400MHz帯WPR/RASSによる 梅雨前線帯の降水過程と温度場の観測

Slides:



Advertisements
Similar presentations
2004 年新潟県中越地震と スマトラ沖巨大地震の 震源で何が起こったのか? 八木勇治 (建築研究所・国際地震工学セン ター)
Advertisements

2012 年 7 月黒潮続流域集中観測 モデル感度実験 防災科学技術研究所 飯塚 聡 2012 年 12 月 17 日:東北大 学.
1 フェーズドアレイ気象レーダーに よる局地的大雨の3次元詳細観測 佐藤晋介( NICT )、牛尾知雄、嶋村重治、円尾晃一 (大 阪大)、水谷文彦、和田将一(東芝)、花土弘、川村誠治、 浦塚清峰、井口俊夫( NICT ) 気象学会2013年度春季大会@国立オリンピック記念青少年総合センター 2013.
1 フェーズドアレイ気象レーダの データ利用技術の高度化 佐藤晋介、花土弘、川村誠治、村田健史( NICT )、治 達人、溝渕智子、遠藤輝( ( 株 ) セック)、牛尾知雄、嶋 村重治、 円尾晃一(大阪大)、水谷文彦(東芝)、井口俊夫 ( NICT ) 日本気象学会 2013 年度秋季大会 2013.
偏光ライダーとラジオゾンデに よる大気境界層に関する研究 交通電子機械工学専攻 99317 中島 大輔 平成12年度 修士論文発表会.
リモートセンシング工 学 2007 年 1 月 11 日 森広研 M1 本田慎也. 第 11 章 気象レーダーによる観 測 雲、雨、風など 気象災害 → 特に台風、集中豪雨、竜巻、 ウインドシアー 大気の激しい撹乱現象をレーダーで 観測し防災に役立てることが重要.
降水セルから見た 甑島ラインの形成過 程. 諫早ライン 1997/07/11/16:00JST 2001/06/19/11:30JST 五島ライン 五島列島 甑島列島 長崎半島 甑島ライン 2002/07/01/12:20JST 長さ:約 80km 長さ : 約 70km 長さ : 約 150km.
オンセットアークの構造化と 背景電場の変化
傾圧不安定の直感的理解(3) 地上低気圧の真上で上昇流、 高気圧の真上で下降流になる理由
レーダー観測データの多くは、ネットワーク上でアーカイブ/公開されていない 高速スキャンを実現するフェーズドアレイレーダーのアンテナ部外観
Optical Particle Counterによる
富士山笠雲の発生時における大気成層の季節的特徴
400MHz帯WPR/RASSによる風速と気温 プロファイルの定常観測の現状と課題
島田照久(1) 沢田雅洋(2) 余偉明(2) 川村宏(1)
熱帯太平洋における季節内スケールの 赤道波動特性の解析 5AOOM007 萩原 右理 指導  轡田 邦夫 教授.
シーロメーターによる 海洋上低層雲、混合層の観測
冨川喜弘 (国立極地研究所・トロント大学)
北部を中心とした 関東平野の夏季の気温分布特性
400 MHz帯ウィンドプロファイラ ・RASS観測による亜熱帯域温度微細 構造の観測
成層圏突然昇温の 再現実験に向けて 佐伯 拓郎 神戸大学 理学部 地球惑星科学科 4 回生 地球および惑星大気科学研究室.
ジェット気流が延々と吹き続けている理由を理解する
GPS3点観測によるF領域 イレギュラリティのドリフト速度の測定
ステップガーデンを有する建物と その周辺市街地の熱環境実測
気象庁極座標レーダーデータの活用方法 -沖縄糸数レーダーとCOBRAのdual-Doppler観測-
*大気の鉛直構造 *太陽放射の季節・緯度変化 *放射エネルギー収支・輸送 *地球の平均的大気循環
400MHz帯WPR/RASSによる 冬季沖縄の大気境界層の観測
いまさら何ができるのか?何をやらねばならないのか?
2011年7月27日(水) RISHデータ解析講習 担当:新堀淳樹(京大RISH)
CMIP5マルチ気候モデルにおける ヤマセに関連する大規模大気循環の 再現性と将来変化(その2)
通信情報システム専攻 津田研究室 M1 佐藤陽介
南西諸島で梅雨期に観測されたセル群列の構造と形成過程
東京商船大学における 地上気象データの解析
1km格子で再現された2003年・2004年7月の気温場 気温場 降水分布の比較 沢田雅洋 岩崎俊樹 (東北大学) Miyagi Pref.
大気レーダーのアダプティブクラッタ 抑圧法の開発
夏季における首都圏の ヒートアイランドの実態について
関東平野スケールでみた 夏季夜間の冷気生成域の分布   山内 恵太.
バングラデシュにおける対流活動と局地風に関する研究
沖縄偏波降雨レーダー (COBRA)で観測された 晴天境界層エコーと積雲対流
F. Lascaux, E. Masciadri, and S. Hagelin MNRAS, 411, 693 (2011)
YT2003 論文紹介 荻原弘尭.
雲の発生 < occurrence  of  clouds >  吉田 真帆 .
長崎半島周辺における 停滞性降雨帯(諫早ライン)の 構造と発達過程に関する研究
トンネル栽培における 水消費メカニズムの解明
沖縄偏波降雨レーダー(COBRA)で観測 された台風0418号の風速場の特徴
レーザーシーロメーターによる 大気境界層エアロゾル及び 低層雲の動態に関する研究
バングラデシュ北東部における夜間の対流活動極大と風の日変化
400MHz帯WPR/RASSによる風速と気温 プロファイルの定常観測の現状と課題
Johnson et al., 1999 (Journal of Climate)
下降流(Downflow)の観測と磁気リコネクション
ヤマセ時に津軽海峡で発生する強風 島田照久(1) 川村宏(1) 沢田雅洋(2) 余偉明(2)
梅雨前線に伴う沖縄島を通過した 線状降水システムの構造の変化
CMIP3 マルチモデルにおける熱帯海洋上の非断熱加熱の鉛直構造 廣田渚郎1、高薮縁12 (1東大気候システム、2RIGC/JAMSTEC)
学部生対象 地球水循環研究センター(一部)説明会 趣旨説明
2015 年 5 月下旬のインドの熱波について 報 道 発 表 資 料 平成 27 年 6 月 2 日 気 象 庁
2015 年5 月下旬のインドの熱波について 報道発表資料平成27 年6 月2 日気 象 庁
竜巻状渦を伴う準定常的なスーパーセルの再現に成功
佐藤晋介(NICT)、古本淳一(京大生存研) 科研費研究 「局地豪雨予測のための先端的データ同化と雲解像アンサンブル手法に関する研究」
南アジアの大気災害とMM5 寺尾 徹(大阪学院大学).
ラジオゾンデで観測された 千島列島周辺の 激しいSST勾配が駆動する大気循環
2006 年 11 月 24 日 構造形成学特論Ⅱ (核形成ゼミ) 小高正嗣
北極振動の増幅と転調は 何故20世紀末に生じたか? Why was Arctic Oscillation amplified and Modulated at the end of the 20th century? 地球環境気候学研究室 鈴木 はるか 513M228 立花 義裕, 山崎 孝治,
全球モデルにおける中緯度下層雲の鉛直構造の解析
将来気候における季節進行の変化予測 (偏西風の変化の観点から)
ヤマセ海域のSST変動と 海洋内部構造の関係 ー2011年の事例解析ー
400MHz帯ウィンドプロファイラとCOBRAで観測された台風0418号の鉛直構造
雲解像モデルCReSSを用いた ヤマセ時の低層雲の構造解析
スケールモデルを用いた建物群周りの        気温分布の検討 藤原 孝三 指導教員  成田 健一.
夏季日本における前線帯の変動と その天候への影響
地上分光観測による金星下層大気におけるH2Oの半球分布の導出
冨川喜弘 (国立極地研究所・トロント大学)
Presentation transcript:

