情報処理の概念 #12 オープンソースソフトウェア(続き) / 2002 (秋)

Slides:



Advertisements
Similar presentations
知的財産権の基礎知識 電子制御設計製図Ⅰ 2014 年 5 月 30 日 Ⅲ限目. 4.4 知的財産権の基礎知識 知的財産権: 人間の創作物について、その製作者が 持っている権利 知的財産権は産業財産権 ( 工業所所有 権 ) と著作権の 2 つに分類.
Advertisements

オープンスタンダード・システム論 I 1. フリーソフトウェアと オープンソース・ソフトウェア
オープンソースにひそむ問題 山本 晋一郎 愛知県立大学. 議論の流れ 準備 肯定 : 下流行程を対象とした研究には追い 風 – 上中流には ? – オープンソースに関する 20 の課題は ? 疑問 : アカデミック論文にしにくい ( 権藤 ) –LALR(1) 並みの発明をすれば... – 理屈よりも実践か.
計算機リテラシーM 第 7 回( 2 ) 著作権 伊藤 高廣
#4 電子マネー、 Micropayment 、 IC カード、 RFID 2004, spring term. Yutaka Yasuda.
オープンソースの諸問題 於: OSSAJ オープンソースビジネスセミナー 2005 年 5 月 30 日(月) 風穴 江(かざあな こう) TechStyle 編集長、コラムニスト
オープンソース GIS 入門コース PostGIS + QGIS で始める空間データ解析 2010 年 3 月 21 日 講師:今木洋大.
Processing + WiiRemote
Firebird ユニバーサル オープンソース データベース
OpenOffice.org2.0の現状と可能性 OSSAJ版
知的財産権を考えよう! 社会と情報 ⑪.
#7 著作権, Free Software, Open Source
著作権について.
情報検索(7) 消費者生成メディアの最近 教員 岩村 雅一
#11 組み込み機器、Linux、特許 Yutaka Yasuda, 2003 fall.
オープンソースGIS入門コース PostGIS+QGISで始める空間データ解析
1.コンピュータと情報処理 p.20 第1章第1節 3.ソフトウェア ソフトウェア 基本ソフトウェア
オペレーティングシステムⅡ 第11回 講師 松本 章代 VirtuaWin・・・仮想デスクトップソフト.
第3回関西Debian勉強会 みんなで読む Debian社会契約 MC: 中本崇志 2007/06/02.
情報技術と著作権.
情報リテラシー(4) 知的所有権 情報リテラシ2003 野村松信・須藤秀紹.
Software Freedom Day2012 野首貴嗣
ファッション産業とアパレル産業 2311395 山口 湧平.
IBMの歴史 発明 System 360 (1964) Hard Disk (1956) DRAM
ブロックチェーン 株式会社アプライド・マーケティング 大越 章司
講 義 ガ イ ダ ン ス 情報社会と情報倫理 第1回.
講 義 ガ イ ダ ン ス 情報社会と情報倫理 第1回.
Debian GNU/Linux ー Linuxインストールに必要な基礎知識 ー 三上 彩 鈴木 倫太郎
まずオープンソース開発者に対する支援から!
第6章 インターネットと法律(前編) [近代科学社刊]
情報処理の概念 #9 オープンソースソフトウェア / 2002 (秋)
電力自由化の是非 肯定派.
2節 なぜ消費者行動が重要になってきたか(市場の変化)
#11 組み込み機器、Linux、特許 Yutaka Yasuda.
シネックスインフォテック Microsoft Azure 相談センター
基本情報技術概論(第3回) 埼玉大学 理工学研究科 堀山 貴史
インターネットとオープンソース 高知大学理学部数理情報科学科 菊地時夫 2003/3/25 高知県情報産業協会講演会.
経営情報論B ⑬ 情報技術と社会(第11章).
今すぐ、無料体験版でお試しください! まだ、準備ができていない貴社にご提案。 pcAnywhere の 販売終了が迫っています!
今すぐ、無料体験版でお試しください! まだ、準備ができていない貴社にご提案。 pcAnywhere の 販売終了がせまっています!
Javaソースコード蓄積・ 検索システムSPARS-Jの概要
「OSで儲けない」 Microsoftの新戦略
第一回 掲示板                 05A1054         前田嵩公.
ソーシャルワークの価値と倫理 ~国際ソーシャルワーカー連盟の議論を踏まえて~
#13 オープンソースソフトウェア Yutaka Yasuda.
Winter Workshop in Kanazawa -プロセスと方法論-
第3回  業務プロセスとERP.
資料1-5 平成26年度 第1回データガバナンス委員会資料 平成26年度検討事項(案)
著作権入門セミナー 第1回 著作権制度の基礎 用賀法律事務所 弁護士  村瀬 拓男.
「政府標準利用規約(第2.0版)」の概要 「政府標準利用規約(第2.0版)」の概要は以下のとおり。 1.基本的なコンテンツの利用ルール
ロボット工学 第10回 力制御と作業座標系PD制御
コンピュータ リテラシー 担当教官  河中.
総合講義B:インターネット社会の安全性 第12回 権利の保護
~求められる新しい経営観~ 経済学部 渡辺史門
基本情報技術概論(第2回) 埼玉大学 理工学研究科 堀山 貴史
ダウンロード違法化(文化庁案) ○法改正するとされていること ○権利者団体がするとされていること
公共データWGにおける 利用条件等に関する検討状況等について
コンピュータ概論B ー ソフトウェアを中心に ー #00 概要説明
アメリカのプロパテント政策 2002.10.11.
マイクロソフト ソフトウェア ライセンス ドキュメント
マイクロソフトのライセンス: 貴社に最適なオプション
「投資」の新たな展開 -株式会社以外に…-
図表:NZGOALの審査および公開プロセスに関するフローチャート
第2回実務者会議の議論を受けた検討 資料14 1 第2回実務者会議での議論の概要 (○:有識者意見、●:関係府省意見) 1
転機を迎えたソフトウェア特許 中央大学理工学部 今野 浩 2005年10月.
情報処理の概念 #0 概説 / 2002 (秋) 一般教育研究センター 安田豊.
資料2 2 政府標準利用規約(1.0版)の見直し.
オープンソースソフトウェア開発に見る SCM中心型ソフトウェア開発
著作権とライセンス.
マーケティング・チャンネル戦略.
Presentation transcript:

