Multi-MaxSATを拡張した Weighted Partial Max-SAT Solver

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Multi-MaxSATを拡張した Weighted Partial Max-SAT Solver 2013/07/26 第3回CSPSAT2研究会 Multi-MaxSATを拡張した Weighted Partial Max-SAT Solver 神戸大学大学院 海事科学研究科の花田が発表します。 神戸大学大学院 海事科学研究科 ○花田 研太 平山 勝敏

目次 研究の背景と目的 充足可能性判定問題(SAT問題) 最大充足化問題(Max-SAT問題) Multi-MaxSAT 実験 既知の問題 まとめと今後の課題 目次はこのようになっております。

目次 研究の背景と目的 充足可能性判定問題(SAT問題) 最大充足化問題(Max-SAT問題) Multi-MaxSAT 実験 既知の問題 まとめと今後の課題 最初に、研究の背景です。

これらの問題に対処するために性能の良いソルバーの開発が必須 研究の背景と目的 Max-SAT問題は様々な実用問題に応用されている スケジューリング VLSI設計 システム生物学 癌の治療計画 Max-SATは、様々な実用的な問題に応用されています。 例えば、スケジューリング問題、VLSI設計、システム生物学やがんの治療計画があげられます。 しかし、これらの問題は実際に解こうとすると問題例が大規模になる傾向にあります。 これらの問題に対処するため、性能の良い効率的なソルバーが求められています。 これらの問題に対処するために性能の良いソルバーの開発が必須

研究の背景と目的 Multi-MaxSATというソルバーに注目 目的関数値 本研究では、Multi-MaxSATという重み付きMax-SAT問題の解法に注目します。 Multi-MaxSATは、内部に下界値を導出するアルゴリズムを備えています。 このアルゴリズムは重み付きMax-SAT問題だけでなく自然に重み付き部分Max-SAT問題に適用することができます。 最適値 下界値 必ず最適値以下であると保証された値

研究の背景と目的 下界値の重要性 本研究の目的 分枝限定法ベースのソルバーでは,限定操作において下界値がとても重要 SATベースで下界値から探索するソルバーでは,良い初期下界値があれば探索空間を削減できる 本研究の目的 Multi-MaxSATを用いて重み付き部分Max-SAT問題に対するより良い下界値を求める Max-SAT問題は最小化問題として定式化されるので、ここでの下界値を与えるモデルは実行不能解ということになります。 しかし、下界値は様々な場面で重要な役割を果たします。 まず、分枝限定法ベースの厳密解法では、限定操作において下界値が重要となります。 良い下界値を用いればそれだけ効率的な探索を行うことができ、ソルバーの性能を向上させることができます。 また、SATベースで下界値から探索するソルバーにおいても下界値は重要です。 通常、SATベースのソルバーでは初期の下界値は0を用いますが、それよりも良い下界値がわかっていれば、探索空間を削減できます。 従って、本研究ではMulti-MaxSATのアルゴリズムを用いて重み付き部分Max-SAT問題に対するより良い下界値を求めることを目的とします。

目次 研究の背景と目的 充足可能性判定問題(SAT問題) 最大充足化問題(Max-SAT問題) Multi-MaxSAT 実験 既知の問題 まとめと今後の課題 次に、充足可能性判定問題について説明します。

充足可能性判定問題(SAT問題) 命題論理式 節の連言で表現するCNFを用いる 論理変数: リテラル: 節: 命題論理式 φ : (真か偽で表された論理変数) 節: (リテラルの選言) SATでは、命題論理式を扱います。 命題論理式には様々な表現方法がありますが、SATではCNFを扱います。 CNFは、リテラルの選言(OR)で表された節の連言(AND)で表現されます。 命題論理式 φ : 単位節 単位節 節 節 連言標準形式(CNF: Conjunctive Normal Form)

