SEMと犯罪心理学研究 狩野 裕 大阪大学 大学院人間科学研究科 科学警察研究所研究会 平成12年11月28日 因子のスクリー プロット

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SEMと犯罪心理学研究 狩野 裕 大阪大学 大学院人間科学研究科 科学警察研究所研究会 平成12年11月28日 因子のスクリー プロット 成分番号 23 21 19 17 15 13 11 9 7 5 3 1 固有値 4 2 科学警察研究所研究会 平成12年11月28日 SEMと犯罪心理学研究 狩野 裕 大阪大学 大学院人間科学研究科

本日のメニュー 簡単に学部・講座紹介 セルフコントロールを主とした犯罪類似 行動の要因研究(村上有美氏卒論) 尺度の一次元性について 因子分析における変数選択の実際 (日心での発表の一部,時間があるとき)

人間科学部紹介 http://www.hus.osaka-u.ac.jp/ 人間行動学履修コース 行動生態学履修コース 社会環境学履修コース 人間学履修コース 臨床教育学履修コース 教育環境学履修コース ボランティア人間科学履修コース

犯罪心理学の状況 犯罪心理学を専攻する研究分野はない 臨床心理学 専門家がいない データがとりにくい 被害者心理 犯罪者のデータが取れない 大学生対象の調査の妥当性は? 臨床心理学 被害者心理

行動計量学研究分野 行動データ科学研究分野 http://koko15. hus. osaka-u. ac 行動計量学研究分野 行動データ科学研究分野 http://koko15.hus.osaka-u.ac.jp/~taco/soumu/members/ スタッフ   助教授 狩野 裕       助手  原田 章 昨年度卒業生 村上有美 井上竜矢 M2 宮本 友介 B4 神元良子 長岡憲秀  清水昌平   西 民哉   富田華子 保崎夏子  豊本満喜子  Iouri, Ermakov B3 東由加里 中川真由美 伊島達也  西村英輔   佐伯克幸 松井 優  白根 壮  宮村 理  鳥居 稔 B2 笠松由紀  中尾麻美  楠元正也  西川康子   桑野 泰  町田 透   高井啓二  横山麻美 竹中聖吾

講座担当講義:学部 1回生 2回生 3回生 4回生 統計学 I・統計学 II (狩野+非常勤) 情報活用基礎 (原田+CMC) 心理学実験(全助手) 行動計量学(狩野) 実験実習 I(狩野+原田) 3回生 多変量解析論(狩野) 情報処理論(狩野) 行動計量学演習I(狩野) 実験実習II(狩野+原田) 情報処理論(非常勤??) 行動計量学演習II(狩野) 実験実習III(狩野+原田) 4回生 卒業研究(狩野+原田)

講座担当講義:大学院 行動データ科学1(狩野) 行動データ科学2 (狩野) 行動データ科学演習2 (狩野) 大学院ゼミ(狩野・原田) 共分散構造分析 (夏季集中) 行動データ科学2 (狩野) 数理統計学の基礎2 多変量解析のための 数学的基礎 行動データ科学演習2 (狩野) 数理統計学の基礎3 回帰分析とFA・SEMの 数理 大学院ゼミ(狩野・原田)

セルフコントロールを主とした 犯罪類似行動の要因研究 「村上有美」卒業研究の紹介

1.序 なぜ犯罪を犯すのか? 犯罪の原因としてあげられるもの 人格要因 環境要因 知能の欠陥,精神病,精神病質,人格の社会化不全 家庭・家族,学校職場,都市化,社会情勢,文化

主な理論 文化伝播理論 分化的接触理論 分化的同一理論 アノミー理論 非行サブカルチャー理論 漂流理論 ラベリング理論 コントロール理論 セルフコントロール理論

『犯罪の基礎理論』 A General Theory of Crime Gottfredson & Hirschi (1990) 犯罪を法により定義しない・・・一般性がある 犯罪=「自己利益の追求のもとに企てられた詐欺 もしくは暴力行為」 犯罪だけでなく犯罪に類似した行為(無分別な行動,逸脱行動など)を説明しうる 個人要因である低SCと環境要因である犯罪機会の交互作用を犯罪の主要因としている・・・多次元的な見方

