中国の科学技術情報流通と 日中協力について 日中科学技術シンポジウム 2008年12月10日 独立行政法人 科学技術振興機構 顧問 沖村憲樹 ・自己紹介
1.JST事業と中国との関わり
JST事業と中国との協力関係 JST中国科学技術総合研究センター 新技術の創出に資する研究 国際共同研究事業 (ICORP) JST事業と中国との協力関係 新技術の創出に資する研究 国際共同研究事業 (ICORP) 新技術の企業化開発 科学技術情報の流通促進 産学官連携フォーラム 新技術説明会 データベース作成 資料交換 JST北京事務所 JST事業紹介 中国側カウンターパートとの連絡・調整等 科学技術に関する知識の普及、国民の関心・理解の増進 科学技術に関する研究開発に係る交流・支援 戦略的国際科学技術 協力推進事業 日本科学未来館事業 JST中国科学技術総合研究センター (研究開発戦略センター)
JST中国総合研究センターについて 日本初 中国科学技術関連情報の総合的シンクタンク 内外の中国関係研究機関等との連携・協力 Research Center for Chinese Science and Technology, JST 日本初 中国科学技術関連情報の総合的シンクタンク 人材ネットワ ーク(データ) ○ 中国科学技術関連文献の網羅的な収集とDB化 大学、研究所、 政府、企業等 への情報提供 ○ 国内外の中国科学技術関連情報の調査・分析 ○ DBの公開、調査・分析結果の定期的な情報発信 調査・分析 レポート 電子DB 科学技術政策 産業技術 科学技術研究動向 中国総合研究センター 経済 -中国情報のワンストップセンター- 政府・関係機関 JST 想定協力機関(国内) 民間シンクタンク 企業 想定協力機関(海外) ■ 行政機関 JETRO アジア経済研究所 JICA ほか ■ 民間財団 日中経済協会 ほか ■ 大学 政策研究大学院大学、愛知大学(国際中国学研究センター)ほか ■ 中国立地企業 NEC、トヨタ、協和発酵、 三菱化学、味の素 ほか ・中国センターの設立目的、活動内容 ・センター設置の目的として、中国で発表される研究成果を日本に紹介する ・ National Science Foundation (米) ・ Council on Foreign Relations(米) ・ Asia Pacific Research Center, Stanford Univ.(米) ・ Institute of Asian Affairs(独) ・ Institute of World Economics and Politics(中) ・ Korea University(韓) ・ Institute of Economic Growth(印) ほか 大学・TLO 研究機関 JST北京事務所 内外の中国関係研究機関等との連携・協力
2.中国の科学技術力の進展と研究成果
国際社会における中国の将来 ○国内総生産(GDP) → 2040年頃には、第1位になると予測される (兆ドル) → 2040年頃には、第1位になると予測される (兆ドル) 出典:平成20年版 科学技術白書(一部抜粋)
学術界における中国の将来 ○主要科学論文誌に掲載された論文シェア →第5位(10年前の3.7倍;日本、ドイツ、イギリスとほぼ同じ水準) →第5位(10年前の3.7倍;日本、ドイツ、イギリスとほぼ同じ水準) (%) 34 ・・・1995年 ・・・2005年 34.2 33 32 31 30 28.9 29 8.3 7.8 8.1 6.7 6.2 6.4 5.9 3.7倍 1.6 イギリス 出典:NSF Science and Engineering Indicators 2008収録のデータを基に作成
中国で発行される学術雑誌数 (誌数) 1950 1960 1970 1980 1990 2000 出典:情報管理 Voi.48, No.5 P260
中国学術雑誌の発行状況 ・中国発行の学術雑誌(科学技術・人文社会科学)は 全部で約12,000タイトル 全部で約12,000タイトル ・この内、約6,700タイトルがコアジャーナル ・約6,000タイトルが科学技術系 ・英文誌は、全学術雑誌の約4% ・約95%について、全文が電子化されている
主要国の論文の相対被引用度 全世界平均=1.00 1.47 1.36 1.21 1.09 0.90 0.67 0.58 0.50 0.47 出典:科学技術白書(平成20年版) ※相対比引用度とは、各国の論文の被引用度(論文1編当たりの被引用回数)を、世界全体の被引用度で除して基準化したもの
中国の論文の相対引用度数の推移 0.522 0.501 0.478 0.456 出典:中国科技論文統計結果(2004~2007年度) 中国科学技術信息研究所
3.海外における中国科学技術情報の取り組み
CASデータベースへ収録した論文に占める日本及び中国の比率 欧米における中国科学技術情報への取組みの例(1-1) Chemical Abstracts Service(米国) CASデータベースへ収録した論文に占める日本及び中国の比率 20.2% 10.0% 出典:CAS Statistical Summary 1907-2007
CASデータベースへ収録した特許に占める日本及び中国の比率 欧米における中国科学技術情報への取組みの例(1-2) Chemical Abstracts Service(米国) CASデータベースへ収録した特許に占める日本及び中国の比率 24.7% 18.1% 出典:CAS Statistical Summary 1907-2007