充足可能性判定問題(SAT問題) SAT問題 (Satisfiability Problem) CNFの命題論理式を真とするような論理変数の割当てが存在するかどうかを決定する問題 真偽値表 論理変数 節 命題論理式 𝒙 𝟏 𝒙 𝟐 ¬𝒙 𝟏 𝒙 𝟏 ∨ ¬𝒙 𝟐 𝒙 𝟏 ∨ 𝒙 𝟐 𝝋 False True SATは、命題論理式φが真となるような真偽値の割当てが存在するかどうかを判定する決定問題です。 (例題を説明) この例では、φを真とするような論理変数の割当ては存在しないので、充足不能(UNSAT)ということになります。 φ を真とするような論理変数の割当ては存在しない → 充足不可能(UNSAT)

目次 研究の背景と目的 充足可能性判定問題(SAT問題) 最大充足化問題(Max-SAT問題) Multi-MaxSAT 実験 既知の問題 まとめと今後の課題 次に、SATの拡張である最大充足化問題について説明します。

必ず満たさなければならない(重みが ∞ )の節をハード節,それ以外をソフト節と呼ぶ 最大充足化問題(Max-SAT問題) 重み付き部分Max-SAT問題 (Weighted Partial Maximum SAT Problem) 偽の節から発生する重みの総和を最小化する問題 (節,重み)→ 真偽値と対応する重み 論理変数 節 命題論理式 𝒙 𝟏 𝒙 𝟐 ¬𝒙 𝟏 𝒙 𝟏 ∨ ¬𝒙 𝟐 𝒙 𝟏 ∨ 𝒙 𝟐 𝝋 False 2 ∞ True 4 6 重み付きMax-SATは、偽の節から発生する重みの総和を最小化する問題です。 全ての重みが1の場合を特にMax-SAT問題と呼びます。 (例を説明する) この例では、最小の重みの総和が3であることが表から分かります。 必ず満たさなければならない(重みが ∞ )の節をハード節,それ以外をソフト節と呼ぶ

目次 研究の背景 充足可能性判定問題(SAT問題) 最大充足化問題(Max-SAT問題) Multi-MaxSAT 実験 既知の問題 まとめと今後の課題 次に、Multi-MaxSATについて説明します。

Multi-MaxSAT 特徴 0-1整数計画問題からのアプローチ 節集合を分割して解く(ラグランジュ分解) 並列化が可能(ただし,局所同期が必要) 原問題に対する下界値を与える Multi-MaxSATは、重み付きMax-SATに対するヒューリスティック(発見的)解法の1つです。 他のMax-SATソルバーと違い、0-1整数計画問題からのアプローチであり、節集合を分割して解くラグランジュ分解というテクニックが用いられています。 また、先ほども述べたように、Multi-MaxSATは最適値に対する下界値を与えるという特徴を持っています。

Multi-MaxSAT 0-1整数計画問題による定式化 True → 1, False → 0に対応付ける 正のリテラル 負のリテラル ソフト節 ハード節

Multi-MaxSAT 節集合分割 原問題を複数の部分問題に分割する →節を k (2 ≤ k ≤ 4) 分割する k = 4の場合 部分問題1 部分問題2 節1 節2 節1 節2 Multi-MaxSATは、原問題を複数の部分問題に分割します。 ここでは、先ほどの節数4の例題を4分割する例で説明していきます。 節3 節4 節3 節4 原問題 部分問題3 部分問題4 k = 4の場合

Multi-MaxSAT 0-1整数計画問題による定式化 部分問題は固有の決定変数を用いる 決定変数: ソフト節 (部分問題 s の論理変数 i が真なら1,偽なら0) (節 i が真なら1,偽なら0) まず、重み付きMax-SATを0-1整数計画問題として定式化するとこのようになります。 x^s_i は、部分問題 s の論理変数 i が真なら1、偽なら0とする決定変数、y_j は、節 i が真なら1,偽なら0とする決定変数です。 1つ1つの節は固有の決定変数を用いているので、節間で同じ論理変数を用いている場合は一致させなければなりません。 この制約を一致制約と呼びます。 ソフト節 部分問題の変数の値を一致させる (一致制約) ハード節

