2012年8月29日 環境エネルギー政策研究所 所長 飯田 哲也

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2012 年 11 月 20 日 環境エネルギー政策研究所 所長 飯田 哲也 「原発稼働ゼロ」から「原発ゼロ」へ リアルな脱原発の実現シナリオ 資料1.
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経常収支とは?  一国の国際収支を評価する基準の一つ。  この 4 つのうち、 1 つが赤字であっても他で賄え ていれば経常収支は黒字となる。 貿易収支 モノの輸出入の 差 所得収支 海外投資の収益 サービス収支 サービス取引額 経常移転収支 対価を伴わない 他国への援助額 これらを合わせたものが経常収支.
アーガス・メディア社 顧問 (元慶應義塾大学 産業研究所) (元東京ガス総合企画部) 吉武 惇二
エネルギー変換技術の評価例:発電技術 立場 (ステークホルダー) 評価項目 評価細目 利用(適用)技術 放射性廃棄物処分費用?
生ごみからエネルギー ~バイオガス発電の効果を考える~
2012.1.14-15 脱原発世界会議(パシフィコ横浜) 持込企画:発送電分離プロジェクト 全国市民オンブズマン連絡会議
関西電力 ~脱原発の可能性を考える~ アカデミー5班 2年 1年 大澤 史也 (大東・企業シ) 片岡 由佳 (日大・経済)
現代の金融入門 第5章 3節 企業統治の変質と再生
指導教員 梶原 寿了 卒業研究生 阿部 聡太 中島 賢一 古川 高文
(新エネルギー等の導入・普及に当たっての評価方法や基準への適合性評価の課題)
所属: 東京農工大学 大学院 環境エネルギー工学講座
夏と冬の電力需給の違いから脱原発の可能性を探る
京都・神戸のみならず国内外拠点との差別化が難しい
クイズ 世界のエネルギー事情             鳥居 大斗.
第一回: バブルの崩壊と日本の財務諸表への影響
自然エネルギーの限度 2011年9月21日 小野章昌.
固定価格買取制度(FIT)による 地域での小水力発電開発促進
-国民に開かれた電力システムを目指して-
どっちの言い分ショー!! ~どうなる日本の電力自由化~
“関西における望ましいエネルギー社会”の実現に向けて 関西エネルギープラン(案) 概要 将来像:関西における“望ましいエネルギー社会”
電力のパッケージ化 13T0228H 菖蒲直 人.
電力自由化における事業モデルの研究 ~電力システム改革に関わるフェールセーフについて~
シンポ「日本の環境・エネルギー政策選択」
電力班 小松・早川 藤丸・松浦 電力自由化に伴う 電力価格の変化.
日本の原子力政策の現状と課題 c 大谷紗代.
電力自由化の是非 肯定派.
電力自由化の是非 否定派 相原 成田 紙崎 保立.
金融の基本Q&A -Q21~Q24-  小瀬村愛子.
日本の エネルギー政策 c 上坂愛一郎.
日本の地熱発電への期待 # c 中村幸代.
発電事業の担い手 市町村 パイロットプロジェクト(採算性を必要としな い)段階で一定の役割 量的拡大の担い手にはなりきれない デベロッパー
核燃料サイクルとは何か ウラン 軽水炉 使用済み核燃料 高レベル 放射性廃棄物     再処理 プルトニウム 高速増殖炉 プルトニウム.
> > = = = 調整火力維持+蓄電池コストの抜本的低減 現状 将来 150円 25円 15円 発電 再エネ 再エネ
電力改革と電力広域的運営推進機関.
2014年モデルプラント試算結果 電源 原子力 石炭 火力 LNG 風力 (陸上) 地熱 一般 水力 小水力 バイオマス (専焼)
都市のメンテナンス 2004.6.14.
2014年モデルプラント試算結果 電源 原子力 石炭 火力 LNG 風力 (陸上) 地熱 一般 水力 小水力 バイオマス (専焼)
我が国のエネルギーの歴史:一次エネルギー供給量の推移と需給構造の変化
交通死亡事故の根絶 交通安全教育の推進 = 交通指導取締り 交通安全施設整備 Ⅲ 交通安全基盤の整備・充実と諸対策の推進 交通警察活動の目的
原子力発電停止の影響 中京大学経済学部増田ゼミD班.
二次電池利用による 不動産オフィスビルの環境対応モデル
「市場と社会」研究会 原子力ルネッサンスvs再生可能エネルギー 次世代エネルギーシステムの展望
中国電力の脱原発の可能性 アカデミー6班 2年 川島 昭紀 (大東・経済) 久保田 藍 (大東・経済) 白根 秀一 (日本・経済)
廃棄物処理施設を中心とした自立・分散型の
◆各電気事業者の電力供給の計画を取りまとめると共に、地域間連系線の増強等に関する長期方針や個別の増強計画を策定する。
九州電力 ~脱原発の可能性~ 小山 夏未(日大・経済) 稲葉 弘樹(日大・経済) 狩野 陽一(日大・経済) 西﨑 美帆(日大・経済)
世界の原発と日本.
①新規の需要を求めた海外展開(自国内展開 →EU域内展開 →EU域外展開) ②収益性の高い事業への参入・集中(再エネ電源への投資 等)や、
機構 政 府 相互扶助の仕組み 金融 機関 被害者・被害事業者 資金交付 <特別資金援助の仕組み> 政府 <特別事業計画への記載事項>
2日間の活用調整力(kW)と発電電力量(kWh)
財務的な観点からみた 新市立病院計画 小樽商科大学大学院 堺 昌彦
【第 】 再エネ比率 24% 買取費用総額 4.0兆円 賦課金総額 3.1兆円 再エネ比率 15% 買取費用総額 2.3兆円
今年の冬の厳寒期における 四国電力管内での電力の需給状況 四国電力 アカデミー7班 1年 後藤 友彦 (日大・産業経営) 小林 航
~企業版2℃目標アドバイザー・ RE100アドバイザーの募集について~
資料2-1 地球温暖化対策実行計画の改定について 1 地球温暖化対策実行計画の改定の必要性について 3
3日間の活用調整力(kW)と発電電力量(kWh)
環境・エネルギーでは、 持続可能な社会に向けて どのような取組が必要なのだろうか。
AiSEG スマート分電盤 HEMSを取り巻く環境について.
東京電力エナジーパートナー 九州電力 関西電力 中部電力 大阪ガス 神戸製鋼所 販売窓口50拠点、販 売スタッフ250名体 制を目指す。
脱原発関連 資料1-2 長期方針 エネルギー転換検討委員会の設置 国民的議論 エネルギー転換 基本方針の決定 エネルギー転換に
今までにないコスト合理化や収益拡大を目指す東電改革
おおさかエネルギー地産地消推進プラン ~再生可能エネルギーの普及拡大等を目指して~
水素供給体制の構築見通しを踏まえた計画的な開発・実証
資料1 2015年度夏季の電力需給対策について (概要) 2015年5月22日 電力需給に関する検討会合.
「エネルギー・環境に関する選択肢」 原子力の発電コストに係る検証
~四国電力の脱原発の可能性~ 四国電力 アカデミー6班 2年 坂口 啓 鈴木 幸隆 藤森 大輔 後藤 友彦 松澤 恵梨奈 (日大・金融公共)
 EUの電力由来CO2排出量の推移 1990年 2010年 2015年 需要 (発電量) 26,000 億kWh 33,000 億kWh
【第 】 固定価格買取制度導入後 設備導入量(運転を開始したもの) 制度開始後 合計 42.2%
発電方式別の二酸化炭素排出量
LPガスに係わる10項目 安定供給の確保 ①石油とLPガスの備蓄の確保 環境への適合 ②ガス体エネルギーへの転換を進める
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2012年8月29日 環境エネルギー政策研究所 所長 飯田 哲也 資料1 ほぼ全原発が停止している「今」を起点とする リアルな脱原発の実現シナリオ 2012年8月29日 環境エネルギー政策研究所 所長 飯田 哲也

