『薬の宅配便』 薬学概論Ⅱ 2009/1/8 薬剤学研究室 西田孝洋 薬剤学研究室 西田孝洋 http://www.ph.nagasaki-u.ac.jp/lab/dds/index-j.html
薬の探索方法の例 アスピリン(鎮痛薬) ペニシリン(抗生物質) タクロリムス(免疫抑制薬) ①伝統薬 ②偶然の産物 ③大規模なスクリーニング 植物、動物 ②偶然の産物 失敗・発見からのひらめき 当選確率 宝くじ1等: % 医薬品: % 約0.00001 約0.01 土壌などから ③大規模なスクリーニング 一攫千金!
アスピリンはヤナギの皮から見つかった! 東洋:ヤナギの枝を噛んで歯痛を静めた 西洋:ヤナギの葉や樹皮を飲んで、腹痛や頭痛を治した 日本でヤナギの楊枝(ようじ)を使うのも、楊枝という名がヤナギの枝をさしている。
薬ができる過程 10~18年 候補物質 薬の候補物質 薬(医薬品) ①化学合成や天然物 ②薬理作用でスクリーニング ③動物実験 ④臨床試験 (ふるい分け) ③動物実験 ④臨床試験 ⑤承認申請 薬の候補物質 ・市販後調査 ・医療現場での適正使用 薬(医薬品)
薬をつくるためには、研究開発のウエートが高い 薬を開発するための費用 薬 約200億円 8.1 % 東京ドーム:350億円 売上高に対する研究開発費の割合 全産業の平均: 2.7 % 電化製品 5.9 % 自動車 3.8 % 薬をつくるためには、研究開発のウエートが高い
非臨床(動物)・臨床試験 非臨床試験 ・薬効薬理 ・安全性・毒性 ・薬物動態 臨床試験 ボランティア 患者 ※ 吸収、分解 『生物薬剤学』、 『薬物相互作用学』
非臨床試験に用いられる実験動物 ・ラット ・ウサギ ・マウス ・モルモット ・ハムスター ・イヌ ・サル どの医薬品も動物の犠牲無しには世に出ない! ・ラット ・ウサギ ・マウス ・モルモット ・ハムスター モルモット ・イヌ ・サル ビーグル犬 ラット
ビデオ「資源となる人体」 ”NHKスペシャル”より - 薬の非臨床試験 - ビデオ「資源となる人体」 ”NHKスペシャル”より 人間の細胞を非臨床試験に利用 ヒト肝細胞を用いた 薬物代謝実験の様子
医薬品・剤形開発の歴史 化学合成 生体を利用 バイオテクノロジー
ヒトゲノム解析計画 ヒトの設計図である8万の遺伝子、そしてそれを形成する約30億対のDNA塩基。これらをすべて解読し、DNAの配列及びその一つ一つの役割を明らかにしようという壮大なプロジェクトがヒトゲノム解析計画である。ヒトゲノム解析は、遺伝子疾患の原因追究やその治療法開発に応用できる。
ポストゲノム時代の新しい医療システム 遺伝子治療 根本治療への期待 遺伝子診断 適切な薬物治療、疾患の予防 病因遺伝子の解明 新規なドラッグデザイン ヒト遺伝子情報の解明 特定の病気にかかりやすい 体質などの研究 遺伝子治療 遺伝子情報に基づく 新しいアプローチの新薬開発 効果的で副作用の少ない 薬物治療
テーラーメイド医療 すぐ手に入る既製服は手軽で便利だが、体格に合わないとサマにならない。効果がない“出来合い治療”であるなら、副作用が深刻だ。そこで、身の丈に合わせた注文服のように、患者の体質や病状に適したクスリを開発し、投与する医療を「テーラーメイド医療」と呼ぶ。遺伝子レベルで病気の原因や、個人によるクスリの効き目の違いがあらかじめわかるようになる可能性が出てきたため、急速に注目を集め始めた。
「薬の宅配便 ドラッグデリバリーシステム」 「薬の宅配便 ドラッグデリバリーシステム」 長崎新聞2004.1.29 『製剤学・DDS Ⅰ・Ⅱ』 ※ 薬剤学研究室HPに詳細な情報
新薬開発の成功率 スクリーニング: 約32万化合物 0.017 % 医薬品:53個 医薬品開発の障壁(薬物体内動態): 約32万化合物 0.017 % 医薬品:53個 医薬品開発の障壁(薬物体内動態): 副作用や相互作用、分解が速い、吸収が悪い
薬が効果を発揮するには、最適な濃度範囲がある 『薬物動態学』 毒性 薬の濃度 治療域 無効 時間 取り返しのつかない事態が起こる!
