流星観測用、紫外-可視高感度ハイビジョンカメラおよび 対物分光器の開発 海老塚 昇(理研)・矢野 創・阿部 新助(宇宙研)・ 杉本 雅俊(理研/日流研)・春日 敏測(総研大・天文)・平松 正顕(東大・天文)・渡部 潤一(国立天文台)
1998年しし座流星群野辺山観測隊 冷却CCD+グリズム(すばる望遠鏡FOCAS用試作品)
伊豆上空に出現した大火球に伴う流星痕のスペクトル(撮影:村山氏@日本火球ネットワーク、長野県臼田町)
1999年の観測に使用したグリズムおよび対物プリズムと日本国内の協力者観測地点
地球規模の流星出現予想数と分光ネットワーク
分光ネットワーク協力者の観測地と機材 観測者 観 測 地 分散素子 カメラ 備 考 柴 田 北海道 帯広市 分光ネットワーク協力者の観測地と機材 観測者 観 測 地 分散素子 カメラ 備 考 柴 田 北海道 帯広市 グリズム 35mm 設楽他 宮城県 山元町/牡鹿町 グリズム 35mm 内 山 栃木県 上都賀郡 粟野町 回折格子 35mm 個人所有 鈴 木 茨城県(花立自然公園) グリズム I.I.-CCD 大 西 長野県(野辺山観測所) グリズム 35mm 志岐 他 同 上 グリズム 冷却CCD 野辺山観測隊 /MCFTS 冷却CCD 小林 他 愛知県/岐阜県 グリズム 35mm 藪 滋賀県 近江八幡市 グリズム I.I.-CCD 杉 本 奈良県 宇陀郡 室生村 グリズム I.I.-CCD 有 本 京都府 左京区 花背 プリズム 35mm 中 山 兵庫県 美方群 村岡町 プリズム 35mm 前 田 宮崎県 宮崎郡 清武町 グリズム 35mm 廿日出 宮崎県(宮崎大) 回折格子 冷却CCD 大 塚 トルコ、カッパドキア グリズム 35mm 嵯峨山 エジプト、ルクソール グリズム 35mm 阿 部 地中海上空 グリズム I.I.-CCD NASA Leonid MAC 矢 野 同 上 回折格子 I.I.HDTV NHKが開発 牛 渡 アメリカ、アリゾナ州 グリズム 35mm 海老塚 アメリカ、ハワイ州 回折格子 I.I.-CCD マウナケア山頂
流星の紫外線観測 NASAの衛星:直径0.1mm以下のチリが120km以上の高度において紫外線で強く光っている可能性を指摘。 彗星の分光観測:波長380nm付近のCN(シアン基)や300nm付近のOH(水酸基)のスペクトルを検出。 →流星にもCNやOHが観測されると彗星起源の有機物が1/100mm以下の小さな粒として蒸発せずに地上に達している可能性を示唆できる。 衛星から紫外線で捉えたしし座流星群。米国のMSX衛星(左、1997年、詳細不明)とARGOS衛星による紫外線映像(右、1999年、波長130〜200nm)。
紫外線高感度ビデオカメラ イメージインテンシファイア(I.I.)とCCDビデオカメラを組み合わせたI.I.-CCTVは時間分解データを取得可能。 →流星や雷等の観測用カメラとして有効。 紫外線用I.I.は波長200〜700nmに感度がある。 ハイビジョンカメラとI.I.を組み合わせたI.I.-HDTVはより高品位なデータを得ることができる。 1999年NASAの航空機ミッションでとらえた流星の紫外線スペクトル。 流星痕の紫外線スペクトル。(鈴木 智 氏)
紫外線レンズの開発 石英とホタル石で構成された独自の紫外線レンズ(f=30, F/1.2, 使用可能波長:250-1,000nm)を開発。
紫外線高感度ハイビジョンカメラシステム
反射型回折格子の対物分光器が取り付けられた紫外線高感度 ハイビジョンカメラ(左と中央)と紫外線高感度ビデオ(NTSC)カメラ(右)
2001年の観測 ペルセウス座流星群( 8月中旬):福島県裏磐梯・浄土平 オリオン座流星群( 10月下旬):野辺山電波観測所(標高1,900m ) しし座流星群( 11月中旬):ハワイ・マウナケア山頂・すばる望遠鏡サイト(標高4,120m )、オーストラリア・マウントアイサ、野辺山観測所 宇宙科学研究所・日本流星研究会・名古屋大学・理研合同観測チームの試験観測(左, オリオン座流星群)と日本女子大学・理研チームのしし座流星群観測(右)。(いずれも国立天文台・野辺山観測所)
2002年の観測 ペルセウス座流星群(8月中旬):乗鞍岳山頂付近(標高約2,800m) オリオン座流星群(10月下旬):三鷹 NASA航空機ミッション・大西洋上空(海抜13,000m)、野辺山電波観測所 日本女子大学、理研ペルセウス座流星群観測チーム(左、乗鞍岳)とNASA航空機しし座流星群観測ミッション(右、大西洋上空)。
出現状況と成果 2001年しし座流星群 ハワイ:最大HR*約500、オーストラリア:HR約1,000、日本:HR約3,000 2002年しし座流星群 カナリア諸島:HR約3,000、NASA航空機:HR約3,000(スペイン沖)・ HR約5,000(アメリカ東海岸沖)、日本:HR30 各地点における流星雨の映像や多くの流星本体および流星痕スペクトルデータを取得。 *HR: Hour Rate. 天頂を向いて肉眼で1人が1時間に観測した流星の数 野辺山45mミリ波望遠鏡と流星雨のハイビジョン映像。 (1秒間の画像を5枚合成)
すばる望遠鏡サイトで流星が輝き始めてから流星痕が現れるまでを捉えたスペクトル。波長300nm付近までの紫外線輝線を確認。
ハイビジョンカメラによる流星の紫外線-可視光スペクトル 波長310nm近傍のOHスペクトルを確認。
今後の課題 膨大なデータ処理。 成層圏の雷(スプライト、エルブス)や人工流星等の観測。 紫外線-近赤外線カラー高感度ビデオカメラの開発。 宇宙ステーション搭載・高感度ハイビジョンカメラの提案。 本研究は日本宇宙フォーラム・宇宙環境利用公募地上研究 (2件採択、代表:渡部、海老塚)、国立天文台・研究推進経費(代表:渡部) 、理化学研究所・研究経費等の補助による。 また、ハイビジョンビデオデッキ等は通信総合研究所・無線通信部門の御厚意より貸与された。
EUSO(Extreme Universe Space Observatory): 1020eV以上の高エネルギー宇宙線による大気発光の紫外線観測を行う望遠鏡。ESA, NASA, 日本の共同ミッション。検出器と直径3mのフレネルレンズの一部を理研が担当。 国際宇宙ステーションに装着されるEUSO(超高エネルギー宇宙線観測望遠鏡、理研・高幣氏提供)。波長300〜400nmで>1020eVの宇宙線による大気発光現象を検出。
高感度カラー(紫外線-近赤外線)ハイビジョンカメラをEUSOに同架することを提案。
宇宙から見た流星嵐の想像図。 (東北大学 吉田和也氏 提供)