物理システム工学科3年次 「物性工学概論」 第3回 金はなぜ金ぴかか? ー金属の光学的性質ー 物理システム工学科3年次 「物性工学概論」 第3回 金はなぜ金ぴかか? ー金属の光学的性質ー 物理システム工学科量子機能工学分野 佐藤勝昭
講義内容 金属の色:金、銀、銅、鉄、白金 3原色:加法混色と減法混色/CIE色度図 ヒトが色を認識する仕組み 自由電子のプラズマ運動 誘電率と屈折率・消光係数 負の誘電率の意味するところ
金属の色:金、銀、銅、鉄、白金 銀 銅 しろがね あかがね 金 こがね 白金 くろがね 鉄
三原色 光の3原色(加法混色 ) 各色の強さを変えて混ぜ合わせると,いろいろな色の光になる。赤い光,緑の光,青い光を同じ強さで混ぜ合わせると, 白い光になる。 色の3原色 (減法混色) 各色を混ぜ合わせると,いろいろな色ができる。マゼンタ・シアン・イエローを同じ割合で混ぜると 黒になる。 赤(red) 緑(green) 青(blue) マゼンタ(red) シアン(blue) イエロー(yellow) http://www.shokabo.co.jp/sp_opt/spectrum/color3/color3.htm
CIE色度図 色を表す(表色)ためには, 一般に3つの数値が必要であるが,明るさの情報を犠牲にして2つの数値で色を表し,2次元の図に表現したものを, 色度図という. ある温度で光っている(熱放射・黒体輻射している)物体の色を測定して,温度と色の関係を色度図上に描くことができます.この曲線は黒体輻射の色軌跡と呼びます.なお,一般の光源は黒体輻射をしているわけではないので,色軌跡の上のある色で光っている光源の温度が,その点に対応する温度になっているとは限りません.そのため,色から決まる温度を色温度といいます 実際には感覚的な3原色RGBだけでは表せない色もあるので、機械による測色、表色、目の波長感度特性を詳しく調べて数値化した “表色上の3原色”である3刺激値XYZを使う。その3刺激値XYZにもとづいて,上記のような考え方にしたがい,2つの数値 (x , y ) を使ってxy 座標空間で色を表したものを, xy 色度図と呼ぶ。 http://www.shokabo.co.jp/sp_opt/spectrum/color3/color3.htm
ヒトはどのように色を認識するか 色を感じる 光を感じる なぜ3原色で表せるか。それは人間の色を感じる細胞が3種類あるからである。これらの細胞は錐体(すいたい)と呼ばれ,三種の錐体の送り出す信号の強さの違いによりさまざまな色を感じることができる。
RGB感度曲線とXYZ等色曲線 RGB感度曲線 一方,XYZ表色系はRGBでは再現できない色をも表現するシステムなので, XYZ表色系などにおける3色の“感度”曲線は,たとえば赤が2山のピークをもつなど少し変わった形になっています.
XYZ等色曲線と金属の色 3刺激値 金銀銅の分光反射率
金銀銅の反射スペクトル 波長表示 エネルギー表示
貴金属の選択反射の原因 光は電磁波の一種である。つまりテレビやラジオの電波と同じように電界と磁界が振動しながら伝わっていく。 金属中に光がはいると金属中に振動電界ができる。この電界を受けて自由電子が加速され集団的に動く。 電子はマイナスの電荷を持っているので、電位の高い方に引き寄せられる。その結果電位の高い方にマイナスの電荷がたまり、電位の低い側にプラスの電荷がたまって、電気分極が起きる。 外から金属に光の電界が進入しようとすると、逆向きの電気分極が生じて電界を遮蔽してしまって光は金属中に入れないことを示す。光が入れないということは、いいかえれば、光が全部反射されてしまうということを意味する。
電子分極の古典電子論 (1) 自由電子 電子の位置をu、有効質量をm*、散乱の緩和時間をτとすると、自由電子に対する運動方程式は、 電子分極の古典電子論 (1) 自由電子 電子の位置をu、有効質量をm*、散乱の緩和時間をτとすると、自由電子に対する運動方程式は、 ここで、E、uにe-iωtの形を仮定し、自由電子による分極Pf=-Nfquの式に代入し、D=ε0εrE=ε0E+Pfの式を使うことにより、
自由電子による電子分極 D=ε0E+P E 電界の印加により電子と核の 相対位置が変化し、逆向きの分極を生じる P + - + + + + - E D=ε0E+P 電界の印加により電子と核の 相対位置が変化し、逆向きの分極を生じる
ドルーデの式 誘電率の実数部は において0を横切る。 負の誘電率をもつと、光は中に入り込めず、強い反射が起きる。
束縛電子系の電子分極 P + - + + + - E
電子分極の古典電子論 (2) 束縛電子 束縛電子についての運動方程式は、電子の位置をu,有効質量をm*、緩和時間τとすると, 電子分極の古典電子論 (2) 束縛電子 束縛電子についての運動方程式は、電子の位置をu,有効質量をm*、緩和時間τとすると, m*d2u/dt2+(m*/τ)du/dt+m*ω02u=qE で与えられる。これより束縛電子による電気分極Pbを求め、比誘電率を求めると、 εr=1-ωb2/(ω2+iω/τ-ω02) ここにωb2=Nbq2/m*ε0 である。
ローレンツの分散式 この式の実数部と虚数部は、それぞれ εr'=1-ωb2(ω2-ω02)/{(ω2-ω02)2+(ω/τ)2} となる。これはいわゆるローレンツの分散式である。
光学定数:屈折率と消光係数 連続媒質中をx方向に進む光の電界ベクトルEは で表される。ここにnは屈折率とκは消光係数である。nとを併せて光学定数という。 N=n+iを複素屈折率とよぶ。 Maxwell方程式に代入することにより、 N2=εr を得る。 従って(n+i)2= εr’+i εr” 実数部同士、虚数部同士を等しいとおいて εr’=n2-κ2 εr”=2nκ を得る。
負の誘電率と反射率 空気中から複素屈折率Nの媒体への垂直に入射した光の電界に対する振幅反射率はr=(N-1)/ (N+1)で与えられる。 もし、比誘電率rが負の実数であったとし、 r=-a(aは正の数)とすると、N=r1/2=ia1/2 であるから、r= ( ia1/2-1)/( ia1/2+1)である。 光強度の反射率Rは電界の絶対値の2乗に比例するのでR=|r|2=(a+1)/(a+1)=1、即ち100%となる。
貴金属の誘電率スペクトル
復習してほしいこと 自由電子に対する運動方程式を解いて、電界Eを加えたときの電子変位uを求め、P=nquを使って分極Pを計算し、D=0P+E、D= r0Eからrに対する式(Drudeの式)を求めよ。 Maxwellの方程式を解いてr=N2を導け。 ただし、 rot rot E=-2E+(・E)Eおよび ・E=0を考慮せよ。
予習の勧め シリコンのバンド構造について 量子物性工学配付資料2001,5.25 に基づいて(http://www.tuat.ac.jp/~katsuaki/r010525p.pdf) 原子の寄り集まりと電子のバンドの項を読んでおいてください。 k空間の考え方を修得してください。