賃金の未熟練労働者はごく僅かしか労働組合に加入していなかったため、これら労働者は遙かに失業の危険に晒されていたにもかかわらず、何らの保護の手だてもなかった。 また、雇用の安定した労働者は加入をいやがったため、比較的失業の危険の高い者によって構成されることになり、必然的に財政難に陥ることとなった。 平田隆夫『都市失業保険の成立過程』(上・下)大阪商科大学経済研究所(1934・1936 年)
先進諸国における失業保険制度の成立 一方、使用者が労働者に支払うべき賃金の一定部分を失業基金として積み立てておき、被解雇者に給付を行うという任意の失業救済制度も特にアメリカ等で発達した。 やがて、1901 年ベルギーのゲントで設立されたものを嚆矢として、地方自治体が民間の失業基金制度に補助金を交付する動きが活発化してきた。これが欧州諸国に広がっていく中で、1905 年のフランスを皮切りに、失業保険基金に国の補助金が交付されるようになっていった。 国が管掌する強制失業保険制度は 1911 年にイギリスの国民保険法により創設された。これは政労使 3 者が費用を負担し、基金による独立経理を行うものであった。続いてドイツでは 1927 年、職業紹介・失業保険法により連邦公社が運営する事業として創設された。フランスでは 1958 年になって全国労使協約によって労使の運営する制度として設立された。
日本における失業保険制度への動き 我が国においても、第2次大戦後、インフレと社会不安の中にあって失業問題は大きくクローズアップされ、憲法の制定を背景として、失業保険法の制定が大きな世論となるに至り、昭和22年8月片山内閣によって、「失業保険法及び失業手当法案」が第1回国会に提出され、同年12月1日公布され、同年11月1日にさかのぼって適用された。 失業保険法は、その後給付内容を改善する一方、その適用拡大を進めるため、失業保険及び労災保険の適用徴収一元化を図ることとし、労働保険の保険料の徴収等に関する法律が制定される等逐時改善整備されてきたが雇用失業情勢の変化に伴い、種々の問題が顕在化し、早急に制度の改善を図ることが必要となるに至った。 新たな雇用失業情勢に対処するため政府は、昭和49年2月雇用保険法案を第72回通常国会に提出したが審議未了で成立しなかった。その後石油輸出規制以後の総需要抑制策の浸透に伴い、雇用失業情勢が厳しさを加えるなかにあって失業問題は社会的関心事として大きくクローズアップされ、雇用保険法の制定が大きな世論となるに至った。これを受けて昭和49年12月三木内閣によって再度「雇用保険法案」が第74回臨時国会に提出され、同年12月28日に公布され、昭和50年4月1日より全面的に施行された。
怪我をしたら、死亡したら 労災保険とは、労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」)に基づく制度で、業務上災害又は通勤災害により、労働者が負傷した場合、疾病にかかった場合、障害が残った場合、死亡した場合等について、被災労働者又はその遺族に対し所定の保険給付を行う制度。また、このほかに被災労働者の社会復帰の促進、遺族の援護等を行っている。 業務上災害(「業務災害」ともいう)とは、労働者が就業中に、業務が原因となって発生した災害を言う。業務上災害については、労働基準法に、使用者が療養補償その他の補償をしなければならないと定められている。