いろいろなアメリカ史 例外主義から多文化主義へ
始める前に 1 オバマについて オバマは黒人なのか one-drop rule アメリカは黒人の大統領を受け入れたのか 混血 mulatto 1 オバマについて オバマは黒人なのか 混血 mulatto one-drop rule アメリカでは一滴でも黒人 の血が入ると黒人とみなされる アメリカは黒人の大統領を受け入れたのか 答は 最後に
2 一つだけでない歴史 時代によって異なる歴史 多文化主義のもとでの異なる歴史 アメリカの歴史は民主主義国家アメリカを称える歴史一つ 2 一つだけでない歴史 E.H.カー『歴史とは何か』 E.H. Carr, What Is History? (1961) 過去と現在の終わりのない対話 “a dialogue between the past and the present” 歴史家を研究せよ 時代によって異なる歴史 多文化主義のもとでの異なる歴史 アメリカの歴史は民主主義国家アメリカを称える歴史一つ 過去に起こったことであり、解釈を加えるのは歴史でない Rush Limbaugh 反対!
歴史の客観性 1 科学としての歴史学 2 仮説 実証 結論(事実) 史料 解釈 3 特殊と一般との関係 (科学としての歴史は特殊的であるだけではない。一般との関連付けがなければならない) 4 客観性 価値の歴史的非制約性 客観的歴史は不可能 歴史上の事実 歴史家が認める意義による 歴史における客観性 事実の客観性ではない 関係の客観性 事実と解釈との間、過去と現在と未来との間 (E.H.カー)
時代によるアメリカ史研究の変化 例外主義の歴史 アメリカ例外主義 American exceptionalism 多文化主義の歴史 17世紀~1960年代 多文化主義の歴史 1970年代以降 アメリカ例外主義 American exceptionalism アメリカは世界において例外的に優れている国である 自由と民主主義の理念 プロテスタントの信仰 物質的豊かさー広い国土 大衆消費文化
アメリカ史研究の変遷 アメリカ例外主義の歴史 1960年代~70年代 ニューレフト歴史学 1970年代~ 多文化主義の歴史/社会史 17世紀 ピューリタン 18世紀 建国の父たち 19世紀半ば~20世紀初め ナショナリスト 20世紀前半 革新主義史学 1940年代~50年代 コンセンサス歴史学 1960年代~70年代 ニューレフト歴史学 1970年代~ 多文化主義の歴史/社会史 1990年代~ トランスナショナル・ヒストリーへ
19世紀までのアメリカ史 17世紀 ピューリタン 歴史は神の意志によって導かれる 18世紀 建国の父たち 啓蒙主義、合理主義的 17世紀 ピューリタン 歴史は神の意志によって導かれる John Winthrop, The Journal of John Winthrop, 1630-1649 (1790,1825). William Bradford, Of Plymouth Plantation (1856). 18世紀 建国の父たち 啓蒙主義、合理主義的 Thomas Jefferson, Notes on the State of Virginia (1782) David Ramsay, The History of the American Revolution (1789) 19世紀 ナショナリスト、愛国者 George Bancroft, The History of the United States, 10 vols. (1854-74) アメリカの歴史は民主主義の勝利の歴史、神によって 選ばれた特別の国家の歴史
20世紀以降のアメリカ史 革新主義史学 20世紀初め~1940年代 コンセンサス史学 1940年代~50年代 革新主義史学 20世紀初め~1940年代 コンセンサス史学 1940年代~50年代 ニューレフト史学 1960年代~1970年代
革新主義史学 20世紀初め~1940年代 アメリカ史は二つの勢力が対立するひとつの歴史 革新主義史学 20世紀初め~1940年代 アメリカ史は二つの勢力が対立するひとつの歴史 持てる者対持たざる者、資本家対労働者、債権者対負債者、東部対西部、貴族階級対民主的階級、資本家対農民 Charles Beard, Frederick Jackson Turner Vernon Louis Parrington など 革新主義の時代の改革の風潮を反映
コンセンサス史学 1940年代~50年代 アメリカ史は対立ではなくコンセンサスによって特徴づけられる ひとつの歴史 コンセンサス史学 1940年代~50年代 アメリカ史は対立ではなくコンセンサスによって特徴づけられる ひとつの歴史 しかし対立の不在を賛美していたとは限らない。 Louis Hartz, Richard Hofstadter, Daniel Boorstin など 冷戦を反映
ニューレフト史学 1960年代~1970年代 アメリカ史を動かしてきた政治・経済体制に挑戦、アメリカ民主主義の欺瞞性を暴く。アメリカ例外主義否定、多文化主義の歴史へ過渡的歴史 William A. Williams, The Tragedy of American Diplomacy (1959) など。 ベトナム反戦、体制批判の風潮を反映
新しい社会史/社会史 多様な集団に属する普通の人々の歴史 普通の黒人、一般の女性、働く人々など 人種、ジェンダー、階級を枠組みとする 下から上への視点 政治もこの視点から見ていく 多文化主義的風潮を反映
アメリカ社会史の興隆と展開 アメリカ社会史 多文化主義 コンピューター 公民権運動 グローバル化 革新主義史学 ニューレフト史学 アナール学派 イギリス・マルクス主義史学 アメリカ社会史 多文化主義 グローバル化 トランス・ナショナル・ヒストリー グローカル・ヒストリー ?
