新興国における政治・経済分析及び 企業の進出支援に関する 在外公館の役割 〜在ドミニカ共和国日本国大使館のケース〜 2013年7月3日 鈴木 渉
目次 1. 自己紹介 2. 在外公館(大使館)の役割 3.ドミニカ共和国とは? 4.政治・経済、企業支援担当官の業務 5.結論
1. 自己紹介 1974年1月生まれ -カナダ・トレント大学(国際開発学)卒 -英国・マンチェスター大学(政治経済学)修士 -テレコム・IT業界で7年半の実務経験 -国連開発計画(UNDP:エクアドル)での勤務経験 -在ドミニカ共和国日本国大使館専門調査員 (政治経済、企業支援担当)2年 -丸谷教授とは「ドミニカ共和国を知るための60章」の共著者
2.在外公館(大使館、総領事館)の役割 ☆ 国益を見据えた各国との友好関係の増進☆ a) 各国の情報収集と分析(政務・経済) b) 各国との政治、経済交渉(政務・経済) c) 国際貢献・援助(経済協力) d) 日本文化の発信(広報文化) e) 在留邦人の保護(領事)
2.在外公館の役割 ☆大使館(総領事館)の組織☆ 公使参事官(首席領事) 領事 広報文化 経済協力 経済 政務 特命全権大使(総領事) 公使参事官(首席領事) 領事 広報文化 経済協力 経済 政務 −法人保護 −広報活動 −ODA −経済情勢 −内政分析 −旅券 −報道対応 −草の根 −二国間経済 −外交関係 −査証 −文化事業 −JICAとの連携 −企業支援 −二国間政務
3.ドミニカ共和国とは カリブ海に浮かぶ島国 熱帯性気候
3.ドミニカ共和国とは 新大陸で最初の植民地、1844年独立 国民性:楽天的、お祭り好き、時間にルーズ 音楽:メレンゲ、バチャータ、サルサ スポーツ:野球、バレーボール、バスケットボール、陸上 若者が多い(総人口に占める25歳以下の割合が5割強) 主要産業:観光業、農業、鉱業、繊維加工、医療製品製造、サービス業(コールセンターなど)
3.ドミニカ共和国とは イメージ バチャータ(Juan Luis Guerra) メレンゲ http://www.youtube.com/watch?v=ZaVzcOt_onU バチャータ(Juan Luis Guerra) http://www.youtube.com/watch?v=5E87B3t9cnY メレンゲ http://www.youtube.com/watch?v=kObcyyIG534
3.ドミニカ共和国とは(日本との比較) ドミニカ共和国* 日本** 面積 4.8万㎢ 37.8万㎢ 人口(2010年) 993万人 1億2725万人 言語 スペイン語 日本語 政体 立憲共和制 議院内閣制 通貨 ペソ(1ドル=41.5ペソ) 円(1ドル=98円) 名目GDP (2012年) 590億米ドル 5.96兆ドル 一人あたり名目GDP(2012年) 5762ドル 46,735ドル 成長率 (2011年) 4.5% -0.6% インフレ率(2011年) 8% -0.3% 失業率(2011年) 14.6% 4.6% 輸出額(2011年) 85.36億ドル 7870億ドル 輸入額(2011年) 174.23億ドル 8076億ドル *ドミニカ中銀、**CIA World Factbookより抜粋
3.ドミニカ共和国とは(日本との比較) ドミニカ共和国* 日本** 主要輸出品目 繊維製品、電気・医療部品、ニッケル、金、カカオ、コーヒー,タバコ、バナナ、マンゴ 自動車、半導体、鉄鋼製品、自動車部品、プラスチック製品、精密・工業用機械 主要輸入品目 石油、輸送機械、自動車、電気製品、食料品、嗜好品 石油、天然ガス、非鉄金属、衣類、食肉、食料、フルーツ 主要輸出国 米国、ハイチ、プエルトリコ 中国、米国、韓国、香港、タイ 主要輸入国 米国、ベネズエラ、メキシコ 中国、米国、豪州、サウジ 海外直接投資(FDI)受入額(2011年) 23.71億ドル 1441億ドル 外貨準備高 (2011年) 36.38億ドル 1.3兆ドル 財政赤字 (2011年) 14.31億ドル(対GDP比2.6%) 537億ドル(対GDP比9.1%) 公共債務(2011年) 215億ドル(GDP比38.6%) 9.87兆ドル(GDP比205.5%) *ドミニカ中銀、**CIA World Factbookより抜粋
