微粒子合成化学・講義 村松淳司 E-mail: mura@tagen.tohoku.ac.jp http://res.tagen.tohoku.ac.jp/mura/kogi/ E-mail: mura@tagen.tohoku.ac.jp 村松淳司.

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◎ 本章  化学ポテンシャルという概念の導入   ・部分モル量という種類の性質の一つ   ・混合物の物性を記述するために,化学ポテンシャルがどのように使われるか   基本原理        平衡では,ある化学種の化学ポテンシャルはどの相でも同じ ◎ 化学  互いに反応できるものも含めて,混合物を扱う.
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今後の予定 (日程変更あり!) 5日目 10月21日(木) 小テスト 4日目までの内容 小テスト答え合わせ 質問への回答・前回の復習
モル(mol)は、原子・分子の世界と 日常世界(daily life)をむすぶ秤(はかり)
近代化学の始まり ダルトンの原子論 ゲイリュサックの気体反応の法則 アボガドロの分子論 原子の実在証明.
これらの原稿は、原子物理学の講義を受講している
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相の安定性と相転移 ◎ 相図の特徴を熱力学的考察から説明 ◎ 以下の考察
FUT 原 道寛 学籍番号__ 氏名_______
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微粒子合成化学・講義 村松淳司 E-mail: mura@tagen.tohoku.ac.jp http://res.tagen.tohoku.ac.jp/mura/kogi/ E-mail: mura@tagen.tohoku.ac.jp 村松淳司

この講義目的 微粒子の合成に関する物理化学的知識を身につけること。 身の回りの表面科学・界面化学に関する現象を物理化学で考えること。 コロイドの分散凝集等の界面化学や、吸着・表面反応等触媒反応の知識を取得することを目的とする。

講義概要 微粒子合成研究にとって基盤知識となる、表面や界面における物理化学を講義する。 また、コロイド粒子の分散・凝集について、DLVO理論を元に考察する。一方、固体表面の物理現象、吸着、表面反応についても理解を深める。

目標 (1)主に水溶液からの微粒子生成機構に関する物理化学的知識を得ること (2)身の回りの表面科学・界面化学に関する現象が物理化学で説明できることを理解すること (3)ナノ粒子触媒の作用機構を理解すること (4)それらの現象を物理化学で説明できることを理解すること

講義の進め方 物理化学とはなんぞや 身の回りのコロイド現象から入ろう 微粒子とコロイドについて、物理化学をベースに考えよう

基礎知識

物理化学 physical chemistry 【1】物質の、物質的な、物質界の、自然の、自然界の、有形の、実際的な、実際の、天然の 【2】身体の、肉体の、身体的な、人的な 【3】相手の体を求めたがる、好色な 【4】物理学の、物理学上の、物理的な 【5】自然の法則による、自然科学の

物理化学とは 物質の動きをとらえる化学 平衡論と速度論の世界へ

平衡論と速度論 平衡論は、いわば、桃源郷ユートピアの世界の話である。この世界と今とのエネルギー差が、まさしく、ギブスの自由エネルギー変化なのである。平衡論は、エネルギー的に最も安定なところは、どこか、「ある条件下」で、規定しようとする学問である。理想と現実の間の、今、どこに位置しているか、それを数値解析するのが平衡論である。

平衡論と速度論 速度論は、桃源郷に如何にたどりつくか、というガンバリ度を表している。詳しくは、講義の後半で話していく。簡単にまとめると、 物理化学とは物質の動きを数式化し、理解すること。

平衡論と速度論 平衡論と速度論 平衡においては、正方向と逆方向の速度が等しい 平衡に達するまでの速度 不可逆過程と可逆過程

化学ポテンシャル 系全体のギブスの自由エネルギー変化に及ぼす、個々の成分のエネルギー変化の寄与分をさしている。式的に表すと、 G = f (T,P,V, n1, n2, n3 ...) で V一定で、全微分すると、 d G = (∂G/∂T) d T + (∂G/∂P) d P + Σ (∂G/∂ni) d ni

化学ポテンシャル T,P,njが一定の時の、(∂G/∂ni) = μ を 成分iの化学ポテンシャルという。 ある成分のガンバリ度を示している、と考えても良いだろう。

1モルの定義とは かつて1970年代までは、12Cが、0℃, 1 atmで12gあるとき、1 molという、とかが定義だったが、計測法の進歩とともに、電子の質量など不確定性要因が無視できなくなり、定義を変更する。 「0.012キログラムの炭素12の中に存在する原子の数と等しい数の要素粒子を含む系の物質量」 ちょっと前の定義は下 「0.012キログラムの炭素12の中に存在する原子の数と等しい数の要素粒子又は要素粒子の集合体(組成が明確にされたものに限る)で構成された系の物質量」