本研究における セルフコントロール(SC)理論 低SC者(犯罪という即座の満足や利益を与えるものからの誘惑に対しての耐性が低い人)が, 犯罪機会があると犯罪に至ってしまう 低SCは,親の効果的な養育がなされずに,子供が社会化されないことにより生み出される SCのレベルは就学前に確立されてから,生涯を通じて保持される

低セルフコントロールと 養育・愛着 低SCの6つの要素 効果的な養育と親の愛着 衝動性 効果的な養育 複雑な課題より簡単な課題を好むこと 危険を求めること 知的活動よりも身体的活動を好むこと 自己中心性 欲求不満に対する低い耐性と結びついたかんしゃく 効果的な養育と親の愛着 効果的な養育 子供の行動の監視 よくない行動を発生時に 認知 その行動を罰する 親の愛着

犯罪機会 犯罪が即座の楽しみを生み出す状況 犯罪が精神的にも肉体的にも容易で,また努力を必要としない状況 ほとんど捕まる危険が少なく,抵抗にあう危険がない状況 障子に耳ありふすまに目あり

『犯罪の基礎理論』の 検証的研究 SCの一次元性 SCは効果的な親の養育態度によって生み出される 個人が6つの要素を同時に持つ 6つの要素が1因子で説明できるとされるものと身体的活動性を除き1因子で説明できるとされるものがある SCは効果的な親の養育態度によって生み出される 親の監督と親の愛着の尺度を独立変数とし,低SCを従属変数とした研究(Cochranら(1998) )では,親の監督ではなく親の愛着が影響を与えるという結果 Gibbsら(1998) の研究においては,パス解析により親の監督のSCの影響を確かめている

研究の目的 セルフコントロールの一次元性が成り立つか 親の養育態度によりセルフコントロールの レベルが決定されるか セルフコントロールと犯罪機会の犯罪類似行動への影響があるか

2.方法 調査方法 調査内容 大学生を対象にした質問紙調査(n=222) 親の監督(40項目)6段階 親の愛着(28項目)6段階 Gibbsら(1998)の作成した親の監視(20項目), 親のしつけ(20項目) 親の愛着(28項目)6段階 IPPA(The Inventory of Parental and Peer Attachment)の中から親の愛着に関する 28項目を使用

SC(24項目,Grasmick et al. 1993)6段階 犯罪類似行動(20項目)4段階 6つの要素に対して4項目ずつ割り当てたもの 犯罪類似行動(20項目)4段階 犯罪,もしくは非犯罪の無分別な行動に関して 20項目をしたことがあるかどうか 犯罪機会(20項目)4段階 犯罪類似行動の20項目に対して,身の回りにその行動を行った人がどれくらいの割合いるか 性別,年齢,など

質問紙:セルフコントロール1 c1="私はよく、落ち着いて考えずに、そのときのはずみで行動してしまう"

質問紙:セルフコントロール2 c13="どちらかを選ぶとしたら、頭を使うことよりも、身体を使うことである"

質問紙:親の愛着1 両親は私の感情を尊重していたと思う。 私の両親はよい両親だっだと思う。 私は違う両親がほしいと思っていた。 両親はわたしのあるがままを受け入れてくれた。 問題があるときには、自分自身を頼りにしなくてはならなかった。 私は関心をもった物事に対して、両親と同じような視点からみることが多かった。 両親に対して私の感情をあらわすことは、無意味だったと思う。 私が何かに困惑しているとき、両親はそれに気がついていただろう。 私の問題について両親と相談することは、恥ずかしいことであるか、馬鹿らしいことであると思っていた。 両親は私に過大な期待をかけすぎていた。 私は家で困惑しやすかった。 私は両親が知っているより困惑しやすかった。 議論するとき、両親は私の考え方を考慮してくれていた。 両親は私の判断を信頼していたと思う。

