無機化学(inorganic chemistry)1  2014/Oct/3

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無機化学(inorganic chemistry)1  2014/Oct/3 2-1章  電子・原子・原子構造、電子の配置と周期表 目的 1)原子の構成粒子の種類(陽子+中性子+電子) 2)元素の種類と構成内容(陽子数=電子数→元素    種、中性子数) 3)元素の性質の周期性と周期表

●元素に関する知識の蓄積と周期表(不完全)の作成 1)錬金術時代からの分析化学的手法により、18世紀末まで約30種の 2.1) 元素発見の歴史と原子 ●元素に関する知識の蓄積と周期表(不完全)の作成 1)錬金術時代からの分析化学的手法により、18世紀末まで約30種の 元素 2)19世紀に入ると、電気化学分析(デービー、K,、Na、Mg、Sr、Ba、 Ca)、発光スペクトル分析(炎色反応、ブンゼン、キルヒホフ, Cs、 Rb)などにより、半世紀強の間にそれまで知られていたものとほぼ 同数の未知元素が発見された 3)その結果、元素の分類整理が可能となり、原子量の順に並べると8 番目ごとに類似の性質が現れる(オクターブの法則)などの周期性 が確認された 4)1869年 メンデレーフによる62種元素の周期表の発表 デービー ブンゼン メンデレーフ キルヒホフ

●ブンゼン(1811 – 1899)は、ドイツの化学者。ブンゼンバーナーを利用して、キルヒホッフと共に、分光学的方法で1860年にCs、1861年にRbを発見した。水酸化鉄のヒ素中毒の解毒作用の発見などを行ったが、砒素化合物のカコジルの研究によりヒ素中毒で死にかけた上、カコジルの爆発により右目の視力を失なった。 ブンゼンバーナー (CH3)2As-As(CH3)2 ●キルヒホフ(Kirchhoff, 1824 - 1887)は、プロイセン(現在のロシアのカリーニングラード州)生まれの物理学者。電気回路におけるキルヒホッフの法則、放射エネルギーについてのキルヒホッフの法則、反応熱についてのキルヒホッフの法則は、どれも彼によってまとめられた法則である キルヒホッフの第一法則 回路網上の任意の電流の分岐点において電流の流入の和と流出の和は等しい.

メンデレーフの提唱(1869年) 元素は原子量(atomic weight)の順に並べると明らかにその性質ごとの周期性を表す。 2. 科学的特性の類似する元素はほぼ同じ原子量であるか(例:白金(Pt)、イリジウム(Ir)、 オスミウム(Os))、原子量が規則的に増加する(例:カリウム、ルビジウム、セシウム) 。 3.元素グループ内での原子量順に並べた元素の配列はいわゆる原子価だけでなく、ある範囲まで、独特の化学的特性と一致する。 4. 分子(molecule)の大きさが化合物の性質を決定するように、原子量の大きさが元素の性質を決定する。 5. 未知の元素の発見が期待される。たとえば、共に原子量が65から75の間であり、 科学的特性がアルミニウム(Al)に類似する元素およびケイ素(Si)に類似する元素が存在するであろう(後年、該当するガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)が発見される)。 6. 元素の原子量は原子番号順で前後する元素の原子量に関する知識により修正できることがある。例えば、テルル(Te)の原子量は123から126の間にあり、128になりえない元素の特徴的な特性はその原子量から予言できる。 7.広範囲に存在している元素の原子量は小さい。

クラーク数(Clarke number)とは地球上の地表付近に存在する元素の割合を火成岩の化学分析結果に基いて推定した結果を質量パーセントで表したもの。 1 酸素 49.5 2 ケイ素 25.8 3 アルミニウム 7.56 4 鉄 4.70 5 カルシウム 3.39 6 ナトリウム 2.63 7 カリウム 2.40 8 マグネシウム 1.93 9 水素 0.83 10 チタン 0.46 11 塩素 0.19 12 マンガン 0.09 13 リン 0.08 14 炭素 15 硫黄 0.06 16 窒素 0.03 17 フッ素 18 ルビジウム 19 バリウム 0.023 20 ジルコニウム 0.02 クラーク数順序の暗記法「おっしゃられて貸そうかマ」:O(お)、Si、Al(しゃられ)、Fe(て)、Ca(か)、Na(そう:ソーダ)、K(か)、Mg(マ)で8番目まで覚えることができ、ついでに「提供は日立」:H(ひ)た、Ti(ち)。これでtop10

●周期表 (periodic table) の完全化 1)周期表の隙間を埋める仕事   ●ケイ素(Si)と錫(Sn)の間: エカ-ケイ素→Ge   ●エカ-ホウ素→Sc、●エカ-アルミニウム→Ga 2)第18族元素(周期表に無い系):不活性ガス(inert gas)、希ガス (rare gas)、単原子分子の発見   ●気体の液化技術と分別蒸留技術の開発による   ●19世紀末Ne、Ar(Arの発見は、空気からO2とN2を化学反応で     取り除いた残留気体の分光による)、Kr、Xeが発見された。     また、一番沸点の低いHe (沸点-268.9℃, 4.18K、常圧では固 体とならない)は1868年(明治元年)に太陽の輝線スペクトル      中の未知元素に命名されたもの。

