山崎祐司(神戸大) コライダーでの Higgs 探し
内容 質量の謎(初回よりちょっと理論的に) ハドロンコライダーの原理(復習) ヒッグス粒子の生成と検出 LHCでの検出方法 ヒッグス機構 ヒッグス場とヒッグス粒子,標準模型の粒子との結合 ハドロンコライダーの原理(復習) ヒッグス粒子の生成と検出 LHCでの検出方法 Tevatron の実験結果(ごく簡単に)
質量とは何か? 重力のもとではない 運動量とエネルギーとの関係を与える 右巻き,左巻き状態を結合させる項ができる General relativity: F重力 E, 慣性 E 運動量とエネルギーとの関係を与える E2 = m2 + p2 速度 β が光速より低くなれるのは mass があるから 右巻き,左巻き状態を結合させる項ができる 光速で走っていなければ追い抜ける 逆向きに見える
Higgs 機構を用いる動機 (1) この世の粒子は ところが,これらの粒子はゲージ対称性を 破らずに質量を持てない spin-½ フェルミオン(もの)= クォーク,レプトン spin-1 ボゾン(力) ところが,これらの粒子はゲージ対称性を 破らずに質量を持てない 手で質量項を入れると,繰り込み不可能な発散が 現れる
Higgs 機構を用いる動機 (2) スカラー場なら,質量を持てる ゲージ不変な項が出てこない ついでに他の粒子にも m2AµAµ のような項を 出して質量を与えられないか? もしスカラー場が有限の 期待値を持てば, このような項がでてくる
Higgs 機構 (1) 重いスカラー場のポテンシャルに4次の項が あるとする 自由スカラー粒子の Lagrangean 4次の項を足すと 重いスカラー場のポテンシャルに4次の項が あるとする 自由スカラー粒子の Lagrangean 4次の項を足すと Minimum at |Φ|=φ0
ヒッグス機構 (2) スカラー場が U(1)SU(2)SU(3) 不変なように 共変微分を決める 場の対称性が破れるとする 例:U(1) ちょうど Φ′(x) が 実数であるとする Re(φ) h(x)
U(1) のLagrangean 「重い」光子を作る Lagrangean は φ0 : Φ の真空期待値 「ヒッグス場」 h : 場の振動から生まれる粒子 「重い」光子を作る Lagrangean は Higgs with mass m heavy photon with mass = √2eφ0 interaction between the heavy photon and Higgs boson interaction among Higgs bosons
フェルミオンに対する Lagrangean ce: 手で導入したパラメター 電子の質量を与えている (他のフェルミオンの cf は,異なる値) 質量に比例 √2 φ0 = 2MWsinθW /e = 246 GeV ce/(√2) = me/(√2 φ0) = 2.0 10-6 電子と光子のカップリング(微細構造定数)より ずっと小さい
ヒッグス機構のまとめ Higgs の真空期待値 φ0 が粒子に質量をあたえる ヒッグス機構が本当なら,ヒッグス粒子が 生成される ヒッグス場のいなし効果 ただし,予言能力はあまりなし ヒッグスの質量 12個のフェルミオン質量パラメタ- ヒッグス機構が本当なら,ヒッグス粒子が 生成される 結合定数は質量に比例,を測れるとばっちり検証
ヒッグス粒子と SM 粒子の 湯川結合定数 W/Z: 電弱相互作用と同等 クォークとの結合 ほとんどの場合そう大きくはない チャームかそれより軽いクォークでは 無視できる b: 電弱と同じくらい t: 非常に強い ほとんどの場合そう大きくはない 質量は全ての「もの」にあるのに, ちょっと不思議な気もする? mf /(√2φ0) e 2.0 10-6 μ 4.1 10-4 τ 7.0 10-3 u 2 10-5 d 3 10-5 s 5 10-4 c 5.2 10-3 b 1.7 10-2 t 0.7
LEP 実験での質量の上限値 (電子・陽電子衝突) “Associated ZH production” mH > 114.4 GeV @ 95%CL √s – MZ = 206.6 – 91.2 = 115.4 GeV
Existing constraint on Higgs mass 電弱相互作用パラメタ- の輻射補正から求める LEP, SLD , Tevatron で 精度よく求まっている それによると,Higgs は 軽いらしい mH < 186GeV @ 95% CL 標準模型が正しいことを 仮定,他の可能性もあり Tevatron excluded
Tevatron 実験による制限値 すでに一部の領域で, Higgs はなさそうで あるとわかっている 後に細かい説明 CDF /DØ combined 現在はもっとデータ がある (各 > 6fb–1) 後に細かい説明
ハドロンコライダーの基礎過程 パートン対散乱で 記述できる 陽子はパートン (quarks and gluons) を供給するみなもと パートン対散乱で 記述できる 陽子はパートン (quarks and gluons) を供給するみなもと 一組のパートン対が衝突 high-pT (高い横運動量) の粒子が生成される 残りのパートン:前方へ逃げる (proton remnant) proton remnant parton
Typical processes 電弱相互作用: Drell-Yan QCD 過程 フェルミオン対を生成 重要なチャンネルは 荷電レプトン 重要なチャンネルは 荷電レプトン e+e–, μ+μ–, τ+τ– QCD 過程 2個以上の ジェット生成
ハドロンコライダーの散乱断面積 パートン同士の断面積 perturbative QCD により計算 High pT, small αS 陽子のパートン密度 x (縦方向の 運動量比) Q2 (運動量移行) の関数
パートン密度の x 分布 low-x (< 10−2) で Valence quarks (価クォーク)は ほとんどない (図で sea quark, gluon が 1/20 になっていることに注意!) グルーオンがクォーク よりずっと多い
パートン密度の Q2 分布 Q2 の関数で増加 拡大すると たくさんのパートンが 見えてくる
LHC での パートンの x, Q2 Higgs を作るパートンは 10–4 < x < 10–1 の領域 Light Higgs ? Higgs を作るパートンは 10–4 < x < 10–1 の領域 gluon-dominated
SM Higgs boson production @ LHC gluon fusion Vector-boson fusion (VBF) Associated WH, ZH 4つの主なプロセス Associated ttH, bbH
SM Higgs boson production @ LHC gluon fusion 生成断面積が 大きい グルーオンが 多いから バックグランド (似たような 事象)も多い 付随した特徴ある粒子の生成がなく,区別がつきにくい
SM Higgs boson production @ LHC Vector-boson fusion (VBF) 前のプロセスの 1/10 程度の 断面積 前方に ジェットが 生成される これを捕まえ バックグランドを落とす (あとで例が出ます)
SM Higgs boson production @ LHC Associated WH, ZH VBF と 同程度の 生成断面積 Tevatron での 軽い Higgs 探しのメイン bb に崩壊 (see later)
SM Higgs boson production @ LHC Associated ttH, bbH トップクォーク との湯川結合 を測定できる 解析は難しい…
Tevatron での生成断面積 LHC の 1/10 程度 主な生成過程 Higgs ができても, そのうち捕まえられるのは ごくわずか Inclusive gg associated WH and ZH Higgs ができても, そのうち捕まえられるのは ごくわずか
Higgs の崩壊 mH > MW: WW, ZZ (, tt) mH MW: WW(*) ~ 100% mH < MW bb, WW* ττ (< 10%) gg (2 10-3) Golden channel: ZZ4l , gg 全ての終状態の粒子が荷電粒子 不変質量を再構成できる 200 500
ローレンツ変換 同じ粒子の運動を,速度 βf で動く系から見ると 粒子の速度 4元運動量の積(ローレ ンツスカラー)は ローレンツ不変 4元運動量の積(ローレ ンツスカラー)は ローレンツ不変 証明してみよ。
不変質量の再構成 不変質量:粒子の質量を崩壊粒子のエネル ギー,運動量から計算したもの 崩壊粒子の重心エネルギーに等しい 2体の例 不変質量:粒子の質量を崩壊粒子のエネル ギー,運動量から計算したもの 崩壊粒子の重心エネルギーに等しい 2体の例 minv がローレンツ不変であることを(前のページで証 明したことを用いて)証明してみよ。
LHC での(生成断面積)×(崩壊率) (大きいほど,多く検出でき,発見の感度が高い) gg(, tt) ZZ ZZ4l ZZ4l WW gg, tt WW ZZ ATLAS は WW, CMS は gg が得意 検出器の性能による
使える生成・崩壊の組み合わせ ZZ(*) 4 charged leptons (LHC) WW(*) (Tevatron, LHC) mH > MW and 135-150 GeV WW(*) (Tevatron, LHC) VBF の forward jet を使う mH MW で sensitivity が高い gg (LHC) EM カロリメータの性能にかかっている tt (LHC) Associated WH, ZH, H bb(Tevatron)
H ZZ(*) 4 charged leptons 不変質量が精度よく求まる 荷電安定レプトン (e, m) 運動量測定が 精度よくできる 統計的に有利 バックグランド diboson 区別つかない Z + bb, b が e/m に崩壊 レプトンが他の粒子から離れ て生成していることを用いる
H ZZ(*) 4l,Higgs が重い場合 decay BR(%) l 3.34 n 6.67 u-type 11.6 d-type 15.6 分岐比が小さい Z0 ee, mm 3.4% each ピークが幅広い 自然幅広い Best for mH > MW, nevertheless