情報処理の概念 #12 オープンソースソフトウェア(続き) / 2002 (秋) 一般教育研究センター 安田豊

ソフトウェアと著作権 著作権法 (Copyright) 独占的ソフトウェア 非独占的なソフトウェア 現在コンピュータソフトウェアの権利は著作権法で保護されている 独占的ソフトウェア 商用ソフト製品の多くがそう 利用者に購入を義務づける 複製を禁止するか防止する場合が多い 著作権法だけでなく契約としても規制を掛ける 非独占的なソフトウェア 利用上の制限(譲渡・複製禁止)を求めない 共有することが大きな目的の一つ

オープンなソフトウェア オープンなソフトウェアの登場 なぜ今オープンなのか 政府や自治体などの接近 Free Software Open Source 運動 (日本で俗にいう) フリーソフト、フリーウェアは? なぜ今オープンなのか 独占以外の複製可能なビジネス展開が現実に 開発者の増加、ネットによる横の連絡 企業内で開発に集中投資、というスタイルに限定されない開発形態が現実に可能となり、競争力も出た 安全性、継続性などの利点 政府や自治体などの接近

関西OPENSOURCE+FREEWARE 2002 2002 . 12 / 6(Fri) - 7(Sat) 多彩なプログラムで多くの発表あり

講演 +ブース出展 +ステージ発表 合計 36プログラム

オープンソースソフトウェアとは 定義 厳しいライセンス規定ではない Open Source Initiative では ソースコードが公開されているだけではなく 再配布の自由(有償でもよい) ソースコードの公開(手数料程度の対価で) 変更したコードの再配布の自由 など合計 9つの条件を定義 厳しいライセンス規定ではない 各ソフトウェアのライセンス条件は多様化しつつある

オープンソースソフトウェアの進化 1970年代以来のソフトウェアの公開流通 1980年代 1990年代 研究者、大学では継続的に今でも行われている 1980年代 Richard StallmanのFree Software活動 1990年代 オープンソースソフトウェア活動 同時期のインターネットを介した協調開発 Linuxの成功

Free Software 1983 Richard Stallman Free ソフトウェアは自由でなければならない GNU (GNU is Not Unix) による自由な OS (Unix システム)を自分たちで作る Free Software Foundation (FSF) の活動 Free 自由であって無料ではない 英語ではDouble meaning であり誤解を生んだ 商用ソフトに対するアンチ活動としての側面 70年代カウンター・カルチャーと一致?

Free Software GNU Hurd Linux オープンな共同開発の威力 長らく完成しなったGNUシステムの核となるOS部分 周辺部分は早くに一通りそろっていた Linux 突然フィンランドの大学院生が書き始めた わずか2,3年で完成の領域に GNU周辺ソフトと合わせて実用的 Unix システムに Stallmanの口癖「君のシステムはLinuxではなく GNU Linuxと呼ぶべきだ」 オープンな共同開発の威力 「伽藍とバザール」 Eric Raymond 新しい開発モデル