様々なオプションを備えた『薬の宅配便』 ●化学修飾 ●剤形修飾 作用部位 その他の部位 飲み薬 貼り薬 注射薬 吸収 安定 時間 速効 DDS号 適量 徐放 作用部位 その他の部位
プロドラッグ(化学修飾した薬) プロドラッグ修飾の要点 そのものは活性がないが、体内で変化を受けて生物活性のある薬物が生成するよう分子設計された化合物をプロドラッグ(prodrug)という。 プロドラッグ修飾の要点 溶解性 吸収性 安定性 指向性
プロドラッグの薬効発現 吸収バリヤー 薬効 プロドラッグ 修飾 親薬物への 復元 脂溶性↑ : 親薬物 : 修飾基 : プロドラッグ
プロドラッグの代表例 最近の新薬はほとんどプロドラッグ アスピリン フルスルチアミン (アリナミンA) 胃腸障害の防止 サリチル酸のプロドラッグ ビタミンB1のプロドラッグ 胃腸障害の防止 吸収性の向上、代謝分解の抑制 最近の新薬はほとんどプロドラッグ
剤形修飾:体内で4週間にわたってゆっくり分解 徐放性製剤/リュープリン マイクロカプセル 前立腺がんの治療薬 4週間
投与の工夫:化学塞栓療法 動脈塞栓効果 がんの血管を詰まらせて、兵糧攻めにする
新規投与形態の進歩 動注療法 腹腔内視鏡 読売新聞 医療ルネッサンスより
肝臓表面からの吸収を利用した新規投与形態の開発 Liver surface application Normal route Proposed drug distribution in the liver Diseased region 薬物吸収メカニズムの解明 局所ターゲティング能の評価 臨床応用するための吸収制御 他の臓器への応用、遺伝子デリバリー
Schematic diagram of liver surface application in rat Diffusion cell Area: 0.64 cm2 I.D.: 9 mm Model compounds Phenolsulfonphthalein (PSP) Bromphenol blue (BPB) Bromosulfonphthalein (BSP) FITC-dextrans (FD-4, FD-10, FD-40, FD-70) Sampling Plasma Bile Urine Liver Diffusion cell Liver A cylindrical diffusion cell was attached to the liver surface (left lateral lobe) of male Wistar rats (250-310 g) with the biocompatible glue Aron Alpha. Compounds (0.1 ml) were added into the diffusion cell. Rat Nishida et al, J. Pharm. Pharmacol, 46, 867, 1994
Amount in diffusion cell Absorption of 5-FU from diffusion cell after application to rat liver surface Amount in diffusion cell Mw dependency 5-FU 50 r2 = 0.95 Papp (µm/min) Amount (% of dose) BPB PSP ka = 3.3 X 10-3 min-1 FD-4 BSP FD-10 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 FD-70 Time (min) FD-40 Kodama et al, Biol. Pharm. Bull., 31: 1049, 2008
Liver concentration of PSP at 30 min after application to liver surface (LSA) or i.v. administration in rats † ** ■:Site 1 ■:Site 2 ■:Site 3 Site 2 Site 3 Site 1 Concentration (µg/g liver) Nishida et al, Pharm. Res., 22, 1331, 2005 Site 1: 投与部位(拡散セル直下) Site 2: 投与部位以外の外側左葉 Site 3: 非投与葉 * LSA 30 min i.v. 30 min *p < 0.01, **p < 0.001, vs. site 3 †p < 0.001, vs. site 2 FD-70の実体蛍光顕微鏡による観察 (拡散セル内に投与、2 hr後)
Liver concentration of 5-FU after LSA in rats bearing Walker 256 carcinoma Concentration (µg/g liver) Nishida et al, Pharm. Res., 22, 1331, 2005 Time (min)
Application to gene delivery 実体蛍光顕微鏡による観察 肝臓 皮膚 カテーテル(SURFLO®) 内径 0.60 mm 外径 0.85 mm 腹壁 薬液 Kawakami et al, BBRC, 294, 46, 2002 Hirayama et al, Pharm. Res., 20, 328, 2003 現在の検討項目(麓助教) 移行・発現メカニズム、テーラーメイド型
長崎大学薬学部HP http://www.ph.nagasaki-u.ac.jp/ 薬剤学研究室HP プレゼンファイルの ダウンロード 薬剤学研究室HP http://www.ph.nagasaki-u.ac.jp/lab/dds/index-j.html