LHC-ATLAS実験SCTシリコン 飛跡検出器のコミッショニング

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LHC-ATLAS実験SCTシリコン 飛跡検出器のコミッショニング 高エネルギー物理学研究室 41419130 岡本 敦志 2009/2/24  

内容 研究の目的 LHC加速器とATLAS検出器 SCT飛跡検出器 解析結果 まとめ 動作原理 デジタイゼーション ホール角 クラスターサイズ 解析結果 まとめ 2009/2/24  

1.研究の目的 本研究の目的 2008年9月、LHC-ATLAS検出器が地下に移動して初めて磁場(2T)をかけた状態で稼働。   宇宙線コミッショニングデータを解析。 宇宙線トラック pixel SCT TRT 本研究の目的 内部飛跡検出器のイベントディスプレイ SCT(SemiConductor Tracker)半導体飛跡検出器の   1.入射角と検出効率の関係を調べる。   2.クラスターサイズをシミュレーションと比較する。 3.磁場のかかった状態でのホール角を求める。    →デジタイゼーション・パラメータの評価を行う。 2009/2/24  

2.LHC(Large Hadron Collider)加速器 重心系のエネルギーが14TeVの陽子・陽子衝突型加速器。 2008年9月10日にビーム入射が開始された。 ヒッグス粒子、超対称性粒子、余剰次元の発見が主要な目的。 2009/2/24  

ATLAS検出器 SCTバレル 2Tソレノイド磁場 4枚のシリコンから成る 2112台のSCT バレルモジュール 全長 43m 高さ 22m 質量   7000t 内部飛跡検出器 SCTバレル 2Tソレノイド磁場 4枚のシリコンから成る 2112台のSCT バレルモジュール 2009/2/24  

3 SCT飛跡検出器 3.1動作原理 断面図 厚さ285μm 荷電粒子がSCTモジュールに垂直に通過したとき ストリップ間隔  80μm 厚さ285μm 信号読み出しまでの流れ ①逆バイアス電圧(通常150V)をシリコン半導体にかけることによって空乏層を作る。 ②荷電粒子が通過した時に電子正孔対を作る(80e-h/μm)。 ③p型半導体(ストリップ電極)に電荷が収集され、アンプを通った後デジタル信号に変換される。 ストリップ電極 ③ ① ② 荷電粒子がSCTモジュールに垂直に通過したとき 1μmあたり80個の電子正孔対が生成  → 285μmで22600個(3.6fC)     ・通常  閾値 1fC、バイアス電圧 150V で稼働。 ・放射線損傷時には バイアス電圧450Vにする必要がある。  2009/2/24  

3.2 デジタイゼーション シミュレーションの流れ シミュレーションで本実験を正確に再現するために・・・ イベント生成 1.電荷収集 検出器シミュレーション デジタイゼーション シミュレーションの流れ イベント再構成 デジタイゼーションで 代表する設定されているパラメータ 1.電荷収集   センサー温度     -7℃   逆バイアス電圧        150V   全空乏化電圧      70V   ホール角  4.02°(-7℃)   電荷収集速度        約21ns   2.信号読み出し  クロストークによる電荷のロス 10%  ABCDピーキングタイム      21ns デジタル信号 これらのパラメータを実データと比較して、評価する。 2009/2/24  

3.3 ホール角 θ ホール角 磁場、電圧、温度に依存 θL 磁場があるときの電荷収集 入射粒子 Hallファクター ドリフトモビリティー 2T、273K 450V 150V 2T、150V 系統誤差5% ホール角  (°)  ホール角  (°)  2009/2/24   電圧(V) 温度 (K)

3.4 クラスターサイズ 宇宙線 d 宇宙線 SCTバレルの断面図 θL b a θ d :クラスターサイズ θL :ホール角 θ :入射角 θ :入射角 a : 空乏層 b :クラスターサイズの最小値 さまざまな入射角とそれに付随したクラスターサイズを調べる。 クラスターサイズ : 連続してヒットしたストリップの数 (磁場がかかっていないときθL=0) 2009/2/24  

4. 解析結果 4.1ホール角 赤 :実データ 青 :シミュレーション 赤 :実データ 青 :シミュレーション 入射角 (degree) 磁場なし 磁場あり(B=2T) 赤 :実データ 青 :シミュレーション   赤 :実データ 青 :シミュレーション   入射角 (degree) 入射角 (degree) 磁場ありではクラスターサイズの最小値が入射角0°からずれている。     →0°からのずれ  = ホール角  入射角40°付近から実データのほうがクラスターサイズが大きくなる。     →デジタイゼーション・パラメータによる違い。 2009/2/24  

ホール角フィット フィット関数 Real Data MC 入射角 (degree) 入射角 (degree) ホール角(degree) Average Cluster Size Average Cluster Size 入射角 (degree) 入射角 (degree) ホール角(degree) クラスターサイズの最小値 実データ(磁場あり) -3.70±0.10 1.13±0.01 実データ(磁場なし) 0.04±0.19 1.15±0.01 シミュレーション(磁場あり) -4.08±0.10 1.09±0.01 シミュレーション(磁場なし) 0.16±0.12 1.10±0.01 2009/2/24  

デジタイゼーションモデルとの比較 温度依存性 磁場依存性 ホール角 (degree) ホール角 (degree) 今回測定 1.56T CERN 2000 ホール角 (degree) 150V 系統誤差5% 1T KEK 1996 温度 (K) 磁場(Tesla) 273K、150Vに補正 磁場 電圧 温度 (センサー) ホール角 (測定値) (モデル) 実データ 2T 150V 4.6±1℃ -3.70±0.10° -3.71° シミュレーション -7℃ -4.08±0.10 -4.02° 2009/2/24  

4.2 クラスターサイズ エッジ ワイヤーボンディング 断面図 side1 side2 再構成されたトラック 1mm トラックに付随した クラスター ワイヤーボンディング 断面図 40mrad SCTモジュール Side1にトラックに付随したクラスターがあるときside2のトラックから1mm以内のクラスターを探す。 SCTモジュールのエッジ、ワイヤーボンディング付近の検出効率の悪い部分をカット(Fiducial カット)。 2009/2/24  

クラスターサイズ B=0T, 別サイド (1mm以内) B=2T, 別サイド (1mm以内) 赤:実データ 青:シミュレーション クラスターサイズ=0(非検出効率)は実データ、シミュレーションともに約1%、これはdead channel の数に相当する。 クラスターサイズは大きいところで実データの方が約1大きくなる。 2009/2/24  

非検出効率 入射角70°まで非検出効率一定(磁場なし1%以内、磁場あり2%以内) B=0T (別サイド 1mm以内) Real Real fiducial カット Sim Sim fiducial カット Real Real fiducial cut Sim Sim fiducial cut 入射角 (°) 入射角 (°) 入射角70°まで非検出効率一定(磁場なし1%以内、磁場あり2%以内) 2009/2/24  

5.まとめ LHCアトラス実験のSCT飛跡検出器の宇宙線コミッショニングを行った。 SCTデジタイゼーションパラメータの評価を行った。 ホール角 ホール角は磁場、電圧、温度に依存していることが観測された。 ホール角の測定結果とデジタイゼーションモデルによる計算結果は良く一致している。 クラスターサイズ 入射角40°以内ではクラスターサイズはよく一致している。 クラスターサイズの最小値は実データのほうが約0.05大きいが、その差は小さい。隣り合ったストリップ間の干渉効果によるものと考えられる。 入射角70°付近まで非検出効率はほぼ一定である(約1%)。 2009/2/24  

Back up 2009/2/24  

TCAD simulation Mathieu Benoit (LAL), Preliminary result. p-implant 2250 θL=4.15° 2807 4425 θL=4.5° θL=3.8° 5263 6600 θL=4.0° 7719 n-bulk θL=3.6° Uniform flat diode model Current model agrees with exact calculation within 5% (syst. err.). <60μm from p-implant complicated. Note E-profile change after irradiation. 2009/2/24  

RUN92160 B=2T RUN92057 B=0T Q) Are slope and sigma parameters reasonable ? A) expect a~1.7, σ=1-2° ? θL=4° MC B=2T MC B=0T 2009/2/24  

Hall (Lorentz) angle model ATL-INDET-2001-004 Valid for T>250K, E along <111> crystallographic direction Parametrization: C. Jacoboni et al., Solid-State Electronics 20 (1977) 77-89. T. Lari, ATL-INDET-2001-004 Implemented into SCT Digitization S.Gadomski, ATL-SOFT-2001-005 2009/2/24  

Bias voltage dependence ATL-INDET-2001-004 150V 450V T.Lari PhD thesis 150V 450V drift velocity saturation at high electric field → drop of "mobility” =v/E → drop of Lorentz angle 2009/2/24  

Temperature dependence T.Lari PhD thesis 2009/2/24  

Sensor Temperature Graham Beck Simulation at -25°C fluid temperature. Evaporation temperature was -9.61°C this year (Steve McMahon). Legend: The contours are 1 degree, from -21C to +3C  (maximum 24contours allowed by Abaqus). The full temperature range is -25C (fluid) to +4 (front of central ASICS). 2009/2/24  

Hall angle vs incidence angle Parabolic or Hyperbolic function did not fit data well (χ2/dof=2-4). Employ more elaborated function used for Pixel (T.Lari). Geometrical tangent function smeared with Gaussian. a is slope, b is minimum cluster size, empirical 1/cosθ. S. Montesano ID week, Nov. 27, 2008 or “b” term only instead of b/cosθ ? 2009/2/24  

Lorentz angle fitting bias Optimal (-7°C,150V) (4.6°C,150V) MC T=-7°C Cosmic data Sensor temperature T=4.6±1°C G.Beck Jan. 15, 2009 SCT Software Meeting Min+-|fit range| fitting Bias induced for large fitting range. Bias introduced with b/cosθ fitting. Min+-10 degree fitting with b only seems to be optimal. 2009/2/24  

Incidence Angle to phi wafer B = 0T B = 2T Red Real data Blue MC Incidence angle (degree) Incidence angle (degree) Q) Why distributions look asymmetric ? 2009/2/24  

2009/2/24  

θL θ 2009/2/24  

クラスターサイズ クラスターサイズは入射角に依存する。 クラスターサイズ: ストリップのヒットした数 電荷収集(磁場がない時) 入射粒子 クラスターサイズ: ストリップのヒットした数 電荷収集(磁場がない時) 入射粒子 角度をもって入射 入射角 θ ストリップ 80μm 電荷収集 285μm 入射角 0°の時、 クラスターサイズ 最小(1or2) 入射角が大きいとき  クラスターサイズ 大(>2) クラスターサイズは入射角に依存する。 2009/2/24  

5. 入射角の計算 宇宙線 ローカルな入射角 さまざまな入射角とそれに付随したクラスターサイズを調べる。 y y 入射粒子 x クラスター SCTモジュール さまざまな入射角とそれに付随したクラスターサイズを調べる。 x 2009/2/24  

4.2 クラスターサイズ ワイヤーボンディング エッジ side1 side2 再構成されたトラック 1mm トラックに付随した クラスター エッジ SCTモジュール Side1にトラックに付随したクラスターがあるときside2のトラックから1mm以内のクラスターを探す。 SCTモジュールのエッジ、ワイヤーボンディング付近の検出効率の悪い部分をカット(Fiducial カット)。 2009/2/24