1.宇宙物理学研究グループのビジョン ガンマ線の偏光という新しいプローブを使って、宇宙の高エネルギー現象を探る実験的な ガンマ線の偏光という新しいプローブを使って、宇宙の高エネルギー現象を探る実験的な 研究を核に据え、日本の偏光度検出器開発の拠点を形成し、開発した検出器から得られる データの解析センターの構築を目指す。そして核になる研究から3つのプロジェクトを推進する。 ・高密度天体の研究 ・他波長への拡張 数理科学、素粒子物理、 データサイエンス分野とのコラボ ②理論的研究 ・偏光度検出器開発の 日本の拠点 ・データセンター ・突発天体のフォローアップ 滝沢、柴田、梅林、他 ・太陽/地球環境への応用 ・検出器の医学利用 宇宙G 地球環境、素粒子・物性物理、 化学・生物分野、 医学部や工学部とのコラボ 検出器開発 観測的研究 ① ③応用研究 郡司、中森、門叶 柴田、滝沢、梅林 門叶、中森、郡司、他 ・小さな天文学者の会 ・小中学生への物理普及活動 パブリック アウトリーチ 小さな天文学者の会を初めとする 理学部の活動と連携 ④ 柴田、門叶、中森、他
2020年代初頭までのプラン 以上の研究及びパブリックアウトリーチ的な活動を学生の教育に利用する ①NASA/MSFCと進めている国際宇宙ステーションにガンマ線バースト偏光度検出器を搭載して観測を行うLEAPプロ ジェクトや金沢大学や理研と共同で行っているIKAROS-IIソーラーセールに搭載予定のGAP2の開発を通して、ガンマ線 偏光度検出器開発の日本の拠点を形成する。観測装置が打ち上げられた後は、そのデータ解析のセンターを構築する。 また既存の山形天文台の拡張を行い、ガンマ線バースト等の突発天体の光学的追観測を可能とする。 ②ガンマ線バースト、パルサー、ブラックホールから来るX線/ガンマ線の偏光観測から、物理的に何が予言されるかを 理論的に研究する。またガンマ線以外の波長(電波、可視光)での偏光観測データの解析を行い、多波長観測での 意義を理論的に研究する。基礎理論の構築に当たっては数学コースの教員と、データ解析に当たっては理学部で 作ろうとしてるデータサイエンスコースの教員と連携を図る。 ③山形AMSセンターの設備を利用し、太陽活動の研究を通して地球環境的な研究を推進する。その際には地球科学 コースの教官と連携を図る。また①によって行われる検出器開発の技術を様々な分野に応用していく。例えば、 コンプトン散乱を利用したPositron Emission Tomography(PET)装置の開発を化学コース、生物コース、医学部、工学部 等と連携して推進していく。また素粒子物理学や物性物理学の実験的分野と連携し、新しい放射線検出器の開発的な 研究も行う。 ④小さな天文学者の会を中心としたパブリックアウトリーチの活動を維持発展させていく。またその他に理学部で 行われている活動および自治体の活動とも連携を取り、データベースの共有や相互乗り入れ的なプログラムを展開する。 以上の研究及びパブリックアウトリーチ的な活動を学生の教育に利用する ・これら4つのプロジェクトでは、大学院生を国内及び海外の研究機関に派遣し、実験や発表を行わせる。 フロンティアコースを選ぶ学生に取っての訓練の場とする。またこれは職業観形成プロジェクトを一部引き継ぐ という意味合いもある。 ・サイエンスティーチャーコースの学生の訓練の場として、アウトリーチ活動を利用する。
2.研究グループの現員と将来的な人員に関して 来年度から宇宙物理学の実験グループと理論グループが統合し、一つのグループが できあがる。そしてそのグループには平成28年度4月から、郡司、門叶、中森(実験)、 柴田、梅林、滝沢(理論)の計6名が所属する。 しかし、H30年末とH31年末に続けて理論系の2名の教員が退職を迎える。 人事に対する要望 1)LEAPプロジェクトやGAP2プロジェクトで検出器の開発を中心になって行う研究者、 特にNASA/MSFCに常駐して実験する事を考えると研究に特化した実験系の助教が 1名H28年度から必要である。 2)H30、H31で理論系の教官2名が退職してしまう。そのためH30年で理論の准教授の 昇格人事を行い、この教員には電波や光の波長での偏光観測やデータセンターの 立ち上げをして頂き、データサイエンスコースとの研究連携も行ってもらう。 3)ガンマ線バースト、ブラックホール、パルサー等の高密度天体の理論的研究が行える 助教をH31年度に採用し、データセンターの運営を行ってもらう。 4)H31年以降にパブリックアウトリーチの部分が弱くなるため、数年間退官した教授の 再雇用を行う。 5)H32年に次の中期計画における理学部のプランを策定するため、理学部の研究を 俯瞰し、プロポーザルが書けるような退官した教授を再雇用したい。
3.必要な研究のインフラ 4.共同研究プロジェクト 1)現在郡司及び研究グループのメンバーはNASA/MSFCで実験を行う事が可能であるが、逆にNASAの研究者が 山形大学に来て研究する機会も作りたい。そのためにはある程度の実験設備を要した実験室が必要である。 しかし、特殊な装置はできる限り、山形県の工業技術センターやJAXAにあるものを利用するため、クレーン(500kg、 可動式)とクリーンルーム(クラス1000)が備わった100m2程度の広さの実験室があればよい。 またこの実験室には基礎的な放射線計測が行える様な回路装置を購入したい。 2)山形AMSセンターを我々の研究のインフラとしても使わせて頂きたい。具体的には年間のマシンタイムの中で およそ1/3程度は宇宙線の研究、ひいては地球環境科学の研究に使用したい。 3)「やまがた天文台」をアウトリーチ活動として使うと同時に、突発天体の光学的フォローアップ施設としても活用したい。 その際に、口径1m程度の望遠鏡が必要となり、現在の天文台を拡張する必要がある。しかし、世界的に著名な アマチュア天文家の協力を得て山形市内で 無料で望遠鏡を置けるスペースを確保できないか現在検討中である。 もしそれが可能だった場合には、 望遠鏡の購入だけで実現可能である。 4.共同研究プロジェクト 1)NASA/MSFC、ニューハンプシャー大学、日本の8機関と共同で行っているLEAPプロジェクト 2)金沢大学、理化学研究所と共同で行っているGAP2プロジェクト 3)日本の10数の機関と共同で行っているPolariSプロジェクト 4)郡司が参加しているNASA/MSFCを中心とした小型衛星プロジェクトIXPE 5)1000人規模で研究が行われている高エネルギーガンマ線プロジェクトCTA
5.研究業績のエビデンス ・Gunji, S.; Toukairin, N.; Tanaka, Y.; et al., “ Basic Performance of a Polarimeter for Gamma-Ray Bursts Using Segmented Scrintillator”, IEEE Trans. Nucl. Sci. Vol.58 pp426-433 APR 2011 ・Yonetoku, Daisuke; Murakami, Toshio; Gunji, Shuichi; et al., “ DETECTION OF GAMMA-RAY POLARIZATION IN PROMPT EMISSION OF GRB 100826A”, Ap.J., Vol.743 ppL30-33 DEC 20 2011 ・Yonetoku, Daisuke; Murakami, Toshio; Gunji, Shuichi; et al., “MAGNETIC STRUCTURES IN GAMMA-RAY BURST JETS PROBED BY GAMMA-RAY POLARIZATION”,Ap.J., Vol.758 ppL1-5 OCT 10 2012 ・Wada T., Shibata S. “A Particle Simulation for the Axisymmetric Pulsar Magnetosphere: II. the case of diple filed”, 2011 11, Mon. Not. R. astron. Soc. 418 612-624 ・Enoto T., Nakazawa K., Makishima K., Rea N., Hurley K., Shibata S., “Broad-band study with Suzaku of the magnetar class”, 2010 10, Astrophys J. Letter 722, L162-L167 ・T. Umebayashi, N. Katsuma, and H. Nomura, “EFFECTS OF DUST GROWTH AND SETTLING ON THE IONIZATION BY RADIONUCLIDES. I.FORMULATION AND RESULTS IN A QUIESCENT STATE OF PROTOPLANETARY DISKS”, Astrophysical Journal, 764 (2013), 104 (21pp)
6.アウトリーチの活動状況 ・理学部の持つやまがた天文台を中心とした地域NPOと協同した科学普及プロジェクト(天文台公開、出前授業など)を実施している。2014年度のこのプロジェクトの年間受益者は約9500であった。 ・サイエンスコミュニケータ養成事業として星のソムリエ資格認定制度を創設し、全国展開している。 養成では現在資格認定数3216人であり、全国24団体で実施している。2014年3月14-15日に京都で全国シンポジウムを開催した。 ・岩手県大船渡市および山形県河北町において地域の科学教育支援をおこなう。