質問紙:親の愛着2 両親は両親の問題を抱えているので、私は自分のことで両親をわずらわせたくなかった。 両親は私が自分をよりよく理解するのを助けてくれた。 私は両親に自分の問題やトラブルについて教えていた。 私は両親に怒りを感じていた。 私は家ではそれほど注意を払われていなかった。 両親は私が自分の問題について話すことを勧めた。 両親は私を理解していたと思う。 私は自分が誰を頼ることができるかわからなかった。 私が怒ったとき両親は理解しようと努めてくれた。 両親は私を信頼していたと思う。 両親は私が何をしようとしているかを理解しなかった。 私は(打ち明けて)心の重荷をおろしたいとき、両親をあてにすることができた。 誰も私を理解していなかったと思う。 両親は、私が何かに悩んでいることを知れば、それについて私に聞いた。

質問紙:親の監督1 a1="家の大人たちは、学校が終わった後に自分がどこにいるのか知っていた"

質問紙:親の監督2 a12="家の大人たちは、私が外で誰と一緒にいるかを知っていた"

質問紙:親の監督3 a21="我が家では、不満を言ったり、やりたいことをやったり、感情をぶつけることを続けていると、やりたいことをできるようになった" a22="家の大人たちの少なくとも一人は、自分自信の幸せよりも私の幸せについて考えてくれていた" a23="家の大人たちの少なくとも一人は、かっとなって自制心を失いがちだった" a24="両親(保護者)のうちの一人は、私が何をしているのか、また誰といるのかということにかなりの注意を払っていた" a25="我が家では、もし規則を破ってそれがみつかったら、罰せられる a26="家の大人たちは、私が学校で何をしているか、たとえば、どんな科目をとっているか、担任の先生は誰か、どんなクラブ活動にはいっているかについて、かなりよく知っていた" a27="我が家において、どのようなことをすれば罰せられるかという規則は明確であり、一貫して適用された" a28="もし私が担任の先生を軽蔑していたということを両親(保護者)が知っていたなら、ただごとではすまされなかっただろう" a29=“我が家では、いつ怒ってあなたに暴力をふるい出すのかわからないような大人がいた”

質問紙:親の監督4 a30="私がガムやキャンディや小物などを万引きしたということを両親(保護者)が知ったら、ただごとではすまされなかっただろう" a31="もし、私が落ちこんでいたら、家にいる大人たちのうちの誰かがそれに気づいただろう" a32="私の家で罰せられるのは、それなりの理由があるからだ" a33="もし、私が授業をさぼりそれが両親(保護者)に見つかったら、ただごとではすまされなかっただろう" a34="私が罰せられたとき、家の大人たちは、なぜ罰せられたについて十分に理解するまで話してくれた" a35="我が家では、罰は間違った行いの程度に見合っていた" a36="我が家では、たたかれるよりも、特権を失ったり外出を禁止されるなどの罰をよく与えられた" a37=“タバコを吸っているのを見つかったら、ただごとではすまされな かっただろう" a38="家の大人たちの少なくとも一人は、機嫌が悪いことが多かった" a39="酔っぱらって帰ったら、ただごとではすまされなかっただろう" a40="友達の家に泊まりに行こうとすると、親(保護者)はその友達の親とその計画をチェックしたものだ"

犯罪機会 ・ 過去

犯罪類似行動 ・ 現在 頻繁に行った よく行った 数回行った 全く行わなかった

3.結果 SC尺度 記述統計量に目立った 値は見つからなかった α係数=0.747 因子構造 仮説6因子

6因子での因子分析(最尤法プロマックス回転)

変数選択の詳細 C6:「ややこしくなってくると,投げ出したりあきらめたりしやすい. 本来,単純な課題を好むという因子にはいるべきであるが,衝動性にも高い因子負荷を示した. C22:「誰かに対して怒っている時,理由を説明するよりも,いっそのこと相手を傷つけてやりたいとよく思う.」 本来,かんしゃくの因子にはいるべき項目であるが,自己中心性に高い因子負荷を示した. これらの項目を除くと6因子モデルとなる. C4は衝動性から単純な課題を好む因子,C11は危険を求める因子からかんしゃくの因子に高い因子負荷を示した. 22項目でのα係数=0.713である. 6つの要素のα係数

親の養育態度 セルフコントロール? 重回帰分析 結果 従属変数:SCの合計得点 独立変数:親の監督,親の愛着,年齢,性別 親の監督,親の愛着単独でのSCへの影響は有意である 親の監督,親の愛着の両方を独立変数として分析するとどちらも非有意である 親の監督,親の愛着を加算して合計した親の養育態度に関しては有意である

