光バーストスイッチングに 未来はあるか? 村田正幸 大阪大学サイバーメディアセンター 先端ネットワーク環境研究部門

Slides:



Advertisements
Similar presentations
フォトニックパケットスイッチにおける 2 × 2バッファスイッチのスケジューリング 大阪大学大学院工学研究科 竹森隆介 馬場健一 村田正幸 北山研一 2002年2月7日.
Advertisements

Advanced Network Architecture Research Advanced Network Architecture Research M. Murata 1 1 フォトニックインターネット への展望 大阪大学サイバーメディアセンター 先端ネットワーク環境研究部門 村田正幸
MANETを用いた車車間マルチホップ通信環境の構築
Timeout と再送 往復時間 予知が困難 他のトラフィックに依存 適応再送アルゴリズム データの採取.
インターネットの仕組み 例) Web閲覧 インターネット サーバ リクエスト データ 携帯電話 一般家庭 インターネットサービス
Ibaraki Univ. Dept of Electrical & Electronic Eng.
大阪大学 長谷川 剛 インターネットフローの公平性 大阪大学 長谷川 剛 2001年10月19日 IN研究会.
情報理工学系研究科 コンピュータ科学専攻 上嶋裕樹
Webプロキシサーバにおける 動的資源管理方式の提案と実装
山梨大学 伊 藤 洋 99/06/30 インターネット入門 総合科目V 山梨大学 伊 藤  洋
動画像品質調整機能を組み込んだ プロキシキャッシングシステムの 実装と評価
早稲田大学理工学部情報学科 後藤滋樹研究室
コンピュータ基礎(10) 11章 通信ネットワーク.
不特定多数の発信者を考慮した ストリーミングシステムの実現
仮想ブロードキャストリンクを利用した 片方向通信路の透過的経路制御 藤枝 俊輔(慶應義塾大学)
スケールフリーネットワークにおける 経路制御のためのフラッディング手法の提案と評価
ネットワーク層.
Rearrangeable NoC: 配線遅延を考慮した分散ルータ アーキテクチャ
神奈川大学大学院工学研究科 電気電子情報工学専攻
TCP (Transmission Control Protocol)
信頼性の高いIP over WDM ネットワークの構築手法
TCPデータ通信との公平性を考慮した 輻輳適応能力を有する MPEG動画像通信のための品質調整機構
詳解TCP/IP ACE B2 mewtwo.
センサノード 時刻同期と位置測定 浅川 和久 2008/11/16 センサノード 時刻同期と位置測定.
i-Pathルータのフロー情報を用いたDoS攻撃検知法
輪講: 詳解TCP/IP ACE B3 suzuk.
エンドホストの動画像フィルタリングを用いた アプリケーション層 QoS マルチキャストの実現
PlanetLab の計測結果を用いた オーバーレイルーティングの性能評価
バックボーンルータにおける REDの動的閾値制御方式
コンテンツ配信 エンコード (符号化) CBR (Constant Bit Rate) VBR (Variable Bit Rate)
ネットワーク機器接続 2SK 情報機器工学.
コンピュータ基礎(10) 11章 通信ネットワーク.
予備親探索機能を有した アプリケーションレベルマルチキャスト
認証と負荷分散を考慮した ストリーミングシステムに関する研究
