大気チェレンコフ望遠鏡による超大天頂角観測の可能性についての研究 2005年度 中間発表 (2005/07/28) 大気チェレンコフ望遠鏡による超大天頂角観測の可能性についての研究 西嶋・河内・櫛田研究室 4ASPM002 井上 涼
研究目的 AGNの放射モデルを検証するために、Mrk421からのγ線の検出を目的として、観測データを解析 TeVγ線の観測結果を良く説明するモデルとして、電子が起源であるSSCモデルがある
CANGAROOとは? CANGAROO(カンガルー)とは Collaboration of Australia and Nippon (Japan) for a GAmma Ray Observatory in the Outback を省略した造語で、 ガンマ線天体物理学のための国際協力実験。 天体からの超高エネルギーガンマ線を、南半球のオーストラリア/ウーメラに設置した大気チェレンコフ望遠鏡を用いて観測し、天体における高エネルギー現象の研究を行なっている。 東経136°南緯31°海抜高度160m
CANGAROO-III望遠鏡 主鏡直径(口径):10.4m 焦点距離:8m 光電子増倍管:焦点面に427本 複合鏡直径:80cm 複合鏡形状:小型球面鏡114枚 視野:約4°
ステレオ観測 γ線のシャワーを複数台の望遠鏡を使って捉える。 イメージを重ね合わせることにより、γ線の到来方向を知る。 今回はT2,T3と呼ばれる望遠鏡2台を使用。
ステレオ観測
活動銀河核(AGN) 活動銀河核とは、銀河中心近傍から膨大なエネルギーを放射している天体のこと 銀河中心にブラックホールがあると考えられており、中心付近からジェットが放出されている 活動銀河核の中で、特に激しい活動性を示すものに、「ブレーザー」がある
代表的なTeVブレーザー TeVで検出の報告があったAGNはいまだ十数個程度しか発見されていない。
陽子とガンマ線のシャワーイメージの違い 大気に入射したγ線と陽子の空気シャワーの発達の様子。 黒い線はシャワーの発達過程を示す。 左がγ線 右が陽子
Mrk421の特徴 TeVブレーザー天体 (RA, Dec)=(11.017°, +38.29°) 天球上で、北斗七星と獅子座の間に位置 赤方偏移Z=0.031 CANGAROOでの観測では大天頂角 (仰角が非常に低いということ) (天頂に較べ、空気の層が厚い)
Mrk421の観測時間 Long ON Source : 計11時間程度 2004/02⇒4時間程度 2004/03⇒2.5時間程度 2004/04⇒4.5時間程度 Long OFF Source : 計2時間程度 2004/02⇒2時間程度 2004/03⇒0時間 2004/04⇒0時間
解析方法 様々なカット条件を用いて、γ線を選び出す 1.シャワーを選択するためのカット (ADC cut, TDC cut, Clustering) 2.γ線を選択するためのカット (Square Cut)
①Before Cut
②ADC Cut
③Clustering(1回目)
④TDC Cut
⑤Clustering(2回目) シャワーイメージ
γ線を選択するためのカット Width ⇒楕円型にFitしたイメージの短軸の拡がり Length ⇒楕円型にFitしたイメージの長軸の拡がり Distance ⇒楕円型にFitしたイメージの光量中心からγ線源までの距離 Width, Length, Distanceの3つのCutを総称してSquare Cutと呼ぶ
γ線のイメージ
陽子(プロトン)のイメージ
有効検出面積
MC Energy PSR1706 Elevation=70° Mrk421 EL=19°
MC Energy Region 天頂⇒空気の層薄い ⇒energy閾値↓ エネルギー閾値=約20TeV 大天頂角⇒空気の層厚い
Theta square分布 (θx, θy) θ2=θx2+θy2
θ2分布 PSR1706 mrk421
考察 大天頂角の天体の観測では、ガンマ線がカメラ中心に有意に来ている証拠がつかめなかった。 位置決定精度が悪いため。 大天頂角の天体では、パラメータに区別がつきにくいため。
今後の課題 様々な解析手法を試みる データを補正するような手法? 最適なカット条件の試行 (shower selection , square cut)
終了です。
Alpha分布 横軸が0に近いほどピークを作っていれば、カメラを向けたほうからガンマ線が来ている証拠に!
