ジャストインタイム農業がもたらす農業イノベーション

Slides:



Advertisements
Similar presentations
次世代気候情報の配信システムの検討 プリマ・オキ・ディッキ , 南野謙一 ( 岩手県立大学 ) 高度農業気象情報(作物の発育や病害虫の発 生などを予測するために必要となる農作物生 産地の気象予測情報等)の作成・描画・提供 システムの開発の一環.
Advertisements

なぜ貧しい国はなくならないのか 第4章 飢餓は是が非でも避けた い 堀佑太. 第1節 経済発展と農業問題 第一の農業問題 食糧不足 人口増加により未開の耕地が減少、また畑の休閑 期間が短くなり、土地の肥沃度が減少する にもかかわらず、生産性を上げる技術が開発され ないと食糧不足が起こる.
③新たな作目や品種の特徴を活かした需要拡大
農産物一貫流通システム 農業・農村の活性化と安全・安心の確保のために
産地パワーアップ事業の取組事例 (北海道)
農事組合法人 田吾作 お問い合わせ先 京丹後市久美浜町布袋野1479 電話  FAX  府道 706号 川上小 農場 府道 691号
ジャガイモ 「作物」学習用教材.
稲作農業の体質を強化するため、稲作農業者が行う
地球環境問題班 今井 康仁 川内 雅雄 熊田 規芳 西田 智哉.
地域社会論 第5回 Ⅴ.国際環境 11月9日.
食料自給率の「なぜ?」             著者 末松広行 稲葉ゼミ  06a2139z 半田哲也.
SCMとトヨタ生産方式を比較する 再編 ∞Infinity
穀物はなぜいつも店先にあるのか? ~主要穀物の生産、流通、管理~ 第6班.
葬られた野菜たち ~そして大根は闇の中へ~
2週目の気温予測を用いた東北地方の稲作への影響予測
ラオス・ビエンチャン平野における稲作の環境対応事例
第6回ヤマセ研究会 2012年9月24~25日 2011年と2012年のヤマセが 水稲に及ぼした影響 宮城県古川農業試験場 菅野博英.
FOODS eBASE Cloudプラットフォームで構築
リスク評価 ・管理技術開発 有害性評価手法 暴露評価手法 リスク評価手法 リスク管理手法 化学物質総合管理分野のロードマップ(1) (目標)
第7章 途上国が「豊か」になるためにすべきこと
DIASできり拓く ジャストインタイム農業
安全な農作物生産管理技術と トレーサビリティシステムの開発
トウモロコシの動向 2班.
食糧とそれを取り巻く要因に関する分析 稲葉ゼミナール 4年 鶴岡裕也.
水田湛水深モニタリングサービス 「農業水利サービスの定量的評価と需要主導型提供手法の開発」 インターフェイス開発グループ
アジア恊働大学院(AUI)構想 AUI推進機構/設立趣意書
せまる!食料危機 岡本 健二  前田 優太.
気温の予想を用いた 栽培管理指導に向けた水稲の生育量予測
生物多様性の危機 「精神のモノカルチャー」の説明 経済開発が削減した知識体系・ローカルな知識: 生態系と共同体との間の体系
安全な農作物生産管理技術と トレーサビリティシステムの開発
電力班 小松・早川 藤丸・松浦 電力自由化に伴う 電力価格の変化.
手に取るように金融がわかる本 PART6 6-11 09bd139N 小川雄大.
米トレーサビリティシステムのご紹介 日通情報システム 平成23年11月.
いまさら何ができるのか?何をやらねばならないのか?
GEOSSデータ統合・解析システム」第1回フォーラム
ジャストインタイム農業がもたらす農業イノベーション
第8回ヤマセ研究会 宮城県古川農業試験場 日平均気温を用いた小麦の開花期予測.
アグリノート 防災 減災 少子 高齢 産業 創出 アグリノート にオープンデータが追加されたキッカケ
食糧自給率低下によって 日本が抱える危機とその対策
図表で見る環境・社会 ナレッジ ボックス 第2部 環境編 2013年4月 .
東京大学空間情報科学研究センターを 中心とした空間情報データベースの整備
現代の経済学B 植田和弘「環境経済学への招待」第3回 第7章 環境制御への戦略と課題 京大 経済学研究科 依田高典.
アジアモンスーン地域における気候変動とその農業への影響評価 PI:松本 淳 CI:荻野慎也・森 修一・遠藤伸彦・久保田尚之・徐 健青
農業支援システムの2012年度運用実験(途中経過)と課題
中学校理科・社会・総合的な学習の時間  環境問題について .
※ エネルギー環境教育を中心とした学習内容です。 教育課程に準じて,内容を加筆修正してください。
稲葉ゼミ第二回書評 「データブック 食料」西川 潤 岩波ブックレット (2008年8月6日発行)
光環境と植物 第10回 光量と植物の生長について
(新)ふくしまアグリイノベーション実証事業【水田メガファームモデル事業】
Just In Time 生産方式 3回生 山崎智之.
2017年度版  フード連合 産業政策.
世界の食糧問題 ~国際社会という視点から慢性的飢餓に どう立ち向かうか~
日本の食糧安保リスクを管理する ための貿易とテクノロジーの役割
地球温暖化防止に必要なものは何か E 石井 啓貴.
言語XBRLで記述された 財務諸表の分析支援ツールの試作
タイのバイオ燃料事情 二班:板倉 関矢 元木.
環境情報学部2年 中本裕之 総合政策学部2年 千代倉永英
ジャストインタイム農業システム (JITAS; Just In Time Agriculture System)
背景 課題 目的 手法 作業 期待 成果 有限体積法による汎用CFDにおける 流体構造連成解析ソルバーの計算効率の検証
環境・エネルギー工学 アウトライン 序 章 環境・エネルギー問題と工学の役割 第1章 バイオ技術を使った環境技術
農業分野における気候変動への適用に関する 政策から求める海洋地球観測探査システムのあり方
生態地球圏システム劇変のメカニズム 将来予測と劇変の回避
書評報告 “トウモロコシ”から読む世界経済 光文社新書  江藤隆司著 06A2100H 谷澤 佑介.
水田立地とコメ品質の関係 東京大学 山路永司 2019/5/1.
気候環境問題の新しい情報発信に向けて 領域創成プロジェクト (気候・環境問題に関わる高度複合系モデリングの基盤整備に関するプロジェクト)
主要穀物の価格動向.
主要穀物の 需要と生産状況 7班 07A024 奥藤智代 07A043 小西郁里 07A052 坂田秋沙 07A053 坂本典子
安全な農作物生産管理技術と トレーサビリティシステムの開発
持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)について
安全な農作物生産管理技術と トレーサビリティシステムの開発
Presentation transcript:

ジャストインタイム農業がもたらす農業イノベーション 第2回「データ統合・解析システム」(DIAS)フォーラム -データ統合は社会を変えられるか- 2008年5月9日 @東京大学 武田先端知ビル ジャストインタイム農業がもたらす農業イノベーション 溝口勝1・二宮正士2・鳥谷均3 1東京大学EDITORIA/大学院情報学環・学際情報学府(UT) 2 農業・食品産業技術総合研究機構(NARO) 3 農業環境技術研究所(NIAES)

ジャストインタイム生産システム 7つのムダをなくすように自ら改善 作りすぎ 手待ち 野菜の産地廃棄 運搬 休耕田 加工そのもの 在庫 動作 不良を作る 野菜の産地廃棄 休耕田 フードマイルで解消 適地適作 余剰米 農薬混入    (農業分野)

穀物価格の急騰 背景 影響 対策:途上国に緊急支援 日本の役割と責任 輸送コストや肥料価格に直結する原油などエネルギー価格の高騰 中国、インドなどアジアを中心とする有力な途上国の食糧需要増 気候変動に伴う洪水や干ばつによる収穫減 バイオ燃料生産のための穀物利用 影響 途上国を中心に食糧確保不安、各地で暴動の懸念 対策:途上国に緊急支援 アジア開銀総裁が表明(5月3日) 7億7000万ドル(約800億円)の追加支援策を発表(米国:5月1日) 北海道洞爺湖サミットでも主要テーマか(5月3日読売新聞) 日本の役割と責任 いまこそ日本の農業技術の出番!

ジャストインタイム農業システム (JITAS; Just In Time Agriculture System) ジャストインタイム生産システム(JIT; Just In Time) 経済効率を高めるための技術体系(生産技術) トヨタ自動車の生産方式(カンバン方式) 必要な物を、必要な時に、必要なだけ適切に生産 ジャストインタイム農産物生産システム 農業における新しい生産システム 生産性・安全性・収益性に留意した農作物生産方式 地上観測・気象予測・作物栽培データベースの活用 グローカルな視点で農業現場の問題を解決 野菜の産地破棄を軽減 食料への農薬混入を防止 食料自給率を向上 農地を効率的に利用 価格維持のため産地廃棄 YOMIURI ONLINE より 畑の農薬散布作業 千葉県ホームページ より Glocal:  地球規模で考えながら、自分の地域で活動すること Think globally, act localy

DIASにおける具体的な目標 コアシステムで提供されるデータ群を効率的に統合し農業分野で利用できるようにする 誰でも簡単に知ることができ,政策決定者の判断のよりどころになるシステムを実現する 農業生産管理支援情報 地球温暖化による食料生産への影響等 安全で安心かつ安定的で高品質な食糧供給を求める公共益に供する グローカルな視点でジャストインタイム農業システムを構築

⑧ 安全な農作物生産管理技術とトレーサビリティシステムの開発 (これまでの研究成果と今年の計画) ⑧ 安全な農作物生産管理技術とトレーサビリティシステムの開発 (これまでの研究成果と今年の計画) 溝口 勝(大学院情報学環/農学生命科学研究科)・二宮正士(農業・食品産業技術総合研究機構)・鳥谷均(農業環境技術研究所) コアシステムにある地上気象観測データ群をメッシュ気象値化 ・フィールドサーバおよびMetBrokerによる画像を含む地上気象観測データをコアシステムに構築 ・データベース生成ツールとフィールドサーバ画像データ解析ツールを開発  → データの統融合による農作物管理情報生成の基盤ができた  → 高度データマイニングによる安全安心な農産物情報伝達ツールの開発につなげる 3. 広域土壌水分モニタリング・評価システムの拡張 ・東北タイにおける広域土壌水分モニタリングサイトを拡張 ・全天日射量と炭酸ガス濃度モニタリング機能を追加  → 衛星による土壌水分バリデーションサイトの運用基盤ができた  → 土壌水分の有効利用による適地適作検証用サイトとしても発展させる 画像データと数値データの統合利用ツール 土壌水分バリデーションサイト コアシステム 地上観測データ群 GPV予報データ群 イネの湛水面積の変化 MetBrokerインタフェース 地上観測とGPVの比較 水稲適地適作検証ツール 2. 長期気象予測変動データMetBrokerインタフェースの開発  ・CMIP3/AR4長期気象予測変動データのグリッド化のためのプログラム開発   → 地上観測気象DBとGPV短期気象予報DBを時間軸上で統合した   → 各種気象観測データ群をシームレスに統合できるようにする 4. グローバルスケール・ボトムアップアプローチ農業生産モデルの開発  ・Web水稲適地適作検証ツールを開発 ・多様な作物・品種の生育パラメータ推定を簡便化するツールを開発  → 全球レベルでイネの適地適作予測が可能になった  → 任意の作物・品種の栽培可能性をマップ表示できるようにする

1. コアシステム全球気象観測データベースの利用環境を構築 (喜連川Gとの連携) フィールドサーバおよびMetBrokerによる画像を含む地上気象観測データをコアシステムに構築 データベース生成ツールとフィールドサーバ画像データ解析ツールを開発 → 農作物管理情報生成の基盤 → 農産物情報伝達ツールの開発

2. 長期気象予測変動データMetBrokerインタフェースの開発 (柴崎G・木本研Gと連携) CMIP3/AR4長期気象予測変動データグリッド化のためのプログラム開発 → 地上観測気象DBとGPV短期気象予報DBを時間軸上で統合た → 各種気象観測データ群をシームレスに統合できるようにする 観測データ 予報データ

