NGC 2043 銀河中 の 超光度X線源 (ULX) の スペクトル状態の遷移

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NGC 2043 銀河中 の 超光度X線源 (ULX) の スペクトル状態の遷移 2403 NGC 2043 銀河中 の 超光度X線源 (ULX) の スペクトル状態の遷移 磯部直樹(理研) 「すざく」 SWG NGC 2403 チーム 牧島一夫 (理研・東大), 川原田円, 千田篤史 (理研), 高橋弘充, 水野恒史 (広島大), 宮脇良平 (東大), 吉田鉄生 (東理大), R. Mushotzky (GSFC/NASA) 2007年9月27日 日本天文学会 2007年 秋季年会 J32a

超光度X線源 (ULX) 近傍の銀河に存在する 光度 L >> 1039 ergs s-1 程度の明るい X線源。 質量が M >> 10 M◎ の 中質量ブラックホールの候補と考えられている (e.g. Makishima et al. 2000)。 中質量ブラックホールとすると、観測される温度が高すぎる ULX : 1 – 2 keV 系内ブラックホール 0.5 – 1 keV 恒星質量ブラックホールがEddington限界以上で輝いているという説もあり(e.g., Begelman & Mitchell 2002)、正体は未解決である。 正体を明らかにするには、X線スペクトルやその変動を詳細に測定して、系内ブラックホールと比較することが重要である。  2007年9月27日 日本天文学会 2007年 秋季年会 J32a

「あすか」, 「すざく」, Chandra, Newton により、 NGC 2403 渦巻銀河(SABcd型) 距離 3.2 ± 0.4 Mpc (Freedman & Madore 1988) 明るいX線源 (ULX) が存在 2006年3月16日に「すざく」SWG観測 1997年に「あすか」の観測 (Kotoku et al.,1999) 超新星 SN2004dj の発見のより、Chandra, Newton の観測が多数 SRC5 SRC3 4分角 = 3.7 kpc 可視光(DSS) 「すざく」 0.5 – 10 keV 「あすか」, 「すざく」, Chandra, Newton により、 SRC 3 のスペクトル変動を調査 2007年9月27日 日本天文学会 2007年 秋季年会 J32a

「すざく」によるSRC 3のスペクトル 降着円盤からの多温度黒体輻射モデル(MCD)でよく再現できる。 Tin = 1.09 ± 0.03 keV Rin = 116.9 + 5.9 – 5.5 km Lbol = 1.75 x 1039 ergs s-1 Power-Law (PL)モデルでは、再現できない。 MCD XIS 0+2+3 XIS 1 MCD (c2 = 296.5/334 ) PL (c2 = 585.3 / 334) 2007年9月27日 日本天文学会 2007年 秋季年会 J32a

Lbol – Tin 関係 SRC3 SRC5 SRC3は、10 – 15 M◎ 程度の ブラックホール が Eddington 限界 程度で輝いているように見える (「あすか」の 結果は Kotoku et al. 2000, NGC 2403以外の出展は Isobe et al. 2007 にまとめてある) 2007年9月27日 日本天文学会 2007年 秋季年会 J32a

SRC 3 のスペクトル遷移 2004年12月のChandraの観測だけは、 PL型のスペクトルを示した G = 2.37 ± 0.07 フラックスは、他の観測と比べて約10 %小さかった MCD/PLスペクトル遷移は 系内ブラックホールではよく見られる ULXでは、いくつか報告あり NGC 2403 SRC3 では、初めて発見 MCD MCD MCD PL MCD 系内ブラックホールと 比較してみる 2007年9月27日 日本天文学会 2007年 秋季年会 J32a

ブラックホールのスペクトル遷移 2 < G < 3 G < 2 Energy [keV] Lbol / LEdd SRC 3の遷移は スリム円盤状態 ⇔ Very High状態 1 10 100 Energy [keV] スリム円盤状態 MCD型 1 Very high状態 PL型 High/Soft 状態 MCDスペクトル 2 < G < 3 0.1 G < 2 Low/Hard 状態 PLスペクトル 「すざく」 XIS の帯域 0.01 2007年9月27日 日本天文学会 2007年 秋季年会 J32a (牧島先生の ppt より)

明るくなると、スリム円盤の特徴が顕著になる スリム円盤状態の検証 標準円盤 (MCD) 温度の半径依存性     T ∝ r -0.75 スリム円盤 Advectionなどのために、温度勾配が緩やかになる (Watarai et al. 2000) T ∝ r –p (p-free disk) 0.5 < p < 0.75 (e.g., Mineshige et al. 1994) MCD : p = 0.75 (標準降着円盤) スリム円盤の極限 p = 0.5 明るくなると、スリム円盤の特徴が顕著になる 2007年9月27日 日本天文学会 2007年 秋季年会 J32a

まとめ 「あすか」, 「すざく」, Chandra, Newtonを用いて、NGC 2403 銀河中の ULX, SRC 3の約10年にわたるスペクトル変動を調査した 1回の観測を除いて、MCD型スペクトルが得られた。 Tin = 1.09 ± 0.03 keV Rin = 116.9 + 5.9 – 5.5 km  (「すざく」の観測) Lbol = 1.75 x 1039 ergs s-1 MCD状態の時には、質量 M = 10 – 15 M◎のブラックホールが、Eddington 限界程度で輝いているように見える。 フラックスが10 %程度低かった 2004年 Chandra の観測だけは、 PL 型のスペクトルが得られた。 G = 2.37 ± 0.07 SRC 3のスペクトル遷移は、Very High状態とスリム円盤状態の遷移と考えると、うまく説明がつく。 2007年9月27日 日本天文学会 2007年 秋季年会 J32a

2007年9月27日 日本天文学会 2007年 秋季年会 J32a

ChandraによるX線画像 2007年9月27日 日本天文学会 2007年 秋季年会 J32a

SRC 3のスペクトル遷移 Chandra ACIS S5 2004年12月のChandraの観測だけは、 PL型のスペクトルを示した。 G = 2.37 ± 0.07 このときのフラックスは、他の観測よりも 10 %程度小さかった。 このようなMCD/PLスペクトル遷移は、 系内ブラックホールではよく見られる。 ULXでは、数例報告されている。 (e.g., IC 342, Kubota et al. 2001) PL Chandra ACIS S5 MCD (c2 = 194.8/123) PL (c2 = 110.7/123) 2007年9月27日 日本天文学会 2007年 秋季年会 J32a