1モルの定義とは n(X)mol = N(X)/Na [X要素粒子、Nは数] 結局、原子が、Na(アボガドロ数)個集まったとき、1 mol原子などと呼ぶ」ということになっており、肝心のアボガドロ定数は、6.0221415 x 1023 個/ molである。化学と工業4月号から。 つまり、定義に入っている、アボガドロ数も経時変化する、という変な定義なのである。

pHの定義とは 􀂾ガラス電極法によるpH測定での拡張不確かさU(k =2) は、0.025 ∼0.030 􀂾Differential – potentiometric cell を用いた場合の拡張不確かさは∼0.004

活量とは 理想溶液と実際の溶液の架け橋として考えられた概念。 Activityを訳すときに、活量という名前をつけたが、本当は、活動度とか、活性度みたいな量で、単位は mol/L。 濃度と同じ単位だけど、濃度を補正したものではない。たとえば、1 mol/Lの塩酸のプロトンが100%の活動をすれば、1mol/Lの活量になるが、実際の溶液ではそうではない。80%の活動をしたとき、0.8 mol/Lの「活量」と呼ぶ。

コロイド化学への誘い

コロイドとは何か 理化学辞典にみるコロイド コロイド粒子自体は定義が難しく、分散状態にあるときのみを、コロイド状態、と定義できる 物質がふつうの光学顕微鏡では認められないが、原子あるいは低分子よりは大きい粒子として分散しているとき、コロイド状態にある、という。 コロイド粒子自体は定義が難しく、分散状態にあるときのみを、コロイド状態、と定義できる では、巨大分子が溶けているのと、何が違うのだろうか?

粒子径による粒子の分類 微粒子 コロイド分散系 超微粒子 ナノ粒子 光学顕微鏡 電子顕微鏡 100μm 1m 10cm 1cm 10μm ソフトボール 10cm 硬貨 微粒子 1cm パチンコ玉 10μm 光学顕微鏡 1mm 小麦粉 1μm サブミクロン粒子 コロイド分散系 100μm 10μm 花粉 1μm 100nm タバコの煙 電子顕微鏡 100nm ウィルス 超微粒子 10nm 10nm ナノ粒子 セロハン孔径 1nm 1Å 1nm クラスター

身の回りのコロイド 温泉

別府・地獄めぐり

別府・海地獄

青い熱湯 ~海地獄 1.温泉水 20 mlを遠心分離機にかける 2.上澄み液(固相のない)を保存 青い熱湯 ~海地獄 1.温泉水 20 mlを遠心分離機にかける 遠心分離 10,000 r.p.m. 30 min この条件で、コロイドはすべて沈んだ (この条件でシリカなら、20 nm程度のものまで沈む) 2.上澄み液(固相のない)を保存 3.沈んだ固体(白色)に2段蒸留水 20 mlを入れる 4.超音波分散

遠心分離後 の上澄み 海地獄

青色の正体は何か? 遠心分離により、透明になった 可能性1: シリカコロイドによる着色 可能性2: シリカコロイドに色の原因のイオンが吸着 色がつく原因のものは固相になった。 可能性1: シリカコロイドによる着色 可能性2: シリカコロイドに色の原因のイオンが吸着 可能性2は、遠心分離で得た固相の色が白色だったことから可能性が薄い。

遠心分離後 の上澄み 再分散後 海地獄 写真では見えにくいが、右はほぼ元の青白い色を呈している。

このシリカコロイドは小さいためにまるで溶液のように見えたわけ。 青色の正体=シリカコロイド このシリカコロイドは小さいためにまるで溶液のように見えたわけ。

そのシリカコロイドの     電子顕微鏡写真

シリカ微粒子 形は球形で、アモルファス(非晶質)であることがX線などの解析によってわかった。 なお、FT-IRで分析したところ、シリカ組成であることがわかった。 球形シリカ粒子は、高いアルカリ領域で加水分解により合成されるので、地下深部で高アルカリ、高温で生成したものと推測される。

シリカ=化学分析 20.0℃で pH 8.438 ICP Si濃度: 2.706 mmol/L これを H2SiO3(分子量=78.09958)の標記に変えると 211.3 mg/L

なぜ、青いのか? Rayleigh散乱の概念で説明可能 粒径が小さくなると短い波長、つまり青色は散乱しやすい。 数十nm程度以下のシリカによって青色を散乱→懸濁液は青くなる

鳴子温泉「すがわら」のコロイド

身の回りのコロイド 牛乳

牛乳

水 乳脂肪 タンパク質

タンパク質 牛乳には、とても良質なタンパク質が豊富に含まれています。なぜ良質なのか。その理由は体の中では合成されない必須アミノ酸を含む19種類のアミノ酸がバランスよく構成されているからです。 タンパク質は血や肉、骨や皮膚、髪の毛にいたるあらゆる細胞を作る大事な栄養素ですが、ホルモンの生産や免疫物質などにも関わっています。またタンパク質の一種であるクルタミン酸は、頭の働きをよくする物質を作りだします。牛乳のタンパク質の多くはカゼインと呼ばれるものですが、これを固めたものがチーズなのです。 牛乳普及協会から

脂質 牛乳の脂質は乳脂肪といわれます。小さな脂肪球の形で1ミリリットル中に20~60億個も分散しており、そのため脂肪分解酵素作用が有利に働いていて、消化吸収率が97%と高いのです。 脂質はエネルギー源として元気をくれますが、その構成要素は体のすべての細胞やホルモン、胆汁酸などに必要です。またビタミンA、D,Eの吸収や貯蔵、神経の働きにも深く関わっています。 牛乳普及協会から

糖質 牛乳を飲んだとき、かすかな甘味がありますね。牛乳の糖質はほとんどが乳糖です。乳糖は哺乳動物の乳に特有のもので、幼児期の脳細胞の発達に欠かせません。腸の働きを整えるので、便秘にも効果があります。また、カルシウムの吸収を助け、鉄の吸収を促進します。重要なエネルギー源としても筋肉の収縮や体温の維持、病気への抵抗力などに関わっています。ブドウ糖も含まれていますが、これは脳のただひとつのエネルギー源です。 牛乳普及協会から

カルシウム 牛乳は母乳の成分に最も近いといわれますが、カルシウムの量に関しては牛乳のほうが4倍近く多く、カルシウムの補給に最も適しているといわれます。それはコップ1杯の牛乳(200ミリリットル)にカルシウムが200ミリグラムも含まれていることに加えて、牛乳に含まれるたんぱく質や乳糖などの働きで、吸収率が50~70%と高いからです。ほうれん草などの野菜類が約20%、小魚類が約30%ですから、その吸収率の高さは、際立っています。 また、カルシウムは骨や歯の形成、血液の凝固、ホルモンの分泌、免疫機能などに深く関わり、筋肉の収縮や心臓の鼓動を一定に保つという大切な役目も持っています。さらに神経の興奮を抑えるので、イライラや情緒不安定を防ぐのにも効果的です。よく眠る前にコップ1杯の牛乳を飲むと安眠できるといいますが、その訳はこんなところにあるのです。 牛乳普及協会から

ビタミン 牛乳に含まれる主なビタミンは、AとB2です。Aには二つの形があり、一つはレチノール。これは子供の成長を促進し、目を健康にするのに必要です。もうひとつはベータカロチン。これは組織の損傷を保護するのを助ける特性を持っています。ビタミンB2は、200ミリリットル中に約0.30ミリグラム含まれています。栄養分の代謝を高め、食欲をわかせて成長促進作用に大切な役割を果たしています。 その他にも牛乳に含まれているビタミンDは、骨や歯を強くするためにカルシウムやリンと結合した状態で使われたり、腸でカルシウムを吸収するときにも使われます。 また、ビタミンB1は、疲労回復にも効果を発揮しますし、ビタミンEは老化の原因と思われる過酸化脂質を防ぐ働きがあるので、老化防止ビタミンとして注目を集めています。 牛乳普及協会から

牛乳は、蛋白質であるカゼインや乳脂肪の細かい粒子が1ml当たり10数兆個ほど乳濁している液体です。この粒子に光が当たり乱反射されるので白色にみえます。  蛋白質カゼイン粒子の大きさは、直径数ミリミクロンから300 ミリミクロン(1ミリミクロンは100万分の1ミリメートル)といわれコロイド状に牛乳中に分散しています。比較的大粒のものによる反射光は白色が強く、小さい粒子になるほど青味をおびます。  また、牛乳中のエマルジョン状態で分散している脂肪球の大きさは、直径0.1 ~10ミクロン(1ミクロンは1000分の1ミリメートル)であり、平均2.5 ミクロン(ホルスタイン種)程度であります。すなわち小粒子になるほど光線を乱反射して白色に、大きな粒子になると黄色を帯びてきます。  従って牛乳の白色は蛋白カゼイン粒子と脂肪球の大きさにより影響されます。

牛乳はO/Wエマルション 水 油 界面活性剤 界面活性剤 油 水 O/Wエマルション W/Oエマルション

身の回りのコロイド ビール

ビール ビールの泡 移流集積によって下から上に運ばれ、二次元の結晶構造を形成するコロイド。下の方のコロイドは動いているためブレている。 永山国昭(東京大学教養学部)

ビールの泡

ビールの泡の役目 琥珀色に輝くビールと純白でクリーミィーな泡とのコントラストが、目にも清々しいビール。その豊かな泡は、ビールの品質をよく表していて、「良き泡のビールは、良きビール」であるといわれ、泡はビールの花(ブルーメン)とも呼ばれています。ビールの泡が,きめ細かくなかなか消えないのは、ビールの中に含まれている麦芽の成分、ホップの苦味成分などがコロイド状に分散し、炭酸ガスの気泡が出来、これらの物質が気泡の表面に集まり濃縮されて粘りのある膜をつくりだしているから。泡は、ビールの中の炭酸が逃げるのを防ぐと同時にビールが空気に直接触れ、酸化するのを防ぐフタの役目を果たしているのです。

ビールの泡 なぜ合一しにくいのか? 分散安定化への指針 泡の表面にホップと麦芽由来のフムロンや塩基性アミノ酸が吸着し、分散剤的な働きをしている

分散と凝集

コーヒー牛乳に塩を入れる 乳脂肪が浮上している 1 mol/L KCl溶液 コーヒー牛乳だけ

なぜ、乳脂肪は浮上したか? 乳脂肪は水よりも軽い 牛乳は乳脂肪が分散したもの 塩を入れることで「凝集」して浮上した

分散と凝集 分散とは何か 凝集とは何か 物質は本来凝集するもの 溶媒中にコロイドが凝集せずにただよっている コロイドがより集まってくる 分子間力→van der Waals力

分散と凝集 (平衡論的考察) 凝集 van der Waals力による相互作用 分散 静電的反発力 粒子表面の電位による反発 凝集 分散

分散と凝集 (速度論的考察) 分散するためには 平衡的に分散条件にあること 速度論的に分散条件にあること ブラウン運動(熱運動) 分散

速度論:ブラウン運動 分散の平衡論的な解釈は、静電的反発力であるが、水の中を漂い、空気の中に分散する、コロイド粒子の動き、つまり速度論的解釈は、ブラウン運動 Brownian motion である。 分散

速度論:ブラウン運動 粒子がブラウン運動を起こして(不規則な運動)いるとすると、ブラウン運動は粒子の熱運動であるので、粒子1個について、kTのエネルギーを持っている。これが運動エネルギーに変換されているとすると kT = 1/2 mv2 となる。 分散

速度論:ブラウン運動 Einsteinの統計的計算によると、粒子1個がブラウン運動によって、t時間にx方向へ移動する平均距離xは、 Dは、粒子の拡散定数。Einsteinは、さらに、拡散定数に関する式 を提出した。ここで、fは摩擦係数と呼ばれるもので、粒子が媒質の分子に比べて非常に大きいとき、Stoksの法則がなりたつ。 分散

速度論:ブラウン運動 ここで、ηは物質の粘度、aは粒子半径である。 結局、 となる。Rは気体定数、NAはアボガドロ数。 分散

速度論:ブラウン運動 たとえば、20℃、蒸留水中において、粒子の1秒後の変位xを計算すると、つぎのようになる。 粒子半径 1秒後の変位(μm) 1 nm 20.7 10 nm 6.56 100 nm 2.07 1μm 0.656 である。 分散

分散するか凝集するか 平衡論 静電的反発力 コロイドの界面電位による 速度論 コロイド同士の衝突←熱運動と衝突確率

静電的反発力とは 力の源は、粒子の表面電位 表面電位が絡んでいる現象 電気泳動 電気浸透 沈降電位

電気泳動 電気泳動というのは、電気を帯びた分子(イオン)が、電圧によって動く現象のこと プラスの電気を帯びた分子はマイナス電極へ、マイナスの電気を帯びた分子はプラスの電極へ、引きつけられる コロイドも同じ。電圧のかかっている場所(電場)の中で、コロイド全体としての電荷の反対符号の電極の方向へ動く + -

表面電荷