MANETを用いた車車間マルチホップ通信環境の構築
伝送特性に応じた 適応型映像・音声配信機構の構築
「コンピュータと情報システム」 06章 通信ネットワーク
山本 貴之 大阪大学 大学院基礎工学研究科 情報数理系専攻 村田研究室 博士前期課程
画像情報特論 (2) - TCP/IP (1) インターネットプロトコル (IP) インターネットQoS
Ibaraki Univ. Dept of Electrical & Electronic Eng.
DataSpider Cloud Colt閉域網接続サービス
大阪大学 大学院情報科学研究科 博士前期課程2年 宮原研究室 土居 聡
TCP/UDP プロセス間の通信のためのプロトコル TCP:信頼性高、処理時間大 UDP:信頼性低、処理時間小 ftp SMTP HTTP
USENIX 2004 A Transport Layer Approach for Improving End-to-End Performance and Robustness Using Redundant Paths 寺岡研究室 斉藤俊介.
インターネットの基礎知識 その3 ~TCP・UDP層編~
第9章 Error and Control Messages (ICMP)
出典・・・基礎からわかるTCP/IPコンピューティング入門 村山公保著
超高速ネットワークの弱点 光は速い 光は遅い 300km / 1msec (真空中) 180km / 1msec (光ファイバ中)
TCP/IP入門          櫻井美帆          蟻川朋未          服部力三.
Ibaraki Univ. Dept of Electrical & Electronic Eng.
非対称リンクにおける ジャンボフレームの性能評価
超高速ネットワークの弱点 光は速い 光は遅い 300km / 1msec (真空中) 180km / 1msec (光ファイバ中)
2003年6月17日 早稲田大学大学院理工学研究科 情報科学専攻 修士2年 水野 宏樹
TCP制御フラグの解析による ネットワーク負荷の推測
仮想ネットワークを考慮した SoftIRQ制御によるCPU割当ての手法
演習第4回 情報通信技術論 インターネット工学
片方向通信路を含む ネットワークアーキテクチャに於ける 動的な仮想リンク制御機構の設計と実装
画像情報特論 (2) - TCP/IP (1) インターネットプロトコル (IP) インターネットQoS
画像情報特論 (2) - マルチメディアインフラとしてのTCP/IP (1) インターネットプロトコル (IP)
P2P ネットワーク上で 実時間ストリーミングを実現するための 分散制御プロトコルの提案
トラフィックプロファイラAGURIの設計と実装
低軌道周回衛星における インターネット構築に関する研究
2007 D0活動予定 D0 kazuhisa.
クライアントサイドから見えるサーバーサイド技術
7月13日の演習問題・解答例 について ネットワーク長が 18、22、26、28 の場合の
画像情報特論 (2) - TCP/IP (1) インターネットプロトコル (IP) インターネットQoS (diffserv / MPLS)
情報ネットワーク 岡村耕二.
プロトコル番号 長野 英彦.
自己ルーティングによるラベル識別 コリニア音響光学効果を用いたラベル識別 スケジューリング 経路制御 ラベル ラベル 識別 ラベル 処理
Presentation transcript:

光バーストスイッチングに 未来はあるか? 村田正幸 大阪大学サイバーメディアセンター 先端ネットワーク環境研究部門 e-mail: murata@cmc.osaka-u.ac.jp http://www.anarg.jp/

Burst Switching Revisited 過去の例 電話網:TASI 音声対象→落ちてもよい パケット交換ネットワーク: Virtual Cut Through できなければ、パケットを電気メモリに格納 ATM:FRP (Fast Reservation Protocol) 大容量データ対象 ATMの利用により、帯域設定が自由に行える 空いている時は150Mbps、混んでくると75Mbps→37.5Mbps… WDM: OBS (Optical Burst Switching) チャネル容量10Gbps~→帯域の粒度が大きい 大容量転送への期待:DVD1枚4.7GB 対象はリアルタイムメディアではない バッファ不要 FDLバッファリングによるペナルティを避ける→バッファがあればOBSとは呼ばない そもそもバーストとは? 大容量データ IPに適用するためには、パケットを貯めることが必須だが、TCPはこのような利用形態を想定していない M. Murata

OBSプロトコル (1): Tell-and-Wait ACK/NACK信号による、Forward型(往路で波長を決定)/Backward型(復路で波長を決定)波長予約プロトコル 予め経路を定めておき、バーストの到着時に波長を定めて送出 オプション:経路も定める バーストのネットワーク内バッファリング不要 パケットスイッチングとの本質的な違い 伝播遅延時間がボトルネックになる Forward型 Src Dest Src Dest REQ RESERVE REQ RESERVE RESERVE RESERVE パケット発生に対して、オンデマンドで経路・波長を定めて送るもの。OBS (Optical Burst Switching:光バースト交換)と呼ばれている。波長予約に要するオーバーヘッドが問題となる。プロトコルの簡素化のため、経路は予め定めておくのが一般的。***Deflection Routingはよくない*** ただし、波長が十分ある場合には、それを有効に活用することによって性能向上が見込める。例えば、大串君のように、波長を複数使って予約を行うタイプ。 もうひとつかんがえられるのが、本稿で、検討するフォトニックラベル処理に基くパケット交換(後述)。 × RESERVE NACK ACK Wavelength Reservation REL REL REL Burst Transmission Link1 Link2 Link3 Link1 Link2 Link3 M. Murata

OBSプロトコル (2): Tell-and-Go 伝播遅延時間によるオーバーヘッドの解消 ヘッダの電気処理のために、ヘッダとペイロードの間を空ける パス設定(波長予約)処理の高速化が鍵 バーストはネットワーク内で落ちるかも知れない 波長変換がない場合、M/G/1/1待ち行列網モデル! Src Dest control channel REQ RESERVE RESERVE Offset RESERVE パケット発生に対して、オンデマンドで経路・波長を定めて送るもの。OBS (Optical Burst Switching:光バースト交換)と呼ばれている。波長予約に要するオーバーヘッドが問題となる。プロトコルの簡素化のため、経路は予め定めておくのが一般的。***Deflection Routingはよくない*** ただし、波長が十分ある場合には、それを有効に活用することによって性能向上が見込める。例えば、大串君のように、波長を複数使って予約を行うタイプ。 もうひとつかんがえられるのが、本稿で、検討するフォトニックラベル処理に基くパケット交換(後述)。 data channels Offset Time Burst Transmission Link1 Link2 Link3 M. Murata

OBSのバーストブロッキング率 b: バースト長(コネクション保留時間) s: コネクション処理時間 p: 伝播遅延時間 W: 波長数 l: バースト到着率 全負荷 TAW型の場合: TAG型の場合: 波長あたりの負荷: ブロッキング率(M/G/W/W) M. Murata

ノード処理時間の影響 TAW vs. 回線交換 TAW方式 バースト時間よりも少なくとも一桁小さい処理時間が要求される 波長あたり負荷0.2 OBS GMPLS TAW方式 波長数32、伝播遅延時間0 バースト時間よりも少なくとも一桁小さい処理時間が要求される 波長あたり負荷0.2 波長あたり負荷0.5 波長あたり負荷0.8 M. Murata

ブロッキング率低下の要因 ホップ数の増加 波長変換なし 経路は予め定めておく ホップ数に対して線形に影響 Wavelength Continuity Problem 経路は予め定めておく WA (Wavelength Assignment) vs. RWA (Routing and Wavelength Assignment) WA:経路は予め決めておいて「最適な」波長を選択 Random, First-Fit:分散化が可能 RWA:Multi-path Routing 波長とともに、複数の経路から「最適な」経路を定める Most-Used(同じ波長から埋めていく):集中化前提 処理時間の高速化→WA(経路は予め決めておく) バースト交換ではWAゆえに高速化が可能 ただし、オプションとしてMulti-path Routingも可能 Figure 4 in E. Karasan , E. Ayanoglu. Effects of Wavelength Routing and Selection Algorithms on Wavelength Conversion Gain in WM Optical Network, ACM/IEEE Transactions on Networking, April 1998. M. Murata

Tell-and-Wait vs. Tell-and-Go TAG (JET, JIT, …) 波長予約時間(処理時間+伝播遅延時間)のうち、伝播遅延時間をカット 波長変換なしの場合、M/G/1/1 ! 波長数32 バースト長100msec 処理時間10msecに対しては大きい M. Murata