H WW(*) channel WW(*) lnln Higgs の質量は,直接測定 できない バックグランドは比較的小さい Higgs の質量は,直接測定 できない 縦方向の CM energy がわからない 横方向も,2つのニュートリノが でるのでわからない(どうやって 分配?) Emiss = |pTn1+ pTn2| MT Mll(missing=nn) …を使うとある程度わかる
Enhancing signal (1) Main background: “irreducible” WW production Higgs’ spin 0 : charged leptons tend to be in parallel rather opposite for background
Enhancing signal (2) Using vector-boson fusion process Tag hard two jets with large rapidity gap in between j h forward jet Higgs decay product central jet veto Much less background
Further enhancing the signal Using correlation of multi- dimensional variables (existing+new) likelihood neural network etc. Extensive use at Tevatron Successfully found single-top production (O(10) larger cross section than light Higgs)
H γγ 崩壊 生成断面積は非常に小 さい バックグランド多い Higgs の質量が はっきりわかるのが 魅力 removed by requesting isolation 生成断面積は非常に小 さい バックグランド多い direct photon Higgs の質量が はっきりわかるのが 魅力
Tagging and measuring photon EM shower in Calorimeter Energy measurement and correction are crucial Track associated? No photon Yes One track pointing electron Flagged as conversion? (two tracks with vertex away from interaction point) photon PbWO4 crystal (EM CAL @ CMS)
Enhancing signal from VBF 0-jet 1-jet Requiring 1-jet or 2-jet + central jet veto 2-jet
H ττ (軽いHiggsが得意) γγ よりたくさんできる τ を見つける方法 “1-prong decay” = 1 charged track (85.3%) leptonic 崩壊 τl νν レプトンを見つける hadronic 崩壊: 細い jet を見つける 普通のジェットがバックグ ランドとして混じる decay BR (%) m- nmnt 17.36 e- nmnt+ ≥ 0 neutrals 17.84 h- nt 11.59 h- nt + ≥ 1 neutrals 37.05 h- nt + ≥ 1 p0 (36.51)
H ττ: 質量の再構成 τ がHiggsよりずっと軽いこ とを用いる VBF (ジェットタグ)も 使う ニュートリノもほかの崩壊粒 子と同じ向きに出ると仮定 VBF (ジェットタグ)も 使う
Associated WH, ZH 軽い Higgs → bb に崩壊 ただし,b quark と他の クォークの区別が必要 lepton+missing OR dilepton 軽い Higgs → bb に崩壊 ただし,b quark と他の クォークの区別が必要 b-tag 反対側の W/Z を leptonic lν/ll decay で タグする b-tag and mass reconstr.
2 b-jet mass after b-tag Dijet invariant mass quite narrow Background QCD W/Z + bb WW, ZZ top
Tevatron combined: revisited
まとめ Higgs 機構 湯川結合定数が質量に比例 重い粒子とくっつきやすい スカラー(スピン0)場なら質量を持てる → 他の粒子にも質量を与えられる Higgs 場を「たたく」と Higgs 粒子がでてくる 湯川結合定数が質量に比例 重い粒子とくっつきやすい t, W, Z を介して生成 軽い Higgs は bb, ττ, γγ に崩壊 重い Higgs は WW, ZZ (tt) へ
まとめの続き ZZ(*) 4 charged leptons (LHC) WW(*) (Tevatron, LHC) golden channel, 質量の再構成精度がよい WW(*) (Tevatron, LHC) vector-boson fusion, forward jet + central jet veto 質量はあまり精度よくない gg (LHC): 質量精度よいが,生成断面積小さい tt (LHC): 質量なんとか測れる Associated WH, ZH with b-tag for H bb(Tevatron)