分析結果

セルフコントロール各要素 犯罪類似行動? 重回帰分析 従属変数 犯罪類似行動全体,暴力犯罪,詐欺犯罪 無分別な行動 独立変数 SCの6つの要素

犯罪類似行動の分類 犯罪類似行動全体 暴力犯罪 詐欺犯罪 無分別な行動 他人に暴力をふるう 公共物に落書きをする 公共物を壊す ものに八つ当たりをする 詐欺犯罪 カンニング 他人のレポートや宿題を写す 授業をさぼる 万引き 自転車泥棒 傘泥棒 他人の財布からお金などを盗む 無分別な行動 喫煙 飲酒 賭け事

結果 「高校時代」と「過去1年間」に共通して,有意であったもの 全体:衝動性,危険を求める 暴力:かんしゃく 詐欺:衝動性,自己中心性 無分別:危険を求める したがって,「単純な課題を好む」「身体的活動性」については,予測力が乏しいものと考えられる. そこで,その2つの要素を除くSCの尺度を作成した 「低SC改」とよぶ α係数=0.706

セルフコントロールの指標 カイ2乗 = 61.740 自由度 = 9 p値= 0.000 GFI=0.906 AGFI=0.782 自由度 = 9 p値= 0.000 GFI=0.906 AGFI=0.782 RMSEA=0.179 6つの要素の1因子モデル カイ2乗 = 0.447 自由度 = 2 p値 = 0.800 GFI=0.999 AGFI=0.994 RMSEA=0.000 4つの要素の1因子モデル

高校時代

過去1年間

セルフコントロール改+犯罪機会 犯罪類似行動? 重回帰分析 従属変数 犯罪類似行動全体 暴力犯罪,詐欺犯罪,無分別な行動 独立変数 SC改,犯罪機会 SC改と犯罪機会の交互作用 親の養育態度,性別,年齢

結果 犯罪機会は,一貫して犯罪類似行動への影響力がある. 低SCは無分別な行動以外では,予測力がある. 交互作用は,過去1年間の全体の分析においてのみ,有意であったが,それ以外は有意ではなかった. 親の養育態度は,高校時代においては有意な効果があるが,過去1年間においてはあまり効果はみられない.

高校時代

過去1年間

総合的分析 共分散構造分析 結果 親の養育態度,SC,犯罪類似行動,犯罪機会の総合分析 暴力犯罪,詐欺犯罪においては,親の養育態度からSCへの影響,SCから高校時代の犯罪類似行動への影響が有意である 無分別な行動については,親の養育態度,SCのどちらも影響を受けていない 犯罪機会は,どの犯罪類似行動へも有意な影響を与えている

犯罪類似行動全体 カイ2乗(自由度)=28.277(28) P値=0.45 GFI=0.970 AGFI=0.940 RMSEA=0.007 は,5%水準で有意でない値 カイ2乗(自由度)=28.277(28) P値=0.45 GFI=0.970 AGFI=0.940 RMSEA=0.007 犯罪類似行動全体

暴力犯罪 カイ2乗(自由度)=39.908(28) P値=0.067 GFI=0.958 AGFI=0.917 RMSEA=0.048 は,5%水準で有意でない値 カイ2乗(自由度)=39.908(28) P値=0.067 GFI=0.958 AGFI=0.917 RMSEA=0.048 暴力犯罪

詐欺犯罪 カイ2乗(自由度)=27.995(28) P値=0.465 GFI=0.971 AGFI=0.943 RMSEA=0.000 は,5%水準で有意でない値 カイ2乗(自由度)=27.995(28) P値=0.465 GFI=0.971 AGFI=0.943 RMSEA=0.000 詐欺犯罪

無分別な行動 カイ2乗(自由度)=33.200(28) P値=0.228 GFI=0.966 AGFI=0.933 RMSEA=0.032 は,5%水準で有意でない値 カイ2乗(自由度)=33.200(28) P値=0.228 GFI=0.966 AGFI=0.933 RMSEA=0.032 無分別な行動

