土木学会 舗装工学委員会 舗装材料小委員会 アスファルト分科会 調査報告 永久変形 (進捗状況報告) 担当:千原,村山
目 次 1.永久変形 1.1 バインダ性状と永久変形 1.2 骨材性状と永久変形 1.3 混合物性状と永久変形 1.4 実路の永久変形予測 1.永久変形 1.1 バインダ性状と永久変形 1.1.1 国内の研究 1.1.2 海外の研究 1.1.3 抵抗性を高める対策 1.2 骨材性状と永久変形 1.2.1 国内の研究 1.2.2 海外の研究 1.2.3 抵抗性を高める対策 1.3 混合物性状と永久変形 1.3.1 国内の研究 1.3.2 海外の研究 1.3.3 抵抗性を高める対策 1.4 実路の永久変形予測 1.4.1 国内の研究 1.4.2 海外の研究 1.5 まとめ 1.5.1 材料特性値の設計用値としての適用性 1.5.2 今後の研究課題 目 次
1.1 バインダ性状と永久変形 図- アスファルト混合物の永久変形に対する抵抗性の要因分類
1.1.1 国内の研究 1)従来の試験 a) 針入度 針入度による永久変 形の推定は難しい 図-1.2 針入度と動的安定度の関係3)
b) 軟化点 軟化点とわだち掘れ進行量 には相関が認められる 図-1.3 高速道路において測定されたわだち掘れ進 行量と軟化点の関係4)
c) 粘度 軟化点とわだち掘れ進行量 には相関が認められる 更に詳しく要調査! 図-1.4 60℃粘度とWT変形量(水深)の関係
チキソトロピーの強いアスファルトでは軟化点近傍の温度でずりせん断速度依存性が変化する → 改質アスファルトのような非ニートン流体のバインダ → 改質アスファルトのような非ニートン流体のバインダ → 軟化点や60℃粘度と混合物の流動変形に良い関係が 見られない可能性が高い 表-1.1 各種改質アスファルトの性状試験値とDSとの相関係数 現状,改質アスファルトを含めると現状では,軟化点が最も永久変形と関係がある
|G*|/sinδとDSに良い関係が見られる 2) 特殊な試験 a) DSR |G*|/sinδとDSに良い関係が見られる 図- |G*|/sinδとDSの関係
周波数が遅いほうが|G*|/sinδとDSの相関が高い
ストアス系には高い相関が認められるが,改質アスファルトについてはやや相関係数が低くなった 図- |G*|/sinδと動的安定度(DS)の関係
1.1.2 海外の研究 従来の試験 省略 新たな試験 a) DSRからの|G*|/sinδ 1.1.2 海外の研究 従来の試験 省略 新たな試験 a) DSRからの|G*|/sinδ 表- バインダ特性値とホイールトラッキング試験の車輪走行回あたりの変形量の逆数)との関係 周波数が小さいほうが幾分良いが,さほど相関は高くない
図- 10rad/sで測定した混合物のRSCH累積ひずみの変形勾配Sとパラメータ|G*|/sinδの関係 相関は低い
強制振動DSRの問題点 1.試験の数サイクル後に測定された線形粘弾性から導かれた ものであり,バインダのダメージ挙動の測定値とはいえない. 2.周期的な可逆的載荷から導かれた値であり,直接的な測定 値とは言えず,繰返しクリープ載荷におけるバインダの永久ひ ずみの累積の良い科学的な指標ではない. (NCHRP Rep.459より)
b) DSRによる繰り返しクリープ試験 載荷1s →休止9s の繰り返し
|G*|/sinδと比較するとかなり良い 図- 混合物のRSCH累積ひずみの変形勾配SとバインダのクリープスロープSの関係 |G*|/sinδと比較するとかなり良い
バインダの永久変形抵抗性の新たな指標: Gv 繰返しクリープ試験における,クリープコンプライアンスの粘性要素(Jv)の逆数 t
c) ゼロせん断粘度(Zero Shear Viscosity) ZSV クリープモード (t→∞) オシレーションモード ( →0) 表- バインダ性状試験値とホイールトラッキング試験で混合物が10mm変形するまでの走行回数N10との相関
1.1.3 抵抗性を高める対策 内容は省略 1) 改質アスファルトの効果 a) 改質材の種類 b) バインダのレオロジー 1.1.3 抵抗性を高める対策 1) 改質アスファルトの効果 a) 改質材の種類 b) バインダのレオロジー c) アスファルト中の改質材の分散形態(モルフォロジー) d) 各種改質アスファルトの効果 内容は省略