3. 広域土壌水分モニタリング・評価システムの拡張(小池Gと連携) 東北タイにおける広域土壌水分モニタリングサイトを拡張 全天日射量と炭酸ガス濃度モニタリング機能を追加 → 衛星による土壌水分バリデーションサイトの運用基盤 → 土壌水分の有効利用による適地適作検証用サイトと    して発展させる

4.グローカルの視点での農業生産モデルの開発 4.グローカルの視点での農業生産モデルの開発  Web水稲適地適作検証ツールを開発 多様な作物・品種の生育パラメータ推定を簡便化するツールを開発 → 全球レベルでイネの適地適作予測が可能 → 任意の作物・品種の栽培可能性をマップ表示

気象データの水平統合 時間経過に対して重ね合わせる 同じ作物プログラムが異なる気象条件下でそのまま使える Today ジャストインタイム 播種 防除 施肥 収穫 出荷 生育期間 観測値 短期予報 平年 平年予測 適作 可能性 平年値 時間経過に対して重ね合わせる 同じ作物プログラムが異なる気象条件下でそのまま使える 将来予測 影響評価 温暖化時の作付図 長期予報

水稲適地適作検証ツール Google Map上で位置を指定 最寄の気象データ観測地点も表示 他の作物にも拡張可能 ・小麦 ・大豆 ・トウモロコシ等 Google Map上で位置を指定 最寄の気象データ観測地点も表示

温暖化時の生育にも対応可能

品種を入力

位置の指定 近くの気象観測データを使って補間

生育予測結果の表示 気温+日長 登熟 DVI(DeVelopmental Index 発育指数) 移植日=0,出穂期=1 出穂

寒い地域を指定してみると・・・

寒くて生育しないことが判明 生育せず

タイでコシヒカリは作れるか?

同じ方式で全球レベルで栽培可能性を判定できる! 成長が速い! 土浦より1ヶ月早い収穫 同じ方式で全球レベルで栽培可能性を判定できる! (ただし、現時点では十分な水があるという条件付) 水利用可能性とのリンクが必要

簡便なインタフェースを利用した水稲適地適作検証ツール Web水稲適地適作検証ツールを開発 多様な作物・品種の生育パラメータ推定を簡便化するツールを開発 → 全球レベルでイネの適地適作予測が可能になった(約50品種) → 任意の作物・品種の栽培可能性をマップ表示する

多様な農作物に対する 適地適作判定ツール 【イメージ】 H20年5-6月までに 得られるインパクトのある成果 このスライドを最新版に 書き直す 水稲適地適作検証ツールの拡張 全球レベルでイネの栽培可能性を品種別に地図上にマッピング 温暖化を想定した収穫時期予測も可能 GSBUAによるジャストインタイム農業への展開基盤を提示 今年の作付け~XX年後の作付けまで対応可能 2100年 (温暖化時) 2008年(現在) 20XX年(任意)

Thank you 食(農業)のジャストインシステム 生産 流通 消費

議論1 なぜコメなのか?-コメは備蓄可能では 野菜の方がJITに馴染むのでは? いまは穀物が重要 穀物栽培可能性をグローバルに検証できる 小麦、トウモロコシ、大豆にも展開可能 野菜の方がJITに馴染むのでは? 3-6ヶ月の天気予報の精度向上が必要 流通が重要 原料の安定供給が重要(例:ジャガイモ) 供給のハザマを作らない

議論2 植物工場こそJITで可能では? 食品トレーサビリティが重要では? エネルギーコストの問題 穀物生産は不可能 生産現場~食卓までの流通過程は確かに大切 これは「生産システム」とは違う「物流システム」の問題 別の意味でのIT農業(ユビキタス農業)

議論3 ムダが農業の特徴? 精密農業(農場) 工業と農業の違い 農業の多面的機能 許容できるか? 無駄と余裕 食育の問題 農業の多面的機能 許容できるか? 無駄と余裕 食育の問題 精密農業(農場) 農場の工場化(先進国では可能かも) 途上国ではまずはローテクの組み合わせ

植物工場 利点 安定供給 高い安全性 高速生産 土地の高度利用 欠点 高額の生産費用 少ない栽培品目 葉菜類や一部のハーブ類のみ