思想と行為 第10回 「共産主義」 By マルクス 吉田寛
パロ「自由主義ってのはいまや当たり前じゃないか?」 ピロ「日本国憲法でも自由は人権の一つとして宣言されているね」 パロ「だいたい、自由でなかったら、人は自分の人生を自分で生きたと言えるだろうか。自由だからこそ、人は自分の人生を生きることができるのではないかな。」 ピロ「自由をちゃんと生かすことができればね。」 パロ「?」 ピロ「自由にはいろいろと問題もある。人が一人で生きているのでない限り、多かれ少なかれ、自由は制限されるはずだ。」 パロ「自由主義にも経済的自由主義と政治的自由主義があったね。」 ピロ「逆に言えば、政治的管理主義と経済的管理主義があるのだ。日本は自由主義と言うけれど、安定や快適のためには自由よりも管理を選択する人も多いんじゃないかと思うね」 パロ「じゃあ、実は共産主義?」 ピロ「江戸時代は自由主義かい? 共産主義かい? 社会を西洋的なモノサシではかり切ることはできないさ。」 パロ「ただ、明治以降、西洋的なモノサシの上で国を考え作ってきたことも事実だけれどね。自由(民主)党があれば共産党もある。」
自由主義と共産主義 個人の自由 企業の競争 政治的自由 経済的自由 政治的自由 公共の福祉 国家統制 アナーキズム リバタリアニズム 米、共和党 米、民主党 保守主義 リベラリズム ミル 経済的自由 政治的自由 社会主義 マルクス 公共の福祉 国家統制 ファシズム 共産主義 『自由はどこまで可能か リバタニアリズム入門』森村進、講談社参照 レーニン
経済的自由主義 「市場」の原理 市場の前提 近代経済学の原理 神の見えざる手により、市場を通じて最適配分が行われる 善い社会の原理 私有財産と自由取引による合理的判断による競争 市場の原理 価格 需要 供給 取引価格 取引量 数量
マルクス、レーニン 革命と戦争の時代 1830年 仏7月革命、32年英選挙法改正 1848年 仏2月革命、マ『共産党宣言』 マルクス マルクス、レーニン 革命と戦争の時代 1830年 仏7月革命、32年英選挙法改正 1848年 仏2月革命、マ『共産党宣言』 1859年 ミ『自由論』、ダ『種の起源』 1840年 中アヘン戦争、53年英露クリミア戦争、61年米独立戦争 1868年 日本明治維新 1870年普仏戦争→パリ・コミューン 94年日清戦争 1904年日露戦争 1900年 世界恐慌 1914年 第一次大戦 1917年 ロシア革命 1922年 イタリアファシスト政権成立 マルクス レーニン
マルクス 1918年 ドイツ西部トリールの裕福な市民の家庭に生まれる 1835-41年 ボン大学 学生生活を謳歌 1918年 ドイツ西部トリールの裕福な市民の家庭に生まれる 1835-41年 ボン大学 学生生活を謳歌 24歳 「ライン新聞」編集主任 翌年イェニーと結婚 生涯の亡命と活動、研究と執筆、家庭と貧窮の生活 1848年 『共産党宣言』 1864年 第一次インターナショナル マは委員として活躍 1867年 『資本論』 1883年 没
レーニン(ウラジミール=イリイチ) 1870年 ロシア中部の町で教育官僚の子として誕生 兄弟姉妹は革命家として活躍 1870年 ロシア中部の町で教育官僚の子として誕生 兄弟姉妹は革命家として活躍 17歳 カザン大学入学→学生運動で退学処分→独学(法学、マルクスなど) 21歳 弁護士試験に合格 23歳 ペテルブルクで政治活動、労働者教育、研究 1895年 逮捕→シベリア流刑-結婚 1900年 活動新聞「イスクラ」創刊 編集者に 12年「プラウダ」創刊 スイス等ヨーロッパとロシアを行き来しつつ革命の指導 1917年武装蜂起 18年ロシア革命 干渉戦と内戦、新国家の立上げ 24年没