Linuxの成功とビジネス参入 オープンソース・ソフトウェアとビジネス ディストリビューション・ビジネス 導入・サポートビジネス ソフトウェア単体の価値以外でビジネスをする ディストリビューション・ビジネス オープンなものを集めて扱いやすくして売る RedHat社など一時バブル的に増えたが淘汰されつつある 導入・サポートビジネス オープンソースソフトウェアによるシステムを設計・導入し、それを運用するための技術支援サービスを売る コンサルティングなど もっとあるはず (未踏の領域)

Linuxの成功とビジネス参入 コミュニティとの協調 大企業にも影響 政府や自治体のオープンソースへの舵きり 2001年10月 Sun が StarOfficeソース公開 コミュニティとの強調的な開発 バグフィックスのフィードバックなど 大企業にも影響 IBMは今やLinuxに大きく体重をかけている Microsoftも政府や自治体には求められればソースを公開すると宣言 政府や自治体のオープンソースへの舵きり 米国に6000億円毎年払うのか? 中身がわからなくていいのか?

政府と Microsoft 河野太郎(衆議院議員)のメッセージ 政治家が普通に考える案件になった http://www.taro.org/dailytopics.html 「ごまめの歯ぎしり」メールマガジン版のバックナンバー 11月26日ぶん (要約) 総務省のオープンソースOS開発に対して、マイクロソフトがソースコードの一部開示を申し入れてくる。総務省はこの程度のことでは、 検討の対象外にしかならない。 ウィンドウズのソースコードが公開されないなら、日本の電子政府は、脱ウィンドウズへ進む。 安田注:Microsoftの提案は要求があれば部分的に契約を交わして開示するという種類のもの 政治家が普通に考える案件になった

ふたたび定義に戻る 成功の影で、理解の混乱も (いわゆる)フリーウェア 関連はあるが異なる概念もある 整理が必要 日本では一般に通用する曖昧な用語 無償配布され、無償利用が認められているソフトの総称 ソースコードはついていない場合が多い 修正・修正後に再配布可能かどうかは個々のライセンス次第

ふたたび定義に戻る パブリックドメインソフトウェア シェアウェア オープンソースのキーポイントは 「公共に資する」という意味 著作者個人の権利を放棄したもの シェアウェア 再配布自由で無料の場合が多い 試用無料で、長期間利用などを条件に対価を支払う ソースコードはふつうついていない(修正もできない) オープンソースのキーポイントは ソースコードが公開されており 修正後の再配布が許されている (義務はない) なぜFree Softwareだけですまなかったのか?

GPL GNU / Free Software Foundation GPL : GNU Plublic License 1970年代以降、ソフトウェア開発が産業として確立 米国著作権法は1976年にプログラムを対象に 1980年に排他的独占権が明文化 Stallmanの反発「70年代以前を思い出せ、ソフトウェアは共有して自由に利用されるべきだ」 1983 : GNUプロジェクト開始 1985 : Free Software Foundation 設立 GPL : GNU Plublic License GNU運動実現のためのライセンス

GPL ユーザに与えられる自由 前提条件 これを満たすものが Free Software である 動作を研究し、改変を加える自由 今日の DMCA には真っ向から対立する概念 複製を再配布する自由 改変を加えた結果を再配布する自由 前提条件 ソースコードの入手が可能であること 撤回不可 (開発者自身でも) これを満たすものが Free Software である

GPL Copyright ではなく Copyleft を主張 Free Software 普及のための概念 パブリックドメインの問題 著作権を放棄してPDSとすると 改変を加えて独占販売が可能になる 対策としての Copyleft 著作権を保持したまま配布条件として、 そのもの+派生物すべてをFree Softwareとせよ 配布条件の変更も認めない この条文こそがGPL (GNU一般公有使用許諾)

オープンソース運動 GPL:運動実現のための厳しいライセンス Opensource Software の定義 すべての人の要求を満たせない イデオロギー的な側面を無視できない より緩やかなライセンスが望まれる Opensource Software の定義 混乱も、二極化も望ましくない 排他的イデオロギーも不要 GNUの功績は認めたとしても、 多くの人に受け容れられるイメージが重要な時期

オープンソース運動 1997:「オープンソースソフトウェア」と呼ぼう、という運動 Bruce Perenceによる定義 OSI (Open Source Initiative) を設立 Bruce Perenceによる定義 GPLとは違い二次著作物や派生物には伝播しない 同一のライセンスでの再配布は許さなければならないが義務ではない Free Software 運動者からは「自由」を弱くしたと批判もある 評価の割れかたそのものが多様なユーザの参入を示している

まとめ オープンソースへの流れ 独占か?オープンか? GNU/FSFの活動 Linuxの成功、多くの人の参入 GPLの意味するもの=自由のために より幅広い受け口としての活動が求められた 独占か?オープンか? ビジネスだけでは考えられない 文化振興、知的活動促進だけでもない 多くの人の参入により、さらに多様な価値観での判断が求められている