400MHz帯WPR/RASSによる 梅雨前線帯の降水過程と温度場の観測 佐藤晋介(NICT)、古本淳一(京大生存研)、永井清二、川村誠治、花土弘、中川勝広、村山泰啓(NICT)、津田敏隆(京大生存研) 気象学会2009年度秋季大会@アクロス福岡 2009年11月25日

はじめに ・ 沖縄本島北部のNICT大宜味において400MHz帯WPR/RASSによる 仮温度プロファイルの通年観測(日中7~20JST)を実施中(2008/2~) ・ 晴天時(非降水時)の大気境界層の発達過程や熱力学的構造の研究 には、連続観測の威力を発揮(佐藤ほか:2008秋C101、2009春C205) ・ 降雨時のWPR/RASS解析は夏季の孤立積雲の解析事例(三上ほか:2008秋B160) 晴天時の夏季対流境界層の発達(2008年6月20日) 400MHz帯WPRは乱流(風)と降雨の同時観測が可能であるが、降雨時のWPR/RASS 観測の有効性は十分に示されていない 本研究では、梅雨期の層状性降雨の事例解析を行い、降水過程や降水時の温度場について調べることを目的とする HEIGHT (km) 冬季高気圧下における逆転層の強度変化(2009年2月10日) HEIGHT (km)

400WPR/RASS観測シーケンス [1] spano13 1.33s, 4-bit PC, 75-range bin (7.5 km) ⇒ 高分解能の風速 (r =100 m) [2] spano20 2.0s, 8-bit PC, 120-range bin (18 km) ⇒ 高感度の風速 (~18 km) [3] rasss13 1.33s, single pulse, 70-range bin (7 km) ⇒ 仮温度 (r =100m) ・ 各ビームの観測平均時間は約16秒 ⇒ 16秒毎に観測データが得られる訳ではない ・ 5ビーム(天頂・北・南・東・西)で約81秒 ・ [1][2][3]合わせて 平均243.7秒 = 4分04秒 真上 2.62 sec (160s x 16384 pulse: coherent integ.) 東 南 真上 西 北 北 南 東 西 ~81 sec 通常収録される L1データ (ドップラースペクトル) ※ 80秒は雨観測には長すぎると思われる。 2.6秒毎のデータ収集も可能だが、その後の自動処理が困難。

