(C)2011女性にやさしい職場づくりナビ
2 1.女性労働者の妊娠中または出産後 にみられる症状・疾患の実態 妊娠中・産後に身体上つらかったこと 1.女性労働者の妊娠中または出産後 にみられる症状・疾患の実態 女性労働協会の「働く女性の身体と心を考える委員会」では平成18年度に「事業所における妊産婦の健康管理体制に関する実態調査」を実施しました。その中で女性労働者の妊娠中または出産後にみられる症状・疾患の実態に関するデータを示します。 まず、妊娠中・出産後に身体上つらかったことがあると回答した者は92%であり、非労働者との比較して多いか少ないかは不明ですが、いずれにしても大部分の女性労働者は何らかの身体的症状に悩まされるということが数字として示されました。 妊娠中・産後に身体上つらかったこと 2 (C)2011女性にやさしい職場づくりナビ (資料出所:(財)女性労働協会 「事業所における妊産婦の健康管理体制に関する実態調査報告書」平成18年度)
3 1.女性労働者の妊娠中または出産後 にみられる症状・疾患の実態 妊娠中・産後に身体上つらかったこと 1.女性労働者の妊娠中または出産後 にみられる症状・疾患の実態 その内容は、吐き気が59.1%、腰痛・背中痛・肩こり・こむら返り・脚がつるが51.9%、眠気・不眠が44.5%、全身倦怠感・脱力感・疲労が43.5%でした。いずれも必ずしも労働者に特有の症状とはいえず一般的な妊娠中の症状ですが、逆にこれらの症状あれば仕事をする上でかなり大きな影響を及ぼすでしょう。 妊娠中・産後に身体上つらかったこと 3 (C)2011女性にやさしい職場づくりナビ (資料出所:(財)女性労働協会 「事業所における妊産婦の健康管理体制に関する実態調査報告書」平成18年度)
4 1.女性労働者の妊娠中または出産後 にみられる症状・疾患の実態 妊娠中・産後に仕事上つらかったこと 1.女性労働者の妊娠中または出産後 にみられる症状・疾患の実態 実際、女性労働者が妊娠中あるいは出産後に仕事上つらかったことがあると回答した人は、63.3%に上っています。 妊娠中・産後に仕事上つらかったこと 4 (C)2011女性にやさしい職場づくりナビ (資料出所:(財)女性労働協会 「事業所における妊産婦の健康管理体制に関する実態調査報告書」平成18年度)
5 1.女性労働者の妊娠中または出産後 にみられる症状・疾患の実態 妊娠中・産後に仕事上つらかったこと 1.女性労働者の妊娠中または出産後 にみられる症状・疾患の実態 その内容は、休憩する場所がないが32.0%、職場内の喫煙が31.9%、通勤時のラッシュが28.6%と、前に示したように吐き気、腰痛・背中痛・肩こり・、眠気・不眠、全身倦怠感・脱力感・疲労などの症状を抱える者にとってはつらい環境であることが伺えます。ちなみに、ここにあげられた問題は後に述べるような事業所側の適切な措置で改善できるものがほとんどです。だからこそ、各事業所が積極的に母性健康管理を推進することが、女性労働者が快適に妊娠・出産をするために非常に有用なことであると言えます。 妊娠中・産後に仕事上つらかったこと 5 (C)2011女性にやさしい職場づくりナビ (資料出所:(財)女性労働協会 「事業所における妊産婦の健康管理体制に関する実態調査報告書」平成18年度)
6 1.女性労働者の妊娠中または出産後 にみられる症状・疾患の実態 女性労働者の妊娠中・産後の症状 1.女性労働者の妊娠中または出産後 にみられる症状・疾患の実態 以上はつらかったことという自覚的な症状のデータでしたが、次に他覚症状についてのデータを示します。妊娠中・出産後に症状があったと回答した人は85.2%であり、やはり大変高率に何らかの症状を発症しています。 女性労働者の妊娠中・産後の症状 6 (C)2011女性にやさしい職場づくりナビ (資料出所:(財)女性労働協会 「事業所における妊産婦の健康管理体制に関する実態調査報告書」平成18年度)
7 1.女性労働者の妊娠中または出産後 にみられる症状・疾患の実態 妊娠中・産後の症状 1.女性労働者の妊娠中または出産後 にみられる症状・疾患の実態 症状の内容は、つわりが66.8%で2/3の人に発症しており最も多く、つぎに多いのは妊娠貧血が40.1%、妊娠浮腫が34.7%の2つであり、3番目に多いのは切迫流産17.2%、腰痛症16.2%、切迫早産15.2%、です。この表は後に述べる母性健康管理指導事項連絡カード、すなわち母健連絡カードの症状の項目をもとにアンケート調査されていますので、別の見方をすればこのように高頻度で発症する一般的な症状には大部分が母健連絡カードで対応できるとも言えます。しかしながら、この平成18年度の調査では、過去5年間に「母健連絡カード」の提出を受けたことが「ある」事業所の割合は2.9%しかなく、まだまだ母健連絡カードが有効に活用されていないようです。 7 妊娠中・産後の症状 (C)2011女性にやさしい職場づくりナビ (資料出所:(財)女性労働協会 「事業所における妊産婦の健康管理体制に関する実態調査報告書」平成18年度)