1.2 骨材性状と永久変形 1.2.1 国内の研究 1) 従来の試験 1.2 骨材性状と永久変形 1.2.1 国内の研究 1) 従来の試験 黒川ら(2002)は,粗骨材の扁平率は混合物の締め固め特性に影響 → 間接的に永久変形に影響 牧ら(1994) は,遠心破砕方式で製造した粗骨材は打撃破砕のものよりも扁平率が低く,DSが大きくなる 村山ら(2001)は,粗骨材の吸水率,すり減り量,扁平率などの従来の骨材性状とポーラスアスファルト混合物の流動変形に関係は見られない
☆従来の性状試験とDSには良好な関係は見られない 相関低い ◆使用粗骨材を変えた空隙率20%の排水性混合物粗 骨材の吸水率,すり減り量,扁平率とDSとの関係 ☆従来の性状試験とDSには良好な関係は見られない
七五三野(1996)らは,質量法,スランプ法,ロート法の3種の試験方法を用いて,細骨材の稜角に関して評価 2) 特殊な試験 a) 細骨材の形状評価 七五三野(1996)らは,質量法,スランプ法,ロート法の3種の試験方法を用いて,細骨材の稜角に関して評価 図- 砂のロート流下時間とDSの関係
小林ら(1996)は,CCDカメラで撮影した細骨材の画像を画像解析技術を用いて式(3. 2. 11)~(3. 2
村山ら(2003)は,粗骨材表面のマイクロテクスチャがアスファルト混合物の永久変形抵抗性について検討 b) 粗骨材の形状評価 村山ら(2003)は,粗骨材表面のマイクロテクスチャがアスファルト混合物の永久変形抵抗性について検討 図- 骨材のすり減り率とDS
1.2.2 海外の研究 1) 従来の試験 ◆SUPERPAVEにおける細骨材の角張りの基準 ◆AASHTO T304 1.2.2 海外の研究 1) 従来の試験 ◆SUPERPAVEにおける細骨材の角張りの基準 ◆AASHTO T304 ☆日本とあまり変わらないが, 細骨材の角張りが入っている
a) 粗骨材表面のCCD画像のウエーブレット解析から得たテクスチャ・インデックス(IT) 2) 特殊な試験 a) 粗骨材表面のCCD画像のウエーブレット解析から得たテクスチャ・インデックス(IT) IT =150 IT =110 IT =245 IT =422 図- Texture Indexの異なる粗骨材を用いた混合物のハンブルグ・ホイールトラッキング試験結果
1.2.3 抵抗性を高める対策 要調査
1.3 混合物性状と永久変形 1.3.1 国内の研究 1) 従来の知見 表- アスファルト混合物の配合における永久変形に対する要因と効果
b) 牛尾の方法 ← 舗装標準示方書に記載 アスファルト混合物の載荷時間と温度条件を考慮したクリープ特性と多層弾性理論によるアスファルト混合物の圧縮変形量(アスファルト混合物層の上面と下面の変位の差)の解析とから,次式を用いて行う. ここに, :短時間載荷(0.02秒)におけるアス混合物 のスティフネス(MPa) :交通履歴時間を考慮したアス混合物 :載荷に伴うアスファルト混合物 の圧縮変形量(mm)
載荷時間 Sbit 混合物の スティフネス Smix Sbit バインダのスティフネス
2) 新たな試験 a) ホイールトラッキング試験における復元変形量測定
図- 試験開始3往復 図- 試験終了前3往復
1.3.2 海外の研究 Superpave Shear Tester(SST)によるアスファルト混合物の永久せん断ひずみおよびスティフネスの測定,AASHTO T320-03 概要:ジャイレトリーコンパクタ(SGC)で作製した円柱状の供試体を用いて一定応力速度でせん断試験を行い,永久せん断ひずみを求める.永久せん断ひずみはわだち掘れと関係があるとしている. アスファルト・ペーブメント・アナライザーを用いたアスファルト舗装用混合物のわだち掘れ抵抗性の決定,AASHTO TP63-03 概要:SGCで作製した円柱状の供試体を2個連結し,供試体の上から水圧をかけた耐圧ホースを介して走行車輪を走行させ,8000回走行時のわだち掘れ深さを測定する. 締め固められた加熱アスファルト混合物のハンブルグ・ホイールトラッキング試験,AASHTO T-324-04 概要:水中で供試体上にスチール製の車輪を往復走行させ,アスファルト混合物の永久変形抵抗性と耐水性を評価する.供試体は,SGCで作製した円柱状の供試体を2個連結したものや,ローラコンパクタで作製した平板を用いる.