3.ドミニカ共和国とは ☆日本との関係☆ -1934年以来の外交関係 -1956-59年:249家族1319人が移住 -在留邦人数:約900人(2011年) -在日ドミニカ人:約700人 -貿易額*:約232億円(輸出157億円、輸入75億円) ・主要輸出品:自動車、自動車部品、一般機械など ・主要輸入品:医療用機器、農産物など −青年海外協力隊員のブログ: http://volando-por-repdominicana.blogspot.jp/ * 財務省貿易統計より抜粋
4.政治・経済、企業支援担当官の業務 政治情勢の分析 −大統領府(政令)、議会(重要法案)、最高裁判所の動き −各政党の動き −政府予算(案) −重要政策(経済、社会)、大統領演説のフォロー −社会の動き(犯罪、抗議活動など) −大統領・議会選挙結果の予測・分析 −各国との外交関係
4.政治・経済、企業支援担当官の業務 b) 経済情勢の分析 −マクロ経済指標 −社会指標(失業率、貧困率、GINI指数など) −産業経済指標(来訪観光客数、鉱業・農業生産高など) −マクロ経済政策および金融政策(中央銀行)のフォロー −外国との経済関係(投資) −経済関係の法令・法律 −出張・報告書
4.政治・経済、企業支援担当官の業務 c) 企業進出支援 ☆日本企業のドミニカ進出、ドミニカ企業の日本進出☆ −情勢ブリーフィング −各種法規制、税制に関するアドバイス −双方の政府関係者への橋渡し −市場展開アドバイス −「対日輸出セミナー」の開催 −「Foodex 2013」への参加支援
4.政治・経済、企業支援担当官の業務(広報) -対日輸出セミナー http://www.do.emb-japan.go.jp/jp/seikei/seminar.html -Foodex2013への参加(寄稿) http://www.listindiario.com.do/economia-y-negocios/2013/4/22/274280/El-Clasico-Mundial-RDy-el-mercado-japones -対日輸出のプロモーション http://www.listindiario.com.do/economia-y-negocios/2011/9/6/202579/Japoneses-estiman-RD-tiene-un-gran-potencial -ドミニカ共和国内政、外交、経済定期報告 http://www.do.emb-japan.go.jp/jp/seikei/index.htm -出張報告(風力発電所訪問) http://www.do.emb-japan.go.jp/jp/seikei/2011/furyoku.pdf -寄稿(政治情勢) http://www.latin-america.jp/archives/jihou1401.pdf
4.政治・経済、企業支援担当官の業務 ☆専門調査員のある一日☆ 08:30 出勤、主要三紙読み、メールチェック 10:00 新聞会議 08:30 出勤、主要三紙読み、メールチェック 10:00 新聞会議 11:00〜13:00 政治経済公電起案・発出、館内調整業務 13:00〜14:00 昼休み 14:30〜16:30 ドミニカ政府関係者と打合せ(or 来客対応) 17:00〜19:00 メール返答、他公館からの公電読み、外務本省 からの依頼事項対応 19:30 帰宅(or レセプション出席または大使公邸での会食) 22:30 (レセプション、大使公邸での会食が会った際の帰宅)
5.結論 新興国の経済成長率は高く(2013年: 5.25%, 2014年:5.75%)、日本企業は新興国市場の需要を取り込む必要がある。 新興国にある大使館は市場攻略のため「最前線」として、日本企業へ必要な情報を収集・提供する。 原材料、食料の安全調達に加え、国際場裏での協力関係構築の観点から、対新興国外交は重要で、その基礎となる政治・経済関係の強化は日本の国益にかなう。