「人間疎外」 人間疎外 マルクス、レーニンの取り組んだ問題 悲惨な人間生活 労働者の貧困 過酷な労働 文化的、人間的生活の荒廃 植民地獲得戦争 過酷な植民地支配 これらを市民社会、自由社会という社会的問題と捉えて、その改善を求めていく思想と人生 人間疎外 人間が人間らしさを奪われ、奴隷状態に陥っている状態
ブルジョワと労働者 近代的市民 自由主義+議会制民主主義+市場+機械化 ブルジョワ階級 余裕と教養の所有者 私有財産→自由な生産と取引 ブルジョワ階級 余裕と教養の所有者 私有財産→自由な生産と取引 合理的判断→自由な政治と経済活動 自由主義+議会制民主主義+市場+機械化 国内での自由競争→負け組(私有財産を持たぬ、失ったもの)→労働者(プロレタリアート)へ 国際的競争→資源と市場を求めて植民地獲得競争→戦争と植民地支配
物神化 本来自由なはずの人間の意識が「神」という概念を作ったのに、いまや人間の意識がその概念に縛られている(フォイエルバッハ)。 「市場」によって人間疎外の生じるメカニズム 労働→商品→市場→購入→さらなる労働 ニーズ→労働力の販売→過剰な労働→資本の強大化→労働者の立場の弱体→過酷な労働 欲望→労働→商品開発→宣伝→新たな欲望の創出→新たな労働 資本→企業活動→競争→過酷な労働と商品開発→独占→さらに過酷な労働と植民地獲得 こうして、人間がお金(「資本」)の奴隷となっている
私有でなく共有へ 物神化の原因は利己的欲望にある 「自由」を基礎にした近代市民社会 共産主義的社会 私的所有とその増殖を目指す 市場での取引と競争 「自由」を基礎にした近代市民社会 利己的欲望が、必要を越えて制御されずにどこまでも自己増殖していく社会 共産主義的社会 基本的な財産と労働の共有 欲望の根っこを国家へ 各自に必要なだけの労働と配分 過剰な競争や労働の撤廃→余暇を人間的な学芸に
世界史解釈と革命理論 革命の基本原則 王制 身分制議会 自由主義 共産主義 支配者 王 王 王 王 領主、親方 領主、親方 領主、親方 市民(ブル) 市民(ブル) 市民(ブル) 市民(ブル) 労働者 労働者 労働者 労働者 法、議会の権利 市民革命 プロレタリア革命 権利請願 都市の自治権 名誉革命 フランス革命 パリコミューン ロシア革命 植民地独立運動 革命の基本原則 技術革新 下の階級が力をつける 上の階級から支配権を奪う
レーニンの状況 マルクス主義の普及 ロシアの政治的立ち遅れと経済的発展 植民地 世界恐慌 世界各国に共産主義活動家と活動組織 共産主義革命の失敗(パリ=コミューン) ロシアの政治的立ち遅れと経済的発展 新興資本家と労働者、国王と農奴 植民地 獲得、維持の戦争 民族運動、独立運動 世界恐慌 市場経済と競争システムの破滅的結果
レーニン→ソ連型社会主義 革命理論 労働者による統治 計画経済 歴史の必然でなく、指導による革命 ソヴェトの権力 思想統制 戦時共産主義 ネップ
共産主義、社会主義の現在 ソ連:ロシア革命1918年→ソ連解体 東欧:ナチスドイツからの解放→共産主義化→ベルリンの壁崩壊→自由主義、修正主義へ 西欧、北欧(大陸)諸国:修正主義→社会民主主義 中国:第二次大戦後、毛沢東らによる革命→市場経済と政治的共産党支配 英、米、日 自由主義 第三諸国:自由主義陣営と共産主義陣営の代理戦争の場に
参考文献 『人と思想 マルクス』、小山治(著)、清水書院。紹介本 『人と思想 レーニン』、中野、高岡(共著)、清水書院。紹介本 『人と思想 マルクス』、小山治(著)、清水書院。紹介本 『人と思想 レーニン』、中野、高岡(共著)、清水書院。紹介本 『共産党宣言』 マルクス(大内、向坂訳)、岩波文庫 マルクスの基本的な思想が簡明に書かれたパンフレット 『資本論』 マルクス、エンゲルス(向坂訳)、岩波文庫 『共産党宣言』の思想を理論的に裏付けたもの 難解