●レーリー(英、1842-1919)Arの発見、ノーベル物理学賞 ●ラムゼー(英、1852-1916)不活性ガスの発見、ノーベル化学賞 ◎ついで、電子(ストーニー、クルックス、ジョゼフ・トムソン)、X線(レントゲン:電磁波)、放射線(ベックレル)の研究が、20世紀の科学の出発点である原子構造につながる(キュリー、ラザーフォード・・a, b, g線) 電子の大きさについては、標準模型では0とされるが、大きさを持つかどうか・内部構造を持つかどうかは判明していない レーリー ラムゼー クルックス(有機化学者、分光学者(Tlの発見)、クルックス管の開発(電子線発見)、心霊現象研究) 電子は質量と体積を持つフェルミ粒子ですので質量と体積がありますが、質量は測定できますが、体積を測定することはできていません。 物の大きさを測定する方法としては、その物と同程度かそれよりも小さなものをぶつけてその散乱状況から推定する方法がありますが、電子よりも小さな物が無いことと、電荷があり電子と電子を衝突させてその状況を測定しても電磁力のほうが大きいことから実験的に困難があります。

3)周期表の隙間を埋める仕事 ○ランタノイド元素(La~Luの15元素)とアクチノイド元素(Ac~Lrの15元素)は、 ●周期表の完全化 3)周期表の隙間を埋める仕事 ○ランタノイド元素(La~Luの15元素)とアクチノイド元素(Ac~Lrの15元素)は、   各15種の元素の化学的性質が互いに極めて類似し、発見、解明に長時間を要 した ○モーズリーの法則(1913年、モーズリーは原子番号(Z)と元素の特性X線の波 長()の平方根の間に直線関係(a, Z0は全ての元素について一定)を発見 図2.1

○長岡半太郎(土星型原子模型、1904)→ラザーフォードの原子模型(1911) →ボーアの原子模型(1913) 2. L電子がK殻に飛び込む 1. 電子衝撃により K電子が飛び出す Ka 3. 振動数のX   線が発生 La Lb Lg 図2.2 Kg Kb プランク・アインシュタインの式 :振動数、h:プランク定数、 c:光速, λ:波長、k:波数

特性X線の測定により、メンデレーフの周期表が改善された。 1)原子量順に並べることに伴う元素順位の逆転の訂正 [K(原子量=39 特性X線の測定により、メンデレーフの周期表が改善された。 1)原子量順に並べることに伴う元素順位の逆転の訂正   [K(原子量=39.102) Ar(39.948), Ni(58.71) Co(58.9332),   I(126.90) Te(127.60)]。原子番号(原子核の陽子数=電子数) 順に並べることで解決された[Ar(18) K(19), Co(27)Ni(28), Te(52) I(53)]。原子番号(atomic number)順と原子量(atomic weight)順の逆転は、同位元素(isotope)の存在比に原因があった。 2)原子番号92のUより前にある周期表に空白であった元素(Tc(43), Pm(61), Hf(72), Re(75), At(85), Fr(87))の発見がおこなわれた。 3)ランタノイド系列の確定が行われた。 1914年にオクスフォード大学に戻って研究を続けるが、第一次世界大戦がはじまるとイギリス軍工兵隊に所属して出征。ガリポリの戦いに参加し、同地で命令を電話連絡している際に狙撃兵に頭部を撃ち抜かれて戦死した。27歳だった。早すぎる死がなければノーベル賞の受賞は間違いなかったといわれている。彼が戦死した事件を受けて、以後イギリスや他国の政府は自国の科学者が戦闘に従事することを禁ずるようになったと言われる。ちなみに、この戦いを指揮した当時の海軍大臣チャーチルは1953年にノーベル文学賞を受賞するのは、歴史の皮肉である。

1)線:正電荷をもつ質量の重い線は少し曲げられる。無磁場では気体中を直線的に進行し、進路に沿って多くの分子をイオン化する。He2+ 放射線 (radiation) 原子核崩壊 ウラン以降の超ウラン元素の合成に、原子核への放射線線(ヘリウム原子核He2+)、線(原子核の崩壊により放出される電子)、線(高エネルギー電磁波)の照射、加速器により人工的に得た高エネルギー粒子(中性子、陽子、他)の照射、Uや超ウラン元素の中性子照射、超重元素の重イオン照射が用いられた(原子番号93から114まで) He2+ 1)線:正電荷をもつ質量の重い線は少し曲げられる。無磁場では気体中を直線的に進行し、進路に沿って多くの分子をイオン化する。He2+ 電磁波 3)線:波長の短い電磁波で、透過力は強く、磁場の影響を全く受けない。人体に極めて危険である。 電子 2)線:質量が軽い負電荷の線は、線と反対の方向に大きく曲げられる。電子 図2.3

