政治過程論 第2回 イギリスの選挙政治 １０・６・２００４
民主主義のモデルとしてのイギリス ウェスト・ミンスター・モデル（＝多数支配） レイプハルトはイギリスの民主制に代表される政治システムをウェスト・ミンスター・モデルと名づけ，イギリスのほかニュージーランドとバルバドスが該当するとした． それらは以下の特徴を持つ． ・行政権力（executive power）が一党に集中 ・内閣による支配 ・2党制 ・小選挙区制（相対多数制） ・利益集団多元主義 ・単一制下の中央集権的政府 ・一院による支配 など（Lijphart, 1999, 10-20）
ウェスト･ミンスター･モデル の対抗概念 コンセンサス・モデル（スイス，ベルギー） ・連立政権 ・議会と内閣の力が均衡 ・連立政権 ・議会と内閣の力が均衡 ・多党制 ・比例代表制 ・コーポラティズム ・連邦制，分権型政府 ・二院制 など 分権的でコンセンサスを重視する 政治システム
いずれにしてもイギリスは民主主義のお手本と考えられたのだが，，， 第3政党の台頭による２大政党制の衰退： 保守党，労働党＋自民党，地域政党 圧勝か辛勝の選挙結果 など問題も多い．
イギリスの有権者 2001年の段階で4440万人 選挙権 婦人参政権：1918年 一人一票制：1948年 婦人参政権：1918年 一人一票制：1948年 18歳から有権者（以前は21歳）：1969年 ホームレスにもキャンプ生活者にも選挙権 選挙権から排除されている人々 貴族，18歳未満，外国人，有罪判決を受け収監されている者，犯罪を犯した精神障害者，選挙違反者
候補者の選び方（労働党編） vol.1 ２年以上の党籍 地域の選挙区政党か労働党加盟の組合への所属（いずれかの組織推薦が必要） 党本部からのリストが選挙区へ 選挙区で１名に絞る 全国執行委員会の承認
候補者の選び方（労働党編） vol.2 広い支持を獲得できる候補者選抜を目指す 女性候補者のためのクォータ制採用
候補者の選び方（保守党編） 志願者から数百名を選んで審査の上，全国リストに加える． 候補のいない選挙区についての情報が中央事務局から知らされ，立候補の希望を選挙区に伝えて申し込む． そこでさらに面接，審査 選挙区政党に強い権限
選挙区画の策定 １９４４年議席配分法→選挙区画委員会（第３者機関） しかし区画策定までに数年を費やす 案の通過が政治的思惑に左右される イングランドは人口に比して議席過少，スコットランド，ウェールズ，北アイルランドは過多 人口に比して議員数が多い(659)
選挙資金 クリーンな金のかからない選挙？ 候補者についてはyes：有権者５万人で136万円 党についてはno．２０００年まで制約なし． 昔は全国レベルのキャンペーンがなかったが，今は政党が政党中心の全国キャンペーン ２０００年「政党・選挙・レファレンダム法」
選挙運動 下院任期５年，解散あり マニフェスト（選挙公約リスト） 各党ウェブ･サイトから政策，スピーチなどをダウンロード 全国遊説：テレビ移りを意識した場所の選定 戸別訪問（日本の公職選挙法では禁止されている）： 支持の確認，迷っている人に印象を与える．
選挙運動（続） 文書配布 集会：衰退 ウォークアバウト：稀→静かな選挙 電話作戦
マス･メディア テレビ：最大にして最も信頼される情報源（p.24の表２） 政党によるCM 政策内容ではなく，絵になる事件の報道
投票行動 階級投票の伝統：所属階級で投票する政党が決まる． 労働者の“階級離れ”：中産階級化，社会的亀裂の衰退 政党一体感意識の変遷（p.28の図１） 投票決定時期の遅れ：ぎりぎりまで迷う有権者 業績投票
小選挙区制度の効果 得票率と議席率の不均衡 ２大政党制 安定した政府 各党の中道化，穏健化 政権交代を容易にする
最近の傾向 第３政党の伸長：２大政党に属さない議員が８１名（２００１年） 背景に地域政党の活発化
投票率の低下 総選挙で２００１年は59.4%（１９９７年は７１．４％） シニシズムの蔓延，政府への信頼や政治的有効性感覚の低下 ２大政党間の違いが曖昧になったため？
低投票率の不安 政権党の得票率が小さい＝政権の正当性が弱い 投票に行かないのは弱者なので，弱者の利益が保護されない 政府の応答性が低下する可能性：一部の支持者しか見ない 選挙に期待できないために暴動に走らないか？
Question Time
任意課題 １．あなたが選挙制度を選ぶとしたら，どういう点を重視して選びますか？ ２．イギリスの選挙政治から日本も取り入れたほうがいいと思うことは何ですか？