COMPASS実験の紹介 〜回転の起源は?〜 山形大学 堂下典弘 1996年 COMPASS実験グループを立ち上げ 1997年 実験承認

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COMPASS実験の紹介 〜回転の起源は?〜 山形大学 堂下典弘 1996年 COMPASS実験グループを立ち上げ 1997年 実験承認 山形大学 堂下典弘 1996年 COMPASS実験グループを立ち上げ 1997年 実験承認 2002年 実験開始 2014年 Phase II へ 現在13カ国220名が参加 日本グループ :山形大学、KEK、宮崎大学、 中部大学から11名参加

自然界における回転 宇宙の星雲 地球の回転(自転+公転) 陽子、中性子、 電子の自転 核子の自転(スピン)の源を 回転が 安定保持に作用 微小な回転を 突き詰める 陽子、中性子、 電子の自転 出典:キャノン 電子:内部構造を持たない 陽子、中性子:クォークと                     グルーオンで構成 COMPASS実験の研究課題: 核子の自転(スピン)の源を クォークやグルーオンのスピンや公転(軌道回転) で説明できるか?

陽子や中性子の内部はどうなっているのか? 核子のスピン:1/2 クォークスピン:1/2 伝統的なクォークモデル 陽子の場合 2つのuクォークと 1つのdクォークから なる複合粒子 核子スピンは、 3つのクォークスピンの合成 バレンスクォーク 量子色力学 (強い相互作用を記述) 複数のクォークが グルーオンによって 結合した複合粒子 :  バレンスクォークと     シークォークスピン :  グルーオンスピン : 軌道角運動量

核子スピンの研究歴史とCOMPASS実験 1980年代 CERN EMC実験 「核子スピンに対するクォークスピンの寄与がない」 「スピンクライシス」 1990年代 CERN SMC実験、ドイツHERMES実験 2000年代 COMPASS実験 「クォークスピン寄与は約25%」 クォーク スピン寄与 2000年代 COMPASS実験                   世界最高精度の                グルーオン偏極度測定 クォークや グルーオン の軌道回転 か? 核子スピン グルーオン スピン寄与 アメリカRHIC実験の結果と合わせて 「グルーオンスピン寄与は30%程度」 クォーク軌道回転寄与に注目:現在実験準備中 量子色力学による核子構造の記述ができるか?

なぜCERNでスピン起源探索か? 日本グループ 特殊なビーム:偏極ミュー粒子ビームやパイ粒子ビーム 特殊な標的:偏極核子標的 偏極 : スピンの向きを揃えた状態 偏極ビーム+偏極標的で 核子内のスピンの情報にアクセスできる 日本グループ 偏極核子標的システムに責任をもつ 世界最大の偏極標的システム - 直径4cm、長さ130cmの標的物質 - 2.5Tの磁場 - 50mK(-273.10度)まで冷却 この容量では Coldest point in the world

COMPASS実験施設の位置 CNGS

COMPASS 実験装置 〜固定標的実験〜 全長50m ハドロン検出部 ミュー粒子検出部 ビーム 偏極標的 分析用電磁石 RICH 世界最高エネルギーの レプトンビーム(190GeV) 実験ホールは地上に設置

マイクロ波キャビティ 超伝導磁石 希釈冷凍機

ノーベル賞とスピン(とCERN) 1940年 I. Rabi 原子核の磁気能率測定方法 CERNのコンセプトを考え、立ち上げに貢献 1952年 F. Bloch、E. Purcell 核磁気の精密な測定  核磁気共鳴-> MRI  F. BlochはCERNの初代所長 1955年 P. Kusch 電子の磁気能率の精密測定

まとめ 補足 スピンの起源探索 2002年より実験開始 グルーオンの核子スピンへの寄与は大きくない 今後クォークの軌道回転に注目して研究を進めて行く 補足 また、COMPASSではパイ粒子ビームや陽子ビームと 原子核標的や液体水素標的を用いて パイ粒子の内部構造測定 普通でないエキゾチックな生成粒子測定 なども行っている。

スピンの利用 医療機器のMRI リニア新幹線 (核磁気共鳴画像法)装置 体内水分子の 電子スピンから生ずる 水素原子核(陽子)スピンを利用 超伝導磁石による磁気浮上車 出典:ウィキペディア

光子グルーオン融合とSemi-Inclusive深非弾性散乱測定 オープンチャーム (q= c) p クリーンチャンネル (低物理バックグラウンド) 低統計量 K、π粒子によるDメソン同定 by RICH High pT ハドロンペア (q= u, d, s) 高統計量 物理バックグラウンド 二重スピン非対称度測定 PB: ビーム偏極度 PT: 標的偏極度 f : ダイユーションファクター N : イベンド数 の抽出

COMPASS 偏極標的システム 希釈冷凍機 50mK 300mKで350mWの冷却能力 磁石 標的セル beam (upgraded in 2006) 希釈冷凍機 50mK 300mKで350mWの冷却能力 磁石 高均一度2.5Tソレノイド, 0.6Tダイポール 180mrad アクセプタンス 標的セル beam 3 セル (30, 60 30cm long) 直径4cm 180mrad マイクロ波システム 2 EIO 発振器 (20W) NMR システム 10 チャンネル (3, 4, 3)

GPDプログラムの目的 GPD(一般化されたパートン分布)関数 4種類: Jiの和則: クォークのスピンと軌道角運動量の和 核子の3次元像: