産休・育休に伴う人員確保に ついての調査報告(第1報) (公社)神奈川県理学療法士会 ライフサポート部 ついての調査報告(第1報) (公社)神奈川県理学療法士会 ライフサポート部 寺尾詩子、萩原文子、大槻かおる、大島奈緒美、清川恵子 西山昌秀、杉山さおり、石田輝樹、熊切博美、相川浩一
背 景 ■就業継続しやすい職場環境についての検討 ●以前の調査では・・・ 「お互いさま」と思いあえる職場風土が重要 ●現場からの声は・・・ ■就業継続しやすい職場環境についての検討 ●以前の調査では・・・ 「お互いさま」と思いあえる職場風土が重要 ●現場からの声は・・・ 産休・育休に伴う人員確保が難しく、 現場の負担感が大きい、 運営が不安定 私達は、県士会の活動として、就業継続に関する調査や支援事業に取り組んでいます。その中で、就業継続に問題を抱えている理学療法士は、本会を休会、退会している場合も想定され、直接アプローチすることが難しいという現実に直面しています。そのため、就業継続しやすい環境について注目した検討が必要と考えています。以前の調査では、育児と仕事の両立がしやすいと回答した施設より、「お互いさま」であることを認識し、理解しあえる職場風土が、まずは重要であるという認識となりました。しかし、現場からは、頭では理解できても、実際には「産休・育休の取得に伴う人員確保に難渋し、現場の負担は大きすぎる」との声を、耳にします。その負担感や不安定さは、就業継続を困難にさせ、女性の雇用を躊躇するということにもつながりかねない状況です。
目 的 ●産休・育休取得に伴う人員確保についての 実態を把握すること ●就業継続がしやすい環境につながる対策の ヒントをつかむこと 実態を把握すること ●就業継続がしやすい環境につながる対策の ヒントをつかむこと そこで、今回は、産休・育休に伴う人員確保について、施設ごとに実態の把握をすること、 就業継続がしやすい環境につながる対策のヒントをつかむことを目的として調査を行いました。
方 法 ■対象者 ■調査方法 ■調査期間 本会会員の所属する732施設の理学療法士の代表者 郵送法にて実施 アンケートは選択肢による質問を28問と自由記載1問で マークシートにて集計 ■調査期間 方法は、本会会員の所属する732施設の理学療法士の代表者を対象に、アンケートを郵送し、昨年の7月~8月の1か月間で調査しました。 平成27年7月15日~8月15日の1か月間
●出産・育児に関する制度利用の実績(過去3年間) 休業取得者、復帰者、育児時間・時短勤務利用者、 ■調査項目 ●回答者の属性 性別、年齢、人事権の有無 ●出産・育児に関する制度利用の実績(過去3年間) 休業取得者、復帰者、育児時間・時短勤務利用者、 退職者・退職理由、制度利用に伴う現場の問題点 ●欠員状況 欠員の有無、理由、欠員時の対応方法 調査項目は、回答者の属性、出産・育児に関する制度利用の実績、欠員状況とその対応方法などについて、選択肢を用意しマークシートで回答してもらいました。 ■倫理的配慮 ●特定の施設、個人を特定できる項目はなくし個人情報の保護に努めた ●結果の公表に関する同意は、調査依頼文に公表を明記し、回答を得た 時点で同意を得たものと判断した
結 果① 回答者の属性 男性 女性 20 30歳代 40歳代 50歳~ ある 意見は伝えられる ない ■回収率:46.6%(339施設) 結 果① 回答者の属性 ■回収率:46.6%(339施設) ■回答者の属性 男性 女性 ●性別 20 歳代 ●年齢 30歳代 40歳代 50歳~ 結果です。アンケートは399施設より回答があり、回収率は46.6%でした。回答者の属性は、男性58%、女性42%、年齢は30歳代・40歳代がそれぞれが約40%で、20歳代は約8%でした。人事権については、「ある」が24.7%でした。 ●人事権 ある 意見は伝えられる ない
■出産・育児との両立に関する制度利用の「実績あり」の割合 全体では49.1% ●PT数別 ●施設種別 病院 (78/121) (10/38) クリニック (13/50) ( 8/38) 老健 (21/42) 通所リハ 福祉施設 (10/43) ( 6/24) (12/37) 訪問リハ ( 9/32) リハセンター 療育センター ( 6/15) (11/22) 行政 次に、産休・育休・育児時間などの制度利用の実績が過去3年間で「あり」と回答した施設について示します。実績ありと回答したのは、回答者全体の49.1%と、約半数の施設でありました。左側のグラフに、施設種別ごとに実績ありと回答した施設の割合を示します。黄色で示しました病院(65%)、老健(50%)、「複合」施設(65%)が半数を超えていました。一方で、クリニックや通所リハを含む福祉施設、訪問リハでは25%前後に留まっていました。右側のグラフは、所属する理学療法士の数によって制度利用の実績を示したもので、4名以下の施設は20%台にとどまっていましたが、5名以上の施設では50%以上の利用実績がありました。病院や複合施設は、所属PT数が多い施設が他の施設種別より多いという背景もあり、施設種別よりも、理学療法士が一定数以上ないと、制度があっても両立は厳しい傾向であることがわかりました。 ( 2/ 6) (48/77) その他 ( 6/13) (61/70) 複合 (20/31) (%) (%)
結果② 制度利用 (232) (92) (82) (53) (28) ●制度利用に際しての問題 (%) *カッコ内の数字は施設数 結果② 制度利用 ●制度利用に際しての問題 (232) (92) (82) (53) 次に、「出産・育児に関する制度の利用に際して問題となっていること」という質問に対しては、一番多かったのは「人員確保」との回答で、232施設(68.4%)で、人員確保が多くの施設にとって不安であることがわかります。その他には、周囲への対応、制度利用者への対応、制度の知識不足と続きました。 このことからも、就業継続をしやすい環境として、人員確保ができていることが、現状では重要な要素であることがわかります。 (28) (%) *カッコ内の数字は施設数
結果③ 欠員について あり (111) なし (228) ●欠員の有無 ●欠員理由(複数回答あり) もとから定員不足 (60) 産休・育休中 結果③ 欠員について *カッコ内の数字は施設数 ●欠員の有無 ●欠員理由(複数回答あり) あり (111) もとから定員不足 (60) なし (228) 産休・育休中 (46) 次に調査時点での欠員状況を示します。欠員ありと回答した施設が全体の1/3で、欠員の理由としては、複数回答で、もとから定員に満たないが60施設(54%)、ついで産休・育休取得中が46施設(41%)でした。今後、両立しやすい環境を考える中で、人員確保は重要な課題であると改めて認識しました。 またもともと定員に満たない状況に、産休・育休が重なっている施設も10施設(8%)ありました。 病気・ケガ(6) 研修中(3) その他(14)
結果③ 欠員について ●欠員時の対策(複数回答あり) (%) *カッコ内の数字は施設数 結果③ 欠員について ●欠員時の対策(複数回答あり) 欠員時の対策については、業務調整として、「欠員分を分担して負担する」が216施設(64%)と最も多く、代替者の求人、休業を事前に想定した配置にする、業務の縮小、独自のシステムがあるとの回答がありました。 (%) *カッコ内の数字は施設数
結果③ 欠員について ●求人先(複数回答あり) ●求人時の反応 *カッコ内の数字は施設数 (81) (105) (92) (91) (62) 結果③ 欠員について *カッコ内の数字は施設数 ●求人先(複数回答あり) (81) (105) (92) (91) (62) (50) (45) (%) ●求人時の反応 欠員時の対応について、求人についてまとめますと、求人はしないと回答した施設が81施設(20%)あり、求人をすると回答した施設の求人先は、ハローワーク、養成校、PTOTSTネットと続き、本会のホームページを利用すると回答したのは62施設(18%)に止まっていました。また、求人時の反応については、必要数確保できたと回答した施設は101施設(30%)で、求人に反応もなく、コストがかかる、上層部の理解がないなどで、求人をあきらめている施設も少なくないことがわかりました。
まとめ ■施設種別に関係なく、所属しているPT数が4名以下と 少ない施設では、子育てと仕事の両立のための制度の 取得実績は低かった 少ない施設では、子育てと仕事の両立のための制度の 取得実績は低かった ■欠員を抱えている施設は全体の1/3にあたり、 その半数近くは、産休・育休によるものであった まとめますと、施設種別より、所属している理学療法士数が4名以下と少ない場合には、制度の取得実績は低く、制度があっても利用して両立をするということは厳しいことが明確となっています。 また、欠員を抱えている施設は全体の3分の1にあたり、その半数近くは、産休・育休に伴うものでした。 今回の調査から、施設の規模によって状況は変わり、対策も違ってくると感じました。 施設の規模によって 人員確保に関する状況は変わり、対策も違ってくる
まとめ ■今後の新たな課題は、 ①具体的な対策などを情報交換できる 機会を設けること ②本会の地域組織体制の見直しやその利用 ①具体的な対策などを情報交換できる 機会を設けること ②本会の地域組織体制の見直しやその利用 ③本会の求人欄の工夫 具体的な対策方法を聞き出せるような調査はできておらず、今後の新たな活動としては、より具体的な対策を情報交換ができるような機会を設けることや、本会の地域組織体制の見直しやその利用、県士会の求人欄の工夫などの検討をしていきたいと考えています。