欧米における中国科学技術情報への取組みの例(2) National Library of Medicine(米国) ・National Institutes of Health(国立保健研究所)傘下の図書館 ・無料で利用できる医学データベース(PubMED)を構築・提供 ○PubMEDにおいて提供される文献言語別 ① 英語:78.0% ② ドイツ語:4.1% ・・・ ⑤ 日本語:2.0% ⑧ 中国語:0.9% →化学系に比べ、医学系データベースは中国文献の比率が低い 東洋医学の情報は、MEDLINEでは不足している可能性が高い 出典:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/advancedの検索結果(2008/11/27実施)より作成
欧米における中国科学技術情報への取組みの例(3) 機関名 概要 Thomson Reuters 自社のDBに130万件以上を収録〔H19年12月~〕 Elsevier 中国国家自然科学基金委員会(NSFC)と連携し、NSFCが発行を支援している学術雑誌の発行を 共同支援〔H19年7月~〕 Nature 中国の科学技術情報に特化したWebサイト“Nature China”を立ち上げ、最新の研究情報紹介などを実施〔H19年6月~〕 Chemical Abstracts Service 2006年に収録した記事のうち、中国発行資料が20.2%(日本:10.0%)、中国語の資料が13.3%(日本語:3.4%) 〔H19年実績〕 1):http://www.thomsonscientific.jp/news/press/nytu092/ 2):http://www.elsevier.com/wps/find/authored_newsitem.newsroom/companynews05_00706 3):http://www.nature.com/nchina/index.html 4):http://www.cas.org/ASSETS/836E3804111B49BFA28B95BD1B40CD0F/casstats.pdf
4.日本における中国科学技術情報の取り組み
日本における中国の論文情報流通状況(1) ○国立国会図書館 ○国立情報学研究所 AsiaLinks(アジア関係リンク集)においてCNKI(中国雑誌・新聞等の全文データベース)等の中国電子情報へのリンク集を運営 ○国立情報学研究所 大学図書館等にある図書・雑誌の目録情報を作成し、ILLシステム(図書館相互貸借システム)、Webcat Plus(検索システム)等で研究者に目録所在情報を提供。大学図書館等で所有している中国の図書・雑誌についても調べることができる。
日本における中国の論文情報流通状況(2) ・日本貿易振興機構 アジア経済研究所 アジア経済研究所 デジタルアーカイブとして、主に人文・社会科学分野の・出版物アーカイブス・アジア動向データベース を構築し、提供 また、経済・産業・政治・国際関係・社会・法律・行政といった分野の学術研究リポジトリを提供
日本における中国の特許情報流通状況(1) 中国国家知識産権局 ・日本の特許庁に相当する機関 ・約4,000万特許について、英文で特許情報を提供 http://www.sipo.gov.cn/sipo_English/about/
日本における中国の特許情報流通状況(2) 民間の取り組み 1.株式会社レイテック ・中国国家知識産権局からライセンスを取得 ・中国国家知識産権局からライセンスを取得 ・中国語及び日本語にて書誌事項・要約データベースを提供 2.株式会社クロスランゲージ ・中国・韓国の特許情報を日本語データベースを提供 ・原文と日本語の対訳を表示
5.JST情報事業と中国との協力の歴史
JST情報事業と中国との協力の歴史(第一期) 1979年 第1回日中科学技術協力委員会(国レベル)で 当時JICST(現JST)と中国科学技術信息研究所 (ISTIC)の協力強化があげられる 1982年 人材交流開始 1991年 ISTICとの協力覚書締結 1994年、1995年 ISTIC主催シンポジウム参加 1996年 中国科学院資源環境科学信息中心(SICRECAS)と JST文献データベース作成に関する協定締結 2000年 北京万方数据有限公司、中国冶金工業信息標準 研究院とJST文献データベース作成に関する協定締結
JST情報事業と中国との協力の歴史(第二期) 2005年9月 「日中意見交換会-日中科学技術情報流通促進 協力のために-」 開催 (JST主催にて日中の情報 関連機関、日本側12機関、中国側23機関が参加) 2005年10月 SICRECAS50周年及び「日本情報センター」 開設記念行事 JST沖村理事長出席 2006年2月 SICRECASより研修生(馬 建霞 准教授)を受入 2006年7月 中国総合研究センター開所 2006年10月 ISTIC設立50周年行事 JST細江理事出席 2006年12月 中国文献データベース作成について中国科学院 国家科学図書館(LCAS)との協定締結 2007年4月 中国文献データベース「JSTChina」サービス開始 2008年11月 Science Portal China開始
Science Portal China(サイエンスポータルチャイナ) ・中国における日々の科学技術に関する ニュースや最新の研究成果、研究者の レポートを随時公開 ・「国家中長期科学技術発展計画」をはじめ とする中国における重要な科学技術政策 のほか、科学技術関連などの各種統計、 科学技術分野別状況、各種教育・人材 政策など、さまざまな情報を提供 ・中国国内で発行される主要な科学技術 文献を日本語で検索できる「中国文献 データベース」などのデータベースも利用 可能 ・アドレス http://www.spc.jst.go.jp/
