山崎祐司(神戸大) 粒子の物質中でのふるまい.

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山崎祐司(神戸大) 粒子の物質中でのふるまい

8回の講義の予定 第1講:現代の素粒子物理概観(1) 第2講:現代の素粒子物理概観(2) ,LHC 実験 第3講:陽子衝突実験の原理,加速器 第4講:粒子の物質中でのふるまい 第5講:位置検出器とカロリメータ 第6講(セミナー): いよいよ始まった LHC 実験 第1講の内容と重複 + 実験の現状報告 第7講:トリガーとデータ取得 第8講:Higgs 粒子の探索法 これまで学んだことの応用

Higgs 粒子 崩壊の例 H  Z⁰ Z⁰  e⁺e⁻⁺⁻ ミューオン:赤線 電子:青 反跳ジェット:青,橙 ミューオンの運動量が 高く,ほとんどまっす ぐ飛ぶ → 強い磁場中を長い距 離とばす必要あり 大きな検出器になる

標準模型の粒子と相互作用

散乱粒子の最終産物 クォークは単体では存在しない タウレプトンは短寿命 重いクォークも崩壊 ニュートリノは検出できない 中間子 Meson (クォーク・半クォーク対)あるいは 核子 Nucleon(陽子,中性子…)= 準安定ハドロンに崩壊 タウレプトンは短寿命 中間子あるいは荷電レプトン (e, µ) とニュートリノに崩壊 重いクォークも崩壊 ニュートリノは検出できない (準)安定な粒子 τ > 10−8 [s] 電子,光子 荷電ハドロン,中性ハドロン ミューオン(µ)

長寿命粒子のプロフィール 粒子 組成 生成メカニズム 質量[MeV] 寿命[s] 崩壊 e± 素粒子 直接,光から対生成 0.511 ∞ γ π0→γγ, 電子からの放射光 荷電粒子が吸収 µ± 直接,π±/K± 崩壊 106 2.210−6 e±νµνe 100% π0 q, g の破砕化, 中間子崩壊 135 8.410−17 γγ 99% γe+e− 1.2% π± 138 2.210−8 (cτ ~ 10m) µνµ 99.98% K± 494 1.210−8 µνµ 63.44% π±π0 20.92% K0S 498 0.910−10 π+π−, π0π0 K0L 5.110−8 πeνe , πµνµ, 3π p uud 破砕化,ビームから 938 n udd 939 886 peνe 100%

強い相互作用による クォークの閉じこめ 強い相互作用の結合定数は, 相互作用のエネルギーが高 いほど小さい(低いほど大 きい) 強い相互作用の結合定数は, 相互作用のエネルギーが高 いほど小さい(低いほど大 きい) 力は距離が離れるほど強く なる ポテンシャルエネルギーに より新たに粒子・反粒子が 対生成 中間子を形成し,多粒子 のジェットとなる 破砕化(fragmentation) とよばれる ポテンシャル エネルギーが 高くなっている 中間子 中間子

クォーク・グルーオンの破砕化 パートン間の不変質量が1 GeV 程度になると, αS ~ 1 となり摂動計算が意味をなさなくなる → 非摂動な束縛状態(中間子)を 形成 O(1GeV) パートンが一つ放射 ee → qqg ハードな散乱の 「3体崩壊」 拡大すると… O(√s) 次々にパートンが放出される (αS でかい)

粒子測定と検出器 粒子の崩壊パターン,崩壊元の 質量の再構成から新粒子生成をとらえる ミューオン:物質を貫通させた後,磁場で曲げる ハドロン粒子 (核子,中間子:クォークでできている) 厚い物質で止める 電磁相互作用をする 粒子(電子,光子) 止めてシャワーを起こし,物質中に落としたエネルギーを測る ニュートリノ, 暗黒物質: 見えない! (中性,弱い 相互作用のみ) 運動量保存 から推測 荷電粒子: 磁場で曲げて運動量を測る

荷電粒子の物質中でのふるまい イオン化などによるエネルギー損失 dE/dx 進行方向の変化: multiple scattering 平均値:Bethe-Bloch の式 ばらつき:Landau 分布 エネルギー損失測定による粒子識別 進行方向の変化: multiple scattering 飛跡検出器の位置精度と運動量の関係 multiple scattering が運動量測定精度に与える影響