線:He2+ 「ポロニウム(Po)210はウランの百億倍の比放射能を有するが、所詮アルファ―線だ、紙一枚でも防ぐことができる。飲み込んで体内被曝しなければ平気だ・・・傭兵代理店(渡辺裕之) リトヴィネンコ事件 ・・・・・・・の不正と陰謀を暴こうとしていた・・・の元中佐だったリトヴィネンコは、亡命先の英国で放射性物質のポロニウム210で毒殺された。「ポロニウムをもられてから22日間リトヴィネンコは苦しみぬき、骨と皮と化し死亡(44歳)」 2004年11月に死去したPLO執行委員会議長ヤーセル・アラファートの死因も当初不明とされたが、その後病院で使用していた衣類よりポロニウム210が検出されたことより、ポロニウムによる暗殺が疑われている ポロニウム210は99.99876% α崩壊のみで崩壊し、崩壊過程でγ線の放射を0.00123%しか伴わない(殆どのα崩壊はγ線の放射を伴う)。 α線は紙一枚で遮断されるために、容器に入ったポロニウム210(が微量仕込まれた食品等)を、 γ線計測により検出することは不可能であり、運搬者が被爆しない点でも放射性暗殺用薬物として適した特徴がある

Po  84番元素 半金属  (16族 O, S, Se, Te, Po) 昇華性があり、化学的性質は、テルルやビスマスBiに類似する。水に溶けない。塩酸にはゆっくり溶ける。硫酸、硝酸には易溶、アルカリにはわずかに溶ける。酸化数は、−2,+2,+4,+6価を取り得る(+4価が安定)。 ウラン系列の過程でラドンRn222が崩壊することによってポロニウム218が生じ、更にこれが崩壊していく過程でポロニウム214、ポロニウム210が生じる。自然界に存在するポロニウムでは、ポロニウム210の半減期が138.4日と一番長い。人工的に作られるポロニウム209の半減期は102年である。全ての同位体が強力な放射能を持っている。 マリ・キュリーがポロニウムの存在を示唆した際に、ポロニウムを 含む精製物がウランの300倍の放射活性を持つと記した表現が一 人歩きして、ウランの300から330倍の強さの放射能を持つという 表現がされることが多いが、実際にはウランの100億倍の比放射 能(単位質量当りの放射能の強さ (Bq/mol, Bq/g))を有し、ごく微 量でも強い放射能を持つ(ただし、逆に自然界にはウランの100億 分の1程度しか存在しない)。このため、昇華性のあるポロニウム は内部被曝の危険が大きい為厳重な管理の下で取り扱われなければならない。しかし、ポロニウムが発するα線自体は皮膚の角質層を透過出来ないため、ポロニウムを体内に取り込まない外部被曝に関しては危険性は少ないともいえる。 α線源や原子力電池に加えてベリリウムBeと組み合わせて中性子発生源として核兵器の起爆装置にも使われる。

イオン化エネルギー(ionization energy, ionization potential)の周期性 ●ある原子がその電子をどれだけ強く結び付けているのかの目安 ●同一周期の中で最高のイオン化エネルギーは希ガスのものであり、希ガスは安定な閉殻(closed shell)電子配置をもつ。 ●最低のイオン化エネルギーは周期表の左端にある第1族元素のものである。これらの原子のひとつから電子1個を除くと希ガス原子と同じ閉殻電子配置を持つイオンになる。 ●素直な変化を示さないところ Be-B、N-O, Mg-Al

●素直な変化を示さないところ Be-B, N-O, Mg-Al この理由については原子軌道やフントの規則を考慮する必要がある。 窒素原子と酸素原子を例に考える。二つの電子配置は次の表の ようになる。(IEの単位はeV) N(nitrogen) : 1s2 2s2 2p3   IE1:14.53, IE 2:29.60 O (oxygen): 1s2 2s2 2p4   IE1:13.61, IE 2:35.12 窒素原子より酸素原子のほうが第一イオン化エネルギーが小さいの は、2p軌道に入る4個目の電子が三重に縮重したp軌道のいずれか の軌道に異なるスピン(spin)をもって入り、電子間の静電的な反発エ ネルギーが電子を不安定にするためである。 1s 2s 2px 2py 2pz N ↑↓ ↑ O

イオン化傾向(ionization tendency, 混同しないこと) 溶媒中で 中性元素(原子団)がイオンになり易い順番。 水溶媒でイオン化列という。 陽イオン 貸そうかな、まああてにするな、ひどすぎる借金 貸そう (K) か (Ca) な (Na)、ま (Mg) あ (Al) あ (亜鉛:Zn) て (鉄:Fe) に (Ni) する (Sn) な (鉛:Pb)、ひ (H) ど (銅:Cu) す (水銀:Hg) ぎる (銀:Ag) 借 (白金:Pt) 金 (金:Au) 理智 (Li) ルビ (Rb) カ (K) バー (Ba)巣と炉 (Sr)仮 (Ca) 名 (Na) 魔具 (Mg)アル (Al) 漫画 (Mn) 合えん (Zn)黒夢 (Cr)鉄 (Fe) 門 (Cd) 木庭 (Co) に (Ni) 鈴 (Sn) 園 (Pb) 水 (H)アンチ (Sb) 尾 (Bi) 藤 (Cu) 水銀 (Hg)銀色 (Ag) パラパラ (Pd) 白い (Pt) 金 (Au) 陰イオン のっそり王さんくるぶし痛い の (NO3-) っそ (SO42-) り王 (OH-) さんくる (Cl-) ぶ (Br-) し痛 (I-) い