Θ2分布
EGRETによって発見されたγ線源マップ EGRET検出器は30MeV~10GeVのエネルギー領域で観測、有効検出面積1500cm2 EGRETは271個γ線源を発見。 うち、101の天体が銀河系内ではパルサーや超新星残骸、銀河系外では活動銀河核がγ線放射天体と同定された
ADC
TDC
Cloud Cut Rateが 不安定
Elevation
①シャワーを選択するためのカット 信号(シグナル)を選択するためのカット ⇒PMT1本あたりの光量に着目 イベントを選択するためのカット ⇒チェレンコフ光によって起こる1事象に着目
シャワー選択の必要性 観測データのイベントはチェレンコフ光と夜光(Night Sky Background)の両方を含む。 夜光には大気光、星夜光、黄道光がある。これらの夜光を除去するために、シャワー選択の必要がある。
信号(シグナル)を選択するためのカット ADCカット ⇒PMT1本当たりの光量でカット TDCカット ⇒シグナルの入ってくるタイミングでカット
イベントを選択するためのカット Clustering ⇒シャワーのイメージの大きさでカット Elevation Cut ⇒仰角でカット Cloud Cut (Time Window Cut) ⇒時間幅でカット
実際のシャワー選択の流れ ①Elevation Cut, GPS Event Cut, Cloud Cut ↓ ②ADCカット ③Clustering(1回目) ④TDCカット ⑤Clustering(2回目)
①Cloud Cut
Cut条件 ADC Cut・・・5.0 p.e TDC Cut・・・±30.0nsec Clustering・・・T5A
ADC(After Cut)
TDC(After Cut)
γ線選択の必要性 選択されたシャワーイメージは、γ線によるシャワーイメージと陽子(プロトン)によるシャワーイメージが重なっている。 両者が作るシャワーイメージの違いを利用して、γ線によるシャワーイメージを取り出す。
MC Simulation γ線と陽子のモンテカルロシミュレーションの結果から、Square Cutの条件を決定する。 ※モンテカルロシミュレーション・・・偶然現象の経過をシミュレーションする場合に、乱数を用いて数値計算を行い、問題の近似解を得る方法のこと。
Simulation結果 γ線のシミュレーション結果 ⇒コンパクトにまとまる ⇒Long On 陽子(プロトン)のシミュレーション結果 ⇒全体的にちらばり、まとまらない ⇒Long OFF
Width(ON)
Width(OFF)
Length(ON)
Length(OFF)
Distance(ON)
Distance(OFF)
Image Parameter Width Length Distance Alpha
Alpha分布を見て、γ線到来方向を確認!!
ブレーザー 電波からγ線に渡る幅広い領域で放射している 輝線スペクトルがない(又は弱い) 電波や可視光で強く変光する 多波長でのエネルギースペクトルが、非熱的放射の2つのピークをもつ
SSCモデル SSCモデルは、γ線の観測結果を説明することができる放射モデル SSCモデルは、電子が起源と考えられている ジェット内部でシンクロトロン放射された低エネルギー光子をジェット内部の電子が逆コンプトン散乱でエネルギーを叩き上げて高エネルギー光子を放出する
シンクロトロン放射 磁場中で、加速度を受けた荷電粒子からの放射のこと ※電子、陽電子が相対論的速度に満たない場合はサイクロトロン放射と呼ぶ
逆コンプトン散乱 高エネルギー電子が、低エネルギー光子と弾性散乱を起こして高エネルギー光子になる現象 ※コンプトン散乱・・・高エネルギー光子が、低エネルギー電子と弾性散乱を起こして低エネルギー光子となる現象
Light Curve 2004/04/19 20:10:00~22:28:00 2004/04/20 19:45:00~22:24:00 2004/04/19 20:10:00~22:28:00 2004/04/20 19:45:00~22:24:00 MJD≒53115
修正ユリウス日(MJD) ユリウス通日(AJD) 紀元前4713年1月1日正午(世界標準時)からの日数。天文学等で、数年に渡る2点を計算するのに便利。 修正ユリウス日(MJD) ユリウス通日から2400000.5を引いた値。ユリウス通日では桁数字が大きすぎるため使用しづらい点を考慮。
大気光とは・・・ 太陽からくる紫外線が、地球大気の上層部に入社することにより、大気層自身が化学反応を起こして発する光のこと。
星夜光とは・・・ 銀河や恒星といった点源としては分解できないような星から放出された光が直接飛来したものや、大気層で散乱されるもののこと。
黄道光とは・・・ 太陽からくる光が、太陽系の黄道面に分布する塵芥によって散乱されたもの。 ※黄道面・・・太陽の年周運動によって天球上に描かれる黄道(平均大円)を含む平面のこと。地球の平均の公転軌道面でもある。