そこで、労働者が確実に補償を受けられるようにするため、及び事業主の補償負担の軽減のために労災保険制度が設けられ、下記のとおり労働者を一人でも使用すれば強制的に適用事業とすることとし、被災労働者が労災保険による補償給付を受けた場合は、使用者は労働基準法の補償義務を免除されることとされた。 労働者を一人でも使用する事業(個人経営の農業、水産業で労働者数5人未満の場合、個人経営の林業で労働者を常時には使用しない場合を除きます。)は、適用事業として労災保険法の適用を受けることになり、加入の手続をとり(保険関係成立届の提出)、保険料を納付しなければならない。保険料は全額事業主負担とされている。 加入は事業場ごとに行うもので労働者ごとではない。したがって適用事業場に使用されている労働者であれば誰でも、業務上災害又は通勤災害により負傷等をした場合は保険給付を受けることができる。労働者とは、正社員のみならずパート、アルバイト等、使用されて賃金を支給される方すべてをいう。 労働者の負傷、疾病等に対する保険制度としては、労災保険のほかに健康保険があるが、健康保険法では、労働者の業務以外の事由による疾病、負傷、死亡等に関して保険給付を行うと定められており、業務上災害について健康保険による給付を受けること(健康保険被保険者証を提示して治療を受けるなど)はできない。
保険給付の種類 支 給 事 由 療養 (補償)給付 (注1) 療養の給付 (注2) 業務災害又は通勤災害による傷病について、労災病院又は労災指定医療機関等で療養する場合 療養の費用の支給 (注3) 業務災害又は通勤災害による傷病について、労災病院又は労災指定医療機関以外の医療機関等で療養する場合 休業(補償) 給付 業務災害又は通勤災害による傷病に係る療養のため労働することができず、賃金を受けられない日が4日以上に及ぶ場合 障害(補償)給付 障害(補償)年金 業務災害又は通勤災害による傷病が治ったとき(注4)に、障害等級第1級から第7級までに該当する障害が残った場合 障害(補償)一時金 業務災害又は通勤災害による傷病が治ったときに、障害等級第8級から第14級までに該当する障害が残った場合 遺族(補償)給付 遺族(補償)年金 業務災害又は通勤災害により死亡した場合(法律上死亡とみなされる場合、死亡と推定される場合を含む。) 遺族(補償)一時金 遺族(補償)年金を受け取る遺族がいない場合 遺族(補償)年金の受給者が失権し、他に遺族(補償)年金を受けることができる遺族がない場合で、すでに支給された年金の合計額が給付基礎日額の1000日分に満たないとき 葬祭料 (葬祭給付) 業務災害又は通勤災害により死亡した方の葬祭を行う場合 傷病(補償) 年金 業務災害又は通勤災害による傷病が、1年6か月を経過した日、又は同日以後において治っておらず、傷病による障害の程度が傷病等級に該当する場合 介護(補償) 給付 障害(補償)年金又は傷病(補償)年金の受給者で、介護を要する場合 二次健康診断等 給付 事業主の行う健康診断等のうち直近のもの(一次健康診断)において、次のいずれにも該当する場合 1.検査を受けた労働者が、血圧測定、血中脂質検査、血糖検査、腹囲の検査又はBMI(肥満度)の測定の全ての検査において異常の所見があると診断されていること 2.脳血管疾患または心臓疾患の症状を有していないと認められること
労働災害(労災)って何? 労働=仕事のこと 災害=傷病(病気やケガ),障害が残りる 死亡すること 死亡すること 仕事をする上でどのような病気やケガが考えられるのだろうか? 労働者災害によって仕事ができなくなったら生活はどうなりますか?
