CdTe半導体検出器の大型化の試み -ダブルベータ崩壊探索に向けて-

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CdTe半導体検出器の大型化の試み -ダブルベータ崩壊探索に向けて- 京大理 市川温子 木河達也、平木貴宏

CdTe検出器とは CdTeの性質 CdTe検出器の特徴 テルル化カドミウム(CdTe)を半導体素子として用いた検出器 密度 バンドギャップ (g/cm3) バンドギャップ (eV) 電子易動度 (cm2/V/s) ホール易動度 電子寿命 (s) ホール寿命(s) Ge 5.33 0.67 3800 1820 >10-3 1x10-3 Si 2.33 1.11 1900 500 2x10-3 CdTe 5.85 1.47 1100 50 3x10-6 2x10-6 CdTe検出器の特徴 電極の接合にオーミック型とショットキー型がある。 長所 ガンマ線吸収率が高い。(原子番号と密度が高いため) 常温で使うことができる。(バンドギャップが大きいため) 短所 半導体検出器としてはエネルギー分解能が低い。 (ホールの易動度が低いため)

何故CdTe? Q値 同位体存在比 130Te 2.5 MeV 34% 116Cd 2.8 MeV 7.5% 106Cd(β+EC) 1.7MeV 1.5% 放射線 Vol.36 No.2(2010) しかし、ダブルベータ崩壊探索するには、今の大きさ(~2mm厚)、エネルギー分解能(ピークがコンプトンと区別つかない)ではいかんともしがたい。

何故、大きくできないのか? 何故、エネルギー分解能が悪いのか? -ホールのトラッピング- ドリフト中に多くのホールが捕獲 されてしまう。  信号の大きさが、生成された電 子・ホール対の数だけでなく、 生成の場所にも依存してしまう。 ショットキー接合を用いたダイ オードタイプの検出器が開発さ れている。 厚さ ~0.5mm 積層して、60Co(1.33MeV)に対し て0.45%の分解能が得られてい る! 大野良一 放射線vol.30,No.1 (2004)より

0.5mmを積層するのは大変なので、オーミックタイプで波形情報を使って何とかできないか? (137Csγ線源) FADC counts Time(s)

0.5mmを積層するのは大変なので、オーミックタイプで波形情報を使って何とかできないか? Drift time 5mm角素子を試作。プリアンプ出力波形 (137Csγ線源) FADC counts Pulse height ホールの効果 電子(+ホール)の効果 Time(s) 電子の効果が大きいもの (反応が陰極付近で起きた) ホールの効果が大きいもの (反応が陽極付近で起きた) FADC counts FADC counts ドリフト時間が短い 6 ドリフト時間が長い Time(s) Time(s)

ドリフト時間からパルスハイトを補正 パルスハイトの分布 エネルギーの分布 (FWHM:2.0%) パルスハイトとドリフト時間 100 # of counts (FWHM:2.0%) 50 # of counts ドリフト時間による補正 400 400 Pulse height (FADC counts) Energy(keV) パルスハイトとドリフト時間 エネルギーとドリフト時間 700 1000 Pulse height (FADC counts) Energy(keV) 8 Drift time(μs) 8 Drift time(μs)

温度とドリフト時間(5mm角素子) 実際の測定では0℃~10℃で最も分解能が良くなった。 20℃ 10℃ 30℃ 0℃ -60℃ -90℃ (恒温槽での温度制御下) -90℃ -50℃ -80℃ -70℃ -40℃ -20℃ -10℃ -30℃ 0℃ (液体窒素で冷却下) 液体窒素での冷却下 恒温槽による温度制御下 FADC counts Mean drift time (s) Time (s) Temperature (℃) 温度による波形の変化 温度と平均ドリフト時間の関係 0℃~-60℃くらいまで温度が下がるとホールの易動度が下がる。 -70℃以下ではホールの移動の効果がまともに見えない。 実際の測定では0℃~10℃で最も分解能が良くなった。

バックグランドの測定 実験室で試してみました 40K 0 2000 4000 6000 (keV) 2480 2520 2560 2600 (keV) 5mm角素子120時間、宇宙線Veto

CUORICINO(CUORE)との関係 130Teと言えば、これですね。 ボロメータ! 0.3%FWHM@2.6MeV CUORICINO >3x1024year w/ 11.8kg130Te*y CUORE 133kG 130Te 時定数 ~秒 (時間分解能 数十ms) これに対抗しようと思ったらエネルギー分解能 ~0.5%程度は欲しい CdTeの時間分解能は、もっと良いのでγ線のコン プトンなどは、かなり除けるのではないだろう か。(隣合う素子でveto & 1個の素子内でも波形 情報で)