Multi-MaxSAT 一致制約 部分問題間に一致制約のネットワークが形成される 部分問題1(節1) 部分問題2(節2) 図示するとこのようになります。 黄色の線が x_1 に関する一致制約、青色の線が x_2 に関する一致制約を表しています。 一致制約があるので、部分問題が独立して意思決定をすることができないことがわかると思います。 逆に、この一致制約を取り除いてしまえば、部分問題は独立に意思決定ができることになります。 部分問題3(節3) 部分問題4(節4) x1に関する一致制約 x2に関する一致制約

Multi-MaxSAT ラグランジュ緩和 取り除いた制約式を違反すればペナルティコスト(ラグランジュ乗数)がかかるようにして,下界値を良くする 原問題 緩和問題 ラグランジュ緩和問題 目的関数 目的関数 目的関数 ペナルティ 制約式を単純に取り除くと、原問題に対する下界値を得ることができます。 しかし、このように取り除いた制約式が違反すればペナルティコストがかかるようにすれば、より良い下界値を得られることがわかっています。 この方法をラグランジュ緩和法と呼び、ペナルティコストのことをラグランジュ乗数と呼びます。 制約式 制約式 制約式 制約式 原問題に対する 下界値を得られる 原問題に対する より良い下界値を得られる

Multi-MaxSAT ラグランジュ緩和 一致制約をラグランジュ緩和 ペナルティ項 部分問題 s, t 間の一致制約に対する 一致制約をラグランジュ緩和するとこうなります。 一致制約が違反すればペナルティコストμがかかることがわかると思います。 部分問題 s, t 間の一致制約に対する ラグランジュ乗数 ラグランジュ乗数ベクトル ベクトルのサイズ d = 6

Multi-MaxSAT ラグランジュ分解 部分問題毎に分解

Multi-MaxSAT ラグランジュ分解 ハード節しか持っていない部分問題も,重み付き部分Max-SAT問題に帰着する

Multi-MaxSAT ラグランジュ分解 一致制約 → ラグランジュ乗数のネットワーク 部分問題1(節1) 部分問題2(節2) ラグランジュ緩和後を図示するとこのようになります。 先ほどまでは一致制約のネットワークだったのが、ラグランジュ乗数のネットワークに変わったことが分かります。 これにより部分問題は独立して意思決定ができるようになります。 このようにするメリットは2つ考えられます。 1つは、部分問題に分解することによって、原問題よりも小さい問題を解けばいいので、求解時間が短くなることが期待できます。 もう1つは、μの値さえ決定してしまえば部分問題は独立して意思決定できるので、並列/分散化が可能になるということです。 つまり、並列化することによりさらに求解時間を短縮できます。 部分問題3(節3) 部分問題4(節4) x1に関するラグランジュ乗数 x2に関するラグランジュ乗数

Multi-MaxSAT ラグランジュ双対問題 原問題に対する下界値は,ラグランジュ乗数ベクトル μ によって値が変わる 最も良い下界値を得る問題をラグランジュ双対問題と呼ぶ ラグランジュ乗数μの値によって下界値は変わります。 従って、どのようなμが最も良い下界値になるかは重要な問題です。 この問題をラグランジュ双対問題と呼びます。 :ラグランジュ双対問題の最適解

Multi-MaxSAT 下界値を導出するためのアルゴリズム ラグランジュ双対問題の最適解 μ* を予測(予言)する方法を慣例的にオラクル(預言者)と呼ぶ 重み付きMax-SAT問題のソルバー 入力 出力 ラグランジュ緩和問題を解くシステム オラクルシステムの解 μ ラグランジュ緩和問題の解 x 1周することを1ラウンドと呼ぶ 出力 入力 オラクルシステム バンドル法 最適解が求まるまで,もしくは終了条件を満たすまで繰り返す

Multi-MaxSAT 節集合の分割方法 節を頂点,変数をハイパー辺とみなし,ハイパーグラフ k 分割問題を解く 部分問題1 部分問題2 :節 j の頂点 :論理変数 i のハイパー辺

Multi-MaxSAT 節集合の分割方法 節を頂点,変数をハイパー辺とみなし,ハイパーグラフ k 分割問題を解く :節 j の頂点 一致制約 部分問題1 部分問題2

