理研における ガス電子増幅フォイル(GEM)の開発と その応用 牧島宇宙放射線研究室 玉川 徹 角田奈緒子、早藤麻美 (東理大・理研)、牧島一夫(東大理・理研)、桜井郁也(名大)、宮坂浩正(Caltech)、門叶冬樹(山形大理)、浜垣秀樹(東大CNS) 、犬塚将英(東文研) 研究目的(宇宙X線偏光計) ガス電子増幅フォイル(GEM)の製作と性能 読み出し回路(CMOSセンサー) GEMの応用(ガスフォトマル) 検出器ワークショップ(2005年5月11日@理研)
研究の背景 天体からのX線の偏光測定 困難な点 X線の偏光検出 偏光=新しい物理量 新しい分野を切り拓く可能性 フラックスが極端に少ない (cf. 時間、空間、エネルギー) 新しい分野を切り拓く可能性 困難な点 フラックスが極端に少ない 光子1つの電気ベクトルの測定が必要 X線の偏光検出 ブラッグ反射(効率が悪い) 光電効果(1~30keV) コンプトン散乱(>20keV ⇒三原) 天体の磁場構造など かに星雲 SN1006 検出器ワークショップ(2005年5月11日@理研)
X線偏光計 光電効果 X線検出器 光電効果を利用した偏光計 問題点 光電子トラックの方向~偏光方向 固体検出器(CCDなど) ガスカウンター drift plane 光電子 増幅 信号 readout ASIC GEM 電場ベクトル(偏光) X線 光電効果 光電子トラックの方向~偏光方向 X線検出器 固体検出器(CCDなど) ガスカウンター 光電効果を利用した偏光計 山形大(キャピラリー) 東工大・京都大(MSGC、μ-PIC) 理研、ピサ大、NASA(GEM) 問題点 短いトラック長 多重散乱 方向情報の消失 50umピッチ程度のGEMが必要 光電吸収 800um 100um 偏光 光電子の軌跡(5keV, Ne, simulation) Bellazzini et al. (2004) 検出器ワークショップ(2005年5月11日@理研)
ガス電子増幅フォイル(GEM) ガス 銅 ポリイミド CERNにおいて開発(1996) 多段による増幅が可能 放電確率の低減 readout GEM-1 GEM-2 GEM-3 drift plane 電子 ~150μm イオン 多段による増幅が可能 放電確率の低減 高ゲインの実現(~106) 増幅部と読み出し部の分離が可能 独立した開発と改良が可能 放電による回路破壊の防止 他の検出器の前置増幅器として動作 MSGC, μ-PIC, MicroMEGAS イオンフィードバックの抑制 二次元増幅が可能 比較的安価に製作が可能 銅 ポリイミド 5um 50um ガス Sauli, 1997 応用:粒子トラキング、光検出器(UV、X線) 検出器ワークショップ(2005年5月11日@理研)
レーザー加工によるGEMの製作 問題点: GEM製作方法:ケミカルエッチング(標準的) 100umピッチが限界 解決策: レーザーを用いた独自加工の方法を検討・実行 (2003~) 1.ケミカルエッチングで銅に穴あけ 2.片側からレーザーでカプトンに穴あけ 3.反対側からレーザーで穴あけ 5um Cu 50um Kapton 加工の特徴 銅自身をマスクとして用いる CO2レーザーの特徴 スミア(カーボン)が出にくい 銅を傷めない テーパーが少ない(チャージアップしない) 加工面がきれい(放電に強い) 他のレーザー加工をしているグループ NASA/GSFC:excimer laser 動作したのは一枚のみ H.Cho et al., IEEE Tran. (1999) レーザー加工GEMでは我々は世界最高水準 検出器ワークショップ(2005年5月11日@理研)
レーザー加工GEMの特性 ゲイン特性(5.9keV X-ray) 放電特性(α,241Am) ケミカルエッチングGEMと同等のゲイン特性 Ar+CO2(30%) ゲイン特性(5.9keV X-ray) 1GEM: ~3000@570V 2GEM: ~80000@490V 3GEM: >105 特性はCERN-GEMと同等以上 放電特性(α,241Am) 1信号あたりの放電回数 2GEM: p~10-3 @ gain~20000 cf. CERN p~10-3 @ gain~5000 2-LGEM 3-LGEM 2-LGEM 1-LGEM CERN CERN-GEM(*) ケミカルエッチングGEMと同等のゲイン特性 より良い放電特性 (*) CERN-GEM discharge Bachmann et al., NIMA479 検出器ワークショップ(2005年5月11日@理研)
50um ピッチGEMの製作 基本的な製作技術を確立 excimer 熱問題の解決 CO2 CO2 excimer 140μm Pitch 50um ×√3 Hole 30um Laser-GEM 140μm CO2 excimer CERN-GEM(60/40) ケミカルエッチングの限界 検出器ワークショップ(2005年5月11日@理研)
信号読み出し回路(CMOSセンサー) X線 1光子 回路系の開発をどこかと共同で進めたい AJAT/Acrorad DIC drift plane 光電子 増幅 信号 readout ASIC GEM AJAT/Acrorad DIC 電場ベクトル(偏光) X線 光電吸収 readout ASIC (100μmピッチ、50fps読出し) GEM:140um double Gain~500 55Fe pixel number X pixel number Y X線 1光子 回路系の開発をどこかと共同で進めたい 検出器ワークショップ(2005年5月11日@理研)
GEMの応用例 ガス光電子増倍管(ガスフォトマル) 1光子検出が可能 イメージング能力あり 磁場中でのオペレーションが容易 磁場に垂直に入れても動作する 管内を1気圧に保てる 大面積の光電子増倍管 Breskin, 2005 利用・共同開発希望はありますか? 検出器ワークショップ(2005年5月11日@理研)
まとめ 宇宙X線の偏向測定を目指す 微細なガス電子増幅フォイルを開発 CMOSセンサーとの組み合わせ 他分野への応用 ガスカウンターを用いた検出器 微細なガス電子増幅フォイルを開発 エッチングとレーザー加工の組み合わせ ケミカルよりも微細、性能向上 CMOSセンサーとの組み合わせ 読み出し回路系の開発を進めたい 他分野への応用 ガスフォトマルなど 検出器ワークショップ(2005年5月11日@理研)