15×15×10(t) mm3 CdTe素子

15x15x10(t)mm3素子 137Cs @0℃ 6.3%(FWHM) 波形補正 0 100 200 300 400 500 600 700 (keV) 波形補正 0 5 10 15 20 25 30 35 (μs) 0 5 10 15 20 25 30 35 (μs)

15x15x10(t)mm3素子 60Co @0℃ 5.1%(FWHM) 波形補正 0 200 400 600 800 1000 1200 1400 (keV) 波形補正 0 5 10 15 20 25 30 35 (μs) 0 5 10 15 20 25 30 35 (μs)

15×15×10(t) mm3 CdTe素子 波形 ホールの吸収の効果が大きいので、解析にもう一 工夫要りそう。 130Cs 60Co sec sec ホールの吸収の効果が大きいので、解析にもう一 工夫要りそう。

分解能をリミットしているのは? パルサーで回路系のノイズを測ってみる。 (本当は、ドリフト時間ぐらいの 間をおいて、ふらつきを取るべ き。今回は間に合わなかった。 なので、実際は左の表よりもノ イズの影響は大きい。) リーク電流 体積で決まっている場合は 5mm角→15x15x10(t)mm3で 4.5倍のはず? 端の面積で決まっている場合 は、1.5倍? 表面リーク電流が主? 5mm角素子は、常温ではリーク 電流のふらつきが分解能を決め ている? -> 素子の縁にガード電 極をつけることで、改善できる かも。 r.m.s(FADC count) ○ : 15x15x10 常温 ○ : 5mm 常温 ○ : 15x15x10 0℃ ○ : 5mm 0℃ bias V

奥の手 Coplanar grid technique 陽極1 + - 陽極1 陽極2 陰極 半導体 ガード電極 陽極2 P.N.Luke (IEEE Trans. Nucl. Sci. Vol.42, No.4, 1995) 陽極の構造 二つの陽極の信号の差分を取れば、ホールの影響を受 けない電子の数だけに比例した情報が得られる。 (和をとれば通常の信号が得られる) CZTでは、137Csで分解能1.3%の実績 我々は、波形情報を用いることで、さらに上げられ る? 読み出しをsegment化していくと、COBRA(CZT)と同 じような実験になってしまう。(迷走中)

まとめ 目標 数十cm3で分解能0.5%(FWHM@2.5MeV) まだまだ、これからです。 ガード電極でリーク電流低減 素子内の非一様性の測定 解析の工夫 coplanar grid法 常温で高分解能なγ線検出器としての応用も考え たい。

Backup

original Grid technique Figures from P.N.Luke 二つの電極からの信号の比で位置(深さ)情報も得られるかも。 Grid technique CdZnTe(5mmx5mmx5mm)で実証 Figures from P.N.Luke (IEEE Trans. Nucl. Sci. Vol.42, No.4, 1995)

というわけで、CdTeで試作中 厚さはとりあえず1mm。 うまくいったら、もっと厚くする。

温度とノイズ 温度とPedestalのMeanの関係 温度とPedestalのRMSの関係 Pedestal mean (FADC counts) Pedestal RMS (FADC counts) Temperature(℃) Temperature(℃) 温度と2μs間でのPedestalのRMSの関係 液体窒素での冷却下 恒温槽による温度制御下 Pedestal RMS (FADC counts) Temperature(℃) 全体での低周波のノイズはpedestalの補正をすれば測定には影響を与えな い。 2μs間で見える高周波のノイズは測定に効いてくる。 温度を下げればノイズは小さくなる。

エネルギー分解能 半導体検出器のエネルギー分解能はキャリア統計による効果、電荷 収集の効果、電子回路雑音による効果から影響を受ける。 エネルギー分布より導出 計算式より導出 テストパルス入力により導出 依然として電荷収集による影響が大きい

過去の実験 (2) COBRA project (on going) Build up a large array of CdZnTe semiconductor detectors 1 cm CdZnTe contains 9  Isotopes 116Cd, 130Te, 114Cd, 70Zn, 128Te (--), 64Zn, 106Cd, 108Cd, 120Te (++ ,+EC, EC/EC) Main 0 candidate: 116Cd Enrichment to 90% Also interesting: 106Cd EC/EC, +/EC and ++ modes Currently t1/2b+/EC ~5x1018 years by searching for 1.7MeV peak