8 2.適切な措置が受けられるための 母性健康管理ツールの紹介 母性健康管理ツールの紹介 女性労働者における母性健康管理においてまず最初に必要なことは、職場における母性健康管理の重要性を事業所に認識してもらい、就業規則など職場の環境を整備してもらうことです。そのためのツールが必要です。しかしそれだけでは母性健康管理は成り立ちません。医師や助産師が事業所に適切な措置をアドバイスすることが必要です。そのためのツールも必要となります。次にこれらに役立つツールを紹介します。 8 (C)2011女性にやさしい職場づくりナビ
女性労働者・事業主・医師・助産師・保健師・看護師のための 2.適切な措置が受けられるための 母性健康管理ツールの紹介 まず、女性労働協会では2002年に「女性労働者・事業主・医師・助産師・保健師・看護師のための職場における母性健康管理」というA4版160ページの冊子を出版しました。これは、タイトルのとおり女性労働者・事業主・医師・助産師・保健師・看護師すべてを対象として、母性健康管理の法的措置や、職場における母性健康管理システム、妊娠中・出産後の症状やそれに対応する措置について、大変わかりやすく解説されています。 女性労働者・事業主・医師・助産師・保健師・看護師のための 職場における母性健康管理 9 (C)2011女性にやさしい職場づくりナビ (出版:(財)女性労働協会 2002年8月)
*母性健康管理専用サイト『女性にやさしい職場づくりナビ』からもダウンロード可能 2.適切な措置が受けられるための 母性健康管理ツールの紹介 さらに、「働く女性の身体と心を考える委員会」では、平成15 年度に「働く女性の健康に関する実態調査」を実施し、その結果をもとに平成17年に「働く女性の健康管理ハンドブック」(99ページ)を出版しています。この本では女性特有の疾病等と健康管理対策について、妊娠・出産期の疾病だけでなく、月経不順、月経痛・月経困難症、子宮内膜症、子宮筋腫、更年期障害、及び子宮がん・卵巣がん・乳がんなど働く女性が関心を示した他の疾病についても解説されていますが、産業医等産業保健スタッフや人事労務担当者が母性健康管理に必要な知識を獲得する上で大変参考になると思います。 10 働く女性の健康管理ハンドブック *母性健康管理専用サイト『女性にやさしい職場づくりナビ』からもダウンロード可能 (C)2011女性にやさしい職場づくりナビ (出版:(財)女性労働協会 平成17年3月)
*母性健康管理専用サイト『女性にやさしい職場づくりナビ』からもダウンロード可能 2.適切な措置が受けられるための 母性健康管理ツールの紹介 さらに、「働く女性の身体と心を考える委員会」では、平成18 年度に「事業所における妊産婦の健康管理体制に関する実態調査」を実施し、この調査結果をふまえて、平成19年に「母性健康管理ガイドブック」(72ページ)を出版しました。 この本では、事業主及び健康管理部門の役割、女性労働者の対応など、企業における母性健康管理システムづくりを中心に書かれており、特に本日最も強調したい、母性健康管理指導事項連絡カードについても詳しく解説されています。 母性健康管理ガイドブック *母性健康管理専用サイト『女性にやさしい職場づくりナビ』からもダウンロード可能 11 (C)2011女性にやさしい職場づくりナビ (出版:(財)女性労働協会 平成19年3月)
*母性健康管理専用サイト『女性にやさしい職場づくりナビ』からもダウンロード可能 2.適切な措置が受けられるための 母性健康管理ツールの紹介 これが、母性健康管理指導事項連絡カードです。これは母子健康手帳にも載っていますから、皆様よくご存じのことと思いますが、そのほか女性労働協会や厚生労働省のホームページからもダウンロードできます。 12 母性健康管理指導事項連絡カード *母性健康管理専用サイト『女性にやさしい職場づくりナビ』からもダウンロード可能 (C)2011女性にやさしい職場づくりナビ