400MHz帯 WPRでは乱流と降雨が同時に観測可能 RASS観測と降雨時の問題 RASS (Radio Acoustic Sounding System) RASS SPANO13 RASSエコー 乱流 エコー 降雨 エコー 400MHz帯 WPRでは乱流と降雨が同時に観測可能 高度3.5kmまでのRASS解析が可能 観測される5方向のドップラー速度 Vz = Cs + w ---(真上) Vn = Cs + v*sinθ + w*cosθ ---(北向き) Vs = Cs - v*sinθ + w*cosθ ---(南向き) Ve = Cs + u*sinθ + w*cosθ ---(東向き) Vw = Cs - u*sinθ + w*cosθ ---(西向き ビーム) Cs = 20.047*√Tv θ=10.547° (Cs:音速、Tv:仮温度、u,v,w:風速3成分) ★音波面(RASSエコー)は風速に流されるので 乱流エコーが分離できないと解析が困難 (1 m/sの違いが約1.7 Kの誤差になる) 乱流エコーと降雨エコーが分離できない RASSエコー(Peak)が検出できない

解析事例 2009年6月15日、16~20JST ★ ★ ★ 16JST 17JST ★ ★ ★ 18JST 19JST 20JST

地上気象観測 Rain fall rate (mm/hr)

DSD measured with Disdrometer 降雨スペクトルの時間変化 DSD measured with Disdrometer MRR-2 (Micro Rain Radar: 24.2 GHz) 18:26:00JST 18:27:00JST 18:28:00JST 18:29:00JST 18:30:00JST 18:31:00JST 8 7 6 5.5 5 8.5 7.5 m/s 18:32:00JST 18:33:00JST 18:34:00JST 18:35:00JST 18:36:00JST 18:37:00JST

COBRA(EL=1.4)+WPR/RASS 1919JST 1931JST 1943JST 1955JST 降雨 エコー 乱流エコー RASSエコー 乱流エコー 降雨 エコー

時間・高度断面 ← TIME (JST) HEIGHT(km) Vertical Vel (w) Tv dB m/s C 仮温度: 降水エコー: 顕著な融解層(B.B)の下に強いエコー 上昇流: 降雨時は降雨が弱い場所、高度1.5~2 kmより上空 仮温度: ・下層は高温・多湿 (cold poolはなし) ・降雨域では高度1 kmに高温 ・ 19:30以降、高度2.5 km に加熱域

風速と仮温度の時間変化 LLJ ← TIME (JST) Wind Speed (u+v) Vertical Vel (w) Tv 28 min averaged Tv Profiles m/s m/s HEIGHT(km) Wind Speed (u+v) LLJ Vertical Vel (w) HEIGHT(km) Tv Temperature (C) ← TIME (JST)

まとめ 400MHz帯WPR/RASS観測データを用いて、梅雨前線にともなう層状性降雨の生成過程と温度構造について調べた。 ● 400WPR(+MRR)による降水プロファイルの連続観測によると、 15分以上続く一雨の中で、3~5分毎に雨の塊りが落下し、それぞれの降り始めには大粒径の降雨粒子が卓越し、時間とともに 粒径が小さくなる。 ⇒ 降雨観測にはWPR観測モードの再考が必要 ● 層状性降雨域では、0.5~1 m/s程度の上昇流が高度1~1.5 km より上層に見られ、降雨が弱い領域で顕著であった。 ⇒ 高度1~1.5 kmに存在するLLJとの関係は? ● RASSで観測した仮温度プロファイルによると、降雨にともない高度1 km付近に加熱域が見られ、下層から強い上昇流が観測された時には高度2.5~3 kmに4 K程度の加熱が観測された。 ⇒ 下層の加熱は下降流による断熱加熱、上層は潜熱放出と考えられる

BACKUP

降雨スペクトルの時間変化 (その1)

降雨スペクトルの時間変化 (その2)

WPR Doppler spectra (spano13)

RASS Doppler spectra (rasss13)

COBRA (PPI EL=1.4) 1837JST 1843JST 1849JST 1855JST 1901JST 1907JST

COBRA (PPI EL=1.4) 1918JST 1930JST 1942JST 1954JST

時間・高度断面 (zenith) 乱流エコー: ・高度2.5~2 kmにピーク 降水エコー: ・若干、上空ほど東に傾く dB 乱流エコー: ・高度2.5~2 kmにピーク 降水エコー: ・若干、上空ほど東に傾く ・顕著な融解層(B.B)の下に 強いエコー 上昇流: ・高度1.5~2 kmより上空 ・降雨が弱い場所で顕著 ・19:51の下層に2 m/s近い 上昇流 仮温度: ・下層は高温・多湿 (cold poolはなし) ・強い降雨域の1.5 km以下 の下層で高温 (高度1 km付近に逆転層) ・ 19:30以降、高度2.5~3 km に加熱域(逆転層) m/s HEIGHT (km) C ←TIME (JST)

地上気象の時間変化(6月15日)