銀河間ダストの起源: 存在量の上限とその特質解明への道

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銀河間ダストの起源: 存在量の上限とその特質解明への道 MNRAS, submitted (astro-ph/0310401) 銀河間ダストの起源: 存在量の上限とその特質解明への道 井上 昭雄 (京都大学理学部物理学第二教室) & 釜谷 秀幸 (京都大学理学部宇宙物理学教室) 2004, 1, 7

[O/H]~-2.2ー-1.3 for logNHI=13.2ー14.2 (Telfer et al.2002) z=3 [cm-2] 9.6 Mpc

Dusty Universe? 宇宙の星形成史 宇宙の重元素量進化史 重元素の約半分はIGMにある? H0=70 km/s/Mpc, WM=0.3, WL=0.7 太陽の100分の1程度の重元素が銀河間空間に存在する 重元素があれば塵(ダスト)もある??? (銀河系のダスト・金属比は約0.5)

銀河間ダスト!? 銀河間ダストの量を知りたい! 少なくとも、減光量が無視できるかどうかを知りたい!! 背景光源からの光を吸収・散乱する! 遠方天体の光度、その他物理量を誤る!! 銀河間ダストの量を知りたい! 少なくとも、減光量が無視できるかどうかを知りたい!!

本研究の概念図 宇宙の星形成史 宇宙の金属量進化史 制限 銀河間ガスの熱史 遠方SNeの観測 銀河から銀河間空間へのダスト輸送メカニズム

銀河間ガスの熱史の利用 銀河間ダスト量への制限 ダスト光電効果を 考慮した銀河間ガス の理論的熱史 銀河間ガスの 観測的熱史 Inoue & Kamaya 2003, MN, 341, L7 Inoue & Kamaya 2003, MN, submitted ダスト光電効果を 考慮した銀河間ガス の理論的熱史 銀河間ガスの 観測的熱史 比較 銀河間ダスト量への制限 (ダストのサイズに依存) Nath et al.(1999): 銀河間空間でのダスト光電加熱の重要性を指摘

ダスト光電効果 基本的にphotoionization heatingと同じメカニズム。ただし、 ダストの方がhigh energy photonに対するcross sectionが大きい hnUV e- “hot” photo-electron dust W: 仕事関数 U: 塵粒子の静電ポテンシャル 光電子の放出率は 塵粒子の静電ポテ ンシャルに依存

Grain electric potential 青線: critical potential of dust destruction by ion field emission (Draine & Hao 2002) spectral index

ダスト加熱 vs 水素光電離加熱 ダスト・ガス比: 銀河系の約100分の1 ダスト加熱: 背景放射強度に正の相関 ガス密度に負の相関 ダスト加熱 vs 水素光電離加熱 ダスト・ガス比: 銀河系の約100分の1 ダスト加熱: 背景放射強度に正の相関 ガス密度に負の相関 ガス温度の依存性弱い 粒子サイズに負の相関

IGM temperature evolution ダスト光電加熱 IGM temperature at an ideal fluid element with IGM mean density: number ratio of gaseous particle to baryon particle gaseous species: HI, HII, HeI, HeII, HeIII, electron abundance: non-equilibrium rate equations initial condition: T=25,000 K at z=3.4 cosmology: H0=70 km/s/Mpc, WM=0.3, WL=0.7, Wb=0.04, and Y=0.24

Example thermal histories IGMダスト多い 観測値:ライマンα雲の線幅から推定 (Schaye et al. 2000) 線幅分布の最小値は純粋に熱運動によるものと仮定して推定 IGMダストなし

Constraint from thermal history 赤:熱史; 青:SNe (high SFH) c < 0.1 for grain size < 0.1mm

Upper limits of IG dust c=0.1 case ダスト密度の上限:z=0で10-34g/cm3、z>1で10-33g/cm3 ダスト・ガス比の上限:z=3で銀河系の100分の1

Maximum IG extinction AB < 0.2 mag for z < 1

Maximum IG reddening 粒子サイズ 0.1mm以下 100A 0.1mm以下 0.1mm 10A 1mm 0.1mm以上 E(B-V)~0.1magを検出すればダストサイズは100A以下 E(B-V) vs redshift図にへこみがあれば小さいgraphite

graphite 2175 A feature

Implication of c<0.1 銀河間空間のダスト・金属比は銀河系に比べて小さい? ZIGM/Z~0.5 (Aguirre 1999), (D/Z)IGM<0.2 (D/Z)MW~0.5 銀河間空間のダスト・金属比は銀河系に比べて小さい?

Summary 銀河間空間ではダスト光電加熱が効果的 粒子サイズが0.1mm以下なら銀河間ダスト量は宇宙全体の金属量の10%以下 銀河間空間のダスト・金属比は銀河系より小さいかもしれない 銀河間ダスト密度はz=0で10-34g/cm3、 z>1では10-33g/cm3 銀河間ダスト減光量(Bバンド)はz<1の天体について0.2mag以下、z>1については1mag減光もありうる E(B-V)を調べれば銀河間ダストのサイズ、組成がわかるかもしれない

Total photoelectric heating rate spectral index: -1 J912A=5x10-22 [erg s-1 cm-2 sr-1 Hz-1] D=1/100 [Galactic value] T=104 [K] red: 10 A dust blue: 300 A dust green: HI photo- ionization Dust heating is efficient in low density part. ∝n1.3 ∝n2

Grain charging processes equilibrium grain charge: collisional charging rate: photoelectric charging rate: charging time-scale: ~10—100 yrs grain properties: Draine & Lee model photoelectric yield: Weingartner & Draine (2001) Zd

Photoelectric yield neutral charge Weingartner & Draine (2001) 光電子放出確率 入射光子のエネルギー

Photoelectric heating rate heating rate per a grain: mean kinetic energy of photoelectrons: f(E) is assumed to be a parabolic function (Weingartner & Draine 2001).

Total photoelectric heating rate grain mass: Gpe∝Da-0.5 g(a)∝a2.5 Total photoelectric heating becomes efficient as grain is smaller.

銀河間空間ではダスト光電効果が効果的である可能性 ダスト光電加熱 低密度 高エネルギー、高強度の輻射 の下で効果的になる 銀河間空間ではダスト光電効果が効果的である可能性

Heating/cooling processes photoionization heating recombination cooling collisional ionization/excitation heating/cooling Compton cooling/heating dust photoelectric heating dust electron capture cooling adiabatic cooling by Hubble expansion

UV background radiation From QSO proximity effect: a=-1 data from Scott et al.(2002)