中国文献データベースについて 目的:急速に進展している中国の科学技術研究の状況を日本国内に紹介するため、 中国国内で発行される科学技術文献のデータベースを日本語で作成し提供する。 データベース化対象資料の選定: ○中国国内で発行される資料は約10,000誌 →2,500誌の内、必要性の高い資料からデータベース化 ○中国科学技術部科学技術情報研究所(ISTIC)、中国 科学院国家科学図書館(LCAS)、北京大学等の機関が 重複して選定した重要資料 ○世界的に最も利用される文献引用情報データベース (ISI)に収録された資料 ○中国国家自然科学基金委員会(NSFC)が財政的 支援を行っている資料 →上記の内、約740誌(約10万論文)を収録 サービスイメージ: 回答出力 一般 公開 DB構築方法: ○中国の関係機関と協力関係を構築し、保有する書誌・ 抄録の電子データ(メタデータ)の提供を受け、データベース作成 に活用する ○日本人が効率的に検索・利用出来るように、日本語の 抄録等を付与する ○日本語抄録作成について中国4機関が協力 ポップアップで 中国語書誌事項を表示 原文取得 ○国内における処理 ・電子データの取込 ・日本語抄録等の作成 ・データベースへの登載 ・複写サービス コピーサービスへ案内 ※論文全体の電子閲覧を 検討 電子データ
JSTChina(中国文献データベース)は中国発行の科学技術医学の重要誌を日本語抄録・索引付きで一般公開 データベース化対象資料の選定: ○中国国内で発行される資料は約10,000誌 →2,500誌の内、必要性の高い資料からデータベース化 ○中国科学技術部科学技術情報研究所(ISTIC)、中国 科学院国家科学図書館(LCAS)、北京大学等の機関が 重複して選定した重要資料 ○世界的に最も利用される文献引用情報データベース (ISI)に収録された資料 ○中国国家自然科学基金委員会(NSFC)が財政的 支援を行っている資料 →上記の内、約740誌(約10万論文)を収録
Chinese Science Citation Database Chinese Science Citation Database 中国における重要学術雑誌の関係 Chinese Science Citation Database (CSCD)収録誌 (1,054誌) Chinese Science Citation Database (CSCD)収録誌 (1,054誌) 北京大学中文核心期刊 要目総覧収録誌(人社除く) (1,552誌) Wanfang Dataコア誌 (1,576誌) Wanfang Dataコア誌 (1,576誌) ○上記重要雑誌対象リストの3つ全てに含まれた資料の数:約700誌 ○上記重要雑誌対象リストのいずれかに含まれた資料の数:約2,500誌 注)資料リスト概要 ・北京大学中文核心期刊要目総覧:中国の大学図書館が収集対象とする目安となる資料リスト、4年に1度改訂 ・CSCD収録誌:中国の複数政府機関(科学院、科学技術部、自然科学基金委員会等)が協力して作成する引用文献DBの収録誌 ・Wanfang Dataコア誌:科学技術部に所属する研究所が出資し設立した、科学技術文献データベースを提供する機関の主要雑誌リスト
JSTChina構築における日中協力 DB構築方法: ○中国の関係機関と協力関係を構築し、保有する書誌・ 抄録の電子データ(メタデータ)の提供を受け、データベース作成 に活用する ○日本人が効率的に検索・利用出来るように、日本語の 抄録等を付与する ○日本語抄録作成について中国4機関が協力 ○国内における処理 ・電子データの取込 ・日本語抄録等の作成 ・データベースへの登載
中国科学技術論文の利用ニーズと現状 ~研究者へのアンケートから(2007年実施)~
JSTChinaによる日本語抄録と全文提供 JSTChina検索結果画面 ポップアップで 中国語書誌事項を表示 ・複写サービス コピーサービスへ案内 ※論文全体の電子閲覧を 検討 原文取得
中国文献データベースの利用度 (アクセス/月) データベース内論文データをGoogle等の検索エンジンでも検索可能にするシステム構築中 104,040 7,970 (公開直後6ヶ月の平均) (公開後1年経過後の6ヶ月平均)
Science Links Japan -日本の科学技術情報を世界に発信- ○ Science Links Japan とは? ウェブ上の日本の科学技術情報源をカテゴリに分類し紹介する海外向けサイト。 1,100を超える情報源を紹介しており、英語版・中国版・仏語版がある。 中国からの月間アクセス数の推移 アクセス数 中国語版アドレス http://sciencelinks.jp/ch/
協力の必要性 1.中国の科学技術力は、経済力の発展に伴い急速に伸びており 近い将来日本を超える可能性が高い 近い将来日本を超える可能性が高い 2.学術雑誌の電子流通という点では、日本より中国の方が 進んでいる 3.複数の欧米学術情報関係機関は、雑誌の販売先としてだけで なく、研究成果の源泉として中国情報に積極的に取り組んで いる 4.欧米と比較して、日本は中国発の研究成果への取り組みが 遅れている面がある 5.今後、グローバルな発展のために日中両国の相互協力が 不可欠、中でも科学技術協力が大きな要素であり、そのため には科学技術情報の交換が重要である 6.従って中国発の研究成果を日本に紹介すること、日本の科学 技術情報を発信することが共に重要である