4.考察 研究の目的(再) セルフコントロールの一次元性が成り立つか 親の養育態度によりセルフコントロールの レベルが決定されるか セルフコントロールと犯罪機会から犯罪類似 行動へ影響があるか

1.セルフコントロール尺度の一次元性 SCの因子分析結果から 16変数 24変数 4つの尺度(衝動性,危険を求める,自己中心性, かんしゃく)の一次元性はいえるのではないか 16変数                24変数

2.親の養育態度セルフコントロール? 親の愛着,親の監督とをあわせた親の養育態度は,SCに影響を与えている SEMによる分析でもその結果を支持 問題点 親の愛着,親の監督それぞれの変数のみで重回帰分析を行ったときは,有意な効果を示しているが,両方の変数を独立変数にすると有意でない. ・・・尺度間の相関が高い(=0.5)であるということが問題ではないか. 親の愛着,親の監督のどちらがSCに影響を及ぼしているかということが特定できない.

3.セルフコントロールと犯罪機会から 犯罪類似行動への影響があるか SCのどの要素が犯罪類似行動に影響を 及ぼしているのか by 重回帰分析 「衝動性」「単純な課題を好む」「危険を求める」 「自己中心性」の4要素は影響がある 「単純な課題を好む」「身体的活動を好む」は,犯罪類似行動の予測力に欠ける

続1 SC・犯罪機会が犯罪類似行動へ影響を 及ぼすか by 重回帰分析 低SCであることは,犯罪行動(暴力,詐欺)へ至る ことの原因であるといえる 犯罪機会は,犯罪行動(暴力,詐欺)についても,無分別な行動(飲酒,喫煙,賭け事)についても,影響力がある 低SCと犯罪機会の交互作用については,その効果は認められないといってよいだろう ・・・Gottfredson & Hirschiの主張が支持されない 過去1年間の低SCの影響がみられないのはなぜか

続2 by 共分散構造分析 全体として 親の養育態度の直接効果は認められず,SCと 犯罪機会を通して,間接的な影響が認められた 高校時代の犯罪類似行動から過去1年間の犯罪類似行動へ影響があることから,犯罪の継続性 つまり前科ということが次の犯罪の予測に対して有力であるということを示している 全体として 犯罪行動を暴力,詐欺犯罪とわけることは必要 無分別な行動は,犯罪行動とは違う 異なることの原因を考察したい

問題点 大学生を対象としていることから,一般よりも犯罪率が低い 親の監督・親の愛着の項目は,質問紙の原文(英語)をそのまま和訳して使用している 本研究では,SCのレベルが就学前に確立されてから,持続されるという理論における仮定を前提としている 親の愛着と親の監督の尺度に意味的に重なる部分がある SCの尺度として先行研究(Grasmick et al.1993) を使用したがその妥当性があるかどうか 犯罪機会として,身の回りに犯罪類似行動をした人がどのくらいの割合でいるのか,ということを尋ねたが,他の「機会」もあるのではないか 「犯罪機会」ついては得点をそのまま加算している

尺度の一次元性について

一次元性とは 各項目の変動が誤差を除いて共変する 1因子のモデルが概ね適合している 誤差の割合が大きくない 信頼性が高い

一次元性の評価 相関行列の第1固有値の大きさで評価することがある しかし,本来は1因子モデルを活用すべき 質問項目自身の一次元性と合計(尺度) 得点の一次元性とでは基準が異なる 尺度得点の場合はより高い信頼性が 要求される 誤差が小さくなっているから

SC6の場合 固有値の分布から,6つの下位尺度の 一次元性は言えないだろう

1因子分析(SC6とSC4) 4つの要素の1因子モデル 6つの要素の1因子モデル

誤差相関で構造を探る n=216 生データ

SC4の一次元性 1因子モデルは適合している 信頼性係数=0.497 α係数=0.482 n=216

続 SC4は1因子モデルが適合している しかし,信頼性が低いことから,一次元とは みなし難い 合計得点を用いると希薄化が起こる これらが尺度であることを考えるとなおさらそうである 合計得点を用いると希薄化が起こる 個別に分析すると異なった結果が得られる可能性がある 一次元に落としたいときは,合計得点ではなく 多重指標が望ましい