SSTによるアスファルト混合物の永久せん断ひずみ およびスティフネスの測定 Superpave Shear Tester(SST) 【供試体】 ・室内作製:Φ150mm×75mm(Gyratory) ↓(上・下面カット) Φ150mm×50mm ・現場採取:Φ150mm×50mm~38mm 【装置】 載荷装置 : 油圧で鉛直方向と水平方向に繰返し載荷可 荷重 : 0~31kN LVDT(鉛直) : 0~5mm LVDT(水平) : 0~0.05mm 温度 : 0~80℃ (NCHRP Report 465, p27)
◆Asphalt Pavement Analyzer(APA)による方法
◆ハンブルグ・ホイールトラッキング試験による方法 ジャイレトリ・コンパクタ による供試体
1.3.2 抵抗性を高める対策 配合設計 SHRP容積配合設計など 2) 粒度 a) SMA b) 大粒径 c) ポーラス 内容は省略
特殊な対策 路面の色 ◆地表面のアルベドの測定例 ☆アルベド 大→ 路面温度の上昇抑制 →わだち掘れ 小 路面の色 ◆地表面のアルベドの測定例 ☆アルベド 大→ 路面温度の上昇抑制 →わだち掘れ 小 ◆通常のアスファルト舗装の 熱収支の例
1.4 材料特性を用いた実路の永久変形予測 1.4.1 国内の研究 1.4.2 海外の研究 1.4 材料特性を用いた実路の永久変形予測 1.4.1 国内の研究 1.4.2 海外の研究 1) 経験的な予測手法(Empirical Method) 2) 力学的な予測手法(Mechanistic Method) 3) 力学経験的な予測手法(Mechanistic-Empirical Method) 方針 使用している材料特性を 抽出して整理する
1) 主な経験的予測手法(Empirical Method) 国 機関または研究者 概要 時期 日本 首都高 交通特性や気象(温度)特性に関連する 各種影響因子のわだち掘れに対するウェ イトを考慮して,動的安定度DSをもとにわ だち掘れ量を予測 1980年代 松野ら 土研 北海道開 発局 年間路面高温ポイントと時間大型車交通量との積を指標としてわだち掘れ量を予測 2000年代 海外 Scholzら WesTrackでの促進載荷試験デ-タをもとにHMAの品質と関連した予測式を構築 Monismithら Scholzらの予測式をもとにあるわだち掘れ量に達するEASAL(等価換算標準軸数)と品質との関係式を構築
2) 主な力学的予測手法(Mechanistic Method) 国 機関または研究者 概要 時期 日本 牛尾 クリ-プ特性と弾性理論よりアスファルト混 合物の上面と下面の変位差を算定してア スファルト層のわだち掘れ量(層厚減少量)を予測 1980年代 金井ら 牛尾のアスファルト層の予測変形量に, Shellの路床破壊規準式を変形利用して 得られる路床の予測永久変形量を加えて わだち掘れ量を予測 2000年代 海外 Shell クリ-プ試験等からアスファルトのスティフ ネスSbitより求まる混合物のスティフネス Smixを用いて構造解析を行い,アスファル ト層のわだち掘れ量(層厚減少量)を予測 1970年代
3) 主な力学経験的予測手法(Mechanistic-Empirical Method) 機関または研究者 概要 時期 FHWA LTPP調査デ-タをもとにAs層,路盤,路床の永 久変形を合わせた予測式を構築 1990年代 米国ミシガン州 39試験区間より収集したデ-タに基づく予測式を 構築 AYMA モンテカルロシミュレ-ションを用いてわだち掘れ 量を予測 Deaconら WesTrackの実測デ-タとSHRPの繰返し単純せ ん断試験(RRST-CH)結果とを用いて,多層弾性 理論による構造解析によりわだち掘れ量を予測 2000年代 AASHTO Design Guide 2002 室内試験モデルを28の州における88のLTPP区 間デ-タをもとにキャリブレ-ション修正して予測 式を構築
1.5 まとめ 1.5.1 設計用値としての材料特性値の適用性 方針 わだち掘れと関係の深い特性値とその設計用値への適用性を検討する 1.5.1 設計用値としての材料特性値の適用性 1.5.2 今後の研究課題 方針 わだち掘れと関係の深い特性値とその設計用値への適用性を検討する 方針 課題の抽出と整理
◆材料の特性値と永久変形との関係
◆わだち掘れの予測式に考慮されている設計条件
◆考慮すべき要因に対する留意点と着目すべき指標
以上です。