初期条件を確認する ほぼ全原発が停止している この夏の電力は足りた 再稼働は容易ではない 2

この夏、電力は足りた 3

4 この夏、電力は足りた 関電の夏のピーク需給(原発なしの場合) 予備率6% 予備率6.5% 関電実績の供給力には、需給検証委員会報告に、関電追加対策提案(戦略会議5/15)、融通実績などを含み、大飯原発分は含まない。 ISEP予測の需要は2011年なみ。ISEP予測の供給力は、追加対策150万kWを含む。 4

この夏、電力は足りた 5

今後、電力需給は問題ではない 6

2つのシナリオ 再稼働をなし崩しに強行する 「強行突破シナリオ」 国・電力・経済界・国民の 「四方良しシナリオ」 7

「強行突破シナリオ」 8 再稼働をなし崩しに強行する 国民の反発いっそう拡大 関電の経営いっそう悪化 料金値上げで経済界反発 官邸前デモ パブリックコメント 国民の反発拡大 社会的にいっそうの混乱 大飯3・4号 再稼働 次の再稼働 の強行 8

「四方良しシナリオ」 9 国・電力・経済界・国民の 国がモラトリアム宣言 徹底的な安全性改善 国は電力に燃料費補填 国民的合意の場 ・規制委人事白紙見直し ・規制再構築とバックフィット 国は電力に燃料費補填 ・債務超過回避に交付国債 ・料金値上げ回避または最小化 国民的合意の場 ・国民投票を含む熟議 国民的合意に沿った 脱原発シナリオへ 官邸前デモ パブリックコメント 国民の反発拡大 大飯3・4号 再稼働 モラトリアム期間 (2年間程度) 9

脱原発シナリオの比較 10 2013年脱原発シナリオ(このまま再稼働なし) 2020年脱原発シナリオ 2030年脱原発シナリオ 脱原発の実現性を検証するために、以下の4種類のシナリオに対して、 社会的コストの観点から経済性の比較を行った。 2013年脱原発シナリオ(このまま再稼働なし) 2020年脱原発シナリオ 2030年脱原発シナリオ 2030年原発15%シナリオ(参照ケース) 10

11 脱原発シナリオのコスト比較 脱原発の時期により経済的なコストはほとんど同じレベル 2030年原発15%シナリオとのコストの差はわずかなレベル(事故リスク費用により逆転も) 12.9 兆円/年 12.8 兆円/年 12.8 兆円/年 12.3 兆円/年 2012~2030年の 累積コスト 11

2013年脱原発シナリオ 2013年度の脱原発のタイミングで会計上の一時費用 12

2020年脱原発シナリオ 2030年より早い2020年までの脱原発シナリオ 13

2030年脱原発シナリオ 2030年までの脱原発シナリオ 14

2030年原発15%シナリオ 原発維持の参照ケースとして(実現性は無い) 15

16 モラトリアム 変革期 新市場へ 脱原発ニューディール 再稼働への 国民的合意 体制・基準の再構築 再適用・改善措置 厳しい安全監視 推進と批判の対立を埋め、政府と電力と地域と国民との間で合意しうる、政治的に現実的な唯一の解決策 モラトリアム 変革期 新市場へ 安全性 体制・基準の再構築 再適用・改善措置 再稼働への 国民的合意 厳しい安全監視 原賠法抜本見直し 電力 市場 電力破綻回避 料金値上げ抑制 原発債務処理 電力新市場へ 国費回収(系統費) 脱原発合意 国が再稼働凍結 電力支援 使用済燃料総量規制 乾式中間貯蔵 最終処分への 国民合意 16

脱原発ニューディール 推進と批判の対立を埋め、政府と電力と地域と国民との間で合意しうる、政治的に現実的な唯一の解決策 17

18 脱原発実現のために解決すべき課題 脱原発に必要な基本法の制定と各法律の改正 各電力会社が脱原発を実現する為の事業計画の策定 東京電力:福島原発事故への対応を再優先にした事業解体 関西電力:老朽原発が多く、原発比率が高いため最優先で その他の電力会社:原発比率が高い会社を優先に 電力会社の経営破綻を回避し、スムーズな事業改革を実現 原発停止分の化石燃料の超過コストをどの程度、いつまでどれだけ国が補填し、どのように回収すればよいか 廃止原発をどのように償却すれば電力会社の巨額負担を回避できるか 資産扱いの使用済み燃料を国が引き取ることで債務になることを避ける方法など 18

参考資料 19

20 日本の電力供給の推移 日本国内で原発が一旦は全停止した状況を踏まえ、ここから再稼働できる原発があれば明確に示す必要がある。 ※2011年度は推計、2012年度は予測値 20 出所:電気事業便覧などから推計

発電量の推移イメージ(全国) 2030年脱原発シナリオの場合(2014年までに再稼働) 21

22 脱原発シナリオの試算条件と結果 シナリオ 2013年脱原発 2020年脱原発 2030年脱原発 2030年原発15% 備考 前提条件 省電力 10% 2010年比 再エネ 40% 2030年導入目標 化石燃料価格 IEA予測 従来政策(WEO2011) 原発事故リスク 20兆円 相互扶助方式 コスト試算[兆円] 2012~2030年度累計 原発コスト 15.3 25.9 32.0 49.1 運転維持コスト、福島原発廃炉費用含(事故補償費は除く) 火力コスト 167.8 156.7 149.4 124.0 化石燃料コスト(LNG相当価格) 再エネコスト 61.2 設備投資分 コスト合計 244.3 243.8 242.6 234.3 コスト年平均 12.9 12.8 12.3 22

23 原発コストの前提条件 原発コスト合計 10.2 円/kWh 備考、内訳 資本費 2.0  資本費 2.0 減価償却費1.6、固定資産税0.2、廃炉費用0.2[円/kWh]  運転維持費 3.3 給料手当0.3、修繕費1.4、諸費1.2、業務分担費0.4[円/kWh]  燃料費 4.0 直接処分(原子力委員会事務局の試算)  社会的費用   事故リスク対応 1.8 事故対応費用20兆円の場合には1.8円/kWh (6兆円の場合には0.5円/kWh)   政策経費 1.1 廃炉後の政策経費はいつ脱原発しても同じとして除いた。 廃炉にした場合のストック面での影響(経済産業の試算) 廃炉費用(解体引当金)未引当金分 1.2兆円 平成23年度末 原子力発電設備の除却損 2.4兆円 核燃料の除却損 0.77兆円 合計 4.37兆円 福島原発事故 廃炉費用 9兆円 未確定だが、0.9兆円 × 10年間で計上 補償費用 6兆円以上 未確定だが、20兆円以上という試算も。 23