同期現象の数理 蔵本由紀 京都大学数理解析研究所 プラズマ科学のフロンティア2008研究会 於:核融合科学研究所 2008.8.7
ししおどし
Collective synchronization of fireflies
視交叉上核 洞房結節
(J.Theor.Biol. 1967) Winfree のモデル: 応用数理 Vol. 17 No.2 (2007) 175 「非線形科学」 集英社新書 (2007)
の分布
大域結合振動子集団: を断熱消去 なら (1975)
可解モデルとしての 平均場理論の成立
揺れるミレニアム橋 10 June, 2000
理論 (S.Strogatz et al. Nature 2005, B.Eckhardt at al. PRL 2007) 因子 なし 因子 なし 群集のサイズ 揺れの振幅
「位相縮約」理論について Origin: Enskog-Chapman 理論 (1916~1917) Boltzmann方程式→Navier-Stokes方程式 μ空間の分子数密度: 衝突 流れ space P
平衡解 はMaxwellian 任意パラメタ (局所平衡) 早い過程: 遅い過程: (流体力学) Navier-Stokes 方程式 2次摂動理論
類似のアイディアを反応拡散系のwave frontダイナミクスに適用 任意パラメタ 位相縮約により (流体力学方程式に対応)
もう一つの縮約法としてのcenter-manifold reduction Hopf 分岐の場合: リミットサイクル t →∞ のスペクトル 任意パラメタ(複素量)
振動反応拡散系への拡張 (複素Ginzburg-Landau 方程式)
“任意パラメタ”の3大由来 保存則 (Enskog-Chapman 縮約) 連続対称性の自発的破れ (位相縮約) 臨界安定性 (center-manifold 縮約) “中立モード”あるところに縮約理論あり
これらの微小量が中立モードのゆっくりした運動を引き起こす 縮約 流体力学方程式 縮約 位相方程式 縮約 小振幅方程式 これらの微小量が中立モードのゆっくりした運動を引き起こす
結合振動子系の位相記述 リミットサイクル振動子: 次元実ベクトル 閉軌道 上のリミットサイクル運動: となるように 上に座標 を導入 周期 閉軌道 上のリミットサイクル運動: となるように 上に座標 を導入 周期 の表示:
相空間全体への位相 の拡張 即ち、大域的“位相場” を導入 アイソクロン (等位相面, 次元) 標準的な定義: 初期点によらず が成立
弱い摂動を受けた振動子 位相感受性 Z(Φ2) Z(Φ1) vs.
結合振動子対 と置いて 平均化操作: 即ち 同様に
一般の位相振動子ネットワーク 莫大な情報の消去による普遍性の抽出 “物理状況の限定による物理状況の緩和” というパラドクス 一般の位相振動子ネットワーク 莫大な情報の消去による普遍性の抽出 “物理状況の限定による物理状況の緩和” というパラドクス 分岐理論、Chapman-Enskog理論、 一般に創発性はサブレベルの詳細に依存しない
結合の3タイプ(対称結合を仮定) に注意 同相結合 逆相結合
異相結合 時間遅れをもつ結合 で現れやすい 例:α関数で結合した神経振動子 時間遅れによる結合関数の位相シフト:
同期するロウソクの炎 吉川グループ(京大)の実験
ニホンアマガエルの逆相同期 合原一究氏(京大)の観察
カエル A カエルB time (s) time (s) A B A B ……. カエルAとB time (s)
同期条件:
chemical oscillator の場合 を実験から決める chemical oscillator の場合 ( J.Miyazaki and S.Kinoshita, Phys.Rev.Lett., 2006) 反応槽1 新鮮な反応液 物質交換 新鮮な反応液 任意の時刻で測定可能 反応槽2 非同期条件下で, は全領域 をカバー 各 に対して振動数 を測定 より を決定 (非対称結合の場合もOK)
大域結合をもつ電気化学振動子系 64 個のNi 電極 結合強度 ( I.Kiss et al., Science, 2002, 2007) (=一定) 結合強度
フィードバックによる位相結合のデザイン 振動子対の場合 (I.Z.Kiss et al. Science 316, (2007), H.Kori et al., Chaos (special issue) (2008)) 振動子対の場合 独立な振動子 フィードバックの導入
パラメタ: パラメタ: 望ましい を実現するように を決める 対結合振動子集団への拡張は自明 任意の位相振動子ネットワーク のデザイン 大域結合集団: スロースイッチの実現
集団引き込み転移の理論 オーダーパラメタ: 仮定: (定常回転) (系の対称性より)
グループ1: グループ2:
セルフコンシステント方程式 小さい に対して 仮定により 臨界点:
グループ1(凝縮体)のサイズ: 振動数分布:
集団状態の安定性は? 位相分布関数で考える オーダーパラメタ・ダイナミクスの導出 (無衝突プラズマのランダウ減衰との類似性) S.H.Strogatz et al. PRL 68 ‘92, 2730 (無衝突プラズマのランダウ減衰との類似性)
のダイナミクスに関する低次元不変多様体の存在: 中心多様体縮約によるアプローチ: ~ J.D.Crawford and K.T.R.Davies, Physica D 125 ‘99, 1 位相結合関数 は一般 のダイナミクスに関する低次元不変多様体の存在: E.Ott and T.M.Antonsen, http://jp.arxiv.org/abs/0806.0004 オーダーパラメタ・ダイナミクスの簡単な導出 エコー現象: E.Ott et al., http://jp.arxiv.org/abs/0807.4499
クラスタリングとスロー・スイッチ現象 2-クラスター状態は安定とは限らない 例えば、クラスターの一つが“溶解”する可能性 理論: D.Hansel et al. PRE ’93; H.kori and Y.K., ’01; H.Kori, PRE ’03 実験: I.Kiss et al. Science ’07 2-クラスター状態は安定とは限らない 例えば、クラスターの一つが“溶解”する可能性 不安定化した後はどうなる?