緑:気体(gas)、赤:液体(liquid)、黒:固体(solid) 1 18 1 H 2 13 14 15 16 17 2 He 3 Li 4 Be 5 B 6 C 7 N 8 O 9 F 10 Ne 11 Na 12 Mg 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 Al 14 Si 15 P 16 S 17 Cl 18 Ar 19 K 20 Ca 21 Sc 22 Ti 23 V 24 Cr 25 Mn 26 Fe 27 Co 28 Ni 29 Cu 30 Zn 31 Ga 32 Ge 33 As 34 Se 35 Br 36 Kr 37 Rb 38 Sr 39 Y 40 Zr 41 Nb 42 Mo 43 Tc 44 Ru 45 Rh 46 Pd 47 Ag 48 Cd 49 In 50 Sn 51 Sb 52 Te 53 I 54 Xe 55 Cs 56 Ba *1 72 Hf 73 Ta 74 W 75 Re 76 Os 77 Ir 78 Pt 79 Au 80 Hg 81 Tl 82 Pb 83 Bi 84 Po 85 At 86 Rn 87 Fr 88 Ra *2 104 Rf 105 Db 106 Sg 107 Bh 108 Hs 109 Mt 110 Ds 111 Rg 112 Cn 113 Uut 114 Uuq 115 Uup 116 Uuh 117 Uus 118 Uuo *1 ランタノイド: 57 La 58 Ce 59 Pr 60 Nd 61 Pm 62 Sm 63 Eu 64 Gd 65 Tb 66 Dy 67 Ho 68 Er 69 Tm 70 Yb 71 Lu *2 アクチノイド: 89 Ac 90 Th 91 Pa 92 U 93 Np 94 Pu 95 Am 96 Cm 97 Bk 98 Cf 99 Es 100 Fm 101 Md 102 No 103 Lr 緑:気体(gas)、赤:液体(liquid)、黒:固体(solid) 金属元素 非金属元素 半金属元素 人工元素 アルカリ金属 アルカリ土類金属 ハロゲン 希ガス 遷移元素 カルコゲン:第16族元素の総称(酸素を除く場合もある)

周期表 錬金術師、化学者、物理学者、科学者、その他無数の人たちによる知の集大成である。元素の性質を簡潔かつ完成度が高く示した周期表は「化学のバイブル」とも呼ばれる。現在、周期表は化学のあらゆる分野にて、反応の分類や体系化および比較を行うための枠組みを与えるものとして、汎用的に用いられている。そして、化学だけでなく物理学、生物学、化学工学を中心に工学全体に、多くの法則を示す表として用いられる。 元素(element)の分類 典型元素( main group (block) element、typical element、representative element) :1族、2族、12族-18族の47元素。これら以外は遷移元素 遷移元素(transition element, transition metal): 3族―11族の64元素(原子番号111までに限り)dまたはf軌道に電子が入る。 アルカリ金属(alkali metal)元素:1族中の6元素(Li, Na, K, Rb, Cs, Fr) アルカリ土類(alkaline earth metal)元素:2族中の4元素(Ca, Sr, Ba, Ra) ハロゲン(halogen)元素:17族中の5元素(F, Cl, Br, I, At) 希ガス(rare gas, noble gas)元素:18族中の6元素(He, Ne, Ar, Kr, Xe, Rn) 意味のない暗記法:すいへいりーべぼくのふね、なまあるけいりんいえんある、かっかすかっちばくろーまん鉄コバルトニッケル銅亜鉛

2.2) 原子の構成  原子(atom) は、半径105~104Å(1Å=10-8 cm = 0.1 nm)の原子核を中心として電子が半径1~2Åの電子軌道を廻るモデルで説明される。 原子核は陽子(+1価)と中性子(0価)より構成され、陽子の数Nが原子番号(atomic number)つまり元素を規定する。陽子の数(+N価)に相当する数の電子が電子軌道に存在し原子は0価である。

●質量(mass)  電子(electron)静止質量(me = 9.1091031 Kg)  陽子(proton: 1.67261027 Kg)や中性子(neutron: 1.67491027 Kg) の1/1836・・・原子の質量はほとんど原子核(atomic nucleus)が決定 ●同位元素また同位体(isotope):陽子の数が同一で、中性子の数が 異なる元素。  水素の場合  1)質量数が1の1H(hydrogen)  2)一個の中性子が加わった重水素(2HまたはD:deuterium)、    3)さらに一個の中性子が加わった三重水素(3HまたはT:tritium)   Dは自然の水素中に1/3500~1/5000含まれている。Tは自然界にも存在するが、主に核反応により人工的に作られる放射性(radioactive)元素である。 + – 1H 2H(D) 3H(T) – 電子 図2.4 陽子 + 原子核 中性子 水素 1H、重水素 2H(D)、三重水素3H(T)の構成

