①Mitochondrion Mitochondrial Protein Import and Apoptosis ① ② ③ 神田大輔 蛋白質核酸酵素Vol.50 No.10, 1303 (2005) ミトコンドリアヘの蛋白質輸送の構造基盤 ② OMP integrase General insertion pore ①Mitochondrion IMP integrase ③ Presequence translocase 1 2 3 4 Figure 1 | Protein-import pathways for mitochondrial proteins. ミトコンドリア前駆体タンパク質として、正電荷を持った(両親媒性a-ヘリックス)プレ配列を持つもの(褐色)、 b-バレル型の外膜ポリン様タンパク質 outer-membrane proteins (緑), および 多数回膜貫通型 (multi-spanning) 内膜タンパク質 (青、内部にターゲティングシグナルがある) が示されている。それらは、細胞質のシャペロン(オレンジ色シート)の助けで、膜透過可能な比較的ほどけ 上から順に、1. ミトコンドリアのマトリックス(Matrix)へ、あるいはさらにマトリックスから内膜(IM)へとタンパク質を導くプレ配列;2. 同じようなプレ配列の直後に膜貫通領域があると、直接内膜(IM)へ導かれ, Nin-Cout の構造を取る (例: D-lactate dehydrogenase and subunit Va of cytochrome c oxidase);3. プレ配列後に別のシグナル部分があり、それに依存して、内膜透過中に膜間腔(IMS)あるいは,内膜(IM)へターゲットされるもの;4. 特にプレ配列を持たない内膜の多数回膜貫通型(polytopic)輸送タンパク質(例ATP/ADP交換輸送体、呼吸基質の有機酸輸送体など)。 Journal of Cell Science 116, 3259-3267 (2003) た状態に保たれている。その上で、それぞれのターゲティングシグナルが、外膜トランスロコンのリセプタ部分に認識される。具体的には、Tom20, Tom22 and/or Tom70などである。前駆体タンパク質当たり、3つまでのTom70ダイマーが結合する(この図でのTom70分子[緑のうちわ形]は、ダイマーを表わしている)。次に、前駆体タンパク質は、Tom40 が作るポアを透過する。TOM複合体は、一つの複合体構造当たり二つから三つのポアを持っていると考えられる(下の電子顕微鏡写真)。外膜のb–バレルタンパク質の場合は、small Tim proteins (Tim9–Tim10膜間腔!) の助けを借りて、膜間腔を経て、sorting and assembly machinery (SAM 複合体)により、正しいコンフォメーションを取って膜に挿入される[最近のデータによると、外側からSAM複合体にターゲットされるようだ。手書き緑の矢印]。膜一回貫通型の外膜タンパク質は、その膜貫通ヘリックス部分がTom複合体により認識され、直接外膜に挿入される(図には示されていない)。通常のプレ配列を持つ前駆体(右上図③の1)はTIM23複合体(Presequence translocase、Tim23のアミノ末端は外膜を貫通しているという報告もある[図には示されていない]))を通してマトリックスへ送られるが、その中で、膜貫通領域あるいは膜間腔シグナルを持つもの(図③の2, 3)は、TIM23複合体によって内膜透過中に内膜に組み込まれるか、全体が一旦マトリックスに入ってから、内膜へ組み込まれる(右上図②左方向)。(これらとは別に、TOM複合体から直接膜間腔に放出されるものもある。) 膜輸送の駆動力としては、膜電位 (DY) に加えて、presequence-translocase-associated import-motor (PAM) 複合体がプレ配列を持つ前駆体の輸送に必須である。ミトコンドリア内のheat-shock protein-70 (mtHsp70) がPAMモーターの中心的成分であり、内膜のTim44, Pam16 and Pam18と共同して輸送に働く。また、マトリックスタンパク質の Mge1 (mitochondrial GrpE-related protein-1, mtHsp70のヌクレオチド交換因子) によっても調節を受ける。マトリックスでは, mitochondrial processing peptidase (MPP) がプレ配列部分を切り取る。内部シグナルを持つMultispanning inner-membrane proteins の場合(図③の4)は Tim9–Tim10 複合体の助けをうけて膜間腔を横切り、内膜の別のトランスロコンであるTIM22複合体(=IMP [inner membrane protein] integrase=twin-pore translocase)に送られ、膜電位(DY)をエネルギー源として、内膜に組み込まれる。 Nature Reviews Molecular Cell Biology 5, 519-530 (2004) Fig. 3. ミトコンドリアTransloconの進化についてのアイデア 黒色の成分は. 先祖型の細菌にすでに備わっていたもの。外膜のOmp85は外膜タンパク質(主にb-barrel)の組み込みを助ける。内膜のYidC/Oxa1複合体は、SecYEG transloconを透過する内膜タンパク質の組み込みを助ける。シグナル・ペプチダーゼ (SPase/IMP) は、 trans-loconを透過するタンパク質のシグナル配列を切り取る。内膜にはもう一つ、ある程度foldしたタンパク質を透過させるTAT系translocon(細菌plastidでも知られている)がある。細胞内共生によるミトコンドリアの形成後、細胞質で作られるタンパク質を輸送するために、TOM complexやSAMが新たに発明された。これらの複合体の形成には、今でもOmp85/SAMが必要である。 Science 313 314-318, 2006 TOM complexのchannel はb-barrelで、TIMは違うはずだが、見かけは似ている!Science 299: 1747-1751, 2003. Mitochondrial Protein Import and Apoptosis アポトーシス The role of mitochondrial outer membrane permeabilization in apoptosis.ミトコンドリアの外膜透過性昂進(要するに穴が開く)がアポトーシスに果たす役割 健康な細胞では、アポトーシスを実行するシステインプロテアーゼであるcaspasesは、不活性のzymogenとして存在しており、BH3-only proteins (BH3:Bcl-2と結合してそれらを不活性化する)は、細胞骨格などに結合することで遠ざけられているので、Bcl-2, IAPなどの細胞生存に導く(アポトーシスを抑える)タンパク質(pro-survival, anti-apoptotic proteins )は活性型である。細胞内外のアポトーシスを導く信号により、BH3が放出されると、ミトコンドリア表面でBcl-2と共にオリゴマーを作り、BaxやBakと呼ばれるタンパク質をさらに呼び寄せる。この複合体がミトコンドリア外膜のタンパク質と相互作用して、大きなポアを作り、膜間腔に存在している電子伝達タンパク質のcytochrome c を放出させる。すると、cytochrome c はApaf-1のheptameric “apoptosome” (apoptosisの実行役)形成を誘導し、さらにそこへprocaspase-9 (c9)が集合して、caspase-3 (c3)を活性化する。別に放出された Diablo/ Smac や Omi/Htr2 はIAPsを不活性化する。他方で、AIF やendonuclease G (endoG) は核に入り、染色体DNAの分解に働く。 Genes Dev. 2003 17: 2481-2495 (IAP: inhibitor of apoptosis , AIF: apoptosis-inducing factor) このようにして、ミトコンドリアでの変化がapoptosisを誘導する。