労働者災害補償保険制度とは 保険者(実施しているところ) 都道府県労働局 政府 労働基準監督署 業務上や通勤により労働者の負傷,疾病,障害,死亡などに対し,保険給付を行うとともに,被災した労働者の社会復帰の促進などを図るための制度 保険者(実施しているところ) 都道府県労働局 労働基準監督署 政府 委託
被保険者(加入者は) 原則として労働者を雇用するすべての事業 別な制度で対応 中小企業事業主 大工・左官 公務員 のひとり親方 家族従業者 のひとり親方 家族従業者 パート労働者 派遣労働者 公務員 船員 別な制度で対応
保険料 全額が事業主負担 メリット制を採用 過去3年間の保険料と給付などとの比率に応じて労働保険料率を増減させる制度 過去3年間の保険料と給付などとの比率に応じて労働保険料率を増減させる制度 労働災害の多い事業との保険料負担の公平を図ることができる
サービスを受けられるのは 業務中に事故や病気になった場合 (業務災害) 通勤中に事故や病気になった場合 (通勤災害)
業務災害 業務上と考えられる場合 ①業務中 ②休憩時間や時間外であったが,設備や 管理に欠陥があった場合 ③出張中 ④業務の都合で外出中 ①業務中 ②休憩時間や時間外であったが,設備や 管理に欠陥があった場合 ③出張中 ④業務の都合で外出中 ⑤派遣作業・外部研修受講中 ⑥運動会,社員旅行等の行事(出席を強 制されている場合)
通勤災害 <通勤とは> 労働者が就業に関し,住居と就業場所との 間を合理的な経路・方法で往復すること 通勤災害 <通勤とは> 労働者が就業に関し,住居と就業場所との 間を合理的な経路・方法で往復すること 通勤経路を逸脱(外れること)・中断した場合には,その更衣やその後は通勤に含まれない
実際の例に考えると 勤務先 自宅 合理的な経路 (道筋)
通勤経路の逸脱・中断の例 逸脱・中断とは 仕事や通勤と関係のない目的でそれること ①友人宅の寄り道やデート ⇒行為の間だけでなくその後も通勤とは認められない
例①の場合 勤務先 自宅 デパート 友達と ショッピング 友人宅 一緒に食事
通勤経路の逸脱・中断の例 ②近くのトイレ使用や短時間の休憩 たばこや雑誌の購入 ジュースの立ち飲み など 逸脱や中断にはならない
通勤経路の逸脱・中断の例 ③日常生活上必要な行為の場合 惣菜の購入,単身者の外食 クリーニング店や美容室の立ち寄り ③日常生活上必要な行為の場合 惣菜の購入,単身者の外食 クリーニング店や美容室の立ち寄り 職業訓練,選挙に行く,病院受診 行為の間は通勤ではないが,その後通勤経路に戻れば通勤となる
給付の種類 <療養のため休業する場合> ①療養補償給付 治療のため仕事を4日以上欠勤した場合 ②休業補償給付 治療のため仕事を4日以上欠勤した場合 ②休業補償給付 治療のため,仕事を1年6ヶ月未満欠勤した場合 ③傷病補償給付 1年6ヶ月を経過しても仕事に復帰できない場合
給付の種類 <障害が残った場合> ※程度に応じて ①障害補償年金 重度の障害が残った場合 ②障害補償一時金 中度や軽度の障害が残った場合
給付の種類 <被災した労働者が死亡した場合> ①遺族補償年金 遺族に対して支給 ②遺族補償一時金 遺族補償年金を受給できる資格がいないばあいにその他の遺族に支給 ③葬祭料 葬式や埋葬にかかる費用を支給
給付の種類 <常時または随時介護を要する場合> ①介護補償給付 <脳・心臓疾患に関連する異常所見があった場合> ①二次健康診断等給付
(注1)業務上災害による傷病に必要な給付を「療養補償給付」といい、通勤災害による傷病に必要な給付を「療養給付」という。これらを合わせて「療養(補償)給付」という。「休業(補償)給付」等についても同様です。 (注2)「療養の給付」とは、療養の現物給付、すなわち労災病院又は労災指定医療機関等で被災労働者に無料で療養の給付を行うことです。この場合被災労働者は無料で療養を受けられ、療養に要した費用は直接医療機関等に支給される。 (注3)「療養の費用の支給」とは、療養の費用の現金給付、すなわち労災病院又は労災指定医療機関以外の医療機関等で療養した場合、療養に要した費用全額を被災労働者が支払うことになるが、その相当額を被災労働者に現金で支給すること。 (注4)「治ったとき」とは、傷病の症状が安定し、医学上一般に認められた医療を行ってもその医療効果が期待できなくなったときをいう。これを「治癒」というが、必ずしももとの身体状態に回復した場合だけをいうものではない。
労働災害発生状況 資料出所:厚生労働省「死亡災害・重大災害発生状況」 注)2011年の死亡者数は、東日本大震災を直接の原因とする死亡者(1,314人)を除いた数。
Accidents in Mines (1898--2005) (1) 昭和15年以前は亜炭鉱山を含む。 (1) Until 1940, including lignite mines. (2) 昭和28~35年は石灰石鉱山を含む。 (2) From 1953 through 1960, including limestone mines. (3) 昭和32年以降ドロマイト,耐火粘土,長石,けい石,滑石及びろう石鉱山を含む。 (3) Beginning 1957, including mines of dolomite, fire clay, feldspar, silica, talc, and pyrophyllite. 〔資料〕 経済産業省原子力安全・保安院「鉱山保安統計年報」 Source: Agency for Nuclear and Industrial Safety, Ministry of Economy, Trade and Industry.