無機化学 1       2-1章  電子・原子・原子構造、電子の配置と周期表 目的 1)原子の構成粒子の種類(陽子+中性子+電子) 2)元素の種類と構成内容(陽子数=電子数→元素    種、中性子数) 3)元素の性質の周期性と周期表 2-2章 4)電子の配置 5)結合

2-2-1 電子を詰める パウリの排他律とフントの規則 パウリ(Pauli)の排他律 二つの電子は4つの量子数を同一にできない・・・一つの軌道上の電子はアップとダウンの2個の電子 電子の運動・・・軌道運動(n、ℓ、mℓ)+自転運動(スピン   運動) スピン運動を規定する量子数・・・スピン量子数 (s=+1/2, -1/2) アップスピン、ダウンスピン。磁場により   エネルギーは2本に分裂する。 フント(Hund)の規則 同一エネルギ-の縮退軌道には、同じ向きのスピンを極大まで入れる 磁場アリ 磁場ナシ O F Ne y Be B C N 3重縮退 p軌道 s軌道 2s軌道 px軌道 1s軌道

電子の軌道(s軌道、p軌道、d軌道、f軌道 軌道 orbital) 図2.15 s軌道 図2.16 p軌道 図2.17 d軌道

水素からネオンまでの電子配置およびスピン状態 軌道に1個しか電子の無い場合を赤く示す(不対電子, ラジカル電子 radical electron)。その軌道に2個目の電子が入ると電子対を形成したといい、スピン量子数の総和は零となる(青)。C、N、Oでアップスピン(ダウンでもよい)のみがp軌道を占めるのはフントの規則による。 水素からネオンまでの電子配置およびスピン状態 1s    2s   2px  2py  2pz 電子配置 1 H 2 He 3 Li 4 Be 5 B 6 C 7 N 8 O 9 F 10 Ne 1s1 1s2 1s2 2s1 1s2 2s2 1s2 2s2 2p1 1s2 2s2 2p2 1s2 2s2 2p3 1s2 2s2 2p4 1s2 2s2 2p5 1s2 2s2 2p6

多電子原子の電子軌道と電子配置 ●多電子原子では、他の電子とのクーロン相互作用などにより、クーロンポテンシャルは球対称でなくなる。このため、主量子数が同じ軌道でも方位量子数が異なると、軌道エネルギーも異なるようになる。前表の最後のNeの次の元素Na(Z = 11)からAr(Z = 18)までは、電子が素直に3s, 3pを埋める。 ●アルゴン(1s2, 2s2, 2p6, 3s2, 3p6)の次に来る元素から、電子は3d軌道よりもエネルギーの低い4s軌道に入る;K(Z = 19,(1s2, 2s2, 2p6, 3s2, 3p6, 4s1)), Ca(Z = 20, 1s2, 2s2, 2p6, 3s2, 3p6, 4s2)。 ●4s軌道が満たされた次のZ = 21-23までは4p軌道に電子が入ると予想されるが、3d軌道が優先する。 ●Sc(Z = 21)からCu(Z = 29)の最初の遷移金属系列では3dが順次満たされ、これらは、種々の原子価を取る、強く着色した化合物を作る、単体は硬く、高融点の重金属で、多くは磁性を示すなどの共通点を持つ。このうち、Cr(Z = 24)(1s2, 2s2, 2p6, 3s2, 3p6, 3d5, 4s1)とCu(1s2, 2s2, 2p6, 3s2, 3p10, 4s1)以外は4s2の電子配置を持つ。多電子原子における電子収容の順序は次図。

電子の詰まり型(電子配置)パウリの排他原理+フントの規則 電子収容の順序。左肩上がりの矢印に沿ってs、p、d、f軌道に2個、6個、10個、14個づつ詰める l =0,1,2,3,4の軌道をs(sharp), p(principal),d(diffuse),f(fundamental)軌道とする。4f軌道、5f軌道が未閉殻の元素がランタノイド、アクチノイドである。 n 殻 l = n1,・・・0 m=0,1,••l  軌道数 2l+1 総軌道数 n2 殻に 入る 総電 子数2n2 総 電子 数 1 K 0 1s 2 H,He L 0 2s 1 2p 1,0 3 4 8 10 Li~Ne M 0 3s 1 3p 2 3d 1, 0 2, 1, 0 5 9 18 28 Na,Mg Al~Ar N 0 4s 1 4p 2 4d 3 4f 3, 2, 1, 0 7 16 32 60 O 0 5s 1 5p 2 5d 3 5f 4 5g 4, 3, 2, 1, 0 25 50 110 K, Ca 遷移金属

