晩期型星T-Lepに付随する 水メーザースポットを用いた年周視差測定 ~系内MIRA型変光星周期-絶対光度関係の測定に向けて~

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晩期型星T-Lepに付随する 水メーザースポットを用いた年周視差測定 ~系内MIRA型変光星周期-絶対光度関係の測定に向けて~ 総合研究大学院大学 博士課程後期 物理科学研究科 天文科学専攻 山下 一芳

INTRODUCTION

目的 VERAを用いて系内のMIRA型変光星にもあると思われる絶対光度と周期の関係を求める! 我々の銀河系内でもHIPPARCOS衛星のデータなどを用いてこの関係を求めているが,誤差が大きい。 VERAを用いて系内のMIRA型変光星にもあると思われる絶対光度と周期の関係を求める! 画像はAstroArtsのページより あとで変更

MIRA型変光星とは? MIRA型変光星とは星自身が脈動(伸縮)を起こし,その明るさを周期的に変化させる星である。 その周期は100~1000日程度。 HR図上では漸近巨星分岐(AGB)段階に属している進化の進んだ星である。 脈動とともに自分の質量を放出しており星周エンベロープを形成。 その中にはしばしばH2O分子の雲も存在し,それがメーザー現象を起こしているものもある。

Mira型変光星の周期光度関係とは? ★MIRA型変光星の周期光度関係は 球状星団や系外銀河などで調べられてきた。  球状星団や系外銀河などで調べられてきた。 大マゼラン星雲のMira型変光星周期光度関係。 周期-絶対光度関係は Mk = -3.47 log P + 0.84 しかしながらHIPPARCOS衛星の精度は約1mas程度であり誤差が大きい・・・ そのため,HIPPARCOS衛星の結果を用いて,系内の周期-絶対光度周期関係を求めても,その関係は判断しづらい。 ↑絶対光度はHIPPARCOS衛星で   観測した距離から求めてある。

系内のMIRA型変光星の距離を正確に測るため… VERAで年周視差の計測を計測しよう VERA 天体に対して2ビーム相対VLBIを用いたモニター観測を行い,三角視差法を用いて年周視差を計測を行う。 2ビーム相対VLBIとはVERA望遠鏡につんだ2つの受信機に,目標天体と参照電波源(クエーサーなど遠方にあるため大きく動かないと考えられる天体)を入れてVLBI観測をし,2天体 の相対的な位置を求める方法 である。

2天体の相対位置を求める 位置情報は,天体から出された信号が基準局に到達する時刻と他局に到達する時刻との差(遅延時間:τ)に含まれる。 これでは位置が計測出来ない。 しかしVERA望遠鏡には2つの受信機がついている。 式で表すと 2つの式の差を取る。 大気による遅延は2つのビーム間でほぼ共通であり,機器による遅延時間は位相較正装置で補正される。また構造による遅延は小さいものとして, = 位相補償という 相対VLBIでは2天体の相対位置が観測から求められる!

VERAの晩期型星プロジェクト 2ビーム相対VLBIを用いて系内のMIRA型変光星までの距離を測り,系内MIRA型変光星の周期-絶対光度関係を測ろうとするのがVERAの晩期型星プロジェクトである。 現在,右図のような天体が観測天体・観測候補天体としてあがっている。

観測したT-Lepとはどんな星か? 晩期型星T-Lep ウサギ座の方向にある典型的なMIRA型変光星のひとつである。 下の図のような変光をする。 可視光(GCVS)の観測による周期は368.13日。 近赤外観測での周期も同じくらいだが,可視光より83日程度の位相の遅れが見られる。 離角2度に強い参照電波源 0511-220 が存在する。 可視光 近赤外 周期-光度関係を求めるために,距離の測定を行うのにちょうどよい! H2Oメーザー

晩期型星T-Lepの観測諸元 今回は2005年の通日19日,42日,69日の3回の観測結果を示していく。 ・16MHz帯域 1024分光点 2CH  のモードで観測された。   (DIR-1000系観測) ・3観測ともVERA全4局参加 解析担当 の観測 2005年019日 (1月19日)  システム雑音温度Tsys の平均   水沢局  入来局  小笠原局  石垣局   212.08 K 181.28 K 208.62 K 303.24 K 2005年042日(2月11日)   システム雑音温度Tsysの平均   水沢局   入来局   小笠原局  石垣局 133.31 K 177.46 K 356.08 K 641.85 K 2005年069日(3月10日)  システム雑音温度Tsysの平均   水沢局   入来局   小笠原局  石垣局   193.17 K 316.10 K 283.63 K 436.47 K T-LepのVLBIモニター観測状況

水メーザーのみの観測結果 以下には,メーザーを入れた側の受信機のデータのみを使って解析した結果を示す 。 2005年069日 2005年042日 2005年019日 強度 (アンテナ温度[ K ] 1K≒19.9Jy) 視線速度 [km/s]

位相補償解析 ~マップ重ね合わせ mas 20 mas 20 mas mas

今後の研究に向けて ・今回の解析の結果からは,まだ年周視差を出す に十分なデータは得られておらず,未解析の観 測の解析を行い検証を進めていきたい。 ・まだメーザースポットが完全に収束していないた め,収束に向かうように  大気による遅延の補正などが  必要になってくると考えられる