2つのα係数 合計得点( 4つ)を尺度項目とした場合 α係数=0.482 16変数を尺度項目とした場合 α係数=0.706 合計得点( 4つ)を尺度項目とした場合   α係数=0.482 16変数を尺度項目とした場合   α係数=0.706 これらは本来一致すべき この乖離は,16項目が一次元的ではないことを示唆 α係数の問題点 一次元ではない場合でも,項目数が多くなると それなりの値に見える

因子分析における 変数選択の実際 尺度の分析

低セルフコントロール尺度 評価の方法:6段階評価 「1.全然あてはまらない」「2.あまりあてはまらない」 評価の方法:6段階評価 「1.全然あてはまらない」「2.あまりあてはまらない」 「3.ややあてはまらない」「4.少しあてはまる」「5.よくあてはまる」「6.大変よくあてはまる」 C1:私はよく、落ち着いて考えずに、そのときのはずみで行動してしまう。 C2:あまり将来に備えて考えたり努力したりしない。 C3今すぐ楽しくなれるならば、少し先の目標を犠牲にしてもかまわずにやってしまう。 C4:待たなければならないことよりも、すぐに結果が出ることのほうが好きである。 C5:難しいとわかっていることはたいてい避ける。 C6:ややこしくなってくると、投げ出したりあきらめたりしやすい。 C7:とても簡単にできるということは、私にとって最高の喜びである。 C8:自分の能力の限界まで要求されるようなつらい課題は嫌いである。 C9:時々は、少し危険なことをして自分を試したい。 C10:時々、おもしろ半分で危険を求めることがある。 C11:時々、争いごとに巻き込まれて興奮している自分に気づく。 C12:私には、安全でいるよりも、興奮したり冒険することのほうが重要である。 C13:どちらかを選ぶとしたら、頭を使うことよりも、身体を使うことである。 C14:じっと座ったり、考え事をするよりも、動いているほうが快適である。 C15:読書をしたり、あれこれ考えたりするよりも、外出したり、何かをしていることのほうが好きである。 C16:私は、同年代の人たちよりも活発に動くことを求めているし、そうするエネルギーを持っている。 C17:たとえ他の人に迷惑をかけることになっても、私はまず最初に自分のことを考える。 C18:誰かが困っていても、私はあまり同情しない。 C19:自分のしたことで他のひとをあわてさせたとしても、私には関係のないことである。 C20:他の人を困らせるとわかっていても、自分のしたいことはしてしまう。 C21:私はすぐにかんしゃくを起こす。 C22:誰かに対して怒っている時、理由を説明するよりもいっそのこと相手を傷つけてやりたいとよく思う。 C23:本当に怒っている時は、誰も私に近づかないほうがいい。 C24:誰かと仲が悪い時、そのことを落ち着いて穏やかに話すのは難しい。

低セルフコントロールの分析 Grasmick et al. (1993), 河野・岡本(1999)

Step 1 「衝動性」「単純」 X4:待たなければならないことよりも、すぐに結果が出ることの ほうが好きである。

Step 2「自己中心性」「かんしゃく」 X17: たとえ他の人に迷惑をかけることになっても、私はまず最初に自分のことを考える。

X22の削除 X17: たとえ他の人に迷惑をかけることになっても、私はまず最初に自分のことを考える。

X17の削除?

Step 3 「身体的活動性」の追加

Step 4 「危険を求める」の追加

Step 5 「全因子の投入」 X11: 時々,争いごとに巻き込まれて興奮している自分に気づく

X17を入れてみた X21は外せない(3指標ルール)

X11の吟味 X11: 時々,争いごとに巻き込まれて興奮している自分に気づく

X11を外す

最終モデル 一応の単純構造が得られている これ以上のモデル改善は難しい 将来の課題 3指標は外せない その他の変数には飛びぬけてモデルを改善する変数はない 悪さはどれも似たりよったり.どれも少しずつ悪い このデータにはこのモデルがベスト 将来の課題 ワーディングの改善 回答者の選び方,instruction の改善 これらを改善することでより理想的なデータが得られる可能性がある