ヘテロクリニック軌道の形成 スロースイッチ 構造安定な振る舞い? ベクトル力学系モデル (例:Hindmarsh-Rose の神経振動子) も同様の振る舞いを示す 構造安定な振る舞い?
スロースイッチ現象は大域結合電気化学振動子系 においても見出されている H.kori and Y.K., Phys.Rev. ’01 スロースイッチ現象は大域結合電気化学振動子系 においても見出されている (I.Z.Kiss et al. Science 316, (2007))
ランダム外力への同期(同期概念の一般化) 位相モデルに基づく理論: J.N.Teramae and D.Tanaka, PRL 93, ’04; Prog.Theor.Phys.Suppl. 161, ’06 K.Nagai et al., PRE 71, ’05; H.Nakao et al., PRE 72, ’05, D.S.Goldobin and A.Pikovsky, PRE 71, ’05 結論:十分弱いランダム外力下に常に同期する 「複数の独立な振動子+共通のランダム外力」の場合: 個別振動子のランダム外力への同期 振動子の相互同期
動機の一つ: ランダム刺激なし ランダム刺激あり 皮質ニューロンは reliable な機能単位 Z.F.Mainen and T.Sejnowski, Science 268, ’95 ランダム刺激なし ランダム刺激あり 皮質ニューロンは reliable な機能単位
弱いランダム外力の場合 ランダム外力 位相縮約 は を満たす一般のランダム過程
ランダム外力による位相変化の時間スケール (1st trial/oscillator) (2nd trial/oscillator) の長時間平均(統計平均) を求める ただし ランダム外力による位相変化の時間スケール
弱い反位相結合または異相結合を導入 なら 同位相にロックされた状態が安定 連続場における位相乱流状態への一般化 空間的に一様なランダム外力によって 位相乱流は抑制できるか space J.N.Teramae and D.Tanaka, ’06 time
一様振動状態の線形安定性 波数 の位相ゆらぎの線形成長率: ランダム外力の導入により ランダム外力の強度 複素 方程式+白色ガウスノイズ 波数 の位相ゆらぎの線形成長率: ランダム外力の導入により ランダム外力の強度 複素 方程式+白色ガウスノイズ Complex Ginzburg-Landau
振動子の連続場 ・非局所結合系 ・局所結合系(e.g. 振動反応拡散系) ・大域結合系 V.Garcia-Morales and K.Krischer, Phys.Rev.Lett.100 (2008) 反応拡散モデル:
キメラ状態 N=512 周期境界条件 α=1.457 一様振動状態は安定 結合距離 中央領域における同期の破れ
理論 の場合 を用いて オーダーパラメタ の場合 時空依存 オーダーパラメタ を用いて Y.K. and D.Battogtokh, Nonlin.Phenom.Complex.Sys. 5, 380 (’02) 理論 の場合 を用いて オーダーパラメタ の場合 時空依存 オーダーパラメタ を用いて
キメラ発生の一般的理由: 平均場 不均一な振動パターン 大の領域では 個別振動子は平均場に同期 小の領域では 個別振動子は平均場に非同期 coherent incoherent
に注意
self-consistency condition からキメラ解を見出す 同期領域では 非同期領域では 確率分布 を用いる
汎関数 self-consistency 方程式 逐次代入による数値解 theory numerical も同時に決定 theory numerical See also:D.M.Abrams and S.Strogatz, PRL 93 (2004) 174102, Intern.J.Bif.Chaos, 16 (2006) 21
2D キメラ 0次の第二種変形 Bessel 関数
に注意 回転らせん波 同期 同期 非同期
代入 を用いる
phase (collective and individual) true frequency
らせん波パターンに位相モデルを用いることの当否 非局所結合複素Ginzburg-Landauモデル: 位相縮約により
は固定 を変化させる (強い結合) では 通常のらせん波 phase portrait
phase portrait (弱い結合) では 位相特異性は消失
反応拡散系における2Dキメラ FitzHugh-Nagumo振動子モデル Center-manifold 縮約により、非局所結合GL方程式 (S.Shima and Y.K., Phys.Rev.E 69 (’04)) FitzHugh-Nagumo振動子モデル Center-manifold 縮約により、非局所結合GL方程式 を得る (D.Tanaka and Y.K., Phys.Rev.E 68 (’03))
phase portrait
振幅自由度はほとんど死んでいる 上の反応拡散モデルを直接位相縮約すると