Multi-MaxSAT 参考:ハイパーグラフ k 分割問題 k は所与 k = 2, 3 の場合,多項式時間で解けることがわかっている k が変数の場合をハイパーグラフ分割問題と言い、これはNP困難であることがわかっています。 k が所与の場合をハイパーグラフ k 分割問題と言います。 kが2か3の場合、問題の入力サイズの多項式時間で解けることがわかっています。 kが4以上の場合、多項式時間で解けるかどうかは(2010年現在ですが)まだわかっていません。 ただし、ハイパーグラフが l 一様、すなわち、各辺の濃度が l であるようなものは多項式時間で解けることがわかっています。 福永 拓郎: 全域木詰め込みに基づいたハイパーグラフ分割, 電子情報通信学会技術研究報告. COMP, コンピュテーション, 110(12), 55--62, 2010

目次 研究の背景と目的 充足可能性判定問題(SAT問題) 最大充足化問題(Max-SAT問題) Multi-MaxSAT 実験 既知の問題 まとめと今後の課題

実験 下界値を導出する既存手法であるMax-SAT ResolutionとMulti-MaxSATを比較 分割数: 問題例:Max-SAT Evaluation 2012 Weighted Partial Max-SAT問題 Random部門 119問 (Max-2SAT, Max-3SAT) Crafted部門 170問 (auc-path, auc-scheduling) 評価指標 下界値 / 最適値

実験 実験環境 CPU : Core i7 2600 (3.4GHz, 4 cores, 8 threads) Memory : 8GB OS : Ubuntu 11.10 (64bit) 言語 : Java 1.6.0_27 部分問題を解くソルバー : akmaxsat Max-SAT Evaluation 2012 WPMax-SAT Random Winner QPソルバー : Cplex 12.4 Time out : 5 min (300 sec)

実験 実験結果 Weighted Partial Max-SAT : Random Max-2SAT

実験 実験結果 Weighted Partial Max-SAT : Random Max-3SAT

実験 実験結果 Weighted Partial Max-SAT : Crafted (auc-path)

実験 実験結果 Weighted Partial Max-SAT : Crafted (auc-scheduling)

目次 研究の背景と目的 充足可能性判定問題(SAT問題) 最大充足化問題(Max-SAT問題) Multi-MaxSAT 実験 既知の問題 まとめと今後の課題

既知の問題 計算コスト 解決策(案) 部分問題を解くのに厳密解法を用いるため,非常に計算コストが高い 部分問題ごとに(Max-SAT ResolutionやSATベースで下界値から探索するソルバーを用いて)下界値を導出し,全ての部分問題の下界値を足せば,全体の問題の下界値になるので計算コストが抑えられる

既知の問題 Industrial部門の問題例 解決策(案) 内部ソルバーにIndustrial部門の問題例に弱いakmaxsatを用いたため,ほとんどタイムアウトしてしまった 解決策(案) Industrial部門の問題例に強いソルバー(pwbo等)を用いる マルチスレッドにしてポートフォリオ型に拡張する

既知の問題 大規模な問題例の対処 解決策(案) 変数が極めて多い問題例は,分割すると大量のラグランジュ乗数を生み出してしまう その結果,部分問題に大量のソフト単位節が発生し,求解速度の低下を招いていると考えられる 解決策(案) 多少下界値が悪くなることを覚悟で,ラグランジュ乗数を間引く

目次 研究の背景と目的 充足可能性判定問題(SAT問題) 最大充足化問題(Max-SAT問題) Multi-MaxSAT 実験 既知の問題 まとめと今後の課題

まとめ Multi-MaxSATの下界値を導出するアルゴリズムを重み付き部分Max-SAT問題に適用し,実験的に評価した その結果,2分割においては既存手法であるMax-SAT Resolutionよりも良い下界値を得ることができた

今後の課題 既知の問題に対処する 下界値を導出するSATベースの厳密解法と比較を行う 最適値がUNKNOWNな問題例に対して良い下界を導出する Multi-MaxSATソルバーを組み込んだ厳密解法を実装し,実験的に評価する 分枝限定法ベース SATベース