電子の詰まり型: HOMO, LUMO, 励起 励起 励起分子 ●化学では、物質間での電子のやりとりが重要であり、そのやりとりには電子が詰まっている一番上の軌道、その一つ上にある電子が詰まっていない一番下の軌道が大きく関係する。それで、分子において電子が占有している一番上の軌道を最高被占分子軌道(highest occupied molecular orbital: HOMO), 一番下の空の軌道を最低空軌道(lowest unoccupied molecular orbital: LUMO)という(両者をフロンティア軌道という:福井)。準位としては最高被占準位、最低空準位という。 ●HOMOとLUMOのエネルギー差に 相当する光を当てると、HOMOの電子 はLUMOにたたきあげられ(励起)、 そのエネルギーに相当する部分が吸収 された光を見ることになる。その領域が 可視領域の場合、色が見える。 ベンゼンのHOMO-LUMO励起は紫外 領域に相当するので透明である。 LUMO 励起 HOMO 励起分子

物質の色 ある物質が電磁波(光など)を吸収する場合、その物質は吸収した波長の補色に色づいて見える。例えば、葉緑素は赤色に相当する680–700 nmの波長の光を吸収するため、補色の緑色に見える。また、ある物質が電磁波を散乱する場合にも、その物質は色づいて見える。散乱は物質が電磁波の波長と同等の単位構造をもつときに生じる。例えば水は可視光線を吸収しないためまとまった量では透明に見えるが、細かい粒子になると光を散乱するため不透明となる。霧や湯気が白くみえるのはこのため。ある物質がある電磁波に対して「透明である」とは、その物質と電磁波との間に相互作用が起こらず、電磁波の吸収および散乱が生じないということを意味する。 ピレン/CHCl3 +TNB +p-ベンゾキノン +p-フルオラニル +TCNE +TCNQ

蛍光と燐光 蛍光は励起一重項状態から基底一重項状態への許容遷移の際に起こるのに対し、燐光は励起三重項状態から基底一重項状態への禁制遷移の際に起こる。そのため、蛍光に比べ燐光は一般的に寿命が長くなる。 一重項(singlet), 三重項(triplet) 人魂、鬼火、狐火・・・燐光説があるが、原因はいまだ不明

イオン化ポテンシャル(イオン化電圧、Ip)、電子親和力(EA) 原子・分子をイオン化(Cation, Anion)するに必要なエネルギー 電子が自由な状態にある時のエネルギーを基準(真空準位)としたHOMO軌道(分子の場合)のエネルギーで、このエネルギー以上の光を分子に照射すると電子が外界に出る(下図左、赤矢印)。一方、LUMO軌道のエネルギーは電子親和力で示され(左図青矢印)、系に電子を入れると、EAに相当するエネルギーが出る。 Ip EA  イオン化ポテンシャルの変化 1 2 13 14 15 16 17 18 3 4 5 大 電子親和力の変化 1 2 13 14 15 16 17 18 3 4 5 小 大 小

アルカリ金属元素とハロゲン元素のイオン化 電子構造は不活性ガス型 電荷は  +1価  陽イオン(cation) v H, Li, Na, K, Rb, Cs s軌道 イオン化(ionization) – v H, Li, Na, K, Rb, Cs s軌道 水素、アルカリ金属元素 電子構造は不活性ガス型 電荷は  –1価 陰イオン(anion) + v F, Cl, Br, I, At p軌道 イオン化 v F, Cl, Br, I, At p軌道6eで満席 ハロゲン元素

Li Be B C N O F Ne H O O H H+ O 2H N 3H H H+ 電子式 H2O H3O+ ヒドロキソ ニウム 例:L殻電子(n=2)の元素 s軌道、p軌道を考えず、元素記号の周囲に8電子までを記す。一個の丸は不対電子(radical 電子) を示し、2個揃うと電子対を形成したとする(共有電子対、非共有(孤立)電子対 lone pair)。  Li Be B C N O F Ne H O H2O H3O+ O H H+ O 2H + ヒドロキソ ニウム 共有結合(covalent bond) 配位結合(coordination bond) NH3 NH4+ N + 3H H H+ アンモ ニウム 共有結合、配位結合は、結果として、等価である

2-2-2章 化学結合 は、化学の4命題「結合」、「反応」、「構造」、「機能」の視点であり、原子や分子の中の電子が主役である。 2-2-2章 化学結合 目的: ●原子や分子を結びつける機構は何か ●結び付きを解き放つにはどうすれば良いのか ●解き放ったら何が起こるのか ●どの様に結びつけると、どの様な構造・機能が生じるのか は、化学の4命題「結合」、「反応」、「構造」、「機能」の視点であり、原子や分子の中の電子が主役である。 これらの命題のうち 「原子や分子を結びつける機構は何か」を3章以降で説明する。ここでは結合の分類と内容を概説する。