13 3.法律に規定された 母性健康管理の措置 母性健康管理に関わる措置が法的にはどのように規定されているか簡単に整理します。 母性健康管理の措置 母性健康管理に関わる措置が法的にはどのように規定されているか簡単に整理します。 母性健康管理に関わる法律は主に2つあります。一つは労働基準法であり、坑内業務の就業制限、危険有害業務の就業制限、産前6週間、産後8週間の休業、軽易業務への転換、時間外、休日、深夜労働の禁止など基本的な措置が規定されています。さらに労働基準法では就業規則の作成と届け出も規定されており、より詳細な措置は就業規則の中で整備して、事業内容や形態により応じて柔軟に規定していくということになります。 13 (C)2011女性にやさしい職場づくりナビ
3.法律に規定された 母性健康管理の措置 もう一つの男女雇用機会均等法では、事業主は妊婦健診を受ける時間を確保し、そこで指導された事項を守ることができるように勤務時間の変更、勤務の軽減などの措置を講じなければならないことが規定されています。 さらに、事業主が適切かつ有効に措置を講ずることができるように、厚生労働大臣は必要な指針を定めることが規定されています。この指針のなかで、指導事項の内容が当該事業主に的確に伝達され、かつ、講ずべき措置の内容が明確にされることを目的として、母性健康管理指導事項連絡カードの利用に努めることと記載されているのです。 14 (C)2011女性にやさしい職場づくりナビ
15 4.就業規則に記載される 母性健康管理の措置の例 以上の法律に基づき、事業所では就業規則が作成されます。その典型的な例を紹介します。 母性健康管理の措置の例 以上の法律に基づき、事業所では就業規則が作成されます。その典型的な例を紹介します。 この就業規則には妊娠・出産後の健康診査の受診を確保、通勤緩和、休憩の措置について規定されています。 15 (C)2011女性にやさしい職場づくりナビ
16 4.就業規則に記載される 母性健康管理の措置の例 母性健康管理の措置の例 また、「母性健康管理指導事項連絡カード」に基づきその指導事項が守れるよう、業務内容の軽減、勤務時間の短縮等を認める。 また、休業が必要な場合には、特別休暇の取得を認める。などの事項が規定されています。 措置中の待遇は、各事業所により異なり、法律に規定されるものではありません。 16 (C)2011女性にやさしい職場づくりナビ
17 5.母性健康管理指導事項連絡カード の症状と措置の解説 の症状と措置の解説 母性健康管理指導事項連絡カードについて解説します。母健連絡カードではここに示されるように症状とその重症度に応じて26種類の症状に対して標準措置が決められています。措置が標準化されていることで、医師・助産師も事業所への的確な指示が出しやすく、また事業所にとっても講ずべき措置が明確になるという利点があります。標準措置はたくさんあるようですが、実は大きく分けると5種類しかありません。 17 (C)2011女性にやさしい職場づくりナビ
18 5.母性健康管理指導事項連絡カード の症状と措置の解説 の症状と措置の解説 これは、母健連絡カードの症状と標準措置を簡単に整理した表です。標準措置は勤務時間短縮、作業制限、休憩、休業(自宅療養)、休業(入院加療)の5種類です。 このように標準化すると非常にわかりやすいのですが、症例によっては医師や助産師からするともう少し別の措置を指示したい場合も出てきます。 18 (C)2011女性にやさしい職場づくりナビ
19 5.母性健康管理指導事項連絡カード の症状と措置の解説 の症状と措置の解説 その場合には2ページ目の「標準措置と異なる措置が必要である等の特記事項があれば記入してください。」の欄や「その他の指導事項」に記入すればよいことになります。 ここに医療機関や医師等の氏名の記入および捺印のある場合には診断書に代わる正式な証明書類として扱われます。 19 (C)2011女性にやさしい職場づくりナビ
http://www.bosei-navi.go.jp/ 20 5.母性健康管理指導事項連絡カード の症状と措置の解説 の症状と措置の解説 母健連絡カードの利用マニュアルは、ツールとして紹介した「母性健康管理ガイドブック」にも記載されていますが、女性労働協会では「女性にやさしい職場づくりナビ」というホームページを公開しており、このホームページからも各種の情報が入手できます。 20 http://www.bosei-navi.go.jp/ (C)2011女性にやさしい職場づくりナビ
21 5.母性健康管理指導事項連絡カード の症状と措置の解説 の症状と措置の解説 特に母性健康管理指導事項連絡カードに取り上げられている症状とそれに対応する措置の解説は「母性健康管理ガイドブック」に記載されているものと同様であり、WEBを利用できる環境では冊子がなくても情報が入手できるので、大変便利です。 21 (C)2011女性にやさしい職場づくりナビ
6.まとめ 22 (C)2011女性にやさしい職場づくりナビ