前史 工場法 日本では1916年施行の工場法が最初だが実質的には空文( 12歳未満の者の就労禁止、12時間労働制などが規定されたが)に等しかった。 1919年ILO(国際労働機関)第1回総会で、労働時間を1日8時間、1週間48時間と定められたのを契機に1923年工場法が改正されたが、適用の15歳未満から16歳未満への引き上げ、最長労働時間(12時間)の1時間短縮という低水準のもので、1929年の改正でようやく年少者や女性の深夜業が禁止された。 現在は労働基準法が労働条件規制に関する包括的法律となっている。
工場法はイギリスから 産業革命によって大量の労働者が生み出された。彼らは資本家の利潤追求の犠牲となり、低賃金で長時間働かされ、貧困に苦しみ、悲惨な生活を送っていた。そこで彼らは生活改善のために団結して労働運動を起こすようになったが、イギリスでは、1799年・1800年に団結禁止法が制定され、違反者は投獄などに処せられた。 1802年繊維産業における幼年工の就業時間制限などを目的として英国で制定された法律が最初といわれ、以降幼年工の雇用禁止、親権の制約、女性・少年工の労働時間制限、安全や衛生・保健に関する規制、そして工場監督官設置などが定められ、各国にも普及した。 工場労働からの子どもの保護 この法制定に大きく貢献したのがロバート・オーエン(Owen, R. 1771-1858)である。オーエンは、子どもの人権と学習権を保障すべく、低年齢の子どもの雇用や長時間労働の禁止、学習機会の保障を骨子とした工場法の制定を要求した。これを受け、上記のように1802年、最初の工場法が成立したのである。
工場法はイギリスから 労働者や手工業者らは初め、その生活が苦しい原因は新しく発明された機械にあると考え、機会打ちこわし運動を起こした。1811~17年に、イギリス中・北部の織物工業地帯で起こった機会打ちこわし運動は、伝説的な人物ラッドにちなんでラッダイト運動と呼ばれたが、政府によって厳しい弾圧を受けた。 1824年に団体禁止法が撤廃されると、多くの労働組合が結成され、労働運動の主体となった。当時のイギリスで労働運動に大きな影響を及ぼしたのがオーウェンである。
工場法はイギリスから オーウェンは、徒弟奉公から身を起こして紡績工場の支配人となり、ついでスコットランドのニュー=ラナーク紡績工場で経営者となり、この工場で利潤の追求よりは労働者の生活改善・幼少年の教育・福祉の向上に努めた。 さらに私財を投じてアメリカのインディアナ州に「ニュー=ハーモニー」村を建設して共産主義的な協同社会の建設を試みたが(1825~29)失敗し、全財産を失って帰国した。 帰国後は全国労働組合大連合の結成(1834)に努力したが、政府の弾圧と内部分裂によって数ヶ月で崩壊すると、チャーティスト運動などからも離れ、貧窮のうちに没した。この間、社会環境の改善による人間性の改善を提唱し、工場法の制定にも尽力した。
工場法はイギリスから 工場法は、年少労働者の労働条件を規制した法律で、1802年の幼年徒弟の労働時間を12時間に制限した法律が最初の工場法といわれている。1819年の工場法は、オーウェンの尽力で制定され、9歳以下の雇用禁止・9~16歳の12時間労働が規定された。この工場法で9歳以下の雇用が禁止されたということは、それまで9歳以下の多くの子供が雇用されていたことを示している。 そして、1833年の工場法で、9~13歳の9時間労働・18歳以下の12時間労働や工場監督官制(工場法が守られているかどうかを監督する制度)が規定された。さらに、1847年には婦人・児童の10時間労働が定められ、労働者の労働条件は次第に改善されていった。