結合の種類 ●イオン結合: 硝酸 過塩素酸 石炭酸 フェノール アニリン 1)構成原子(H, Na, Cl)または分子(HNO3, HClO4, C6H5OH, C6H5NH2), が、電子(整数・・端数の場合は下記の電荷移動力を参照)又はプロトンを授受し、 2)原子および注目している原子団(NO3, ClO4, C6H5O, C6H5NH3)やその原子が安定な希ガス型電子配置(または分子軌道が閉殻安定電子構造)をとるように陽イオン(cation)または陰イオン(anion)となり、 3)反対イオン間のクーロン静電引力が働いて結合が安定化する[Na+···Cl, Na+···NO3, Na+···ClO4, C6H5O···Na+, C6H5NH3+···Cl]、大きな分子イオン、巨大なクラスターイオンのイオン結合もある

NH3 + HCl NH4Cl アンモニウムクロライド C6H5NH2+ HCl C6H5NH3Cl アニリニウムクロライド 酸(acid)と塩基(base) 塩(salt) NaOH + HNO3  NaNO3 + H2O NH3 + HCl    NH4Cl  アンモニウムクロライド C6H5NH2+ HCl     C6H5NH3Cl アニリニウムクロライド H+移動 CH3+移動 Mo6Br142クラスター(Moは緑色、Brは内部に8個(青)、外部に6個(赤)ある

NaCl, CsClの結晶格子 NaCl CsCl

●ファンデルワールス(van der Waals)結合 構成原子または分子が接近して電子雲がある程度重なり合い、結合力が発生する: 瞬間的電場の発生(分散効果)、ダイポールモ-メントによる電子雲の分極(誘起効果、配向効果)による 重原子間(I···I、S···S)、ヘテロ原子間(S···N)、電子間(···)なども、この結合に属す。水素、酸素、窒素を冷却すると液化する。また、二酸化炭素炭酸はドライアイスとなる。これらの液体・固体中の分子間に働く力がファンデルワールス力である。 ヘテロ原子:炭素、水素以外の原子で一般に、酸素、窒素、リン、 硫黄、ハロゲン

水素原子Hが電気陰性度の大きな原子Xと作る結合 H···X ●水素結合 水素原子Hが電気陰性度の大きな原子Xと作る結合 H···X 分子内の原子Xが、電子を引き付ける強さは、原子の種類ごとの相対的なものとして、その尺度を決めることができる。この尺度のことを電気陰性度と言う(表)。一般に周期表の左下に位置する元素ほど小さく、右上ほど大きい。 電気陰性度の差が1.7以下の原子間の結合は共有結合性が支配的であり、それ以上の場合はイオン結合性が支配的になる。表中の色をつけた原子は、水素より電気陰性度が高く、水素結合を形成する。他に、XH・・電子, CH・・電子, CH・・n電子なども水素結合である。 表 ポーリングによる原子の電気陰性度   H 2.20 Li 0.98 Be 1.57 B 2.04 C 2.55 N 3.04 O 3.44 F 3.98 Na 0.93 Mg 1.31 Al 1.61 Si 1.90 P 2.19 S 2.58 Cl 3.16 K 0.82 Ca 1.00 Ga 1.81 Ge 2.01 As 2.18 Se 2.55 Br 2.96 Rb 0.82 Sr 0.95 In 1.78 Sn 1.96 Sb 2.05 Te 2.10 I 2.66 Cs 0.79 Ba 0.89 Tl 2.04 Pb 2.33 Bi 2.02 Po 2.00 At 2.20

●分子内・分子間水素結合

●共有結合 原子同士で互いの電子を共有することによって生じる化学結合。結合は非常に強い。単原子分子は除き分子は共有結合によって形成される。配位結合も共有結合の一種  無機化合物に比べ有機化合物の種類は多く、無尽蔵に増え続けている。2007年の段階で化合物は9300万種が知られ、その90%は有機物である。この種類の多さは、炭素特有の共有結合に起因するところが大きい(炭素骨格の長さ[メタン、エタンと炭素数を増やしたCnH2n+2のアルカン系鎖状炭化水素に上限はない。ただし、現在の技術での高分子は分子量の一定しない混合物]、分岐の多様性、単結合、2重結合、 3重結合に関して制限がない)。種々の元素(N, P, O, S, Se, F, Cl, Br, Iなど)が炭素に結合し多様な官能基を形成する。ほとんど無限といってさしつかえのないほどの有機化合物の多様性は、生物の構成要素としての化学物質に必要な性質である。

●配位結合 結合を形成する2つの原子の一方からのみ結合電子が提供される化学結合である。孤立電子対を持つ電子対供与体(ルイス塩基)から電子対受容体(ルイス酸)となる原子へ、電子対が供給される。 オクテット則を満たさない第13族元素(B, Al)の共有結合化合物は、強いルイス酸であり配位結合により錯体を形成する。あるいは遷移金属元素の多くは共有結合に利用される価電子の他に空のd軌道などを持つ為、多くの種類の金属錯体が配位結合により形成される。NR3とBF3でできる化合物の窒素上の孤立電子対(2個の赤点)がBの空いている軌道に入って配位結合をする。この時、配位結合を電子対供与体から電子対受容体へ→で示すことがある。H3O+、NH4+は配位結合でできるが、H3O+の3本の結合、NH4+の4本の結合はイオンの中で等価(共有結合)である。

