自作電波望遠鏡による木星電波の検出 園田愛実 冨田敬人 静岡県立磐田南高等学校 地学部 天文班 園田愛実 冨田敬人 静岡県立磐田南高等学校 地学部 天文班 2011,ジュニアセッション 1.概要: 20.1MHzが受信できる電波望遠鏡を作成して、木星電波の観測を行い、413回の木星電波を検出した。木星電波は衛星イオの位相と中央傾度から、Io-A、B、Cの3種類が識別でき、 Io-Aが最も強いことが分かった。 2.動機・目的:昨年は木星電波の観測は継続していたが、皆既日食の研究を中心におこなったので、解析までには至らなかった。そこで、今年は木星電波の解析を再開し、木星の中央経度と衛星イオの位相の関係を明確にすることにした。研究の目的は以下のとおりである。 ① 自作した電波望遠鏡を用いて木星電波を検出する。 ② 木星電波の中央経度とイオの位相の関係を調べる。 3.木星電波とは:木星デカメートル放射は、図1のように長時間にわたって観測される電波ではなく、30分~2時間ほどにわたって強度の変化が続くもので、に記録上では針山状の波形を示す。 4212 3232 2253 1274 13:28:28 295 15:12:38 16:56:49 18:40:59 20:25:09 時刻 電波強度 木星電波 図1 本校で観測した木星電波 観測日時:2010年7月19日 観測時刻:15:06~15:10 分類:Io-B 4. 方法:幅7.1m、高さ6mで20.1MHzが受信できるダイポールアンテナと、検波器、パソコンからなる自作電波望遠鏡を本校屋上に設置し、波形観測を行った(図2,3)。木星電波の発生には、木星の中央経度とイオの位相が密接に関係していることが知られているのでこれを検討した。 図3 設置したアンテナ(本校屋上) 5.結果: 2007年は26回、2008年は159回、2009年は185回、2010年は43回の、計413回の木星電波を観測することができた。電波は木星の中央経度90°~360°で放射され、0°~90°では電波は放射されない(図5,6)。また、イオの位相では60°~120°、180°~280°で放射されることもわかった(図7,8)。そこで、木星の中央経度とイオの位相の関係を検討するため、これを図示したところ3箇所で強い電波が放射される領域があることがわかった(図3,4)。文献によると、それぞれIo-A、Io-B、Io-Cと呼ばれており、Io-Aが最も強いことがわかった。 検波器 パソコン アンテナ 図2 観測システム 木星電波の発生メカニズム:イオは電離層を持っており、イオと木星が決まった位置関係になると、電離層に電流が流れ、それによって電子が加速される。その電子が磁力線沿いに木星へと落下し、電波がビーム状に放射され、地球上で電波を観測できると考えられている。 前回 観測期間:2007年9月4日~2008年8月22日 位相(°) Io-C Io-A Io-B 図3 前回の研究で予報と一致した木星電波 今回 観測期間:2007年9月4日~2010年8月31日 図4 今回の研究で予報と一致した木星電波 前回32個だったが27個増え、59個に 図9 木星電波発生の メカニズム イオ位相角 θ 木 星 地球 イオ 中央経度 λⅢ 木星 大赤斑 地球 中央経度 λ=125° λ=0° 図10 木星の中央経度 図11 イオの位相角 図6 今回の研究のイオに依存する電波の個数と中央経度 図5 前回の研究のイオに依存する電波の個数と中央経度 図8 今回の研究のイオに依存す電波の個数とイオの位相 図7 前回の研究のイオに依存する電波の個数とイオの位相 6.結論 ① 木星電波の観測に413回成功した。 ② 木星電波はIo-A、B、Cの3種類あり、これらはイオの位相と中央経度に依存しておりIo-Aが最も強い。 7.今後の課題 ① ホームページ上の予報を頼らずに、中央経度やイオの位相を計算することにより、自分たちで木星電波の予想が出来るようにしたい。 ② 現在の観測状況で、太陽電波や銀河電波などの木星電波以外の電波が観測できていると予想されるので、これらを同定したい。 参考文献・ホームページ: 前田耕一郎(2002)電波の宇宙、コロナ社 前田耕一郎(1990)簡単な電波望遠鏡による低周波電波天文学 4.木星電波の観測 福井工業大学 http//www.fukui-ut.ac.jp/ut/asro/project/jpredict.htm