まとめ 工場法はイギリスから 【工場法(1819)】←オーウェンの努力により成立 ・9才未満労働禁止、16才未満の1日12時間以上労働と夜業の禁止。 ・工場監督官制度がなかったため、この規定は実際にはほとんど守られず。 【工場法(1833)】 ・1日12時間労働、9才未満労働禁止、18才未満夜業禁止。 ・工場監督官制度を設け、規定が実効性を持つようになる。 「過熱した綿糸紡績工場内に1日14時間、15時間、時には16時間使われる年端のゆかぬ小児の健康状態が害われているかどうかを調査する委員会に占められた初め2議会の間じゅう、私はつねにその委員会に列席した、何らの束縛もうけずただひたすらこの子供らのためを思う唯一の代弁者として。その小児らの心身が、著しく、むごく、害われているのを、長い間の経験から私は知っていたのだ。」(ロバート・オーウエン『オウエン自叙伝』五島茂訳 岩波文庫 1961年 p213)
オーウェンの業績 年 工 場 法 の 改 訂 1802年 年少徒弟の労働時間を12時間に制限 読・書・算の学習の義務、月に一回の日曜学校へ出席 1819年 9歳以下の子どもの雇用禁止と6~12歳の労働時間を12時間に制限 1833年 9~13歳の労働時間を9時間に制限。18歳以下は12時間に制限 一日に最低2時間は学校に出席(雇い主の義務…教育条項) 1844年 8~13歳の労働時間を6時間半に制限。女性は12時間に制限 1847年 女性・未成年に対する一日10時間以内の労働制限
工場法はイギリスから In this picture we can see many children at work and we see they worked in very dangerous conditions because they carried heavy stones and they didn't wear shoes because families were too poor to buy them. Children worked in very sad conditions when they were in rags. The building could collapse because at that times, streets were very poor.
工場法はイギリスから In this picture, we can see many children at work in a manufactory. We think they were very sad and weren't happy.
工場法の性格 工場労働者の最低労働基準、特に女性・年少者の保護基準を定める法律の総称。個別資本の利害を制約することによって資本主義生産における労働力の階級的消耗を防ぐことを目的とした最低限の労働者保護規定である。 「・・・四十四年三月に、長年の懸案であった工場法が議会を通過したのである。日清戦争後、労働問題がやかましくなって以来、国は幼年労働者や女子労働者を保護する必要があるということから、工場法の制定が問題となってきたが、これにたいしては当の工場経営者達が断乎反対であった。労働者の保護などしていては、後進国日本の工業は先進国と太刀打ちできないと主張し、寄宿舎での生活は牢獄同然だ、悲惨だという非難にたいしては、女工たちの育った農村の生活よりはましだ、と弁護もした。こうした資本家たちの反対で、工場法はいつも握りつぶされてきたのである。 その工場法が、大逆事件のあと、済生会の準備が進められているなかで議会を通過した。この通過に尽力したのは、日露戦争前には工場法反対の急先鋒であった渋沢栄一である。渋沢は工場法制定について、『もう今日はなお早いとは申さぬでもよかろうと思う』といって、法案を審議する政府調査会の委員を引き受けたのである。こうして慈恵的な労働者保護も、工場主一人一人の恩恵としてではなく、機構的に制定されることになる。・・・」(隅谷三喜男著 日本の歴史22」P452からP453より引用)