●金属結合 金属原子(Naなど)の原子核が周期的な位置に固定され(熱振動している)結晶格子を作り、金属原子の最外殻の電子が結晶中をほぼ自由に動き回ることに伴い、クーロン力と量子力学的安定化(非局在化による安定エネルギー)により結晶ができる。 非局在化(delocalization): 例1)Naのs軌道の電子は、原子核から放出(イオン化)されて、Na++eーとなり、電子は特定の原子核に束縛されるのではなく、結晶全体を運動する。 例2)ベンゼンのパイ電子は、炭素原子に束縛されず、6個の炭素原子が形成する六角形骨格を動き回る。

●電荷移動化合物 配位結合は2電子、共有結合は1電子の授受で結合ができるが、整数でない電子の授受による生じる化合物群がある。電子供与体(D)から電子受容体(A)への電荷移動により生じる電荷移動化合物で、構成成分とは異なる深い色、電気伝導性、磁性を示す。           D + A → Dd+···Ad 電荷移動量(d)は0以上で本質的に上限はない。 d =0の場合、分子間の相互作用は主にファンデアワールス力、水素結合である。 d =0.5以上より不対電子(ラジカル電子)を含む成分が量子力学的に介在し、結晶では高導電性、金属性、超伝導を示す錯体となる。結晶の安定化は、ファンデアワールス力、水素結合、クーロン力、ラジカル電子が結晶中を動くことによる量子力学的安定(金属結合)の混合である(これらを総合して電荷移動力という)。フラーレン C60の超伝導体 [(K3)3+··· (C60)3]、高導電性ポリアセチレン(Li ドープ)、Li2次電池、黒鉛層間化合物C8Kなどで、 d =0.5以上の結晶はイオン結晶に分類されてよい。

結合の種類(まとめ) ●イオン結合 ●ファンデルワールス結合(分子性結合)  水素結合 ●共有結合 ●配位結合 ●金属結合  電荷移動(イオン結合+vdW結合+共         有+配位+金属)

無機化学 基本単語 1 (30語) 日本語 English 原子 水素 分子 炭素 陽子 窒素 中性子 酸素 電子 重水素 原子核 3重水素 原子量 鉄 元素 アルカリ金属 スピン アルカリ土類 周期表 ハロゲン 同位体 希ガス 放射性 遷移金属 閉殻 気体 無機化学 液体 イオン化エネルギー 固体

無機化学 基本元素記号  (48元素) 元素記号の後ろに良く間違える記号を記す 日本語 元素記号 水素 H ナトリウム Na タリウム Tl (Ta,Tr,Tm,Tu) 水銀 Hg カリウム K 鉄 Fe ヘリウム He カルシウム Ca (Ka) 銅 Cu 銀 Ag マグネシウム Mg (Ma) 亜鉛 Zn 金 Au (At) セシウム Cs (Sc, Se,Ce) スズ Sn (Sb) アルゴン Ar アルミニウム Al クロム Cr 白金 Pt リチウム Li (Ri) ニッケル Ni 鉛 Pb (Rb) ルビジウム Rb (Ru,Lb) マンガン Mn ポロニウム Po (Pm) バリウム Ba カドミウム Cd (Kd) 燐 P ベリリウム Be チタン Ti (T,Pi) パラジウム Pd (Pa, Pr) 塩素 Cl タングステン W (Tn,Tg,Tu) ホウ素 B 臭素 Br ラジウム Ra (Rd,Ru,Rg,La) 炭素 C ヨウ素 I ウラン U (Ur) 窒素 N 硫黄 S クリプトン Kr (Cr) 酸素 O セレン Se (Sl,Sr) キセノン Xe (Ki,Ke,Kx,Xn) フッ素 F テルル Te (Tl,Tr) ラドン Rn (Rd, Ra)

酸素分子の基底状態は 酸素分子の励起一重項状態 三重項状態 酸素原子 酸素原子 (He)2s2, 2p4 (He)2s2, 2p4 O2 酸素の一重項状態と三重項励起状態のエネルギー差は大きすぎるため熱・光で励起できない。一重項酸素を発生させるには、ローズベンガルやメチレンブルーのような色素を使用する。これらの色素分子の三重項状態は、一重項酸素と三重項酸素とのエネルギー差とほぼ等しい励起エネルギーを持っている。そこでこれらの色素を光励起し、三重項状態に移行させる。この三重項状態の色素が三重項酸素と衝突すると電子とエネルギーの交換が起こり、色素が基底状態に戻ると同時に、三重項酸素が一重項酸素に遷移する(光増感法)。 酸素原子 (He)2s2, 2p4 酸素原子 (He)2s2, 2p4 O2 生体内においても、紫外線を浴びたりすることにより体内の色素が増感剤の役目をして一重項酸素が発生することがある。一重項酸素は生体分子と反応して破壊してしまうので、生体はこれを除去する機構を備えている。生体内から一重項酸素を除去する物質にはβ-カロテン、ビタミンB2、ビタミンC、ビタミンE、尿酸などがある。

Chemical Abstract Service 1965 > 20 万 2002 > 3700万 2007 > 9300万