多文化主義の歴史/新しい社会史 多文化主義的 multicultural の意味 Of or relating to a social or educational theory that encourages interest in many cultures within a society rather than in only a mainstream culture (American Heritage Dictionary of the English Language, 2004. 社会において単一の主流の文化のみでなく、多数の文化に対する関心を持つことを奨励する社会理論あるいは教育理論に関連した The American Heritage New Dictionary of Cultural Literacy, Third Edition. Houghton, (http://dictionary.reference.com/browse/multiculturalism [accessed: July 29, 2008]).
多文化主義 multiculturalism の意味 一つの社会におけるさまざまな文化は平等に尊重し、学問的関心をもつに値するという見解。これは、1970年代、80年代のアメリカ社会において、アフリカ系アメリカ人、ラティーノ、他のエスニック集団が自分たち自身の歴史を探求した時に、重要な力となった (The American Heritage New Dictionary of Cultural Literacy, Third Edition. Houghton Mifflin Company, 2005. http://dictionary.reference.com/browse/Multiculturalism [accessed: July 29, 2008]).
多文化主義の3つの次元 1 現実の社会 2 思想ないしイデオロギー、規範 3 政策 1 現実の社会 2 思想ないしイデオロギー、規範 3 政策 Michel Wieviorka, “Is Multiculturalism the Solution?” Ethnic and Racial Studies, 21 no.5 (September 1998), 883.
アメリカにおける多文化主義の興隆 公民権運動 平等感の広がり 多文化主義のイデオロギー 「私たちは今、みんな多文化主義者だ」 1970年代からの新しい移民の流入 人口構成の多様化 公民権運動 平等感の広がり 黒人差別の現実 同化に対する絶望 多文化主義のイデオロギー 「私たちは今、みんな多文化主義者だ」 Nathan Glazer, We Are All Multiculturalists Now (Harvard University Press, 1997), 7-8, 14.
March on Washington The Civil Rights Movement
Afrocentrism や Nazismの許容 多文化主義への批判 多文化主義はアメリカの統一を崩す 文化戦争 アメリカ例外主義 対 多文化主義 保守派 対 進歩派 アメリカ史教科書論争 アメリカとは何か、アイデンティティの問題 極端な多文化主義は自由な民主主義を脅かす Afrocentrism や Nazismの許容 正当な批判なのか
多文化主義の思想的基盤 自由、平等な人権の尊重 公民権運動の思想 誰でもが平等に自由を享受する権利の追求 自由、平等な人権の尊重 公民権運動の思想 誰でもが平等に自由を享受する権利の追求 多様な文化をもつ集団ではあるが、平等の追求という共通の目的でまとまる 多文化主義による統合の可能性 平等を極限まで追求した結果出てきた統合の形 国家の政策としての可能性
多様な国民を統一する政策 1 ネイティヴィズム 異質な(アメリカ的ではない)集団の排除 メルティングポット 2 支配集団への同化 1 ネイティヴィズム 異質な(アメリカ的ではない)集団の排除 2 支配集団への同化 サラダボウル/ パッチワーク 3 多文化主義 異質な集団の異質なままでの受け入れ
多文化主義がアメリカ史にもたらしたもの 時代を反映するアメリカ史 社会史 視点の変化 下から上へ 焦点の多様化 歴史の拡大 社会史 視点の変化 下から上へ 焦点の多様化 歴史の拡大 例 黒人史 奴隷ないし普通の黒人の視 点からの歴史 女性史 指導者ではなく普通の女性、マイノリティ女性の視点から ジェンダー史 移民史、先住民史 労働史 大衆文化史 政治史 ジェンダー、黒人、その他マイノリティの視点から 時代を反映するアメリカ史
多文化主義のアメリカ社会史への影響 アメリカ社会史 多文化主義 コンピューター 公民権運動 グローバル化 革新主義史学 ニューレフト史学 アナール学派 イギリス・マルクス主義史学 アメリカ社会史 多文化主義 グローバル化 トランス・ナショナル・ヒストリー グローカル・ヒストリー ?
多文化主義の国外への拡大 国内 社会史 メルティングポットからサラダボウルヘ 多様性の重視 底辺からの視点 国外 新しい外交・国際関係史、 国内 社会史 メルティングポットからサラダボウルヘ 多様性の重視 底辺からの視点 国外 新しい外交・国際関係史、 他国の文化・価値を尊重 文化史・社会史と外交史の融合 底辺からの視点 アメリカの相対化(アメリカ例外主義の克服) トランス・ナショナルな「(国境を越えた)歴史 環境、移民、黒人、ジェンダーなど アメリカ合衆国の枠にとらわれない グローバル・ヒストリー 新しい比較史
おわりに 現実のアメリカ社会における多文化主義の性格はどのようなものなのか。 多文化主義のもとでの、アメリカ社会、アメリカ史研究における平等の意味は何か。
「黒人」初の大統領バラク・オバマ 2009年1月
アメリカ国民は黒人大統領を受け入れたのか 白人の半数以上はマケイン候補に投票している。(人種が理由とは限らないが) 世論調査では、ほとんどの白人は黒人大統領を受け入れると回答している しかし、どう意味で受け入れているのか。 どのような黒人でも良いのか。 ファーストレディのヘアスタイルから考える
卒業時の写真
Michelle Obama は、 なぜ、髪型を変えたのか アメリカ社会における多文化主義の現実はどのようなものなのか。 なぜ、髪型を変えたのか ここからどのような問題が考えられるか アメリカ社会における多文化主義の現実はどのようなものなのか。 アメリカ史ではどうなのか。 多文化主義のもとでの、アメリカ社会、アメリカ史研究における平等の意味は何か。