パケットバッファリングの効果 TAG vs. パケット交換 パケットスイッチングはバッファリング前提 波長変換のない場合→M/G/1/1+L 波長変換のある場合→M/G/W/W+L ただし、FDLの場合、固定長を単位とした遅延線なので、可変長を扱う場合にはオーバーヘッドがある 条件 波長数W=8 波長変換あり OBSでもバッファを持たせることは原理的に可能、ただし、FDLは長くなる 1Mbitバースト =100msecバースト(@10Gbps) →20Km x L TAG 1 1E-02 r = 0.85 1E-04 1E-06 1E-08 r = 0.8 Packet Loss Probability 1E-10 1E-12 r = 0.7 r = 0.75 1E-14 r = 0.65 1E-16 1E-18 20 40 60 80 100 120 Buffer Depth L Masayuki Murata and Ken-ichi Kitayama, “Ultrafast photonic label switch for asynchronous packets of variable length,” IEEE INFOCOM 2002, June 2002. M. Murata

パケット交換のメリット 波長変換のない場合 波長数増大の効果は大きい 波長変換をしなくとも一定の効果は得られる、ただし、バッファ容量はかなり必要 1Kbitパケット =0.1msecパケット(@10Gbps) →20m x L 波長数増大の効果は大きい 波長変換あり バッファ長64 1E-18 1E-16 1E-14 1E-12 1E-10 1E-08 1E-06 1E-04 1E-02 1 200 400 600 800 1000 Packet Loss Probability Buffer Depth L r = 0.8 r = 0.75 r = 0.7 r = 0.65 r = 0.85 1E-18 1E-16 1E-14 1E-12 1E-10 1E-08 1E-06 1E-04 1E-02 1 5 10 15 20 Packet Loss Probability The Number of Wavelengths W r = 0.85 r = 0.8 r = 0.75 r = 0.65 r = 0.7 M. Murata

パケット交換 vs. 回線交換 パケット・回線交換の融合? その後は、光パケットスイッチ+GMPLS? 機能 回線交換(光クロスコネクトノード) パケット交換(電気ルータ) 回線効率 決して悪くない(回線それぞれの利用効率ではなく、回線数の利用効率) →波長数の増大が重要 一般に良いとされているが、遅延を小さくするためにはoverprovisioningが必要 エンド間パス可用性 コストをかけることにより維持 経路制御により維持 ノード可用性 機能が低い分高い 低い ノードコスト 機能が低い分安い(半分から1/10) 高速化すればするほど多機能実現のためにコスト高 サービス機能の多様性 高い パケット・回線交換の融合? アクセス系:パケット交換 バックボーン:WDM回線交換(+GMPLS):光パスネットワーク スケーラビリティ確保のために、波長あたりの容量を増やすより、波長数を増やすことが重要 その後は、光パケットスイッチ+GMPLS? Deployment?   高速パケット フォワーディング ネットワーク アクセスネットワーク M. Murata

フォトニックインターネットへの ロードマップ Cross-Connect, Switch or Router? ルーティング フォワーディング Queue Management payload header スイッチング バッファリング クロスコネクト+GMPLS 光バーストスイッチ+GMPLS 光パケットスイッチ+GMPLS フォトニックIPルータ M. Murata

ユーザに対する波長の開放 IPを乗せることがWDMネットワークの役割か? TCPは本質的に パケットロスを発生する 帯域をfair-shareする役割を担う ユーザへの波長の開放(エッジノード間ではない):オンデマンド波長パス設定 前提:波長が豊富にある(1,000波長~) 適用 ユーザ志向VPN データグリッド(Tbyte級データ転送) SANの広域ネットワークへの展開 Proprietaryなプロトコル展開も可能 PhotonicGrid 参考:インターネットが目の前にあったからこそ、それに適したWebというアプリケーションが生まれた 背景:画像圧縮技術、GUI、画像表示能力 にわとりと卵(?) napster, gnutella M. Murata